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国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > ベトナム NILP NEWSLETTER 1999年9月号
OSH分野における科学技術的活動
日越共同研究プロジェクトの初回結果報告 VJCP.99.03



NILP所長代行 Le Van Trinh博士


1994年にNguyen An Luong博士および産業医科大学医学部衛生学教室(UOEH、北九州市)の松田教授らが中心となって着手した日越共同研究プロジェクトは、その後も定期的に計画・実施されている。これらの研究プロジェクトのテーマは、NILPが提示するベトナム国内産業における課題に基づいて決定されてきた。研究方法は日本側が提案し、現地調査および測定・分析は両者が共同で実施する。この共同研究により、各プロジェクトで得られる成果や研究方法の質が以前よりも遥かに向上した。

NILPは日本産業安全研究所の協力を得て「高輝度が労働者の健康に及ぼす影響の評価」プロジェクトを進める一方で、UOEHとは1999〜2000年にかけて別の共同研究プロジェクト「Quang Ninh炭鉱の環境が労働者と周辺住民の健康に及ぼす影響の評価」-VJCP 99.03を実施する。

採炭作業による環境汚染と労働者および周辺住民の健康との関連を調べるため、このプロジェクトでは炭鉱Coc6 (開放している炭鉱)を現地調査の対象とした。


調査方法:

  1. 採炭区域における作業環境汚染レベルの計測および評価。面接前のアンケートの配布と労働者500人の身体検査結果の評価。
  2. 調査する居住区域の選択:
    • 採炭によって深刻な影響を受けている区域から2〜3kmほど離れたCam Dung およびCam Donの2つの区域と、炭鉱で作業していない500人を調査試料として選択。
    • 炭鉱から10km離れ、採炭の影響が見られないVan Don島と、500人の漁民を調査資試料として選択。


炭鉱地域における環境アセスメントの結果から、炭じん、一酸化炭素および二酸化炭素の濃度が許容値の2〜20倍に達し、騒音レベルは許容基準を1〜3.5dB(A)超えていることが判明した。

炭鉱から2〜3km離れた居住区域の粒じん濃度は、採炭の影響により、許容値の3〜9倍(1.25 〜2.83 mg/m3)に達している。一方、10km離れたVan Don島の環境はまったく汚染されておらず、粒じん濃度は許容値を大きく下回った。
 
環境汚染により、炭鉱地域では、咽頭炎、じん肺症、気管支炎などの職業性疾病にかかる労働者の割合が高く(10〜38%)、15人の炭鉱労働者(0.03%)がけい肺症にかかっていることが判明した。炭鉱から2〜3km離れた居住区域にもこれらの病気に罹患している住民はいるものの、炭鉱労働者と比べるとその割合は低い。Van Don島にもいくつかの症例があるが、その原因は環境汚染ではなく、その患者の生活習慣に起因すると思わる。

上記の結果は初期段階のものにすぎない。このプロジェクトの次回実施時には疫学的方法による分析を行い、プロジェクトの結論を出すまでにはあと2回の現地調査を進める必要がある。



Quang Ninh県Coc-6炭鉱での作業環境汚染レベルの測定