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国立労働保護研究所の設立から発展に至る30年の軌跡

資料出所:National Institute of Labour Protection of Vietnam
- CIS/ILO Collaborating Centre (NILP)発行
「Newsletter」2001年9月号
(訳 国際安全衛生センター)


1. 組織構成

労働保護はベトナム国の社会経済成長政策のひとつに数えられ、ベトナム共産党大会期間中に、労働安全衛生および労働者の健康確保を目的とする党の文書によって毎回確認されている。

労働安全衛生の確保という問題の解決を目指す科学的基盤を築くため、ベトナム民主共和国政府評議会(現ベトナム社会主義共和国政府)は1971年5月1日、国立労働保護研究所(NILP)設立を目的とする82/CP法を制定、ベトナム労働組合全国連盟(現ベトナム労働総連合:VGCL)の手にNILPの運営を委ねた。NILPの本部事務所はハノイ市のYet Kieu通り1にあったが、2000年にハノイ市Thanh Xuan、Nguyen Trai通り216に移転した。

国家統一後の南部の労働保護の要請に適切な時期に応えることができるよう、NILPのもとに2つの部門が確立された。それは

−ホーチミン市の労働保護科学技術副研究所(1977年5月1日設立)、ホーチミン市Cach Mang Thang Tam通り85

−ダナン市の労働保護科学技術副研究所(1979年5月1日設立、1988年8月から労働保護科学技術研究応用センターに改変)、ダナン市Trieu Nu Vuong 178

1990年以降、VGCL事務局(現VGCL常設委員会)は労働保護事業に関する全国的な公的運動および労働組合活動をVGCLが指導するにあたりNILPに諮問機関としての役割を義務づけた。また、VGCLが法規制に則った労働保護関連の法律や政策の実施を管理・監督する際にNILPが支援することも定めた。

ベトナムの工業化・近代化の時期における国家的要請と実質的な施設の能力、NILPの科学担当職員の質を考慮し、首相は1998年8月1日、決定第141/1998/QD-TTg号を成立させ、NILPを国家が投資し育成をはかる国家の指導的機関として認定した。さらに、この法律によって、首相は新たな時代における労働保護の科学技術面の発展にNILPが適切な時期に対応できるよう同機関の機能と任務の増強をはかった。

設立から発展にいたる30年間を振り返ると、開設当初は19人の職員と貧相な研究所設備しかなかったものが、今や科学技術事業を遂行するための充実した設備を持つNILPの研究システムで196人の正所員が働いている。その内訳は、30人の大学院課程修了研究員、5人の教授、130人のエンジニア、医師、理学士などで構成されている。

2. 科学技術活動

国家およびVGCLより課せられた任務を完遂するため、NILPは国内だけでなく日本、オーストラリア、ベルギー、スウェーデンその他の国々の科学者、研究所、大学などの個人・機関との共同作業を有効に進めている。

NILPの科学技術活動の成果

−設立から最初の10年間、NILP は研究職員の強化をはかりつつ、VGCLが政府と共同で労働保護に関する規制、政策、標準、規範を設定するに当たって、数多くの研究課題を実行しベトナムの労働安全衛生の実状を評価することで力となった。−1981年から1990年にかけては、NILPは19の国家レベルの課題を盛り込んだ国家的な労働保護に関する58.01号高度科学技術プログラム(1981年〜1985年の5カ年)および16の国家レベルの課題を盛り込んだ国家的な労働保護に関する58A号高度科学技術プログラム(1986年〜1990年の5カ年)を構築し、成功裏に実行した。こうしたプログラムを実行するために、全科学担当職員はもとより、NILPは19の省、産業、および全国の各地方に属する80もの研究機関、大学、生産に携わる企業から500人を超える科学者、技術者、労働者を招請した。

