職業上の負傷と疾病、さらに関連する経費を管理することは、多くの企業において重要なことです。 優秀な健康管理専門職を選び、職場の安全衛生の活動に参加させることは、 この過程において重要なステップとなります。以下に述べるQ&Aは、健康管理専門職の選任を行う際の手引き、参考となるものです。

2.健康管理専門職（Health Care Professional）を選ぶ際に何を考慮すればよいか。

　事業者は、多くの健康管理専門職（Health Care Professional）の中から選択することができます。適切な人選のためには、次のようないくつかの要素を考慮する必要があります。

• 職場に存在する特定の化学物質や危険性、有害性に対してOSHAはどのような検診を要求しているのか。
• 職場の数、広がり、規模そして職場に存在する危険性、有害性の重篤性
• 包括的な労働安全衛生プログラムの一部として健康管理活動（occupational health care service）に割り当てられる資源はどのくらいか。
• 救急処置センター及び健康管理施設（health care facility）は、どのくらい離れているか。

　労働安全衛生（workplace safety and health）には、少なくとも、経営者側のサポート、労働者の参加、作業場の分析、危険性、有害性の予防と管理、健康管理（health care management）（疾病及び負傷の検診を含む）及び訓練教育などの項目を含んでいます。

　資格を有する職場健康管理専門職（Qualified Occupational Health Care Professional）は、安全で衛生的な職場環境を形成する上で事業者を支援する人たちです。他の労働安全衛生に関する専門家とともに、健康管理専門職は、次のことを行うために事業者側及び労働者側と協力して仕事を行います。

• 潜在する危険性、有害性を特定すること。これらを防止、排除、最小化または減少させること
• 職場をより安全で衛生的なものとするためのプログラムを開発し、これを運用すること
• OSHAの要求する記録の保管を確実に行うこと

3.健康管理専門職（Health Care Professional）は、職場の安全衛生においてどのような貢献をするのか。

　疾病と負傷を見て、これを治療する資格があるのは健康管理専門職だけです。健康管理専門職は、適切な免許、登録、資格証明を有していなければなりません。さらに、マネジメントについての経験と専門性を持ち、事業場の状況と規模に応じて常勤あるいは非常勤で、事業場にて勤務することが必要です。常勤の職員であることもあれば、契約ベースの職員であることもあります。

　事業者は事業場において他の安全と保健に関する専門家と協力することに加え、資格のある健康管理専門職を選任する必要があります。

• 特定の化学物質あるいはばく露に関連する検診を行うこと。これには、再配置のための健康診断、配置のためのアセスメント、定期健康診断、個々の検診結果を含む秘密の記録の保管などが含まれます。
• 職業に関連した疾病と負傷を管理しこれの処置をすること。この際には、早期に把握し対処をすること。作業の制限と配置換えを勧告すること。労働者が職場復帰する場合には労働者の状態を監視し、フォローアップすること。
• 健康増進プログラム（health promotion program）を開発しこれを実施すること。
• 慢性あるいは複雑な疾病あるいは負傷を抱える労働者に対する管理方法について、手引きを与えること。

　小規模あるいは資源が限られている事業者に対しては、職場におけるモデル的な産業保健管理の方法のどれかを考えても良いでしょう。これには、業界あるいは工業団地において健康管理専門職を共有すること、また総合的な安全衛生プログラムの一環として産業保健のプログラムのある産業保健専門職を保有している大きな企業と契約することなどが含まれます。（参考：B. Burgel Innovation at Work）

　有資格実地看護師（Licensed Practical Nurses , LPNs）、 救急隊員（Emergency Medical Technicians , EMTs）、救急救命士（Paramedics）などの健康管理に関する専門家の支援によって、医師や看護師の仕事をより充実させることができます。医療補助者（Physician Assistants , PAs）も貴重なサービスを提供します。

　健康管理専門職の種類にかかわらず、彼らの労働安全衛生に関する経験と知識が十分なものであり、かつ職業性疾病と労働災害について十分な理解を有している者であることを、事業者は確認していなければなりません。

5.事業者は各健康管理専門職（Health Care Professional）がどの範囲までの業務を行うことができるかをどうやって確認したらよいか。

　各州はそれぞれの健康管理専門職（Health Care Professional）の業務の範囲について、法律によって定めています。各健康管理専門職のできる業務の範囲を確認する必要が生じたときは、各州の免許あるいは資格証明委員会に照会してください。

