このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > ベトナム NILP NEWSLETTER 1998年8月号

1998年8月
ベトナム国家労働保護研究所−CIS/ILO協力センター


目次

所長:教授グイェン・アン・ルオン博士
   (Prof. Dr. Nguyen An Luong)

国家労働保護研究所(NILP)役員


所長:
教授グイェン・アン・ルオン博士(Prof. Dr. Nguyen An Luong)
次長:
ディン・ハン・トゥン博士(Dr. Dinh Hanh Thung

バック・クォック・キエン技師(Eng. Bach Qock Quyen)

グイェン・テ・コン博士(Dr. Nguyen The Cong)

レ・バン・トゥリン博士(Dr. Le Van Trinh)

グイェン・バン・クアン博士(Dr. Nguyen Van Quan)


ベトナム首相は国家労働保護科学技術研究所の機能ならびに職務についての機構再編及び追加業務に関する決定を法制化

1971年5月1日、つまり我が国がまだ戦時であった頃、ベトナム国家委員会(現ベトナム政府)は国家労働保護科学技術研究所 (NILP)創設にかかる決定を法制化し、これをベトナム労働総連合(VGCL = Vietnam General Confederation of Labour)の管理下に おいた。これはベトナム労働者の生活と健康に留意し、かつこれを保護しなければならないという党、政府、労働総同盟の大いなる 意志を反映したものであった。 以後、ほぼ30年間、ベトナム労働総連合のもと科学技術環境省(MOSTE = Ministry of Science, Technology and Environment)の科学 技術的な協力を得て、この研究所は大きく発展してきたと同時に、他の諸委員会や州、研究所、大学、産業界、労働組合などすべての 階層に対してもきわめて密接な貢献を果たしてきた。また、多くの科学者、労働者が労働保護に関わる2つの国家計画に携わってきた。 それらの国家計画には39のテーマと他の8件の国家計画が含まれており、同省はもとより各都市、諸委員会にわたる200件のテーマに 携わり、労働条件や環境の改善に関わる1,000件以上の企業への助成事業を行い、それぞれ異なるターゲットグループに対する数百の 労働安全衛生(OSH = Occupational Safety and Health)に関する研修(トレーニング)コースを主宰し、またOSH専門家育成のための 教育を行い、OSHに関する100件以上の国家基準を提唱してきた。 労働保護研究所は政府ならびにベトナム労働総連合から与えられた使命を十分以上に果たしてきたということができよう。 その創設から発展に至る現在までのあいだ、国家労働保護研究所は常に、UNDP(= United Nations Development Program、国連開発 計画)、国連世界保健機構)その他の国際機関との密接な協力関係を深め、情報交換を行い、またきわめて有益な援助を受けてきた。 国家労働保護研究所はCIS(= Centre International d’Information、ILO(= International Labour Organization、国連国際労働 機構)、WHO(= World Health Organization ons de Securite et d’Hygiene du Tavail、国際労働安全衛生情報センター)/ILO の協力センターのひとつであり、アジア太平洋地域労働安全衛生機構(APOSHO = Asian-Pacific Occupational Safety and Health Organization)のメンバーであると同時に、労働安全衛生に関するアジア太平洋地域情報ネットワークのメンバーでもある。現在、 国家労働保護研究所は5名の教授、21名の理学博士、132名の学士を含む多くの学識経験豊かなスタッフを擁している。 我が国のさらなる刷新と発展による要請の高まりに応えるため、特に産業化ならびに近代化の要請に応えるため、ベトナム政府は 科学技術に関する諸委員会の運営能力と潜在力を増さしめるべく機構の再編に関わる政策を打ち出そうとしている。この一般的な 政策を実施するにあたって、国家労働保護研究所の実際的な能力と過去数十年にわたる経験にしたがって、1998年8月1日、ベトナム 首相は国家労働保護科学技術研究所の機構再編と追加業務に関する決定第141/1998/QD-TTg号を法制化した。この決定によれば、国家 労働保護研究所は1996年10月24日付首相署名の決定第782/TTg号中に言及されている40以上の人民委員会(省もしくは省と同等の機関 及び政府機関に属する委員会)のリストにその組織を加えることとしている。 この機会に、我々はこのベトナム首相の決定第141/1998/QD-TTg号の内容を紹介しておきたい。

