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OECD多国籍企業ガイドライン(仮訳)

(資料出所:(財)日本ILO協会 発行 「世界の労働」)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://www.oecd.org/daf/investment/guidelines/freeonline.htm




  1. OECD多国籍企業ガイドライン(以下、「ガイドライン」)は、多国籍企業に対して政府が行う勧告である。ガイドラインは、適用可能な法律と合致した、責任ある事業活動のための任意の原則と基準を提供する。ガイドラインは、これら企業の活動と政府の政策との間の調和の確保、企業と企業が活動する社会との間の相互信頼の基礎の強化、外国投資環境の改善の支援、及び多国籍企業による持続可能な開発への貢献の強化を目的と する。ガイドラインはOECDの国際投資及び多国籍企業に関する宣言の一部である。この宣言は、ガイドラインの他に、内国民待遇、企業に関する相反する要求、国際投資促進要因と抑制要因に関する内容をその構成要素とする。

  2. 国際的な事業は大きな構造変化を経験した。ガイドライン自体もこれらの変化を反映して進化してきた。サービス産業と知識集約産業の隆盛とともに、サービス企業と技術系企業が国際市場に参入してきた。依然として大企業が国際投資の主要な割合を占めており、大規模な国際的な合併が行われる傾向がある。同時に、中小企業による外国投資も増加しており、これら企業は今や国際的な場で重要な役割を果たしている。多国籍企業は、国内企業と同様、より広範な事業上の体制や組織形態を擁するまでに進化した。戦略的提携と供給者や契約者とのより密接な関係は、企業の境界を不明瞭なものとする傾向にある。

  3. 多国籍企業の構造の急速な進化は、外国直接投資が急速に成長した開発途上の世界での企業の活動にも反映されている。開発途上国で、多国籍企業は第一次産品生産や採掘産業を超えて、製造業・組立業・国内市場開発・サービス業へと多様化した。

  4.  多国籍企業の活動は、国際貿易と投資を通じ、OECD加盟国の経済相互間の、またOECD加盟国とその他の地域との間の関係を強化し、深化させた。多国籍企業の活動は、企業の母国と受入国に大きな利益をもたらす。これらの利益は、消費者が購入を望む製品・サービスを競争的価格で提供し、資本の供給者に対して、公正な収益を提供するときに生じる。多国籍企業の貿易と投資活動は、資本・技術・人的資源・天然資源の効率的利用に貢献する。これらは世界の各地域間の技術移転と地域の諸条件を反映した技術の発展を容易にする。また、企業は正規の訓練と職業活動を通じた学習によって、受入国の人的資本の開発を促進する。

  5. 経済の変化の性質・範囲・速度は、企業と企業関係者に新たな戦略的課題をもたらした。多国籍企業は、社会面・経済面・環境面での目標の一体性の確保を追求する持続可能な開発のための最良の行動方針を実行する機会を有している。持続可能な開発を促進する多国籍企業の能力は、貿易と投資が開放的で競争力を持ち、適切な規制の下にある市場の中で、行われるときに大きく強化される。

  6. 多くの多国籍企業では、事業活動の高い基準を尊重することが成長を強化させ得ることを示してきた。今日の競争の勢いは激烈であり、多国籍企業は多様な法律・社会・規則・環境に直面している。このような状況では、不当な競争優位を得ようと試みて、適切な行動基準や原則を無視しようとの誘惑に駆られる企業もあり得よう。少数のこのような行動によって、多数の企業の評価が問題視され、世間の懸念が惹起され得るかもしれない

  7. 多くの企業は、良き企業市民、良好な慣行と労使関係を実証する内部計画・指針・経営管理体制を発展させることで、世間からの懸念に答えてきた。幾つかの企業は、これらの分野の専門知識の蓄積に寄与するため、コンサルティング・監査・認証サービスを利用してきた。これらの努力は、良き事業行動とはいかなるものかという社会的対話を促進 してきた。ガイドラインは、ガイドラインを採用する加盟国政府の企業行動に対する共通の期待を明確化し、企業にとっての一つの参考を提供する。このようなガイドラインは、責任ある事業行動を定め、実施するための民間の努力を補完・強化する。