• 医師（Medical Doctors）
  
  　州の医師試験委員会及び専門機関は産業医の教育訓練及び行う仕事についての情報を提供します。アメリカ医療専門家委員会（American Board of Medical Specialist, ABMS）は労働医学専門家（Occupational Medicine Specialist）のリストを毎年発行しています。公共の図書館の照会部門のリストに掲載してあるABMS、あるいはABMS事務所（1-800-776-2378）に電話することができます。

• 整骨医（Doctors of Osteopathy）
  
  　整骨医は各州委員会によって資格が与えられています。リストには医師試験委員会、医師試験委員、整骨医試験委員会、医療実習委員会及び医療免許委員会についての情報があります。ABMSは認定を受けた整骨医の名簿のリストを毎年発行しています。（上記医師の項を参照）

• 看護師（Registered Nurses）及び専門看護師（Nurse Practitioners）
  
  　看護師州委員会全国協議会（National Council of State Board of Nursing）[（312）787-6555]に問い合わせると各州の看護師についての規定がわかります。全般としては、アメリカ看護協会（American Nurses Association , ANA）が専門看護師の資格を与えています。また看護師については、アメリカ労働産業看護委員会（American Board for Occupational Health Nurses , ABOHN）[（630）789-5799]が産業保健を専門とする看護師に対して資格を与えています。

• 医療補助者（Physician Assistants）
  
  　ミシシッピを除く全州が医療補助者に対して、州の医事委員会または他の免許発行委員会が免許を与えています。医療補助者の認証に関する国家委員会（National Commission on Certification of Physician Assistants , NCCPA）が資格認証を行っています。[（770）734-4500]。
  

• 救急隊員（Emergency Medical Technicians）
  
  　救急隊員の行う業務の範囲は州ごとに異なっています。訓練時間によってあるいは行うことのできる仕事の範囲によって、救急隊員にはいくつかの業務レベルがあります。各州には救急隊員の名簿があり、各州政府の電話番号簿の健康庁（Department Health）、公衆衛生庁（Department of Public Health）あるいは、緊急医療サービス庁（Department of Emergency Medical Services）の項目の中に掲載されています。

• 有資格実地看護師（Licensed Vocational or Practical Nurses）
  
  　各州の看護委員会が電話番号簿に掲載されています。各州において、有資格実地看護師が行うことのできる業務の範囲を定めています。

6.事業者は、健康管理専門職（Health Care Professional）の資格のどこを見れば良いのか。

　健康管理専門職は、職場で労働者が行う仕事と健康との関係について評価を行います。これを効果的に行うために、各健康管理専門職は以下のような技術と能力を有していなくてはなりません。

• 作業場での作業、労働者が取り扱う材料の毒性に対する知識、職場における潜在的危険性、有害性あるいはストレス要因などの作業環境についての一般的知識
• 労働者が肉体的あるいは精神的に仕事に適合しているかどうかを判断する能力
• 職業性疾病、負傷を発見し、評価し、治療しあるいは調査する能力
• 労働者補償法（worker’s compensation）、地域、州、連邦の法令の要求事項、健康記録の保管システムについての知識
• 産業保健サービスの実施における組織化と運営の能力
• 産業保健の実践に関する法的、倫理的な知識

　健康管理専門職は、産業保健管理プログラムの運営と産業保健スタッフの監督に加えて、あらゆるレベルの労働者と管理者とのコミュニケーションをする必要があります。最も重要なことは、健康管理専門職は、OSHAの規定、専門家の倫理規定、個人情報法に従って、健康管理専門職と労働者との間の秘密を守ることです。管理者側に対しては、労働安全衛生に関する判断に必要不可欠な情報のみを提供することとなっています。

7.健康管理専門職（Health Care Professional）を評価するのに良い方法はあるか。

　面接において、以下の質問をすることがその健康管理専門職を評価するために適当でしょう。

• 当人がどのような種類の教育、訓練を受けているか。
• 専門に関する資格証明の種類、修了日時、レベル
• 過去2年間に受けた教育コースの名称
• 免許、登録、資格取得の期日と場所（書類の提示を求めること）
• 産業保健分野での経験年数
• どのような業界での経験を持っているか。
• どのような種類のマネジメントの経験を持っているか。どのくらいの経験か。
• OSHAの記録保管要求についてどのくらい知っているか。
• OSHAの監督に対する準備をしたことがあるか、あるいは監督に立ち会ったことがあるか。
• 州の労働者補償法についての知識はあるか。
• 障害者法（Americans with Disabilities Act）についての知識はあるか。
• 事業場についてのどのような情報を欲しがっているか。
• 事業場の安全衛生プログラムをどのように改善しあるいは発展させようと思っているか。 当人は事業場について次のような質問をすることでしょう。
• 事業場の施設（種類、設置場所）
• 労働者数
• 作業工程
• 既知のあるいは潜在的な危険性及び有害性
• 基準あるいは規則の適用
• 産業保健サービスに関して現在行っている状況
• 産業保健サービスに従事している他の健康管理専門職について
• 産業保健プログラムの存在の有無及びその内容
• 医学検診プログラム
• 労働協約の内容
• 過去に受けたOSHAからの改善命令
• 現在及び過去の勤務先あるいは教育機関に関する資料の提出を求める。

