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死者を複数出した事例に初めて焦点をあてた調査で
運輸関係、殺人、火災がリストの上位に


資料出所:BNA発行「Occupational Safety and Health Reporter」
Vol.34, No.46, pp.1142-1143 (Nov.18, 2004)
(仮訳 国際安全衛生センター)

Reproduced with permission from Occupational Safety & Health Reporter,Vol.34, No.46, pp.1142-1143 (Nov.18, 2004). Copyright 2004 by The Bureau of National Affairs, Inc. (800-372-1033)
<http://www.bna.com>



 インターネット版「Monthly Labor Review」に(2004年)11月9日に投稿された論文によると、労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)は、複数の死者を出した業務関連事故に関する初の調査で、2人以上の労働者が死亡した事例で最も多いのが運輸関係であり、以下、殺人、火災または爆発と続くことがわかったとしている。
 調査では1995〜1999年に2人以上の労働者が死亡したすべての事故のデータが調べられ、1,109件の事故で2,949人が死亡していることがわかった。
 論文によれば、2人以上の労働者が死亡した事故は、職場で起きた致命的な事故全体のわずか4%を占めるにすぎないが、同様の事故で死亡した労働者は、致命傷を受けた労働者全体の10%近くにのぼった。事故の4分の3近くは死者が2人だったが、9つの最悪の事例では合計266人の命が奪われた。
 調査対象の5年間に複数の死者を出した事故で死亡した労働者の内訳は、民間部門の労働者が2,290人、公務員が659人であった。論文によれば、公務員は死亡労働者全体の10%を占めているが、複数の死者を出した事故およびそれによる死亡者に占める割合はその2倍であった。
 BLSによると、複数の死者を出した事故は、致命的傷害全体の中では典型的なものではなかった。
 たとえば火災と爆発は、複数の死者を出した事故の中では第3位で、死者数は9%を占めている。しかしBLSによれば、火災と爆発で死亡した全労働者の26%は、複数の死者を出した事故で亡くなった。
 一方、論文によれば、業務上の死亡者すべての中では火災と爆発はわずか3%を占めるに過ぎず、この値は、BLSが死亡者に関するデータを報告する際に決まって使う事故またはばく露の主要なカテゴリー6つの中で最も低いという。
 BLSによると、死者1人の事故の多くは、物体との接触や墜落・転落が原因であるのに対し、複数の死者を出した事故ではこれらのことが原因になることは稀だという。

 事故、業界、職業。論文では、複数の死者を出した事例について、事故やばく露に加え、業界と職業ごとの調査も行っている。
 運輸関係では、複数の死者を出した幹線道路での衝突の半数が正面衝突によるもので、この割合は死者1人の事故では3分の1であることがわかった。
 同様に、危険な職業も、複数の死者を出した事例というメガネを通して見ると、通常とは異なる様相を見せる。
 論文はこう指摘している。「漁業と林業は、最も危険な職業としては年ごとに順番が入れ替わることもあるが、死亡率の最も高い2つの職業として常にトップをキープしている。しかし、複数の死者を出した事例について見ると、これらの2つの職業は大きく異なっている」
 BLSによれば、林業では複数の死者が出る事故は稀である。材木伐採と搬出では、死者を複数出した事故はわずか5件であり、それによる死者は584人の死亡労働者全体のうち8人であった。
 一方、論文によると、漁業における死亡者は死亡労働者全体の1%であるが、死者が複数出た事例では全体の4%を占めていた。漁業では、調査対象の5年間で、死者を複数出した事故は44件、これらの事故による死者は、339人の死亡労働者全体のうち122人にのぼった。
 論文はさらにこう指摘する。「死者を複数出す事故が多発すると思われている職業の中には、実際にはそうでないものもある。たとえば建設業は、死亡労働者全体の10分の1を占めるが、死者が複数出た事故での死亡者の割合はそれよりはるかに小さい」
 論文によれば、わずかな例外は別として、複数の死者が出る事故は、「一般に工場タイプの製造業では大きな比重を占めてはいない」

 一般的な結論。論文は、複数の死者を出した事故についていくつか一般的な結論を下している。複数の死者は、ほとんどあらゆる事故またはばく露のカテゴリーで発生しているが、そうした事故における死者が死亡労働者全体に占める割合は、カテゴリーによって多い場合と少ない場合がある。
 殺人後に自殺した場合を除くと、複数の死者を出した同一の事故において、致命的となった事故またはばく露が個々の犠牲者の間で異なるケースは稀である。また、同じ事故で致命的負傷を負った労働者らは、一般に同じ業界かまたは同種の業界に所属している。
 論文の共著者の1人であるBLSのディノ・ドルーディ(Dino Drudi)は11月12日、死者を複数出した事例のデータの調査には3年以上がかかったとBNAに語った。
 論文の付録によると、各州は「労働災害による死亡者の調査(Census of Fatal Occupational Injuries: CFOI)」を通じて複数の死者を出した事例についての情報収集をすでに何年も行っているが、「複数の死者を出したという側面が注目されることはこれまでほとんどなかったので、対処の必要な間違いが非常に多かった」という。

 論文は、インターネット上のBLSのサイトhttp://www.bls.gov/opub/mlr/mlrhome.htmで読むことができる。