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国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > アメリカ フロントガラスの取り付け作業で腰、肩などに障害のおそれ−NIOSH報告書
フロントガラスの取り付け作業で腰、肩などに障害のおそれ
NIOSH報告書

資料出所:BNA発行「Occupational Safety and Health Reporter」30-5
(訳 国際安全衛生センター)


 自動車のフロントガラスの交換作業を行っている労働者は、腰、肩、肘などへの障害のおそれがある、と米国の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が1月に出した報告書が指摘している。

 セイフライト自動車ガラス会社のカリフォルニア州にある工場の労働者は、非常に重い資材を持ち上げたり、フロントガラスの取り外しや取り付けの際に不自然な姿勢をとるため、首や腰の障害に苦しんでいると訴えている。労働者らはひそかにNIOSHに対して、作業場における健康上の危険について評価を行ってほしいと依頼した。

NIOSHの研究者は1998年9月に、シンシナティにあるセイフライト工場を2回にわたって訪れ、危険性の評価を行った。その報告書によると、労働者は別の施設での評価にも同意した。労使双方とも、セイフライト工場ならどこでも作業条件は同じだと認めたからである。

 セイフライト自動車ガラス会社はオハイオ州コロンバスに本社を持つ、全米規模の交換用フロントガラスのサプライヤーである。約6,900人の労働者の半分が800を超える事業所でガラスの取り付け作業に従事している。労働者一人が年間に平均1,200枚のガラスを取り付けている。一部の労働者は工場で働いているが、移動作業車で作業を行っている者もいる。

 報告書によると、同社には社内の安全衛生委員会もなく、定期的な安全会議も開いていない。しかし、同社は「障害の発生率を引き下げ、労災補償のコストを減らすために、損失管理エージェントと契約を結んでいる」という。

 NIOSHはNIOSH改正リフティング計算式を使って人間工学的なリスクを評価し、作業における資材の持ち上げにともなう物理的荷重を測定した。またミシガン大学の三次元静的強度予測プログラムを使って、持ち上げ作業をモデル化した。さらにひずみ指数を使って、反復的な上肢の作業について、上肢末端筋骨障害の潜在的リスクを推定した。研究者は工場内をはじめ、移動設備での取り外し、取りつけ作業を観測し、ビデオテープに収めた。


勧告

 NIOSHは取り付け作業によって腰、肩、肘、上肢末端に障害が起きる危険性があることを発見した。NIOSHによると、リスクはフロントガラスの重量が重くなるほど、また取り付け回数が増えるほど高くなっている。

報告書によると、首、肩、腰の障害は「取り付け工の場合、オハイオ州内の他のセイフライト工場労働者よりも、ずっと危険が高いが、取り付け作業以外の労働者にも高い率で障害が発生し、労働時間の損失を招いている」という。また報告書は 「取り付け工は出来高払いの賃金体系になっているため、賃金体系の違う労働者よりも多くの仕事をしたがる傾向がある」と述べている。

 NIOSHは会社が車両から古いフロントガラスを取り外し、交換部品をフレームに取り付けるために、巻き上げ装置を導入するように勧告している。この装置では、電子的に制御されたアームが吸い付け装置でガラスを持ち上げたり、おろしたりすることができる。


 NIOSHはさらに、会社に次の事項を勧告した。

  • 労働者が車の内部からシールを切断する際に、フロントガラスを持ち上げるための工具を開発する。そうすれば 「労働者が自分の頭でガラスを持ち上げないでもすむ」。
  • 会社内、地域、工場などを単位として、定期的な安全衛生会議を開催する。
  • 化学品を使っている間は、十分な換気を行う。
  • すべてのOSHA200ログ(訳注:OSHAが定めた作業場におけるけがや疾病の自主的記録様式)を本社レベルに提出させ、分析と対策に役立てる。
  • ガラスの取り外し作業の際には、労働者に保護めがねを使用させ、下塗りをしたり、割れたガラスを扱う際には保護手袋を使用させる。


NIOSHの危険評価・技術支援部は、事業者や労働者代表の要請があれば、作業場における潜在的な衛生上の危険について、現場調査を行っている。報告書は労働者や事業者の代表者に送られるが、NIOSHでも入手できる。

http://www.bna.com