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OSHA違反上位10項目

安全を守らない作業条件との闘いにおいて、
OSHAは故意・重大・反復的違反に特に厳しい目を向ける

アル・カー(Al Karr)

資料出所:National Safety Council発行「Safety+Health」2000年12月号 p.35〜38
(訳 国際安全衛生センター)


恒例のOSHA(安全衛生庁)の違反上位10項目(トップテン)は、今年は若干異なった様相を呈している。今年の上位10項目は、OSHAが事務処理のミスのような「重大ではない」違反とみなすものを入れるのではなく、もっとも重大な違反に力点を置いており、これには「故意の」「重大な」「反復的」な違反などがある。危険度が高い作業場を検査するOSHAの努力のおかげでこのような詳細への言及が可能なのであり、事業者から報告される負傷および疾病の発生率を目安として、OSHAはさらに重大な違反に的を絞った。

これらの上位10項目は1999年9月末から2000年9月初旬までの期間を対象とする。



違反上位10項目 及び 「最も重大な」違反上位10項目

OSHAの2000年会計年度 (9月まで)の違反告知のうち、違反上位10項目および 「最も重大な」上位10項目 (「故意の」「重大な」「反復的な」違反を考慮したもの)は以下の表のとおりです。

違反上位10項目 「最も重大な」上位10項目

1. 危険・有害性の周知徹底、1910.1200 6,709 1. 足場 6,047
2. 足場、1926.451 6,406 2. 墜落・転落防止 3,920
3. 呼吸器の保護、1910.134 4,261 3. 危険・有害性の周知徹底 3,087
4. 墜落・転落防止、1926.501 4,158 4. 機械の安全ガード 2,358
5. ロックアウト/タグアウト、1910.147 3,702 5. ロックアウト/タグアウト 2,471
6. 電気配線、.305 2,911 6. 呼吸器の保護 2,282
7. 機械の安全ガード、.212 2,576 7. 電気の配線 2,003
8. 電気システム、.303 2,259 8. 機械式動力伝達装置 1,933
9. 機械式動力伝達装置、.219 2,092 9. 動力プレス 1,643
10. 産業用動力駆動運搬車、.178 2,008 10. 電気システム 1,516


「私たちは(特に)死亡事故につながる危険を注視しています」と、OSHAのコンプライアンス(遵守監視)ディレクター、リチャード・フェアファックスが言う。彼は、災害調査から多くの(100,000ドル以上の罰金が課される)重大な事例が浮き彫りになったと述べている。

6月30日を期末とするOSHAの2000年会計年度の最初の9ヵ月間で、OSHAの違反告知(citation)の対象となる災害数は、前年よりも著しくはねあがった。OSHAが違反告知を出した事故の合計数は、前年度の同期に比べ11%増加して60,736件となった一方で、故意・重大・反復的違反は12.6%増加して41,299件となった。

さらに、OSHAは年間を通じての「言語道断」な違反(事業者が安全衛生への配慮に無頓着であったと同機関が判断し、違反ごとに個別の罰金を課されるだけでなく、総合的にみてかなりの罰金が発生するケース)に対する違反告知は今のところ発していないものの、このケースのうち1件はほとんど告知が出される段階にきており、その他6件もトップレベルの審査の過程にあるとフェアファックスが述べている。

「たとえるならダムが今にも決壊しかけているようなものです」と、アトランタの弁護士で、OSHAの局長代理(acting OSHA chief)を務めたことがあり、現在はOSHA関連で名前の挙がる企業の代表を務めるパトリック・タイソンが断言した。


研修がカギ

事業者たちは、どうすれば事業場でのきわめて重大な違反に対する違反告知を回避できるのだろうか。「最良のアドバイスは、適切な安全衛生プログラムを実施することです」と、大規模な事業者グループであるLPAの上席副社長ジョン・ティッセ(John Tysse)が説明する。

コンセプトは同じように思われるかもしれないが、安全衛生コンサルタントは、労働者は常に警戒を怠らず、安全を脅かすリスクに用心しなければならないと警告する。多くの状況において、組織資源カウンセラー(Organization Resources Counselors )の安全コンサルタントであるジョアンヌ・リンハードは、どのような安全衛生プログラムを成功させるにも研修が肝心であると述べている。ORCは、「私たちは時々こうした安全に関する事柄について、わざわざ業務を煩雑にしているのも、それには理由があるのだということをみなさんに知っていただくために」大規模事業者を対象に安全衛生調査を実施しているのだとリンハードは述べている。

リンハードは、事業者たちに、長年の問題のパターンに取り組み、危険な部分が露出している器具を調べるために職場の実地検分を頻繁に実施するように忠告している。これにより、事業者側は、災害の発生を防止するには大がかりな障壁あるいは小規模の保護策をどこで実施すればよいのかが理解できる。彼女は、基準に従うやり方に精通するには、折を見ては基準を改めて援用することが重要だとも述べている。

