このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
|
 |
 |
|
最近の各国の労働安全衛生プログラム - ハンガリー
(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex I, pages33-48)
Copyright © 2004 International Labour Organization (ILO) |
Disclaimer |
|
The ILO shall accept no responsibility for any inaccuracy, errors or omissions or for the consequences arising from the use of the Text. |
|
(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちらからご覧いただけます
議会は2001年、すべての労使団体の全面的支持を得て、満場一致で労働安全衛生国家プログラム(National Programme of Occupational Safety and Health)の採択を議決した。政府はこの5か年計画に基づき、任務と責任、および必要な手段と資源を定めた詳細な年間行動計画を作成することになる。プログラムの実施に関する報告書は、2005年末のプログラム終了から6か月以内に作成され、議会に提出される。
休業による経済的損失がどれくらいになるかを見積もった議会は、人的側面への配慮に加え、効果的な労働保護も、国と企業の双方にとって有益な長期的投資であることを認識するに至った。労働安全衛生は、職場における災害や疾病を防止することだけにとどまらない。労働安全衛生は、労働設備や職場の設計においても一定の地位と役割を持ち、働く人々の福祉全般を対象とするものである。人生のかなりの時間が仕事に費やされる以上、職場における人々の精神的肉体的な健康は根本的な重要性を持っている。労働安全衛生には、労働環境を人間に適合させるとともに、ヒューマンファクターを幅広く考慮することが必要である。このような考え方は、事業者と国の経済的利益、労働者とその家族の利益、そして社会全体の利益とも合致する。
1999年にロンドンで開催された環境と健康に関する第3回閣僚会議(Ministerial Conference on Environment and Health)、およびハンガリーが採択したこの会議の勧告は、新しい労働安全衛生の考え方に非常に大きな影響を与えてきた。この閣僚会議では、労働安全衛生と環境の分野における従来のやり方が見直され、労使の積極的寄与を引き出して、職場における安全衛生の諸条件の創出を継続的に促進できるような、国家レベルでの各種メカニズムおよび条件の確立が提案された。このようなメカニズムや条件には、多面的アプローチの原則と環境リスク要因の最小化も含まれる。
労働災害届出件数は1992年の45,230件から1998年には28,688件へ、1,000人あたりの労働災害発生率は同12.27人から8.75人へと目立って減少しているものの、この減少には重工業における高リスク作業の縮小と失業が貢献しており、さらに少なくとも推定25%にのぼる大幅な過少報告があるとの認識が一般的である。自営業者の災害件数は不明である。労働者10,000人あたりの職業性疾病件数は、数字になっている3年間(1996〜1998年)を通じて3人のままほぼ横ばいであるが、疾病の定義が異なるために他国との比較は不可能である。ハンガリーは、増加する毒物ばく露について届出を義務付けた最初の国であった。ハンガリーでは、職業性のがんによって毎年推定で1,200〜1,400人が亡くなっている。災害および職業性疾病による休業は甚大な経済的損失をもたらしており、その額は1日あたり平均300米ドルにのぼると見積もられている。こうした事情を背景に、労働安全衛生国家プログラムを通じて、労働安全衛生改善のための戦略的アプローチが試みられた。
国家プログラムの戦略は、どれも等しく重要で相互に関連する次の4つの原則に基づいている。
|
(1) |
|
持続可能な開発の原則。近代化、製造業の業績拡大、およびサービスの提供は、持続可能な形で追求されるべきである。職場の安全衛生を守り、職場のリスクを最小限に抑えるための各種措置は、持続可能な開発の戦略的要素である。
|
|
(2) |
|
慎重の原則。重大または不可逆的な健康障害の可能性を排除できない場合には、リスクを最小限に抑えるために慎重の原則が適用されるべきである。すなわち疑わしき場合には、起こりうる最悪の結果、および想定される最も高いリスクとその予防または管理のための準備が必要である。こうしたリスクの典型的な例として、危険物質や生物学的ハザードに起因するリスクがある。
|
|
(3) |
|
予防の原則。あらゆる分野とあらゆるレベルの労働安全衛生は、ハザードの影響の事後処理ではなく、適切な時点でのハザードの予防を主たる目標に据えるべきである。
|
|
(4) |
|
パートナーシップの原則。各種の政府機関および当局と、労使の代表団体との効率的かつ継続的な協力は、明確に規定された責任に基づくパートナーシップによって推進されるべきである。火災予防、環境保護、公衆衛生、社会保障、製品の安全性と消費者保護など、労働安全衛生と労働をめぐる関連分野についても、同様のパートナーシップによって推進されるべきである。
|
プログラムの戦略的目標は、職場の労働安全衛生にとっての短期的および長期的リスクが、社会的に容認されるレベルを超えないようにすることにある。これらの目標を達成するには、労働災害の件数と重篤性を低減し、労働および労働環境に起因または関連する疾病の広がりと重篤性を低減し、さらに、肉体的精神的健康に貢献するような労働環境を確立する必要がある。
国家プログラムには5年の期間を通じて実施すべき行動の提案が30以上盛り込まれているが、労働災害、傷害、および疾病の削減に関する目標値は掲げられていない。行動案に含まれているものとして、保険制度の変更を通じて職場の安全衛生に事業者が経済的側面からより直接的に関われるようにすることがある。保険制度の変更には、職業性疾病の分類の拡大とこの分類の自営業者への適用;国際法規およびEUの法令への歩み寄り;労働安全衛生に関する教育訓練制度の改善;社会復帰の推進;研究の強化;特に中小企業に配慮しつつ、事業者と労働者に迅速かつ的確、専門的な情報を安価に提供できるような労働安全衛生の公開情報制度の創出;および労働監督の水準と効率性の向上、が含まれる。
|
|