−1991年から2000年にかけては、NILPは5項目の課題を遂行し6項目の国家レベルの課題実行に参加した。また、252項目の省・産業界・各種機関レベルの課題、ガソリンおよびグリースへの耐性を持つ履き物・ブーツ類、工業用ファン、S型ウィング装備の2ウェイ冷却ファン、製造および実験室における有毒ガス処理設備、粉じんろ過装置および個人用保護具といった、労働保護製品の試作品を扱う6項目の課題を手がけ、また国と共同で労働保護に関する90項目の標準と規範を編集し刊行した。

−加えて、NILPは粉じん、有毒ガス、換気、熱、騒音、振動、放射、落雷、排水、照明および電気に関する安全・保護のため、研究、設計、製造を積み重ねて1400点もの労働条件改善措置の成果を上げ生産部門に適用した。

3. 労働保護に関する国家および指導的労働組合レベルの参加

−VGCLを支援し、直接42もの法律文書を作成したが、その中には以下のような重要な文書が含まれている。「労働保護の法的命令」(1991年)「環境保護法」(1993年)「労働法」(1994年)「労働安全衛生の詳細に関し労働法の一部条項の規定に関わる06/CP号布告」「社会保険に関する12/CP号布告」「労働災害調査指針に関する03/1998TTLT/BLDDT-BXH/TLDLDVN号共同回報」「企業・事業生産部門における労働保護措置実施の指針に関する14/1998TTLT/BLDDTBXH/TLDLDVN号回報」

−あらゆるレベルでVGCLおよび労働組合を支援し、労働保護措置実施の指針を示し点検を行う。

−1978年から進められ、1996年初に「緑と清潔と美−労働安全衛生の確保」へと発展的に引き継がれてきた「労働安全衛生の確保」運動を通じて労働保護措置をスムーズに推進するため公的運動の維持・発展をはかる。

4. 労働保護の科学情報、奨励と研修活動

職員・労働者全員を対象として労働保護に関する知識を構築し、奨励し、研修教育を施す。部門単位の労働保護の要請に遅滞なく応えるため情報技術の更新を、また国際的情報ネットワークとの統合をはかる。NETNAM、VISTA、SICNET、INFOTRAを通じて得られる情報を活用する。

−労働者および管理者向けに労働保護知識の研修講座、奨励、教育を編成する主要な機関となり、それぞれ関連の専門分野の修士、博士号を持つ参加者に教育・指針提示を行う。

−ベトナムにおける労働安全衛生の全国的情報ネットワークを創設した3者の一角を占める。

−ILOの国際労働安全衛生情報センター(CIS/ILO)との共同作業拠点。

−Labour Protection Review誌を毎月6000部発行

5. 諸外国との労働保護に関する科学技術面の共同作業

NILPはアジアおよび世界のUNDP、ILO、WHOその他の国際機関、研究所、大学、労働安全専門家との二国間、多国間の協力支援および交流を絶えず活用している。

−ILOはNILPを国際労働安全衛生情報センター(CIS/ILO)と共同作業を進める拠点と認めている。

−NILPは1994年にアジア太平洋労働安全衛生機構(APOSHO)の一員となった。

−日本のJISHAと研修活動および労働安全衛生情報について調整を協議する主要研究機関である。

−日本の専門家(労働省産業医学総合研究所(東京)、北九州市立大学国際環境工学部)との共同作業において6つの科学研究協力課題を成功裏に進める。

−100を超える外国の研究所、機関、個人と労働安全衛生に関する情報、科学的題材の交換を実施する緊密な協力関係を結ぶ。

6. 国とVGCLからの賞賛

NILPが掲げる労働保護という理念のための科学技術面の活動に示された部門単位および個人のめざましい業績に対して、VGCLおよび科学技術環境省は勲功証書、公共事業特許、個人および機関を対象とする創造的労働勲章などを授与した。特に国からは第ニ等労働勲位(Second Class Labour Order)(1981年)、第一等労働勲位(First Class Labour Order)(1991年)、第三等独立勲位(Third Class Independent Order)(2001年)が授与されている。