編集委員会





国家労働保護科学技術研究所の機能と職務の補足に関する首相決定

政府決定 第141/1998/QD-TTg号 
独立、自由、幸福の旗の下にベトナム社会主義共和国
於ハノイ、1998年8月1日

1992年9月30日発布の行政機構法を遵守し、科学調査ならびに技術開発に関する委員会ネットワークの機構再編に関する1992 年9月11日付内閣諮問会議議長(現・首相)決定第324/CT号及び、科学技術研究所の機構再編に関する1996年10月26日付首相決定第 782/TTg号にしたがい、かつ、国家労働保護科学技術研究所創設に関する1971年5月1日付国家諮問会議(現・政府)決定第82/CP号に したがい、ベトナム労働総連合、科学技術環境大臣、政府機構局総裁、所管大臣ならびに関係各員の提言に基づき、以下の決定を 行った。すなわち、
第1条
科学技術調査開発委員会の機構再編に関する1996年10月24日付首相決定第782/TTg号第1条第1項のリストに、国家労働保護 科学技術研究所を追加する。
第2条
国家労働保護科学技術研究所はベトナム労働総連合の管理下にあり、科学技術環境省の科学技術的行政指導に従う。
第3条
国家労働保護科学技術研究所は以下の職務を全うするものとする。すなわち、
  1. 政府命令による労働安全衛生に関する下記職務の履行。すなわち、
    • 労働安全衛生に関する科学技術的調査開発ならびにその適用。
    • 労働安全衛生、環境影響、労働者の労働条件等の指標設定及び指標評価作業ならびに労働安全衛生に関する基準策定作業への参加。
    • 労働保護に関する科学技術調査分野における要請の高まりに応えるための委員会の科学技術的潜在力の蓄積と開発。
  2. ベトナム労働総連合の指令になる下記職務の履行。すなわち、
    • 国家ならびに政府諸機関が行う労働安全衛生に関する政策、諸規定及び規則、法案策定にあたって、ベトナム労働総連合が参画 できるようにするための協力。
    • 労働組合組織内部における労働保護の組織機構、マネジメント、指針、監査監督に関わる方策の策定とその適用。
  3. 労働保護に関する認識と知識を普及徹底すべく、管理者、雇用主、従業員等に対する情報の提供、助言(コンサルテーション)、 研修(トレーニング)活動等を行うこと。要員の教育研修にあたっては政府規定にしたがって教育研修機関の協力を得ること。
  4. 政府規定にしたがった労働安全衛生ならびに労働環境保護の分野における国際機関への役務提供と協力関係樹立の履行。
第4条
国家労働保護科学技術研究所の正規職員は科学分野に算入する。正規職員の数は毎年政府機構局人事部門及び科学技術環境省 がこれをを定める。
国家労働保護科学技術研究所の経常予算には政府当局、ベトナム労働総連合その他からの予算が含まれる。
第5条
国家労働保護科学技術研究所の機構、組織は以下の通りとする。すなわち、
  1. 本部には所長と次長を置く。所長及び次長の任免はベトナム労働総連合幹部会が行う。 所長は、当該研究所の運営のすべてに関して、政府及びベトナム労働総連合の前面に立ってその責務を負う。次長は所長の委任 条項にしたがって所長を補佐する。
  2. 当該研究所の機構、組織、運営は所長が提案し、ベトナム労働総連合幹部会がこれを認可する。
第6条
本決定は署名後15日を経過した日から効力を発する。本決定にもとる従前の決定はこれを破棄する。
本決定に基づき、ベトナム労働総連合幹部会は総則にしたがって国家労働保護科学技術研究所の運営規則を法制化する。
第7条
ベトナム労働総連合幹部会、大臣、諸機関の責任者もしくは大臣と同格の長、政府所属の各種機関の長、国家労働保護科学 技術研究所所属の各州、各都市の人民委員会の議長は本決定の施行に責任を有する。

首相代行として、副首相 パム・ギア・キエム(Pham Gia Khiem)





近い将来における国家労働保護研究所の主な発展の方向

教授グイェン・アン・ルオン博士
ベトナム労働総連合副総裁 国家労働保護研究所所長

我が国の産業化、近代化に伴って、ベトナムの労働保護推進に寄与するべく、また政府から委託を受けた職務を十全に果たすべく、 国家労働保護研究所(NILP = National Institute of Labour Protection)は将来下記の方向に向けて発展していかなければならない。 すなわち、

