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最近の各国の労働安全衛生プログラム - タイ

(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex I, pages33-48)
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(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちらからご覧いただけます


 労働の安全、衛生、職場環境に関する委員会(Committee on Occupational Safety, Health and the Environment)は、労働保護福祉局(Department of Labour Protection and Welfare: DLPW)の指導のもと、ILOから助言を受けて、2002〜2006年の期間を対象とした5か年の基本計画(Master Plan)を作成した。この基本計画は、各種安全プログラムの実施ガイドラインの提供を意図したもので、そこにはタイにおいて効率的で効果的な各種労働基準の整備を担う主体としての労働保護福祉局のビジョンが反映されている。労働の安全、衛生、職場環境(OSHE)に関する方針は、第9次国家経済社会開発計画(the Ninth National Economic and Social Development Plan)に盛り込まれることになっている。基本計画は、業務上傷害の件数が1999年の171,997件から2000年には179,466件へと4.4%増加していることへの回答でもある。タイは、1980年代と1990年代を通じ、アジア諸国のほとんどに共通してみられる高度経済成長と産業拡大を経験した。この高度経済成長と産業拡大は、届出制度の改善とあいまって、1990年から1997年までで災害届出件数を3倍近くに増加させ、1997年の災害件数を230,376件に押し上げた。労働保護福祉局は、1997年から1999年までの期間、重大災害が引き続き発生したにもかかわらず全体として達成できた実績改善を今後も堅持すべきである、としている。ちなみに1999年9月には、タイ北部で発生した化学工場の爆発で36人が死亡した。

 労働安全衛生の実績改善に立ちはだかる問題としては、次のものがある。

現在は一般的な労働保護法(Labour Protection Act)の下で各種規則が作成されており、あらゆる規模およびカテゴリーの企業をカバーする包括的な国法が欠如している。このため、各種労働安全衛生プログラムを効果的に実施するための適切な情報を事業者と労働者に提供することができない。

監督要員の不足。登録企業318,660社に対し、毎年監督が実施されているのは18,000社のみである。より適切かつ効率的な監督および法の執行、職場における災害疾病の予防と管理を目的とした各種措置の計画を支援するための情報システムの開発が急務である。

労働安全衛生とは関係のない労働監督についても、これを安全監督官に義務付け、労働監督官にも労働安全衛生の問題への対処を義務付けていることに起因する制約。

労働保護に関する交渉制度が労働安全衛生保護にも適用されていること。これは、一部事業者の遵守違反、安全に関わる重大な問題に対する非協力や軽視、および法執行当局の業務遂行の方向性と目標の欠如をまねいている。


従業員数50人以上の企業に対しては安全委員会と安全管理者の任命が義務付けられており、これは労働安全衛生の向上にいくらか寄与しているが、安全管理者と安全委員会の大多数は、法律で定められた機能を十分適切に果たしていない。これは、一方で管理職のコミットメントとサポートが欠如していること、他方で安全管理者の知識と経験が不十分であることが原因である。

 非常に多くの企業が、危険な仕事を自宅勤務者に下請けさせることで、自社の抱える労働力の縮小を図っており、また農業部門は機械化を進めて農作物の生産により多くの農薬を使用するようになっている。こうした変化は、労働災害届出件数の急速な増加となって現れている。

 上に概要を示した種々の問題に対処し、これを通じて労働の安全、衛生、職場環境に関する国家目標を達成するため、基本計画には9つの補助的な主要計画がある。以下に掲げるのは、これらの主要計画の要約である。

(i) 労働の安全、衛生、職場環境に関連する各種法律の公布ならびに修正と、種々のILO条約の批准の推進。

(ii) さまざまなタイプの企業において厳密かつ公正に実施可能な、安全衛生監督のための適切なモデルの開発。これには監査制度と認証制度も含まれる。

(iii) 労働の安全、衛生、職場環境を担当する新しい部局の設置。これによって円滑な管理を推進するとともに、今日の技術的・社会経済的状況に対応できるようにする。

(iv) 労働の安全、衛生、職場環境の保護を自宅勤務者や農業労働者に拡大すること。

(v) 安全管理者と安全委員会を含めた官民両部門における人材の能力とその活用を推進するための教育訓練の提供。

(vi) 効果的な情報ネットワークおよびシステムの確立。

(vii) 各種規則や効果的な監督制度の開発へ向けた研究開発の推進。

(viii) 災害や業務に起因する疾病の予防・管理プログラムの実施。

(ix) 事業者、労働者、および公務員の意識向上を図り、労働の安全、衛生、職場環境に関するさまざまなプログラムへの参加を促すことを目的とした、国の安全週間などのキャンペーンの実施。