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労働法の労働安全衛生に関する規定を詳細に定める
1995年1月20日付政令第06/CP号

資料出所:NGUYEN DINH THIEM発行「Occupational Safety and Health Legislation in Vietnam」
(訳 国際安全衛生センター)


原文(英語)はこちら(労働傷病兵社会省へのリンク)


政府は、

1992年9月30日発布の行政機構法、並びに、1994年6月23日発布の労働法に基づき、労働傷病兵社会大臣及び保健大臣の提案により、下記の通り定める。

第T章 
適用対象及び適用範囲

第1条 労働安全衛生規則の適用対象と適用範囲は、ベトナム領土内に所在する、労働力を雇用するすべての組織と個人、すべての公務員、公営企業の被用者、並びにベトナムの領土内に所在するすべての経済活動及び経済セクター、軍隊、外国の事業体・組織・事業所及び国際機関で働く、訓練生・実習生・試用期間中の者を含むすべての労働者とする。

第U章 
労働安全衛生

第2条 労働法第96条第1項に言及された労働安全衛生を確保するための措置に関する立証済調査を、下記の通り定める。
1.厳重な労働安全衛生措置を必要とする機械、設備、材料、物質の生産、使用、保守、貯蔵、備蓄に供する建物・敷地の建築、拡張、改修に先立ち、投資家及び事業者は、労働安全衛生を確保するための措置に関する立証済調査を提出しなければならない。

立証済調査は、下記の内容を含むものとする。

  • 所在地、寸法、並びに近隣の住居地域及び他の建物との距離

  • 危険かつ有害な要素、工事中の災害の危険性、予防及び救済措置

  • 立証済調査は、労働安全または労働衛生を所管する国家監督局並びに他の関係政府部局の承認を受けなければならない。

2.労働安全衛生を確保するための措置の実施に際しては、承認された立証済調査に従うものとする。

第3条 労働法第96条2項に言及された労働安全衛生基準の遵守を、下記の通り定める。

1.労働安全衛生基準は、法的拘束力を有する。事業者は、国家及び産業の労働安全衛生基準に基づき、機械、設備、材料の各種類に関する労働安全衛生ルール、並びに作業場の労働安全衛生ルールを制定しなければならない。
2.厳重な労働安全衛生措置を必要とする異なった種類の機械、設備、材料、物質の輸入については、貿易省が労働安全または労働衛生を所管する国家監督局と協議、合意のうえ、承認しなければならない。

第4条 労働法第97条に言及された有害要素にさらされる作業場は、下記の規則に従わなければならない。
1.かかる有害要素は、少なくとも年1回、点検及び測定しなければならない。
2.異常事態を発見した場合には直ちに、点検及び是正措置を実施するものとする。
3.規則に従い、記録を作成するとともに追跡監視を実施するものとする。

第5条 労働法第100条に言及された労働災害を引き起こす可能性のある危険かつ有害な要素を保有する作業場に関し、下記の通り定める。
1.薬品、包帯、担架、ガスマスク、救急車など適切な技術的設備及び医療設備を常備するものとする。
2.災害に備え、準備を整える。
3.緊急時救護班を常駐させる。
4.緊急時救護班及び労働者は、定期的に訓練を受けるものとする。
小規模事業体の場合、事業者は、自らの努力もしくは近隣の事業体及び現地救援サービスとの共同の努力によって緊急事態と災害に対処するものとするが、作業現場に救急用具を備えるものとする。

第6条 危険かつ有害な作業に従事する労働者は、労働傷病兵社会省の定めた基準に適合する保護衣及び保護具を十分に支給されなければならない。

第7条 労働法第102条に言及された定期健康診断及び労働安全衛生講習を、下記の通り詳細に定める。
1.労働者は、訓練生及び実習生を含め、少なくとも年1回の定期健康診断を受けるものとし、重労働または有害な作業に従事する労働者は、少なくとも6カ月に1回の定期健康診断を受けるものとする。
 健康診断は、公衆衛生サービスによって実施されるものとする。
2.訓練生及び実習生を含む労働者は、就業に先立ち、労働安全衛生に関する基準及び規則について指導と講習を受けなければならない。
 その後、各労働者に割り当てられる作業に応じて要求されるところに従い、労働者は労働安全衛生を確保するための適切な措置に関する講習及び指導を受けなければならず、また、その作業遂行に当たり厳重な監督下に置かれなければならない。
 労働安全衛生に関する特別な講習を受けておらず、安全衛生講習履修証明書を交付されていない労働者の雇用は、固く禁じられる。
 講習の編成及び実施は、労働傷病兵社会省の指導の下で行うものとする。

第8条 労働法104条に言及された手当の現物支給を、下記の通り詳細に定める。
1.現物手当は、労働傷病兵社会省及び保健省によって定められた数量及び構成に従って提供されるものとする。
2.現物手当は、交替勤務中に作業現場において手渡されなければならない。
3.現物手当に代わる現金払いは、禁止とする。