  1. 我が国の産業化、近代化に伴う労働保護に関する国家の開発戦略形成に寄与し得る科学的な基礎についての調査研究を行うこと。
  2. ベトナムにおける主要産業が、将来その労働安全衛生に関わるアクションプログラムを企画立案することに参加し支援する。
  3. ベトナム労働総連合が政府に協力して労働保護に関する立法化する際に支援できる科学的基盤を研究する。法のもとに作られる 文書(政令、通達、指針など) の草案、コメント作成に参画する。
  4. 労働安全衛生に関する国家基準の編集に参加すること。
  5. あらゆる階層(国家、地方機関、省庁)における労働保護に関する科学的調査研究実施の任にあたること。その調査研究のテーマは 主として下記のアプローチによること。すなわち、
    • 労働安全衛生に関する現行の状況を評価、環境影響アセスメント(EIA = Environmental Impact Assessment)
    • 産業界におけるリスクアセスメント
    • 労働災害、職業病、環境汚染の原因になりうる各種リスクの処理、管理、予防に関する調査研究を行い、その対策をたてる。 特に化学安全。
    • 電気的事故、高所からの墜落、火災、爆発、塵や有毒ガス、騒音、放射線、光熱事故など異なる分野における綿密な調査研究を 行い、労働災害、職業病について対策を作る。
    • 労働保護の分野に人間工学を適用する調査研究。
    • ベトナム政府が補償を行う職業病のリストに付加すべき新規の職業病について調査研究し、提言を行う。
    • 就業時及び休業時における各種の問題ならびに就業時間以後の健康維持に関する諸問題を調査研究する。
    • 有毒、有害な危険作業、十分な注意が払われてなかった職業(農業、漁業、鉱業、建設など)、非政府部門、ジョイントベンチャー など外資分野の労働保護に関する調査研究、対策立案。
  6. 能力を向上・強化し、労働安全衛生に関する国内の情報ネットワークを有効に活用する。
  7. 国内のいろいろな場所、産業分野の種々のターゲットグループに対する労働保護のトレーニングの計画立案、資料整備、コースの 組織を行う。ベトナム国内における労働保護技術者の教育訓練に参画する。国家労働保護研究所(NILP)は学卒者に対して労働安全 衛生部門における国指定の修士及び博士等の学位を取得するための教育訓練を行う権限を有する組織となる予定である。
  8. ベトナム語及び英語による書籍、雑誌、報告、ニュースレターの発行を行う。
  9. 労働条件や労働環境の改善を行おうとする企業を支援するサービス、助言、契約による事業の提供を行う。企業、各種産業 ならびに国内諸州に提供するための個人保護具や労働保護機器の製作を行う。
  10. 国際協力を発展させ、強化し、ILO、WHOその他の諸国の科学技術に関する調査研究成果、情報交換を行うなど、協力関係を拡大 する。日本の大学や研究所等との労働安全衛生に関する共同研究を行う。労働安全衛生に係るILOプロジェクトを展開する。 化学物質データシートの翻訳を行い、これを配布する。ILO/CIS協力センターやアジア太平洋地域労働安全衛生機構(APOSHO)の メンバーとしての役割を果たす。