一方で、ここ数年、OSHAの文書業務についての違反告知が縮小しているが、それは不適切な記録を理由とする違反告知が相対的に減少したことを意味する。しかし、ある労働組合の関係者の中には、これが誤りだと考える人もいる。「私の見解では、負傷を記録しないことはもっとも重大な違反のひとつです。負傷記録は、職場での危険を発見する最良の方法なのです。私にとって、これはかなり重要ですが、苦情に対する回答もないのです」と、全米自動車労組(United Autoworklers, UAW)の安全衛生担当管理者であるフランクリン・マイラーは不満を述べている。


高所の落とし穴

「より重大な」安全違反が新たに重視され、2種類の危険度の高い建築基準(足場組みと墜落・転落防止)が未調整のリストでは2位と4位であったところを、それぞれ「最も重大な」項目リストのそれぞれ1位と2位へと移動している。

これは、特に作業者が職務を果たすには未完成・完成を問わず建築物の最上部で昇り降りしなければならないため、建築作業には高い危険性が伴うことを示している。高層建築物の建設に関連するリスクのために、この業態で一般的に発生しがちな違反は死亡や負傷事故の頻度がいっそう高い。このため、これらの事故は比較的厳しい違反告知につながる傾向がある。

建設作業における墜落・転落は、特に作業者が落下の仕方や場所をコントロールできないために重大な結果を招く傾向にあります」と、OSHAの建設事務局の次席ディレクターであるベリエン・ゼットラー(Berrien Zettler)は説明する。建設作業による死亡および多くの重度障害の約35%は墜落・転落によって生じているとゼットラーは強調している。

労働統計局(Bureau of Labor Statistics, BLS) は、「1999年度の死亡災害の調査」で、業務上の墜落・転落から引き起こされた死亡件数は若干上昇して、昨年は717人であると報告した。1992年に初めて死亡事故の国勢調査が始まって以来、物体および器具との接触に次いで、これが死亡に至る業務上災害の第2位となった。死亡災害に至る墜落・転落の約半数が、屋根、はしご、あるいは足場からのものであった。

最近のある墜落・転落防止事例の結果は、基準下のOSHAによる行政の違反告知を超えるものだった。インディアナ州エルクハートのルマスター・スチール・エレクトロン(LeMaster Steel Erectrons)社は300,000ドルの罰金を課され、また5年間の観察処分の判決を受け、3人の企業幹部が4〜6ヵ月間の禁固を言い渡された。

この幹部は、ルマスター社が故意に転落防止規則を守らず、1996年のオハイオ州メーソンの作業現場での死亡事故を招いた容疑で責任を認めた。この事故の犠牲者は、25フィート以上の高さのビルの最高部から転落し、下のコンクリートの基礎に叩きつけられた。OSHAによれば、ルマスター社のある幹部がOSHAに対し、転落予防策は事故の前に設置されていたと示したが、実際には、OSHAの検査官を欺くために後から設置されたものであったとのことである。


負傷に対する危険防止

作業者の負傷を予防するために機械の危険防止措置を求める別の基準は未調整リストでは上位10項目中7位にあるが、最も重大な項目のリストでは4位である。もっとも重大な10項目の中でも、機械の危険防止措置は、もっとも重大な違反が基準の合計違反数の90%以上にのぼる5つの基準のうちのひとつである。

最近、OSHAはニュージャージー州カーニーのアメリカン・モダン・メタルズ社を、多数の項目にわたり違反を犯していたために違反告知し、このアルミ製野球バット製造メーカーに対して278,350ドルの罰金を提示した。同社は、要求されていた帯鋸、曲げ機械、金属絞り加工機、および研削盤への危険防止措置を怠ったために、繰り返し違反告知された。

「この事業者は、危険の可能性があることを通告されているにもかかわらず、適切な危険防止措置を実施せず、故意に多くの機械を従業員に操作させていました」と、ニュージャージー州パーシパニーのOSHAエリアディレクター、ディビッド・イッポリトは非難する。

一方、業務上作業者が接触する場合がある化学物質の危険性について詳細な情報を従業員に与えるよう事業者に求める危険伝達基準は、最も重大な項目リストの3位まで低下したが、この基準は未調整のリストでは上位を維持している。この基準の多くの違反には、有毒物質の容器に適切なラベル表示をしない、求められる化学物質等安全データシートを準備しないなどの、文書処理の怠りが含まれる。


