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記事OSHAは、死傷災害をコストの一部とする見方を許さない意向
−副長官の談話−
OSHA Will Not Tolerate Concept That Death, Injury Are BusinessCosts

資料出所:Occupational Safety & Health Reporter (BNA) 6-15-06
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2007.05.16

災害防止に対するOSHAの姿勢は、同ウェブサイトなどにおいて繰り返し表明されているところだが、同副長官のアメリカ安全技術者協会の会合における、この件および全般的動向についての談話を紹介した記事である。2007会計年度の予算要求においても、法を遵守しない事業主に対する取り締まりを強化することが表明されている。一部については、注記したようにすでに実現されている。

アメリカ、シアトルにて6月11日から14日まで、アメリカ安全技術者協会(American Society of Safety Engineers:ASSE)の2006年安全会議および展示会(Safety 2006 Conference & Exposition)が開催された。以下は、同会議に出席したBNA (Bureau of National Affairs, Inc.)のマイケル・C・デイビス(Michael C. Davis)原稿整理部長、エレン・バイヤーラム(Ellen Byerrum)記者、ナンシー・ネザートン(Nancy Netherton)寄稿記者からの報告である。

アメリカには、死傷災害および疾病は事業遂行のためのコストの一部と考える事業者が未だに存在するが、労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)はそのような事業者を許さないであろうと、労働安全衛生担当労働副長官エドウィン・G・フォークJr. (Edwin G. Foulke Jr.)は6月12日に述べた。

フォーク氏はいう、OSHAは事業者が目に余る違反行為をし、従業員を職業上の死亡災害に至らしめるリスクにさらすという状況を許さないであろう。

同氏は、副長官任期中に、職場の安全衛生について注目し、向上させていきたいとも述べた。

OSHAは、安全衛生関連法に違反する事業者を徹底的に追及する、とフォーク氏。OSHAでは、傷害疾病発生率が高い事業者に的を絞った、「特定事業場監督プログラム(Site Specific Targeting Program)」などの対策を用意している。同氏は、OSHAが「監督強化プログラム(Enhanced Enforcement Program: EEP)」を実施したところ、2005会計年に特定した追及すべき違反事業者の件数は、前会計年度のほぼ2倍に増加したことも指摘している。

また同氏は、OSHAのイメージはこの7、8年で劇的に向上しているとも語った。それにもかかわらず、OSHAを警戒している事業者はまだ存在する。同氏によれば、「自分の存在が知られる」ことを恐れ、OSHAのウェブサイトを閲覧しない、と語った事業者もいる、とのことである。

OSHAは事業場を支援し、“街角に立つ良心の警官”の役割を果たしていることを同庁は事業者に納得させる必要がある、と同氏は述べ、まもなくOSHAはこれまでに接触したことのない事業者に働きかけていくと見ている。

その他の問題点および基準について

新型インフルエンザの予防のために、OSHAは、保健社会福祉省(Department of Health and Human Services: DHHS)、農務省(Department of Agriculture)、環境保護庁(Environment Protection Agency : EPA)、国土安全保障省(Department of Homeland Security)などの政府機関と協働している、ともフォーク氏は述べている。

同氏は、新型インフルエンザに関する2004年3月発表のOSHA指針は現在改訂中であり、新指針がまもなく発表されるとコメントしている。(編注:2007年2月に公表された。

また、フォーク氏は、OSHAが法定基準としている許容暴露限界(permissible exposure limit:PEL)の改訂にも注目するつもりであると述べている。同氏によれば、OSHAは1990年初旬に400種の化学物質の許容ばく露限界値PELを改訂しようとしたが、裁判所の決定により断念しているという。同氏は裁判所の決定により、PEL改訂のためのある種の行程表ができたとし、同問題については今後あらゆる側面から検討していくと語っている。

フォーク氏は、OSHAの規制問題にかかわる多数の問題点についても強調している。OSHAは、「GHS(化学物質の分類・表示に関する世界調和システム)」」の実施を可能とする危険・有害性の周知徹底基準(Hazard Communication Standard)の修正を検討するための、規則制定の事前通知(Advance Notice of Proposed Rulemaking)を作成している、とフォーク氏はコメントしている。事業者や一般市民からの情報を求める同事前通知は、「官報」にまもなく発表される。

呼吸保護の指定防護係数: APF)を決定する最終規則を含めた、安全衛生基準への検討が続いている、とフォーク氏。指定防護係数の規則制定は、正式発表前の審査という最終段階にある。

これ以外の基準については、ベリリウムばく露、電気安全(編注:2007年2月に基準が改正された。)、造船所火災に関する規則制定、クレーン・デリック協議型規則制定(negotiated rulemaking on cranes and derricks)が検討中である。また、従業員の個人保護具の支給を事業者に義務付ける規制制定についても検討中である。

ナノテクノロジーの安全衛生問題もOSHAの取り組むべき課題である。フォーク氏は、ナノテクノロジーは新しい研究分野であるため情報が限られていると指摘し、OSHAは、ナノマテリアルを扱う事業者と従業員を対象とする手引きを作成する予定であり、ナノテクノロジーの調査研究に携わるアメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)と協力していく、と述べている。(編注:2007年2月に報告書が公表された。