タイングイェン(Taynguyen)地域の労働者に対する労働安全衛生及び健康管理に関するワークショップ

国家労働保護研究所次長レ・バン・トゥリン博士

ベトナム中央高地の標高400mから700mに位置するタイングイェン地域はコントゥム(Kontum)、ギアライ(Gialai)、ダクラック (Daclak)、ラムドン(Lam Dong)の4つの州からなっており、総面積56,118km2のうち56.8%が森林で、11.2%が耕地となって いる。タイングイェンの人口は299万8,000人となっている。一年は雨期と乾期の2季からなる。もっとも寒い月(1月)の平均気温は 摂氏18.7度で、もっとも暑い月(5月)の平均気温は24.5度となっている。タイングイェンの主な経済活動は農業と林産品の製造業及び 林産業(ゴム、コーヒー、紅茶、クワの木、木材)である。 1997年12月8日から9日にかけて、プレイク(Pleiku)(ギアライ州)で、ギアライ地区労働組合の協力を得て、(ベトナム労働総連合の 管理下にある)国家労働保護研究所主宰による「タイングイェン(Taynguyen)地域の労働者に対する労働安全衛生及び健康管理に関する ワークショップ」が開催された。 このワークショップへは国家労働保護研究所とホーチミン市(Ho Chi Minh city)及びダナン市(Danang city)の同研究所下部組織から の主要科学者の他に、労働省、社会厚生省、科学技術環境省、警察省、ギアライ地区労働組合、コントゥム地区労働組合のマネジャー クラスらが参加し、総勢60名にも達した。また大学(タイングイェン大学)やタイングイェンの調査研究機関(ダラット = Dalat原子力 研究所、タイングイェン衛生学伝染病研究所等)から科学者も参加した。 ワークショップでは15件の報告が行われた。それらの多くはタイングイェン地域の社会経済開発、生産業、労働安全衛生に関連のある 様々な問題が取り上げられていた。地理、気候に基づくタイングイェンの特性を分析した後、それらの報告が一様に示していたこと は、森林開発の利点、森林活用の利点、コーヒーや紅茶、ゴム、胡椒などの植林産業の利点であったが、同時に、気温の高低差の大 きいこと、降雨や洪水の頻度の高さ、輸送手段の困難、戦争の余波である枯れ葉剤や爆弾の危険性、さらにはマニュアル作業等の 後方支援の不備など、多くの不利な点もあることが報告された。タイングイェン地域にとってはこれらはすべて物理的な障害でいかん ともなしがたいものであるが、報告ではさらに詳細な分析を行っていて、企業での労働保護に関するマネジメントや政策目標の実施、 対策立案の弱さや達成度の低さを指摘している。報告はまた、新しい時代の労働保護活動の推進、非政府部門の企業における労働保護 活動、産業化、近代化時代に入っての労働条件改善の提案、事故防止活動、労働保護の推進やそのための研修など啓蒙活動の点で、 多くの重要な問題点もあることを指摘していたのが目立つ。ワークショップでは、労働保護活動を効率的に実施し、かつ強化するには どうしたらよいかについて熱心に議論がかわされた。 閉会の際、ワークショップの成功に大きく貢献してくれた参会者への謝辞のあと、本ワークショップの議長を務めたベトナム労働 総同盟副総裁でかつ国家労働保護研究所長でもある教授のグイェン・アン・ルオン博士から、本ワークショップの意義を強調して、将来 のタイングイェン地域の労働保護必要性について、参会者の認識と相互理解を得られたことが報告された。ワークショップは労働保護 に関する政府への提案書起草や労働組合などあらゆる階層におけるマネジメント向上に大きく寄与することとなったと同時に、 タイングイェン地域の労働保護についての特殊な、かつ緊急に解決を要する問題の優先順位を確認した。 本ワークショップでは政府機関その他の労働組織、地方行政府当局、企業等に対し、政策の実施、科学的調査研究、研修活動の推進、 タイングイェン地域の労働者の健康管理ならびに労働保護活動を実施するための適切な予算措置等々の認識とその運用機構に関する 事項について、最終的に8件の提案書をへ上程することと なった。