「より重大な」安全違反が重視され、足場組みと墜落・転落防止が未調整のリストでは2位と4位であったところを、それぞれ1位と2位へと移動している。

OSHAのフェアファックスは、「基準に従って準備万端にしていれば、彼らは厳しい違反告知を受けることもないでしょう」とも語っている。

同様に、基本的な上位10項目リストの3位まで上昇した呼吸保護の基準は、もっとも重大な項目リストでは6位にとどまっており、違反の多くは基準に従うための文書によるプログラム作成を事業主が怠ったことによる。


リスト:

もっとも重大な違反に基づいた2000年会計年度(9月9日まで)の基準上位10項目は次の通りである。


1 足場――建設業(29 1926.451)

足場にいる間に作業者が命綱などで身体を保持することを怠った場合、あるいは足場そのものが崩れた場合に生じる落下は、OSHAの違反告知につながる可能性がある。「地域重点プログラム」のもとで、同機関は一般的に、建設現場でのより適切な落下防止措置と同様に、より安全な足場組みの実行を促している。OSHAは最近、テキサス州ファーのリーモン・メイスンリ(Limon Masonry)社に対し、個人向けの落下防止器具やガードレールによる足場からの作業者の落下防止を怠った、足場支持が不適切である、土台に十分な厚板を張ったとは言えないなどの重大/故意の違反のために、合計299,300ドルの罰金を提示した。

この基準は、10フィート以上の足場で作業する際に、作業者を落下から守る。しかし、ペースの速い経済活動が安全の確保を困難にしている。なぜなら、「私たちは生産の圧力の下にいるようなものです――他にもしなくてはならないことが多いのです」と総合工事業者連合会(Associated General Contractors、AGC)の安全衛生監督が述べている。


2 墜落・転落防止――建築業(1926.501)

近年、調査者たちは、足場組みに関連しない落下の危険性を以前より粘り強く観察し、多くのことを発見してきた。たとえば、屋根ふきは「危険性が高い作業ですが、もっと頻繁に調べると必然的にさらに多くが違反告知されることになり、調査者の主観性に影響されることもあります」と、米国屋上工事協会(National Roofing and Contractors Association)の政府関係ディレクター、クレイグ・ブライトアップが説明する。

最近の多忙な時節では、高所の作業中に作業者がかならずしも十分に命綱等を装着しているわけではないのかも知れないが、AGCのグギエルモ(Gugielmo)によれば、作業者たちは安全作業における作業者の訓練に向けて確かに進歩しているとのことである。


3 危険・有害性の周知徹底(1910.1200)

故意、重大、または反復のカテゴリーに入るのはこの基準の半数以下だが(2つに1つがリスト中の健康基準であり、全体的な違反のリストの上位にある)が、そのかなりの頻度のために、この「もっとも重大な」災害の3位に入っている。多くの違反告知は重大な災害についてであり、その他の多くとは異なっている。「化学物質には、皮膚の刺激になるものもあれば、癌を引き起こすものもあります」と、OSHAのフェアファックスは言う。

この基準に違反したための違反告知の中でも、OSHAは最近、ジョージア州ローレンスビルのスペシアルティ・フィクスチャーズ社に対し、安全衛生の違反のために155,000ドルの罰金を提示した。これには、危険物質使用について従業員に適切に知らせなかったり、訓練を怠ったことによる故意の違反が含まれる。


4 機械の安全ガード――一般(1910.212)

「私たちが見る大半の(基準に対する)違反告知は、労災の結果です」とタイソンが言う。事業者たちは、労働者が必ず問題に気づいて、安全装置をはずさないようにする必要がある。また、事業者たちは、機械が古いために「わざわざ安全装置を設計する気になれない」のかどうかを突き止める必要がある、とリンハードが強調する。彼女は、「OSHAが機械の安全装置に非常に厳しいことは秘密ではありません」とも言っている。


5 ロックアウト/タグアウト(1910.147)

この基準は、メンテナンス作業者がその作業をしている間には、設備の運転を一時的に停止するよう事業者に求め、あるいは最低でも機械をまず最初に止めるべきであると警告している。

「誰もそれを理解してくれません。すべての機械に、そのひとつの機械を一時停止するための特定の手順があると思われ、ほとんどの人がそれを行いません」とタイソンは主張する。それが実施できなければ危険の可能性がある。しかしながら、重大な違反と全体的な違反の比率が低いことから、違反告知されている事項の多くは文書措置の手落ちのためであることを示している。

そうであっても、中でもロックアウト/タグアウト違反による「本格的な」違反告知によってOSHAから最近指弾された事業者にはヤルコ・プロセッシング社があり、2000年1月に同社のマサチューセッツ州ウォーターバレーの鳥肉精製工場で不幸な事故があった後に105,000ドルが課された。OSHAによれば、犠牲者は、「フェザー・ホイッパー」と言う、鳥の羽を開く金属棒がついた機械にひっかかり、機械に引き込まれたという。


6 呼吸器の保護(1910.134)