  8. 事業活動が行われる国際的な法的枠組と政策的枠組の強化のために、各国政府は相互に、または他の行動主体とともに協力を行っていく。1948年の世界人権宣言の採択から始まり、この枠組みは戦後期から今日にかけて発展してきた。最近の文書には、労働における基本原則及び権利に関するILO宣言、環境と開発に関するリオ宣言及びアジェンダ21、社会的発展のためのコペンハーゲン宣言、が含まれる。

  9. OECDもまた、国際的な政策枠組に寄与してきた。最近の進展では、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約、OECDコーポレート・ガバナンス原則、電子商取引における消費者保護のためのOECDガイドラインの採択、並びに目下継続中の多国籍企業及び税当局のための移転価格税制に関するOECDガイドラインのための作業がある。

  10. ガイドラインを採用する加盟政府の共通の目標は、経済面・環境面・社会面の発展に対し、多国籍企業が行い得る積極的な貢献を奨励すること、並びに多国籍企業の多様な活動がもたらすであろう困難を最小にすることにある。
    この目標に向けて作業する中で、政府は、同一の目的に向けそれぞれ独自の方法で作業を行っている多くの企業や労働組合、その他の非政府組織との協力関係を見出す。政府は、安定的マクロ経済政策、企業に対する無差別待遇、適切な規制と慎重な監視、公平な裁判と法執行の制度、効率的で誠実な行政を含む効果的な国内政策の枠組を提供することによって、支援を行い得る。また政府は、持続可能な開発を支援する適切な基準と政策を維持・促進することにより、そして公共部門活動が効率的・効果的であることを確保するための継続的な改革を進めることにより、支援を行い得る。ガイドラインに加盟する各国政府は、全ての国民の福祉と生活水準の向上を目指した国内・国際政策の継続的改善を公約としている。


T.定義と原則

  1. ガイドラインは、多国籍企業に対して政府が共同で行う勧告である。ガイドラインは、適用可能な法律に合致する良き慣行の原則と基準を提供する。企業によるガイドラインの遵守は任意のものであり、法的に強制し得るものではない。

  2. 多国籍企業の活動は全世界に及び、それ故にこの分野における国際協力は全ての国に及ぶべきである。ガイドラインを採用する政府は、その領土内で活動する企業に対し、各受入国の固有の状況を考慮しつつ、活動する全ての場所でガイドラインを遵守することを奨励する。

  3. ガイドラインの目的上、多国籍企業を厳密に定義することは必要とされていない。これら企業は、通常は二以上の国で設立される会社又はその他の法人から成り、様々な方法で活動を調整できるように結びついている。これら法人の一又は二以上のものは、他の法人の活動に対して重要な影響力を行使し得るが、企業内における法人の自治の程度は、各多国籍企業ごとに大きく異なる。その所有形態は、民有・国有又はその混合たり得る。ガイドラインは、多国籍企業内の全ての法人(親会社及び〈又は〉現地の構成体)を対象とする。これらの法人間での実際の責任配分に応じて、各法人はガイドラインの遵守を容易にするため、相互に協力し合い、また支援し合うことを期待される。

  4. ガイドラインは、多国籍企業と国内企業との間の異なった取扱いを導入することを目的とするものではない。ガイドラインは、全ての企業にとっての良き慣行を示している。したがって、ガイドラインが双方に関連する場合は、多国籍企業も国内企業も、常にその活動に同じ期待が寄せられている。

  5. 政府は、ガイドラインの可能な限り広範な遵守を奨励することを希望する。ガイドラインを採用する政府は、中小企業が大企業と同一の能力を持ち得ないことを認識しているが、中小企業が最大限可能な限り、ガイドラインの勧告を遵守することを奨励する。

  6. ガイドラインを採用する政府は、保護主義的な目的のために、または多国籍企業が投資を行う国の比較優位に対して、疑問を差し挟むような方法で、ガイドラインを使用してはならない。

  7. 政府は、国際法に従いつつ、自国の管轄内において多国籍企業が活動するための条件を定める権利を有する。様々な国に所在する多国籍企業の各法人は、これらの所在する国の適用可能な法律に従う。多国籍企業が、ガイドラインを採用する国から相反する要求の対象となる場合には、関係国政府は生じ得る問題の解決に向け、誠実に協力する。