ベトナムにおける化学安全管理と化学情報についての概説

教授グィエン・アン・ルオン博士
ベトナム労働総連合 副総裁 国家労働保護研究所 所長

化学物質はほとんどの製造産業、研究機関、大学はもちろん、様々な生活分野において広く用いられている。

現在入手できる資料によると、毎年世界中で約4億トンを越える化学物質が製造されている。化学物質には製造や社会生活サービスに 貢献する肯定的な側面もあるが、多くの化学物質は火事、爆発、環境汚染や資産への損害など大きなハザードを有している。有害化学 物質はまた、人間の健康にも大きな脅威となる。多くの労働者は軽度または慢性的な中毒に苦しめられており、慢性疾患やガンを含む 職業病は化学物質により引き起こされる。 I 化学物質の安全管理  化学物質の潜在的危険性の認識に基づき、国際社会や各国は化学的危険を最大限に削減・除去するため数多くの取り組みを行って いる。国際労働機関(ILO)は化学物質管理と化学物質の安全使用に関する様々な協定や勧告を採択・成立させている。また、 ILOと世界保健機関(WHO)、国連環境プログラム(UNEP)および世界中の国の機関は、世界的視野で協力・連携して国際化学物質 安全評価計画(IPCS)の実施に取り組んでいる。 化学物質の管理に関する国の概要書(National Profile)によると、ベトナムで1996年に生産、輸入された化学物質の総量は、 18,946,200トンで、その内8,186,000トンが輸出された。したがって国内で消費された化学物質は、9,080,000トンであり、その内訳は以下の通りである。
  • 化学肥料  3,290,000トン
  • 産業用化学物質  913,700トン
  • 農薬  27,500トン
  • 石油製品  4,071,000トン
  • その他化学物質  350,000トン
過去、特に国の改革実施時期、国の管理下における複数分野での市場経済の推進時期に、ベトナム政府は化学物質管理と安全に関する 国の基準と、法律、命令、規則および共同大臣通達を数多く発布し、化学物質の製造と使用の管理と、労働者や環境に対する安全衛生 の改善を確実にすることができるようにした。化学物質の安全管理は、国の環境に関するプログラムの活動の枠組みにおける優先的 計画と考えられており継続的に推進される。ベトナム政府は環境保護・化学物質に関する安全に関するプログラム、国際組織により 採用されたOHSに関する国際プログラム のみならず、協定や勧告の強く支持し、その実施に最大限の努力を払っている。 II化学物質に関する情報 大きな化学事故の発生は、事業者のみならず地域社会における化学物質に関する情報の欠如が原因となっていることが多い。従って 化学物質に関する情報は、化学物質の管理と安全において重要な役割を果たす。化学物質の管理と安全は化学物質関連事故の問題だけ でなく、それ以外の様々な継続的国の発展にも関連づけられ、それらのために必要とされる。情報は化学物質の使用・生産管理に 関する社会経済分野の正しい発展を生み出す上で、より正確な分析と判断を行う過程で役立つ。  科学物質のデータベースに関しては、ベトナムは現在、ディスクまたはCD-ROMに収められた数種の国際的化学物質のデータベースを 保有し、それらはコンピュータにインストールされている。
  • IRPTC化学物質データベース(11MB)は産業化学物質機関(Institute of Industrial chemicals)、産業省(MOI)、 労働環境衛生研究所(Institute of Occupational and Environmental Health)、保健省(MOH)、 植物保護研究所(Department for Plant Protection)、農業僻地開発省(MOARD,Ministry of Agriculture and Rural Development )、環境庁(National Environmental Department)、科学技術環境庁(MOSTE)で利用できる。
  • INTOX化学物質データベース(CD-ROM)は、産業化学物質研究所で利用できる。
  • FAO(国連食糧農業機関)からの農薬データベースは植物保護研究所、MOARDで利用可能。
  • 国家労働保護研究所(NILP)はコンピュータに有害化学物質のデータベースとILO/CISから提供を受けた化学物質への暴露限界 に関するデータベースをインストールした。これにはC-INFO(10MB)、EBデータベースとCD-ROMが含まれる。さらに、NILPは ベトナム国内で主に使用されている300種の化学物質の有害化学物質データシートに関するデータベースを作り上げた。NILPは 国内のOSHネットワークのためのライブラリを開設し、地域のインターネットプロバイダーのサーバーに(NETNAM)設置されている。 これらの化学有害物についてのデータベースはNETNAMに接続しており、VernetネットワークのNILPのホームページにアクセスする ことで利用が可能である。また、NILPは60の異なる化学物質に関する化学物質データシートを発行して、企業や、事業者、労働者 に配布している。
III結論
現在のベトナムでは、化学物質の管理と情報について多くの制約があり、全体的な発展継続および特定の化学物質の安全の見地から 出される要求に応えることができない。ベトナムは以下の必要的措置活動を迅速的に実施する。
  1. 全国の化学物質管理のための国の機関の設立を進める。
  2. 引き続き化学物質や化学製品の管理に関する法律文書を発布し、健康や環境に影響を与える有害化学物質を制限する。
  3. 化学物質・化学製品の管理対策が全国的に実施されるようにする。
  4. INCHEMやIRPTC、FAO、ILO/CISなどのベトナム国内で利用できる化学物質の国際的データベースを調べ、ベトナム語に翻訳する。
  5. 化学物質管理、有害化学物質、化学物質の持つ潜在的危険性、事業者や従業員が化学物質を使用する際の安全策・予防策について の認識を高めるための情報・教育活動を進める。
  6. 有効な化学汚染の抑制と処理、健康・環境保護対策を得るためのプログラム、プロジェクト、研究課題に取り組む。
  7. 世界中で広く使われている化学物質に関する情報交換のため、国際関係を進展・強化させる。UNEP、WHO、ILO、FAOなどの国際 機関や、スウェーデン、ドイツ、日本、オーストラリア、アメリカなどこの分野の先駆的・先進的な国の政府の支援、協力を 得る。