この新たに改正された基準は、作業者に呼吸マスクの使用を求めることにより作業者を毒性のヒュームから保護するために設計されたもので、未調整リストの上位10項目の3位に入った。

身体検査などの新しい手順が必要であり、「何か新しいことがある場合には必ず、他にも遵守すべき責任があり、人はすぐにそれを理解できないのが普通です」と、LPAの次席総合顧問であるティム・バートゥルが言う。新しい基準や改良された基準、または新たな遵守指示があった場合には、「私たちの監査責任者がさらに詳細に調査します」とOSHAのフェアファックスが言う。

OSHAは最近、Morton International社が26個の重大な安全衛生違反で違反告知された。これには呼吸保護の不備が含まれており、同社のミシシッピ州モスポイント化学工場で作業者の死亡事故が発生した後、118,500ドルの罰金が提示された。


7 電気――配線方法、部品、および器具(1910.305)

この基準は器具(台所のコークマシンまで含む)の接地工事、配線、および絶縁などが対象となる。これはさらに多くの重大な違反やその他多くのそれほど重大ではない違反も生じさせる。

「接続ボックスのカバーをはずしたままにした人を見受けるのは、本当によくあることです」とリンハードは言う。電源ボックスの表面のプレートをなくしたり壊したりすると違反告知される可能性があるが、「誰かが近寄ってアウトレットに指を差しこまなければならず、怪我する可能性があります」と、フェアファックスは言う。

最近、ウエストバージニア、ホールタウンのリパブリック・ペーパーボード社の違反告知には、128,000ドルの罰金提示と35個の重大な違反が関連しており、これには電気配線やその他の電気上の事項に関する違反があった。


8 機械力――伝達装置(1910.219)

この基準は、ベルト、滑車、ギア、チェーン、および駆動軸などの動力を伝達する多数の器具に及ぶ。このようなユニットでは、作業者の毛髪、指、あるいは装身具がからまれる可能性がある。適切な安全処置が取られなければ、「引っ張りこまれる危険性が十分あります。そして一度そうなれば、どうにもなりません」と、リンハードは強調する。


基準に従うやり方に精通するには、折を見ては基準を改めて援用すること

OSHAは最近、ジョージア州セントメアリーのデュランゴ・ジョージア・ペーパー社を違反告知し、違反に対して158,500ドルの罰金を課した。この件ではあらゆる機械の部分のベルトや滑車の安全処置の怠り、ならびに機械の安全処置およびロックアウト/タグアウトの違反が対象とされたが、これは作業員が洗浄していた機械のローラーによってこの作業員の手が潰された後のことであった。


9 動力プレス(1910.217)

全国的な重点プログラムのもと、OSHAはこの基準の違反に関心を集中してきた。これはプログラムが自動車、家電、およびその他の部品のための金属またはプラスチックの部品を型抜きするプレスで手や指を切断する危険性まで対象とするためである。

「パワープレスは、適切な安全保護を行わない場合には特に、現場ではもっとも危険な機械のひとつです」と、UAWの安全衛生監督助手であるジム・ハウが言う。「安全策が取られないと、パワープレスで手を切り落とされる可能性があります。これは基本的に、直接の結果に結びつく危険なのです」と、米国鉄鋼労働組合の安全衛生監督であるミッシェル・ライトが言う。

「未調整」の上位10項目リストでは、この項目は1997年に22番で、1998年では5番となったが、それ以降は12番目に落ちている。これはおそらく警告を受けた事業主たちが基準を遵守した適切な業務を行っているためであるとOSHAのフェアファックスが述べている。ニュージーランドのパターソンのAMI プラスティクス社は、最近、11個の故意で重大な違反のためにOSHAにより違反告知され、罰金67,200ドルが提示されているが、これにはパワープレスの違反による無数の違反告知が含まれる。

この違反告知は、従業員が安全対策がなされないプレスで手をはさまれ、指6本が切断される結果となった後になされた。この違反では、プレスの作業ポイントを保護しなかったこと、プレス用の両手操作式押しボタン制御を行わなかったこと、およびプレスの点検を行わなかったことが挙げられる。


10 電気システム(1910.303)

この基準では、感電の危険がある場合や電気機器のまわりの作業場では、露出した機械の部品を保護するといった面を対象としている。「電気の危険にはみなさんを即座に死に至らしめるものもあれば、いくつかの段階を経るものもあります」と、米国鉄鋼労働組合のライト氏は述べる。

ニュージャージーのアルミ製バットメーカー、モダン・メタルズ社は、やはり労働者が電気ショックの被害を受けた機械の修理をしなかったことによって、厳しい違反告知の対象とされ、OSHAの怒りを買ったのであった。



この記事の出典National Safety Council発行「Safety+Health」は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。