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最近の各国の労働安全衛生プログラム - インド
(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and
Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex
I, pages33-48)
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(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちらからご覧いただけます
インド政府は2001年、労働大臣を議長とする労働安全衛生に関するワーキンググループを設置した。ワーキンググループの任務は、現行労働安全衛生制度の見直し;現行労働安全衛生制度の弱点の洗い出しとこれを改善するための方策の提案;現行法令でカバーされていない広範な労働者も考慮に入れた、各種労働安全基準を改善するための方策の提案;州政府の行政組織の効率の調査;農業に従事する労働者とそれ以外の未組織労働者集団の労働安全衛生を確実にするために必要な措置の提案、であった。
ワーキンググループは3つのサブグループに分かれて鉱山部門、工業および港湾部門、未組織部門を対象に作業を行い、それぞれの報告書はまとめられて2003年12月に最終報告書が出された。最終報告書には、職場における安全・衛生・環境に関する国家政策案が盛り込まれている。国家政策の基本目的は、職業上の傷害、疾病、死亡の発生を抑制し、人的資源の保全を図ることにある。ワーキンググループの報告書の前文には、国家政策は政府単独で実施することはできず、労使も巻き込んで協力関係を推進する必要があると記されている。また、社会正義の実現には安全で健康な労働条件が必要であり、このような労働条件が経済成長には不可欠であることも明記されている。
報告書は、自営業、下請、労働移動、移民労働への移行の加速といった労働形態の変化によって種々の問題が生じていることを指摘している。同様に、化学物質と生物学的因子の使用の拡大、新しい技術の移転と採用、農薬や農業機械器具の無計画な使用、および職場のストレスによっても、新しいハザードが出現している。ハザードな職業や主要災害リスクについては、とりわけ注意が必要である。小規模産業における業務関連のハザードと職業性疾病は、これらの職業では労働安全衛生サービスが行き渡っていないために、増加する傾向にある。
国家政策案ではいくつかの主要目的が定められおり、経済活動のあらゆる部門を対象とする法律的枠組みの整備;行政サービスおよび技術支援サービスの提供;新たなリスク出現分野における研究開発能力の確立;事業者と労働者向けの能力開発制度および奨励制度の推進;業務関連傷害と疾病に関するデータ収集システムの改善を通じた予防的取り組みと実績監視の重視;が掲げられている。
目標として明記されているのは、傷害疾病発生件数の年ごとの継続的減少の達成;労働安全衛生問題に対する組織の意識の向上、すなわち安全文化の推進;労働安全衛生政策の国の経済計画への取り込み、である。
国家政策案では続いて、法の執行、国の基準、遵守、意識の向上、研究開発、労働安全衛生スキルの開発、データ収集、実地指導、および(経済的な、またはそれ以外の)奨励策といった幅広い見出しを掲げて、アクション・プログラムを定めている。最後に、進捗状況の定期的な見直しの必要性を記している。
最終報告書の指摘によれば、現在、包括的な労働安全衛生法令が存在しているのは、工場、ドック、鉱業、および建設業の4つの経済部門だけであり、いずれもきわめて特殊である。鉱山部門の災害は減少しているものの、過去20年の間に死亡災害が横ばいになったことは懸念材料であった。ただし2000年には死亡災害は再度減少した。災害の原因は同じものが繰り返される傾向があり、この点は憂慮される。
工業部門においては、1994〜1999年の期間に登録工場数は増加傾向を示したにもかかわらず、同期間の傷害の発生は減少した。傷害の減少率は推定で年平均6.8%であった。工場における傷害の度数率および発生率はともに下降傾向にある。しかしながら、これらの数字は先進国のそれと比べると高い。職業性疾病については、工場においてはごくわずかなケースが報告されているだけである。
主要港湾における要届出災害件数は、1995-96年の400件から1999-2000年には250件に減り、約38%の減少となった。しかしながら、同期間中の死亡災害件数はほとんど変化がなかった。労働力の大部分は、農業、建設業、飲食店、店舗および事務所、家内工業、ごみ処理事業といった未組織部門で雇用されていたが、災害および職業性疾病に関する信頼できる統計情報は国のレベルでは存在していない。建設業はハザードの高い産業の1つであり、死亡災害の発生率は工場部門のそれの4〜5倍である。
インド政府がハイレベルのワーキンググループを設置したのは、雇用数にかかわらず、経済のあらゆる部門の労働者を対象とした労働安全衛生法令の必要性を認めたからであった。
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