ベトナムにおけるOSH情報へのILO支援

Nguyen Ngoc Hoan
国家労働保護研究所情報部長

1980年代の後半から、UNDP/ILOの支援によるVIE/86/018プロジェクトの下、ILOはOSHの分野において、特にOSH情報活動支援として、 ベトナムに有効な支援を与えている。VIE/86/018のプロジェクト活動は、NILP内におけるOSH情報の分野における質と能力の向上に 貢献している。社会厚生省(MOLISA)内における国のCIS/ILOセンターを設立すると同時に、NILPの能力と情報活動における成果を 検討した結果、ILOは1992年、正式にNILPをCIS/ILOの協力センターとして認可した。 1990年代の初め、ILOはプロジェクトRAS90/M12/FINを通してOSHに関するアジア太平洋地域プログラムの推進に着手し、それはベト ナムを含むこの地域でのOSH情報の強化を狙ったものであった。主任技術アドバイザー(CTA)とプロジェクトの専門家は何度もベト ナムを訪れ、関連当局のベトナム人担当者と、プロジェクト活動の実施、ベトナムにおける国のOSH情報ネットワーク設立について コンサルタント活動を行った。ネットワークの主要な機関は、労働保護省(Department of Labour protection)、MOLISA、 NILPの三機関、すなわちVGCL、労働環境衛生研究所(IOEH)、保健省(MOH)である。これらの機関、特にNILPの尽力により、 ベトナムにおける国のOSH情報ネットワーク設立・運営に関する協力合意書への署名セレモニーと、上記三機関を含む助言委員会 (Advisory Committee)の設立セレモニーが、1996年2月、NILPにおいてDavid Gold CTAとPia Markkanenプロジェクト担当OSH専門家 の列席を得て開催された。合意書は、国のOSH情報ネットワークの原則・モデル・運営方法を定めた最初の法律文書である。これに 基づき、三つの主要機関はネットワークの導入のためのセミナーや会議を開催し、全国に及ぶOSH情報ネットワークの正式な設立に 向けてネットワーク会員の啓発を行う。 1996年11月、ILOとの合意に基づき、ベトナムを代表して、NILPはアジア太平洋地域のOSH情報ネットワーク機関の年次会議を Hanoiで主催した。この活動はOSH情報を国内に広めることに貢献した。1997年12月、MOLISA、MOH、VGCLとネットワークの会員組織の 代表による合同会議がHaoniで開催された。この会議の議長は、MOLISA副大臣のLe Duy Dong博士とVGCL副総裁であり NILP所長の教授Nguyen An Luong博士であった。この会議には、RAS/90/M12/FINプロジェクト担当の専門家である Karri Kurppa博士とPia Markkanen女史も参加した。2日間の作業の後、会議はネットワークの組織運営規約を採択し、正式にベトナム におけるOSH情報ネットワークの設立を発表した。これはベトナムにおけるOSHに関する情報活動の範囲・質の面で非常に重要な ステップであり、情報技術改革の促進に貢献し、OSH分野での地域的・国際的統合成し遂げる一方、国の開発戦略に合致している。

その後もILOは継続してNILPにベトナムを支援するための外部的協力契約を提供しており、OSH および環境保護分野における情報活動の可能性と能力の調査・評価、ホームページやデータベース、国内の OSH情報ネットワークの電子ライブラリの開設を支援している。NILPはILOの専門家と協力して、ベトナムにおけるアジア太平洋地域の OSH情報ネットワーク(EB)の電子ライブラリの開設・利用のためのアクセス向上、プロモーション、指導を行っている。さらに、 ILOはMOLISAやMOHと共同でOSH情報に関する数多くの研究会や研修を開催、その他の活動を行っている。

