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国立労働安全衛生研究所(NIOSH)による、
ミズーリ州ポップコーン工場における労働者の暴露評価

NIOSH Evaluates Worker Exposures at a Popcorn Plant in Missouri

資料出所: NIOSH Fact Sheet July 2002

(仮訳:国際安全衛生センター)

原文はこちらでご覧いただけます
http://www.cdc.gov/niosh02-128.html


疾病対策予防センター(CDC)のNIOSHは、ミズーリ州ジャスパーのポップコーン包装会社での職業性暴露による重大な肺疾患に関して、労働者の潜在的リスクを評価する為に、経営者、労働者、州の健康管理職員、及びその他と仕事を進めている。NIOSHは、さらなる研究を継続しながら、暴露を減らす為に暫定的勧告を出した。

1992年から2000年まで、ミズーリ州ジャスパーのGilster-Mary Leeポップコーン工場で働いていた8人の元従業員に、閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans)と呼ばれる珍しい肺疾患が発症した。この疾病は、いく人かの労働者にとっては、肺移植リストに載る程の非常に厳しいものであった。2000年8月に、ミズーリ州の保健局は、これらの肺の疾病が工場での暴露によるものなのか、並びに、現在働いている労働者達が危険な状態にあるかどうかの決定をNIOSHに要請した。予備調査が終了した後、NIOSHは、電子レンジ用ポップコーン製造にかかわる全ての労働者に、呼吸用保護具を装着するよう勧告した。

2000年11月、NIOSHは、工場労働者に内々のアンケート、肺機能検査、胸部X線検査を含む任意の検査を行った。現在働いている労働者達は、国全体の調査に基づいてだされた予想値より、慢性の咳・息切れで2.6倍、肺機能検査においては、異常な気流低下が予想値の3.3倍であった。そして、予想の2倍の数の労働者が、医師に喘息・慢性気管支炎と診断された。

同時期、NIOSHは、空気中の粉じん濃度と、人工バター風味では一般的な成分であるジアセチルを含むバター風味成分のうちのいくつかを測定した。これら物質の空気中濃度が高い場所で長時間働く労働者は、肺機能検査において気流異常を示す傾向にあり、暴露が高い程、気流は低下するという関連性を示した。

検査結果に基づき、NIOSHは、工場の換気改善の為の勧告を出した。会社は勧告に従い、繰り返し行われた計測は、工場内空気中の粉じんと風味付け成分量が劇的に減少したことを示した。又、NIOSHは、電子レンジ用ポップコーン製造に携わる労働者に、呼吸器の使用を再度強調した。

NIOSHは、2001年4月と8月に、現労働者に対して再検査を行った。工場の換気改善にもかかわらず、労働者の何人かは肺機能検査において極端な機能低下を示した。肺機能検査における異常な機能低下は、空気中の粉じんと風味成分をかつて高い割合で暴露していたことによるものなのか、又は、それらがより低くなったはずの空気中濃度がまだ高いからなのかは、はっきりしていない。NIOSHは、労働者のさらなる暴露を防ぐため、空気中の風味成分と粉じんの源を分離するよう会社に勧告し、会社側は必要な措置を現在とっている。NIOSHの検査において、高濃度の風味成分の蒸気を吸った実験用ラットは、肺の気道に深刻なダメージをうけた。風味成分ジアセチルは、計測が容易な為に暴露指標として使用されたが、風味成分に暴露された労働者の呼吸疾病発症に、どの様な影響を与えたのかははっきりしていない。

NIOSHはGilster-Mary Leeとの協同作業により、労働者の肺機能が通常の加齢による低下よりも急速に低下してしまうことがなくなるまで観察を継続し、工場による技術的改善の有効性を評価するために、空気濃度テストを続行する。

NIOSHは、その調査結果と勧告を広める為に、広く労働者、地域、会社、保健専門職と連携している。検査結果を直ちに個々の労働者に通知すると共に、NIOSHは、地域において労働者とその他の人々と当座の調査結果を共有し、電子レンジ用ポップコーンを製造している労働者に対して呼吸用保護具使用の重要性を強調し、そして調査を続行するあいだ、医学検査に引き続き参加するよう働きかける為に、2001年9月、ミズーリ州ジャスパーでタウンミーティングを開いた。又、NIOSHは、2001年9月に地方の保健医療提供者に対して、一時的な結果と勧告を示した。

現在のデータは、この工場の元労働者におきた閉塞性細気管支炎が、風味成分蒸気の吸引による職業性暴露の可能性が非常に高いことを示している。危険発生の原因と環境を最終的に特定する為に、さらなる調査が必要である。NIOSHは、その他の労働者が危険な状況にあるかどうかを調べるために、風味成分を使用している他の会社の調査も行っている。これらの努力は、風味成分の安全な使用に関するガイドラインの開発を可能にするものである。現在の調査は労働者の安全問題に焦点をあてており、NIOSHは、電子レンジ用ポップコーンを消費者が作って食べる際の危険性を示す証拠に関しては何ら把握していない。

DHHS (NIOSH) Publication Number 2002-128
May 2002
This document also available as 02-128.pdf