第V章
労働災害及び業務上の疾病

第9条 労働法第105条に言及された労働災害に関する事業者の義務を、下記の通り詳細に定める。
1.負傷者に対し、作業現場で応急手当及び救護を速やかに施すとともに、負傷者を直ちに医療施設に搬送する。
2.死亡労働災害の場合、もしくは数名の重傷者を伴う災害の場合、災害現場を保存するとともに、現地公安当局及び国家労働安全監督局に直ちに届け出るものとする。

第10条 労働法第106条に言及された業務上の疾病の罹病者に関する事業者の義務を、下記の通り詳細に定める。
1.業務上の疾病の罹病者は、特別な治療法による治療を受けるものとする。
2.療養後、業務上の疾病の種類に応じ、罹病者は少なくとも6カ月に1回健康診断を受け、特別な療養記録を保持するものとする。
 記録の作成及び医療調書の作成に関する規程は、保健大臣が発令するものとする。

第11条
1.事業者は、労働法第107条3項の規定に従い、労働災害の死傷者及び業務上の疾病の罹病者に補償を支払う責任を有する。
2.労働法23条2項に言及されたところに従い、訓練生または実習生が、後日、当該の事業体に雇用され、それらの者の訓練期間中または実習期間中に労働災害が発生した場合、事業者は、就業能力が81%以上減損した者に対し、または自らの過失によらない労働災害の結果として死亡した者の親族に対し、少なくとも30カ月分の最低賃金にに相当する補償を給付するものとする。労働災害が訓練生または実習生の過失によるものである場合であってもなお、その者は少なくとも12カ月分の最低賃金に相当する手当を支給される。

第12条 労働法第108条に言及された労働災害及び業務上の疾病の事例に係る調査、記録及び統計の作成、届出を、下記の通り詳細に定める。
1.労働災害が発生した場合、事業者は事業体の労働組合の運営委員会代表者の参加を得て調査を実施し、記録を作成するものとする。
 報告書には、災害の過程、死傷者、被害、原因、災害を引き起こした過失及び責任を詳述するとともに、事業者及び事業体の労働組合の執行委員会代表者の署名を付すものとする。
2.労働災害及び業務上の疾病のすべての事例は、労働傷病兵社会大臣及び保健大臣の発する規程に従って宣言され、関連統計に含められ、報告されなければならない。

第W章
事業者及び労働者の権利と義務

第13条 事業者は下記の義務を負う。
1.労働安全衛生の確保及び労働条件改善のための措置に係る計画を、事業体の生産及び業務の年間開発計画に盛り込む。
2.労働者に対し、十分な個人用保護具を提供するとともに、法及び規程に従って労働者の労働安全衛生を確保するための他の措置を講じる。
3.規程、作業ルール、事業体における労働安全衛生を確保するための措置の実施を監督する安全衛生管理者を配置するほか、労働者の安全衛生代表者のネットワークを設置、維持するために事業体の労働組合と調整連絡をとる。
4.国家基準に準拠して、異なった種類の機械、設備、材料について労働安全衛生の適正なルールと手順を制定するとともに、技術、機械、設備、材料、作業場に変更があった場合には、かかるルールと手順を適宜制定する。
5.労働安全衛生を確保するための基準、規程、措置について、労働者に教育及び講習を施す。
6.国の基準及び規程に従い、労働者に定期健康診断を実施する。
7.労働災害及び業務上の疾病のすべての事例の宣言並びに調査に係る規程を厳重に遵守するとともに、労働傷病兵社会省地方当局に対し、事業体の労働安全衛生の現況に関する半期報告及び年次報告を適正に提出する。

第14条 事業者は下記の権利を有する。
1.労働安全衛生を確保するための規程、作業ルール、措置を労働者に守らせる。
2.労働安全衛生に係る規程、作業ルール、措置を適正に遵守した労働者を表彰し、報奨を与えるとともに、遵守しなかった労働者を処罰する。
3.労働安全衛生に係る規程、作業ルール、措置を実際には適正に遵守しているにも係わらず、労働安全監督官または労働衛生監督官によって違反の決定が下された場合、再審査を管轄当局に上訴する。

第15条 労働者は下記の義務を負う。
1.自らに割り当てられた作業または仕事を遂行している間は、労働安全衛生に係る規程及びルールを遵守する。
2.作業場において、支給された保護衣及び個人用保護具並びに他の保護設備を使用、保守するとともに、かかる保護衣、個人用保護具、保護設備を紛失ないし破損した場合には、賠償する。
3.労働災害または業務上の疾病の危険性、あるいは危険有害性について、担当者に遅滞なく届け出るとともに、事業者の指揮の下、救急活動及び災害の結果を克服するための復旧活動に参加する。