  8. ガイドラインを採用する政府は、企業を公平、かつ国際法及び自国が受諾した契約上の義務に従って取り扱う責任を果すという了解の下に、ガイドラインを制定した。

  9. 企業と受入国政府との間で生じる法的問題の解決を容易ならしめる手段として、仲裁を含む適当な国際紛争解決制度の利用が奨励される。

  10. ガイドラインを採用する政府は、ガイドラインの普及を促進し、その利用を奨励する。政府は、ガイドラインの普及を促進し、ガイドラインに関連する全ての事項を議論するためのフォーラムとして行動する連絡窓口を設立する。また、ガイドラインを採用する政府は、変化する世界におけるガイドラインの解釈に関する問題に対応するため、適切な再検討と協議に参加する。


U.一般方針

 企業は、その事業活動を行う国で確立した政策を十分に考慮に入れ、その他の利害関係者の見解を考慮すべきである。
この点に関し、企業は以下の行動をとるべきである。
(1)持続可能な開発を達成する観点から、経済面・社会面・環境面の発展に貢献すべきである。

(2)受入国政府の国際的義務と公約に則り、企業の活動によって影響を受ける人々の人権を尊重すべきである。

(3)事業上の利益を含む現地社会との密接な協力をとおして、現地の能力形成を奨励し、また健全な商慣行に則した国内外の市場における企業活動の展開を奨励すべきである。

(4)特に、雇用機会の創出と従業員のための訓練機会の増進によって、人的資本の形成を奨励すべきである。

(5)環境・健康・安全・労働・課税・財政的誘因、又はその他の事項に関して、法令や規制の枠組の中で予期されていない例外を求めたり、これを認めることを禁止すべきである。

(6)良き企業統治の原則を支持・維持し、良き企業統治の慣行を発展・適用すべきである。

(7)企業と企業の事業活動が行われる社会との間の信用と相互信頼関係を育成するための効果的な自主規制の慣行や経営制度を発展させ、適用すべきである。

(8)訓練計画を含めた適切な普及方法を通じ、従業員への企業方針の浸透と遵守を促進すべきである。

(9)法律・ガイドライン・企業方針に違反する慣行について、経営陣や適当な場合には所管官庁に善意の通報を行った従業員に対しては、差別又は懲罰を行うことは禁止すべきである。

(10)実行可能な場合には、納入業者及び下請業者を含む取引先に対し、多国籍企業ガイドラインと適合する企業行動の原則を適用するよう奨励すべきである。

(11)現地の政治活動においては、いかなるものであれ、不適当な関与を禁止すべきである。

V.情報開示

  1. 企業は、その活動・組織・財務状況・業績について、時宜を得た、定期的な、信頼性のある妥当な情報の開示を確保すべきである。この情報は企業全体について開示されるべきであり、適当な場合には事業系統毎又は地域毎に開示されるべきである。企業の情報開示に関する方針は、コストや企業秘密及びその他の競争上の関連事項に相応の考慮をしつつ、企業の性格や規模及び所在地に適合するよう策定されるべきである。

  2. 企業は、情報開示、会計・監査に質の高い基準を適用すべきである。また、企業は環境や社会的な事由に関する報告などの財務に関係しない情報についても、適当な場合には質の高い基準を適用することを奨励される。財務及び非財務情報の編集及び公表の基準又は方針は報告されるべきである。

  3. 企業は自社の名称・所在地・組織、並びに親会社とその主要系列会社の名称・所在地・電話番号、そして関連会社間の株式持ち合いを含めた(直接及び間接の)各社間の株式保有比率を示す基礎的情報を開示すべきである。
    また、企業は以下の事項に関する重要情報を開示すべきである。

    1. 会社の財政状況及び業績
    2. 会社の目的
    3. 主要株主と議決権
    4. 経営陣と主要役員、及びその報酬
    5. 予見可能な重要なリスク要因
    6. 業員その他の当該企業の利害関係者に関する重要事項
    7. 企業統治の構造と方針

