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最近の各国の労働安全衛生プログラム - イギリス

(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex I, pages33-48)
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(仮訳 国際安全衛生センター)
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 あらゆる分野の事業者に対して職場の安全衛生の維持を義務付けた1974年労働安全衛生法(the 1974 Health and Safety at Work etc. Act)から25年を経た1999年、副首相は、「安全衛生の活性化(Revitalising Health and Safety)」と命名された新しいイニシアチブに着手した。これは安全の横顔とも呼ぶべき、安全衛生の枠組みの戦略的評価であり、職場の文化に実質的な変化をもたらすことを意図したものであった。政府と安全衛生委員会(Health and Safety Commission: HSC)は諮問文書を公表し、これまでより高い水準の安全衛生を目指した政府のビジョンを実現するために、さらにどのようなことができるかについて意見を求めた。寄せられた多くの意見をうけ、今後十年の目標を定めた戦略の文面が2000年に公開された。

 新しいイニシアチブが必要と考えられたのは、災害届出件数は目立って減少していたものの(たとえば1999年の死亡災害件数は1971年の水準の4分の1であった)、職場での死亡者数が最近増加し、安全衛生が不十分であるために発生する費用も推定で年間180億ポンドにのぼっていたからである。仕事で損なった健康や業務上の傷害を原因とする2001〜2002年の労働損失日数は、約4,000万日であった。職業性疾病による死亡は今や死亡労働災害より大きな問題であり、イギリスでは有害物質へのばく露を原因とするがんで年間約6,000人の労働者が命を落としているとされている。劣悪な労働環境、労働慣行による不調を訴える労働者も増えている。

 「安全衛生の活性化」戦略では、国の安全衛生制度において政府と安全衛生委員会が達成すべき目標を定めている。具体的には、業務上の傷害および疾病による労働者100,000人当たりの労働損失日数を2010年までに30%減少させる;死亡労働災害と重大傷害の発生率を2010年までに10%減少させる;業務上疾病の発生率を2010年までに20%減少させる;2004年までにこれらの目標の半分を達成する;となっている。

 これらの目標では発生率に注目しているが、その背景には、農業や高リスクな造船などの産業において雇用者数が減少しているために、死亡・傷害件数という表面的な数字を見ていたのでは対応を誤る可能性があるという認識がある。

 「安全衛生の活性化」には、さまざまな優先課題を定める一方で、特に安全衛生委員会の作業プログラムを支援するために政府がさらに短期的・中期的になしうることに焦点をあてた行動計画が含まれている。行動計画に含まれる措置としては、優れた安全衛生体制が産業界にとってメリットになることを強調した事業者の動機付け;約350万社のうち90%を超える企業が従業員数10人未満であることをふまえ、より効果的に小規模企業を関与させること;労働衛生の対象範囲を広げ、社会復帰に関する種々の取り決めの妥当性およびその重要性を高めること;教育訓練のカリキュラムにおいてリスクの概念をより幅広くカバーすること;がある。

 安全衛生委員会はさらに2003年9月、新たな議論の叩き台となる戦略文書を公表した。この文書の主なねらいの一つは、変転する経済の中で効果的な安全衛生文化を確立・維持するための新しい方策を開発することであり、これを通じて、あらゆる事業者がみずからに課せられた責任を真剣に受け止め、労働者が全面的に関与し、リスクが適切に管理されるようにすることを目指している。さらに、時代に即応した競争力ある企業や公共部門の不可欠の要素として、また社会的正義と社会の一体化に貢献するものとして、安全衛生に対する認識と尊重の度合いを高めることも、ねらいに掲げられている。