第16条 労働者は下記の権利を有する。
1.安全かつ健康な労働条件を保証し、労働条件を改善し、十分な個人用保護具及び訓練を提供し、労働安全衛生を確保するための措置を講じるよう、事業者に要請する。
2.生命または健康に差し迫った重大な脅威を与えることが明白である作業を遂行することを拒否するか、もしくはかかる作業現場を離れるとともに、直接の担当者に直ちに届け出る義務を有し、また、その危険が取り除かれない場合には、当該の作業現場に戻ることを拒む。
3.事業者が法及び規程の条文に違反した場合、あるいは労働契約または労働協約において約束された労働安全衛生に係る事業者の義務を適正に履行しなかった場合、管轄当局に不服を申し立てるか、告発する。

第X章
国家機関の責務

第17条 労働法第95条2項に言及された労働保護及び労働安全衛生に関する国家計画策定について、下記の通り詳細に定める。
1.労働傷病兵社会省及び保健省は、関係各省庁と共同で、労働保護及び労働安全衛生に関する国家計画を策定するとともに、同計画を政府に提出するものとし、他方、政府は同計画を承認のうえ、経済社会開発計画に盛り込むものとする。
2.労働傷病兵社会省は、国家計画委員会及び財務省と共同で、承認された労働保護及び労働安全衛生に関する国家計画に基づき、国家予算に含めるべき同計画の予算を毎年編成する。

第18条 首相は、首相の諮問機関として機能するとともにあらゆる下部組織及びレベルの労働安全衛生問題に係わる活動の調整者として機能する労働安全衛生国家委員会を設置するものとする。かかる国家委員会の構成は、首相が決定するものとする。

第19条 労働法第180条及び181条に言及された国家労働安全衛生管理を、下記の通り詳細に定める。
1.労働傷病兵社会省は、労働保護及び労働安全衛生に関する法令並びに政策を策定するとともに公布のためにそれらを所管当局に提出する責任もしくは自ら公布する責任を有し、労働安全に関する国家基準制度及び労働条件に基づく職業分類基準の決定、公表、画一的運用を行う責任を有し、あらゆる下部組織とあらゆるレベルにおける施行に向けて指示を出す責任を有し、労働安全監督を実施する責任を有し、労働安全衛生に関する情報制度及び講習制度を編成し、諸外国及び労働安全分野の国際機関と国際協力を実施する責任を有する。
2.保健省は、労働衛生基準制度並びに職業及び作業の衛生条件を決定、公表、画一的に運用する責任を有し、あらゆる下部組織とあらゆるレベルにおける施行に向けて指示を出す責任を有し、労働衛生監督を実施する責任を有し、健康診断及び業務上の疾病の治療を企画編成する責任を有し、諸外国及び労働衛生分野の国際機関と国際協力を実施する責任を有する。
3.科学技術環境省は、労働安全衛生における科学技術的研究及びその応用を画一的に運用する責任を有し、個人用保護具の基準を作成する責任を有し、労働傷病兵社会省及び保健省と共同で労働安全衛生の国家技術基準制度を策定、制定、画一的に運用する責任を有する。
4.教育訓練省は、総合大学、単科大学、技術学校、職業学校、経営学校のカリキュラムに労働安全衛生に係る主題を盛り込むよう指示を出す責任を有する。
5.他の省及び下部組織は、労働傷病兵社会省及び保健省の書面による同意が得られた場合、産業労働安全衛生基準制度を策定するものとする。
6.放射線作業、石油・ガスの探査及び開発、鉄道・水上・道路・航空輸送の分野、並びに軍事施設における国家労働安全衛生管理は、各所管省が労働傷病兵社会省及び保健省と共同で担当する。
7.中央政府の支配下に置かれる州(province)及び都市の人民委員会は、それぞれの管轄地域内の国家労働安全衛生管理を実施するとともに、労働条件の改善を目指して労働安全衛生を確保する目標を設定し、それぞれの管轄地域の経済社会開発計画及び予算にその目標の編入を求める。

第Y章
労働組合の役割

第20条 ベトナム労働総連合は、労働保護、労働安全衛生に関する国家プログラムの作成、並びに労働保護及び労働安全衛生に関する科学研究計画、法制、政策、規程の策定に参画するものとする。

第21条
1.労働組合の組織は、労働傷病兵社会省各局及び保健省各局と共同で、労働安全衛生に係る法及び規程の国家管理並びに実施の指揮統括と監督に参画すると共に、労働災害の調査に参加する。
2.事業体内の労働組合組織は、労働安全衛生に係る規程及びルールを厳密に守るよう労働者を教育、動員する責任を有するとともに、事業体内で労働安全衛生を確保するために労働者運動を組織し、労働者の安全衛生代表者のネットワークを設置、維持する責任を有する。

第[章
施行規定

第22条 本政令は、1995年1月1日に発効する。この日付以前に施行されていた労働安全衛生に関する規定のうち労働法及び本政令の内容に反するすべての規定は、本政令により無効とされる。

第23条 労働傷病兵社会大臣及び保健大臣は、本政令の実施のための指導を行う責任を有する。

第24条 各大臣、省と同格の機関の長、政府部局の長、中央政府の支配下に置かれる州・都市の人民委員会委員長は、本政令を執行する責任を有する。

政府代表
首相 Vo Van Kiet



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