  1. 企業は、以下に含む追加的情報を公表することが奨励される。

    1. 社会・倫理・環境面での企業政策と企業が採用するその他の行動規範に関する情報を含む、企業行動の理念・規則に関する公開が予定されている報告書。さらに、報告書の採択日、報告が適用される国・法人、報告書の履行状況。
    2. リスク管理と法律遵守のための制度に関する情報と、企業行動に関する報告又は規範に関する情報。
    3. 従業員とその他の企業の利害関係者との関係に関する情報


W.雇用及び労使関係

  1. 企業は、適用可能な法律・規則、並びに一般的な労使関係と雇用慣行の枠内で、以下の行動をとるべきである。

    1. 労働組合及び他の誠実な従業員の代表によって代表される従業員の権利を尊重し、また雇用条件に関する協約を締結することを目的として、当該従業員の代表と個別的に又は使用者の団体を通じ、建設的な交渉を行うべきである。
    2. 児童労働の実効的な廃止に貢献すべきである。
    3. あらゆる形態の強制労働の撤廃に貢献すべきである。
    4. 従業員をその特質によって選別的に取り扱うことが、特に雇用機会の一層の均等化を推進しょうとする政府の確立した政策を更に促進することとなる場合、又は職業に固有の要件に関連している場合を除き、人種・皮膚の色・性・宗教・政治的見解、国民的出身又は社会的出身などに基づき、従業員を雇用と職業において差別すべきではない。

    1. 従業員代表に対し、有効な労働協約の発展のために必要な場合には、便宜を提供すべきである。
    2. 従業員代表に対し、雇用条件について、有意義な交渉をするために必要な情報を提供すべきである。
    3. 労使相互の関心事項について、使用者と従業員及び従業員代表との間の協議と協力を促進すべきである


  1. 従業員及び従業員代表に対し、これらの者が法人の、又は適当な場合には企業全体の業績に関する真実で公正な見解の獲得を可能ならしめる情報を提供すべきである。

    1. 受入国の類似の使用者が遵守している雇用と労使関係の基準よりも、低くない基準を遵守すべきである。
    2. 事業活動で、職業上の健康・安全を確保するために適切な措置を実施すべきである

  1. 事業活動において、従業員代表及び適当な場合には関係する政府当局と協力しつつ、実行可能な限度において、最大限、現地の人材を雇用し、技術水準の向上を目的とした訓練を提供すべきである。

  2. 従業員の生活に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更、特に、一時的なレイオフ・解雇を含む、集団解雇を伴う法人の閉鎖を検討するに当たっては、従業員代表及び適当な場合には関係する政府当局に対し、かかる変更に関する合理的な予告を行い、また最大限実行可能な限度において、悪影響を緩和するために従業員代表と政府当局に協力すべきである。
    それぞれの特殊な状況を考慮し、このような協力は、経営者側がかかる通告の最終決定を下す前に行うことが適切である。

  3. 雇用条件に関して、従業員代表と誠実な交渉を行うにあたり、又は従業員が団結権を行使している間は、交渉に不当な影響を与えたり団結権の行使を妨げるために、事業活動の全部又は一部を当該国から移転したり、また他国内にある企業の構成法人からの従業員移転するという威嚇は行わない。

  4. 承認された従業員代表が、団体交渉又は労使関係についての交渉することを可能にし、これらの事項について決定権を有する経営者代表と相互の関心事項について協議することを認めるべきである。


X.環 境

企業は、事業活動を行う国の法律・規則、行政上の慣行の枠内で、また関連する国際的な合意・原則・目的・基準を考慮し、環境や公衆の健康と安全を保護する必要性と、持続可能な開発というより広範な目標に貢献する方法で、活動する必要性に十分な配慮を払うべきである。
特に企業は、以下の行動をとるべきである。

  1. 以下の活動を含め、当該企業に適した環境管理制度を設立し、維持する。

    1. 企業活動が環境・健康・安全に与える影響に関する、適切で時宜を得た情報の収集と評価。
    2. 測定可能な目標の確立、また適当な場合には、これらの目標の妥当性の有無についての継続・定期的な見直しを含めた環境面での行動改善のための目標の確立。
    3. 環境・健康・安全に関する目的、又は目標への進展度合いについての定期的な監視と検証。


