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スリップ、つまずき、墜落・転落災害に関する調査結果について
From research to reality on slips, trips, and falls
Wen-Ruey Chang

資料出所:Elsevier Science発行 「Safety Science」 Vol.40, Issues 7-8, 2002年秋号, p.557-558
Sience Direct

(仮訳:国際安全衛生センター)



要約

 スリップ、つまずき、墜落・転落は深刻な問題である。スリップ、つまずき、墜落・転落による傷害が原因となって発生した実質的な損害に関する報告が、アメリカ、イギリス、フィンランド、スウェーデンなど、世界各国から寄せられている(Manning(マニング)とその他、 1988;Grönqvist(グロンクヴィスト)とRoine(ロワイネ)、 1993;Leamon(リーモン)とMurphy(マーフィー)、 1995;全米安全評議会(NSC)、1995;Kemmlert(ケムラート)とLundholm(ランドホルム)、1998)。スリップ、つまずき、墜落・転落が、アメリカにおける不慮の事故によって救急科を訪れた患者数の21%を占めていることも意外なことではない(全米安全評議会(NSC)、1998)。

 Courtney(コーテニー)とWebster(ウェブスター)の最近の研究報告(1999)によると、スリップと墜落・転落は、身体障害を招く深刻な労働災害の主因となっている。アメリカにおけるスリップ、つまずき、墜落・転落による労働災害にかかる直接的なコストは、年間およそ60億ドルを上回っていると推定される(Courtney(コーテニー)ほか、 2001)。 そして、最近の出版物(Cotnam(コットナム)ほか、 2000)によると、同一平面での転倒事故と、高所からのスリップや墜落・転落事故との間で、労災保険給付額と給付請求件数の割合は、1993年から1998年までの間で際立った変化をとげていないことが判明した。

 スリップ、墜落・転落による傷害のほとんどが、高所からの落下事故によって発生しているという一般的な認識がある。しかし高所からの墜落・転落は、概して高額な労災保険給付額と重度の身体障害を引き起こしているものの、スリップ、墜落・転落に関連するすべての給付請求件数のわずか35%にすぎない。一方、同一平面での転倒は、請求件数の65%を占め、給付額は、スリップ、墜落・転落を原因とする労働災害による労働者への直接補償額の55%を占めている。

 2000年8月4日、国際エルゴノミクス協会(International Ergonomics Association)が三年毎に開催する会議の第14回大会が、米国カリフォルニア州サンディエゴで開かれた。『Safety Science』の本特集号に掲載されている論文の多くは、国際エルゴミクス協会の第14回大会席上開かれた「スリップ、つまずき、墜落・転落事故に関する国際シンポジウム」で発表された内容である。本特集号に掲載されている論文は、『Safety Science』の出版基準に合わせ、シンポジウムで発表された論文原稿に加筆し、内容も充実させている。

 10ある論文の内訳は以下の通りである。3つが人間の歩行について、2つがスリップメーターの評価について、1つが床の表面のの測定について、1つが履き物の評価について、1つがプッシュ・アンド・プル作業について、1つが機械類へ近づく通路の評価について、1つが床の表面の汚れについてそれぞれ論じている。これらの論文内容が関連する学問分野は、摩擦学、生物力学、精神物理学、心理学、疫学と広範囲に及ぶ。論文の多くは研究室で行われた実験結果をまとめたものだが、なかには現場で実験し、その結果を現場に応用しているものもある。

 これらの研究論文は、スリップ、つまずき、墜落・転落による事故の複雑さとその誘因について、我々がどれほど多くのことを学んでいかばなければならないかを物語っている。これらの論文が、事故を防止するために効果的に対処できるような豊富な知識をもたらし、この分野での研究活動を活発化させる触媒になってくれることを期待する。

 特集号に寄稿してくれた著者各位のご尽力に深く感謝したい。Hale(へイル)教授とSuokas(スウォカズ)教授のあたたかな思いやりとお力添えには、特に感謝の意を表したい。そして、都合により匿名で論評を寄せてくれた人々にも深く感謝している。このような方々の協力なくして、この特集号の発行は実現しなかったであろう。



本文は省略しabstractのみ紹介していますが、