現在、珪肺症の撲滅のための国の実施計画作成のプロジェクトの枠組みに従い、ILO はNILPに珪肺症の撲滅のためのベトナムのOSH情報管理システム開発の国の戦略計画の作成を共同委託した。 ILOはベトナム当局と南ベトナムにおける地域のOSH情報ネットワーク設立の検討と、今年の年末にHanoiで開催される全国の全 OSHネットワークの年次会議の準備を進めている。 上記に述べたILOの活動は国内リソースの活用を奨励し段階的に技術更新を進め、OSH の情報活動における能力を高めるという好ましい環境を形成しており、OSH分野における地域および世界共通の発展との統合を目指 している。 OSH分野全般、特定のOSH情報に関するILOとベトナムとの協力が、ベトナムの労働者の安全、衛生、生活を確実にするという高次元の 目標のためにさらに推進されることを希望する。



Cuu Longデルタ地帯の労働者に対する労働安全衛生及び健康管理に関するワークショップ

Ngyen Van Quan博士
国家労働保護研究所 Ho chi Minh支部 労働保護部門部長

Cuu Longデルタ(メコン川デルタ)は、河川輸送が容易なため、自然資源、農業、林業、鉱業、および観光の経済の分野において 非常に大きな可能性を有している。Cuu Longデルタは面積約39,000平方キロメートルであり、全国の人口の22%がここに住んでいる。 主な生産物は、穀物と食料で、国内第一の穀物貯蔵庫となっている。 Cuu Longデルタの建設および継続的な開発過程において相当の注意を払うべき重要課題の一つは、労働安全衛生である。よって国家 労働保護研究所(NILP)は、Can Tho県の労働連合と共同で「Cuu Longデルタ地帯の労働者に対する労働安全衛生及び健康管理」に 関するワークショップを開催した。 ワークショップはCan Tho市において1998年4月11日に開催された。中央レベルの管理当局、研究機関、大学およびCuu Long デルタ地帯の県の労働連合、省庁、支部、企業の管理職、科学者、担当者約150人が出席した。 ワークショップでは、以下の重要課題に関する43の科学的調査論文が提出された。
  • 農業生産における労働安全衛生に関する法規の施行と認識の向上。
  • 農業生産、農業作物の加工、養殖、漁業、水産加工、産業樹木や果樹、野菜の栽培加工における労働安全衛生
  • 郊外地域への電力供給における電気に関する安全
  • 河川輸送の安全
  • 農業における化学物質の安全利用
ワークショップの最後には、VGCL副総裁、NILP所長であり、本研修会組織委員会の委員長である教授Nguyen An Luong博士が、この 地域における労働安全衛生の改善・確立に向けて重要とされる10課題を提案した。すなわち
  1. 産業、農業、国、民間分野におけるあらゆる対象、労働者および事業者の労働者保護に対する認識を高めるための活動をより 積極的に行うこと。
  2. 政府、VGCL、関係当局は、OSHに関する適切な法律文書を早期に作成・施行すること。
  3. 労働者保護に関する国の審議会を早期に設立すること。そこではVGCLと省庁間の協力体制を作るため、あらゆる階層における OSH委員会の設立を指導すること。まず最初に、県や地方機関は十分なOSH問題の処理のため、OSH委員会の設立を主導する。
  4. OSHについての検査や調査を実施する前に特別な企業の分類を行い、検査・調査を促進させること。
  5. OSH業務を担当する職員のOSHに対する認識・知識を高めるため、より詳しい情報研修活動を行うこと。Cuu Longデルタ地域を 担当する職員のための短期コースを計画、実施すること。
  6. Cuu Longデルタ地域向けのOSH実施計画を立てる場合は、農業、漁業、民間企業におけるOSHを重点課題とすること。
  7. 県の労働連合と企業は、Ho Chi Minh市の労働者保護の下部機関、地域の調査機関、科学技術環境省と協力して、Cuu Longデルタ 地域のための科学調査プロジェクトを実施すること。調査では特に環境衛生、浄水規定、水質汚染防止、および農業における 個人的保護具の使用を重点課題とする。
  8. Cuu Longデルタ地帯の労働者に特徴的な職業病を追加するための研究を行うこと。
  9. 「グリーン、クリーン、ビューティとOSHの確保」キャンペーンの宣伝を活動行い、このキャンペーンを農業生産分野で推進する こと。この活動における労働組合、農業団体の役割を明確にすること。
  10. OSHの紹介冊子のみならず、この地域の労働者の知識に合った研修資料を編集・配布すること。