    1. 環境・健康・安全上の起こり得る企業活動の影響に関する、適切かつ時宜を得た情報を社会と従業員に提供すべきである。この情報には、環境に関する業績の改善状況についての報告を含むことができる。
    2. 環境・健康・安全に関する企業方針とその実施によって、直接に影響を受ける集団と、適切かつ時宜を得た連絡及び協議を行うべきである。

  1. 製造方法、製品・サービスに伴う企業活動の全段階で生じる環境・健康・安全に対する予見可能な影響を評価・考慮し、これを意思決定の中で扱っていくべきである。ここで提案された活動が、環境・健康・安全に対して重大な影響を与える可能性があり、かつ、これらの活動が権限ある機関の決定の対象となる場合には、適当な環境影響評価を準備しなければならない。

  2. 環境に対し重大な損害を与えるおそれがある場合には、人体の健康と安全も考慮に入れ、科学・技術的な理解に則して、科学的確実性の欠如を理由に被害の予防や極小化するための費用対効果を理由に有効な措置を先送りしてはならない。

  3. 災害や非常事態を含め、事業活動から生じる環境・健康への重大な被害を防止し緩和するための非常事態への対策計画を維持すべきである。また、権限ある機関へ迅速な通報を行うための機構を維持すべきである。

  4. 適当な場合には、以下のような活動を奨励することで、企業の環境面における行動の改善を継続的に追求する。

    1. 最も環境業績が上がっている部門の基準を反映した技術と運営手続を、企業全体で採用すること。
    2. 環境に過度の影響を及ぼさず、意図されたように使用されるならば安全で、エネルギーと天然資源の消費において効率的で、再利用・リサイクル又は安全に廃棄することが可能な製品とサービスを開発し、提供すること。
    3. 企業の製品・サービスの使用が環境に与える影響に関し、消費者間により高い意識を増進させること。
    4. 長期間にわたって、企業の環境実績を向上させる方法を研究すること。

  1. 有害物質の取扱、環境事故の防止、環境への影響評価手法、広報、環境技術などの一般的な環境管理・環境安全衛生に関する適切な教育・訓練を、従業員に提供すべきである。

  2. 例えば環境意識と環境保護を強化するためのパートナーシップや発意といった方法を通じて、環境上有意義で経済的で効率的な公共政策の開発に貢献すべきである。

Y.贈賄の防止

企業は、商取引又は他の不当な利益を取得し、又は維持するために、直接又は間接に、賄賂又はその他の不当な利益の申出、約束、供与又は要求を行うべきではない。また企業は、賄賂又はその他の不当な利益を提供するよう求められ又は期待されるべきではない。企業は特に以下の行動をとるべきである。

  1. 公務員又は取引先の従業員に対し、契約金のいかなる部分の支払いも申し出るべきではないし、そのような要求に応じるべきではない。企業は、公務員や取引先の従業員、又はこれらの者の縁者、若しくは事業上の提携者に支払うための経路のとして、下請契約、購入・注文、又はコンサルタント契約を使用すべきではない。

  2. 代理人への報酬は妥当で、合法的なサービスに対してのみ支払われることを保証すべきである。適当な場合には、公共機関及び国有企業との取引に関連して雇用される代理人の名簿が保存され、権限ある機関が利用可能なものとされるべきである。

  3. 賄賂と強要行為を撲滅するための活動の透明性をより高めるべきである。その手段には、賄賂と強要行為の撲滅の公約と、その公約を実行するために企業がとった管理制度の開示が含まれる。また、企業は、賄賂と強要行為の撲滅に関する社会の意識と協力を向上するため、公開性と社会対話を促進すべきである。

  4. 適当な普及活動や訓練、懲戒制度を通じて、賄賂と強要行為に反対する企業方針に従業員の意識を向上させ、方針への遵守を徹底させるべきである。

  5. 賄賂と腐敗行為を抑制する管理・監督制度を採用し、簿外帳簿や秘密勘定又は取引記録を適正かつ公正に記録しない書類のねつ造を防止し、財務・税務会計及び監査業務を採用すべきである。

