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最近の各国の労働安全衛生プログラム - オーストラリア

(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex I, pages33-48)
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(仮訳 国際安全衛生センター)
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 雇用・職場関係連邦省(Federal Ministry of Employment and Workplace Relations)は2002年5月、すべての州および準州を代表する職場関係大臣評議会(Workplace Relations Ministers' Council)に代わり、「全国労働安全衛生戦略2000〜2012年」(National Occupational Health and Safety Strategy 2002-12)を発表。この中でオーストラリアの労働安全衛生の実績向上へ向けた取り組みの概要を示し、以下のことを目標として掲げた。

(i) 労災死亡件数の大幅かつ継続的な減少を堅持し、2012年までに同件数を少なくとも20%、2007年までに10%減少させる。

(ii) 職場での傷害の発生件数を2012年までに少なくとも40%、2007年までに20%減少させる。

  戦略では、十年の対象期間にわたって、健康で安全な労働環境を持続的に助長し、仕事中に負傷または死亡する人の数を大幅に低減させるための全国レベルでの戦略的介入措置の基礎を定めている。

 短期的・長期的な労働安全衛生の改善、ならびに長期的な文化変革を実現するため、戦略では全国レベルで次のような5つの優先課題を掲げている。

(i) 発生件数の多い/重篤性の高いリスクの低減。傷害の発生件数および/または死亡者数のとりわけ多いハザード、傷害、および産業と職業をターゲットとすることで、労働安全衛生の実績を大幅に向上できる。

(ii) 労働安全衛生の効果的管理へ向けた事業者と労働者の能力の開発。事業者については、労働安全衛生に関するリスクを効果的に管理できるように、また労働者については、より安全に労働し、各種協議に参加できるように、それぞれの動機付けと能力の強化を図ることがねらいである。

(iii) 職業性疾病のより効果的な防止。各種当局、事業者、労働者、および関連当事者の能力を開発し、労働衛生上の旧来のリスクと新しいリスクを特定する一方で、これらのリスクを除去または管理するための実践的な措置を講じられるようにすることがねらいである。

(iv) 設計段階でのハザードの排除。設計者、製造者、および供給者をはじめとする幅広い当事者に対し、このようなアプローチに対する意識の向上とその遵守を促し、設計上の課題を認識するための実践的なスキルを持たせて、安全な成果物が確実に得られるようにすることがねらいである。

(v) 労働安全衛生に関する成果への政府の影響力の強化。各種政府は大口事業者であり、政策立案者であり、規制者であり、設備とサービスの購入者であって、これら政府が労働安全衛生の成果の確実な向上と、グッドプラクティスの手本の提示をさらに効果的に行えるようにすることがねらいである。

 この戦略が策定された背景には、近年、労働安全衛生の実績は大幅に向上しているものの、改善の余地はまだ大きく残されているとの認識がある。たとえば労災補償の記録では、1995/96年からの5年間で業務上傷害の発生件数は20%減少する一方、1999/2000年には120,000件の5日以上の休業を伴う労災補償請求が認定され、業務上傷害に起因する労災補償対象死亡者は1995/96年が267件であったのに対し、1999/2000年は205件あった。職業性疾病による死亡者数に関しては信頼できるデータが存在しないものの、過去の危険有害物質への職業性ばく露によって年間2,000人を超える労働者が死亡していると推定される。

 戦略の実施が成功したかどうかは、次のような総合的な指標で判断される。

職場の当事者が労働安全衛生を通常業務の不可欠な要素として認識し、取り込むこと。労働安全衛生を通常業務の不可欠な要素と認識して取り込み、これらの課題に従業員を関与させるために行動する企業は、その企業の労働者、事業、および日常にとってのリスクをより適切に管理することができる。

職場および地域社会における労働安全衛生関連知識とスキルの向上。これは現在と将来の労働安全衛生の課題への対処能力の向上に不可欠である。

政府がより効果的な労働安全衛生の介入措置を策定、実施すること。そのためには、情報、支援、規制、遵守、執行、および各種インセンティブの適切な組み合わせをはじめとする最善の介入措置を特定、適用する必要がある。

効果的予防のためのより適切で時宜にかなった情報が、調査、データ、および評価によって提供されること。そのためには、成功する可能性が最も高い介入措置はどれか、どの介入措置が機能し、どれが機能しないか、予防のための最良の選択肢はどれかを特定する必要がある。

  5つの優先課題のうち、発生件数の多い/重篤性の高いリスクの低減という最初の課題は、全国レベルでの目標達成に直接貢献すると見込まれる。たとえば、対象に挙がっている産業部門の各種リスクは、ほかの産業部門と比べて当該部門の業務上傷害の発生が相対的に多い場合、あるいは業務上の死亡者の割合が毎年高い場合には、全国レベルで重点的に注目されざるを得ないであろう。

 残りの4つの優先課題に含まれるいくつかの要素は、短期的成果を上げるのに効果があるであろう。しかしながら、これらの要素はまず第一に、長期的で持続可能な結果の達成に貢献することを期待されている。全国レベルでの優先課題のそれぞれについては、当該時点での適切性と実効性を見極めるために定期的に評価を行うことになっている。評価の方法、進捗状況を把握するための基準、マイルストーン、およびその他の指標は、「全国労働安全衛生戦略」実施の初期段階で策定される。閣僚らは、事業者と労働者の代表である全国労働安全衛生委員会(National Occupational Health and Safety Commission)に対し、戦略実施の進捗状況についての年次報告、および「戦略」の定期的な見直しと改善の確実な実施を求めている。