「ベトナムの漁業、建設産業におけるOSH、労働条件、労働環境の改善」を目指すプロジェクトINT/95/M10/DAN実施結果の概要

Guyen An Luong
ベトナム労働総連合 副総裁 国家労働保護研究所 所長
NPD,INT/95/M10/DAN

1995年3月12日から8月12日までのベトナムにおける派遣期間中、ILOジュネーブ本部の労働安全衛生支部の技術協力責任者であった 専門家のKonstantin Novikov氏との協議・討議に基づき、漁業省、建設省の提案に従って、ベトナム労働総連合(VGCL)の下部組織 である国家労働保護研究所(NILP)は「ベトナムの一部産業における作業関連事故や職業病予防のための労働条件、労働環境改善の 研究調査・解決策の策定」というプロジェクト提案を作成し、デンマーク政府を通したILOのジュネーブ本部による財政援助を得る ため、ベトナム政府に提出した。 1996年1月2日、ベトナム政府は検討および実施にあたっての財政援助を得るため、上記のプロジェクトの提案書を含む書簡を ILOジュネーブ本部の労働安全衛生部長に提出した。 1996年10月30日、プロジェクト提案はILOのジュネーブ本部により受理され、NILPおよびVGCLに対し、プロジェクト番号 INT/95/M10/DANを付したプロジェクト書類「ベトナムにおける漁業・建設産業における労働条件・労働環境・OSH の改善」が発送された。 INT/95/M10/DANの提案書類およびその活動計画の受領後、直ちに国家労働保護研究所と政府の実施機関である VGCLは、ILOのジュネーブ本部およびバンコク支部のみならず漁業省、建設省と緊密な協力体制を作り、早急にこのプロジェクトの 実施に取り組んだ。現在、1996年-1997年分の計画活動は完了し、以下のような大きな成果を上げたることができた。
  1. プロジェクトの実施のための管理職員、サポート職員が任命された。それらには国のプロジェクト管理者(NPD, National Project Director)、国のプロジェクト事務長、国のコンサルタントや漁業省および建設省の特別委員会の委員も含まれる。
  2. 収集された情報・データに基づき、プロジェクトは120ページを越えるベトナムの漁業・建設産業におけるOSHに関するデスク・ レビュー・レポートを完成した。報告書は英訳され、ILOのジュネーブ本部およびバンコク支部に送られた。
  3. プロジェクトでは二つのILO研修資料をベトナム語に翻訳した。  
    • 「建設現場における安全・衛生・福祉」
    • 「より高い生産性とより良い作業場」
    これらの資料は企業や県、産業界に配布するため、多くの部数、2,500部が印刷された。
  4. NPDおよび国際的専門家の指導の下、漁業および建設分野のOSH特別委員会委員の協力を得て、プロジェクトは59の抽出企業/会社 における現地調査を実施、完了した。総質問数が1500に及ぶ二種類の質問表が作成され、労働条件と健康に関する調査のため上記に 記載された全ての企業・従業員に配布された。40人の特別委員会委員はそれらの測定と企業における OSH関連調査を行った。 この調査および企業での実地調査期間中、特別委員会の委員はビデオや写真での撮影を行い、 OSHの良い例、悪い例として約100枚のスライドを収集した。

    収集されたデータ・現地調査の結果に基づき、NPDおよび国際的専門家による積極的な指導の下、漁業および建設分野の OSH特別委員会は、ベトナムの漁業・建設分野におけるOSHに関する二つの調査報告書を英語とベトナム語で作成した。

  5. プロジェクトは5つの研修コースを開催し180人以上が参加した。(プロジェクトの作業計画に従い、4つのコースが開催され、 総数で100人が参加した。)研修コースの講義は、ベトナム人の指導的専門職員とILOの国際的専門家Niels Hjorth氏により 行われた。研修資料は各コース・対象グループに合わせて編集された。
  6. プロジェクトは漁業・建設産業におけるOSHに関する二つの行動プログラム試案を作成した。試案は最終案に反映させる意見を 得るため、省庁及び産業界に送付された。最終の行動プログラムは次回、漁業省、建設省によって正式に採用される予定となって いる。


    ベトナム労働総連合(VGCL)
    国家労働保護研究所(NILP)
    住所:No.1Yet Keiu ,Str.,ハノイ、ベトナム 
    電話:8.257293-8.25028
    FAX:(84.4)8246752





    このニュースレターのオリジナル(英語)は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。