  6. 公的機関の候補者、政党、その他の政治団体に対して、違法な寄附は行うべきではない。寄附については、公の情報開示要求に完全に従わねばならず、また、経営上層部に対して報告されねばならない。


Z.消費者利益

企業は、消費者との取引の際に、事業・販売・宣伝について、公正な慣行に従って行動すべきであり、提供する製品・サービスの安全性と品質を確保するためにあらゆる合理的な手段を実施すべきである。特に企業は以下の行動をとるべきである。

  1. 提供する製品・サービスについては、健康に関する警告、製品の安全性、情報表示ラベルを含む、消費者の健康・安全に関し、合意又は法的に要求される全ての基準を満たすことを確保すべきである

  2. 消費者が情報を得たうえで決定することを可能にするため、適当な場合には、製品・サービスについて、その内容・安全な使用・維持管理・保管・廃棄に関し、十分で正確かつ明確な情報を提供すべきである。

  3. 消費者の苦情に対処する透明で効果的な手続を提供し、過剰な費用や負担を伴わない消費者紛争の公正で時宜を得た解決に貢献すべきである。

  4. 詐欺的で誤解を招くような、不正な、あるいは不当な説明表示、及び省略その他の慣行は行うべきではない。

  5. 費者のプライバシーを尊重し、個人情報の保護を提供すべきである。

  6. 製品の消費や使用から生じる公衆の健康と安全に対する重大な脅威の防止、又は除去について、全面的にかつ透明な方法で当局と協力すべきである。


[.科学及び技術

企業は以下の行動をとるべきである。

  1. 企業が、事業活動を行う国の科学・技術に関する政策と計画に合致することを確保するよう努力し、また適当な場合には、地域及び全国レベルの技術革新能力の発展に貢献すべきである。
  2. 企業活動のうえで実行可能な場合には、知的所有権の保護に適切に配慮しつつ、技術・ノウハウの移転と急速な普及を可能にする慣行を採用すべきである。

  3. 当な場合には、現地市場のニーズに対応するため、受入国において科学・技術開発の作業を実行し、同時に商業上の必要性を考慮に入れながら、科学・技術能力を有する現地の人材を雇用し、また、これら人材の訓練を奨励すべきである。

  4. 知的所有権の使用許諾を与える場合、又はその他の方法により技術移転を行う場合には、受入国の長期的開発の展望に貢献するような方法で、かつ、合理的な期間と条件で、これを実施する。

  5. 商業上の目的から妥当な場合には、現地の大学や公共研究機関との関係を強化し、現地の産業・産業団体との共同研究計画に参加すべきである。


\.競 争

企業は、適用可能な法律と規則の枠内において、競争的な方法でその活動を行うべきである。特に企業は以下の行動をとるべきである。

  1. 次のような競争者間で、反競争的協定を締結したり、あるいはその実行を自制すべきである。
    1. 価格の設定。
    2. 入札の不正(談合)。
    3. 生産制限又は生産割当の設定。
    4. 客・供給者、地域又は取引分野の割当による市場の共有又は分割。
  1. 企業の反競争的活動によって、経済が悪影響を受ける可能性のある管轄区域では、競争法の適用可能性を考慮しつつ、適用可能な全ての競争法に則した方法で、全ての活動を行うべきである。

  2. 特に適用可能な法律と適切な保護措置に従い、情報要求には実行可能な限り迅速かつ完全な回答を提供し、上記の管轄区域の競争を扱う当局と協力すべきである。

  3. 適用可能な全ての競争法・政策を遵守する重要性について、従業員の理解を促進すべきである。


].課 税

  企業が所定の時期に納税義務を履行することにより、受入国の公共財政に貢献することは重要である。特に企業は、事業活動を行う全ての国において租税に関する法律と規則に従い、これら法令の規定と精神に従って行動するために、あらゆる努力を尽くすべきである。
  これには、事業活動に関連して賦課される租税の正確な決定のために、必要な情報を関係当局に提出することと、移転価格設定の慣行を独立企業間原則(arm's length principle=手の届く距離の原則)に合致させることなどの措置を含む。