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OSHA 効果的なエルゴノミクス:成功する方策
4つの抱括的アプローチ

資料出所:OSHAホームページ
(仮訳:国際安全衛生センター)

原文はこちらからご覧いただけます
http://www.osha.gov/SLTC/ergonomics/four-pronged_factsheet.html



効果的なエルゴノミクス対策によって、職場での傷害、疾病を減少させることはOSHAの大切な戦略である。エルゴノミクスに関連した傷害、疾病は、しばしば筋骨格系障害(MSDs)とも呼ばれており、職場では徐々に減少しつつある。OSHAのゴールは、その減少をより速めることである。

チャオ労働長官はエルゴノミクスに対して抱括的アプローチを進めることを2001年4月にコミットした。そのコミットを実行するために、OSHAは2001年7月に次の7項目にわたり全国で3回の公的フォーラムを開催した。 368の文書によるコメントを集め、100人の人々からヒアリングを行った。 この問題に関する種々の見解を議論するために利害関係者グループと個々人に会った。 コメント、勧告を分析した。 今迄のエルゴノミクス関係訴訟事件一覧表を含めた、種々の情報源による関連情報と有用情報を精査した。 種々のオプションを研究した。 種々の代替可能なアプローチを調査した。

これらの作業を通じてOSHAでは職場でのMSDsに早く、効果的に取り組むいわゆるエルゴノミクスに対する4つの抱括的なアプローチを開発した、これはエルゴノミクスに対する効果的なアプローチのために、労働長官が大枠を示した以下の原則に則ったものとなっている。 傷害防止 対策を建てる際に適切な方策を活用すること。 OSHAと使用者との間の協力に対するインセンティブを用意すること。 このアプローチには柔軟性を持たせ、1つの方法を全てのケースに当てはめることを避けること。 実行可能なプログラムであること(特に零細企業に対して)。 短く簡単で常識的な解決を含めて透明性を持っていること。

職場でのMSDsによる傷害及び疾病をうまく減少させるOSHAの戦略は以下の4つの柱からなっている。


ガイドライン(Guidelines)

  • OSHAでは、現状の災害率及び効果的かつ実行可能な解決に関する有益な情報に基づき、数多くの業種に対して産業別又は職種別の特別ガイドラインを開発する。この作業は、1990年に発行されたOSHAの肉詰め作業ガイドラインを含む既存のガイドライン及び優れた実施例を考慮に入れたものとなる。
  • OSHAは他の産業がそれぞれのニーズに合ったエルゴノミクスガイドラインを開発するよう促すことをねらいとする。
  • ゴールは労働に関連したMSDsを減少させるための方策をできるだけ早く実行に移すことを各産業界に促すことである。OSHAは特定の産業に対するガイドラインを6ヵ月以内に発表する予定である。

監督指導等(Enforcement)

  • OSHAの第一の目標は職場での傷害及び疾病の減少である。
  • 使用者は労働安全衛生法の一般義務条項(この中にエルゴノミクスの危険性が含まれている)において認められた重大な危険性がない職場を作らなければならない。
  • 効果的なエルゴノミクス計画をすでに実行している使用者又はエルゴノミクスの危険性を少なくしようと一生懸命努力している使用者に対しては、OSHAは監督指導等を原則として行わないこととする。
  • OSHAは、エルゴノミクスの危険性のための監督を行い、一般義務条項に従って指導票を発行し、さらに必要と思われる場合にはエルゴノミクスの危険性に対する警告書を発行するものとする。この警告書を発行した事業場の使用者に対して12ヵ月以内に再監督又は調査を行うものとする。
  • OSHAは老人ホーム等の監督指導を行うため介護産業に対する国家重点プログラムを発表したところである。特に患者を持ち上げる際のエルゴノミクスの危険性への対策に力を注ぐこととしている。
  • OSHAでは、エルゴノミクスの危険性及びその削減方法について適切なスタッフの養成訓練を実施し、全国10地域にエルゴノミクスコーディネーターを配置することとした。このコーディネーターも監督指導及び教育活動を行うこととしている。
  • OSHAは国家重点プログラム、告示、職場を特定したプログラムによる監督を通じてエルゴノミクスの危険性の問題にとりくむ意向である。更にMSDsの問題を多くかかえている使用者への援助も行うこととしている。

教育活動と支援(Outreach and Assistance)

  • OSHAは産業界、特に小企業への支援を行い、職場でのエルゴノミクス問題に企業が前向きに取り組む際の手助けをすることとしている。またOSHAは自主的なガイドラインや、エルゴノミクス計画の実施方法について、助言や教育をおこなっていく。
  • OSHAは2002年度の教育助成金を、エルゴノミクス及びその他の優先的事業にあてる予定であり、これには、エルゴノミクス訓練教材開発への支援並びにエルゴノミクス関係のリスクへの理解及びMSDsの防止を促進するために、使用者及び労働者へ直接教育訓練を行うといったようなものが含まれている。
  • OSHAは法の順守に役立つ、インターネットによる教育と情報を含めた総合的ツールセットを開発する予定である。このツールは、ガイドラインの理解を助け、いかにして積極的にエルゴノミクス問題を明らかにし、対処するかを示すものとなる。
  • OSHAは民間及び連邦の人材に対して、いわゆる教育センターとして知られている12の教育パートナーNPOにおいて教育訓練コースを用意することとしている。又、教育訓練教材とを広く一般に誰にでも利用できるようにするために遠隔学習を開発、活用することとしている。
  • OSHAは自主的なエルゴノミクスガイドラインの価値と有用性を推進し、強調できる新しいパートナーシップを打ち建てようとしている。又、ガイドラインの開発をスムーズに行えるように既存のパートナーシッププログラムを活用しようともしている。自主的保護プログラム(VPPプログラム(Voluntary Protection Programs:VPP)が実施されている事業場はエルゴノミクス解決を促進するのに効果的なモデルとして活用できるものと考えられている。VPPプログラムにたずさわっているボランティアの人々は他の職場に対する指導者となり、訓練の手助けを行うことができるだろう。
  • OSHAは又、エルゴノミクスへの模範的な又は斬新なアプローチをおこなった職場の成功事例を生かした新規認定プログラムを開発することとしている。
  • 英語能力が十分でない移住労働者保護のための対策の一環として、新しいエルゴノミクス計画は、ヒスパニック及びその他の移住労働者向けの特別援助システムを含んだものとなっている。というのは多くのこれらの労働者は特にエルゴノミクス関係の危険が高い職場で働いているからである。

研究(Research)

  • エルゴノミクスに関しては数多くの研究がなされているが、米科学アカデミー(NAS)によって指摘されたギャップ(格差)をも含めて、追加的研究がなお必要な数多くの分野が存在している。OSHAは、追加的情報が有益となると思われる分野で研究をおこなえるよう、研究者をバックアップするための仲介的役割を果たすつもりである。
  • OSHAは、職場へのエルゴノミクス適用の研究又は、エルゴノミクスの原則に関する研究でのギャップを特定するために権威ある諮問委員会を公設する計画である。この委員会はOSHA長官及びNIOSHに対し、その結末を報告しなければならないこととする。
  • OSHAは、NIOSHと密接な連携をとり、国家職業研究課題(National Occupational Research Agenda:NORA)を通じて必要と認められた分野での研究を促進しなければならない。