8.健康管理専門職（Health Care Professional）と、インダストリアルハイジニスト（Industrial Hygienist）、労働衛生工学技師（Industrial Engineers）、認定安全専門家（Certified Safety Professional）などのその他の産業保健専門家（Occupational Health Professional）との違いは何か。

　産業保健と安全に関する専門家はすべて、労働者の健康と福祉を第一に考える事前行動的、予防的な措置についての教育を受けています。しかし個々の州の規定に従って、健康管理専門職だけが、その定められた守備範囲の中で応急処置を超えた疾病と負傷の処置をすることができます。さらに、健康管理専門職はその受けた教育及び訓練に基づいて質の高い予防的健康管理に関する情報とプログラムを提供できるのです。

　以下が、健康管理専門職の有している技術及び能力についての説明です。健康管理専門職はあなたの事業場における効果的な安全衛生プログラムの一部なのです。

• インダストリアルハイジイン（Industrial Hygiene）
  
  

  　インダストリアルハイジイン（Industrial Hygiene）では、仕事によりあるいは仕事中に生ずる健康障害をいかに把握しこれをコントロールするかということに焦点をあてています。インダストリアルハイジニスト（Industrial Hygienist）は、労働者あるいは地域住民に対して病気、健康障害を引き起こし、福祉に対して影響を与え、あるいは大きな不快感を与えるところの職場における化学的、生物学的、物理的因子及びストレス要因の認識、評価、抑制に焦点をあてています。専門のインダストリアルハイジニストは、工学、化学、生物学、物理学あるいは産業保健の学士号あるいは修士号を持っています。

  　インダストリアルハイジニストは、職業性の化学的、生物学的、物理的なばく露を監視し、これらのばく露を見出すために分析的手法を用います。また職場における危険性、有害性を除き、減少、根絶するための工学的対策及び作業の管理を実施します。インダストリアルハイジニストは、化学的、生物学的、物理的ばく露の大きさとそれによるリスクに関する専門的意見を提示します。認定されたインダストリアルハイジニストは厳しい資格試験に合格しています。

• 労働衛生工学（Industrial Engineering）
  
  

  　労働衛生工学は、人間、材料、情報、機器、エネルギーから構成される複合システムの設計、設置、改善を行います。労働衛生工学では、数学、物理学、社会科学に関する特別な知識と技術を必要とします。またそのシステムから生じる結果を特定し予見、評価するための工学的分析、設計の原則と手法も重要です。

  　労働衛生工学機関（Institute of Industrial Engineers）は、人間工学分野の特別な研究機関ですが、多くの技術者がこのますます複雑で需要の高い専門分野での教育を受ける道を選択しています。

• 認定安全専門家（Certified Safety Professional）
  
  　安全専門家は、人間、財産及び環境に対する危険性または有害性、あるいはばく露を抑制、減少するための手順、基準及びシステムの発展に焦点を置いています。認定安全専門家（Certified Safety Professional: CSPs）は認定を受けた大学において安全に関する学士号を取得し、その後少なくとも4年間、安全に関する実務経験が必要で、さらに安全の基本（Safety Fundamental）の試験に合格した者です。

9.OSHA基準は事業者に対してどのような健康の監視と産業保健サービスを求めているのか。

　OSHAの一般産業基準（General Industry Standards）は、毒性のある、あるいは危険性、有害性のある物質について規制をしていますが、その連邦規制基準29の1910章において、健康の監視を義務づけています。

　OSHAの規制のコピーはワシントンの政府刊行物事務所のSuperintend of Documentsにおいて有料で入手できます（U.S . Government Printing Office, Washington , DC 20402）。

　以下のリストは今後変更あるいは増加があり得ます。産業界及び職場に適用されるOSHAの一般基準及び特別基準を理解しておくことは事業者の責務です。

産業保健サービスを要求しているOSHA基準

専門職についての情報源（各団体）

略

参考図書

略

OSHAの関連出版物

略

承認プログラムを有する州のリスト

略

OSHA無料相談窓口リスト

略

OSHA地域事務所リスト

略