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アジアにおけるアスベスト・シンポジウム
Asbestos Symposium for the Asian Countries

著者:フィンランド労働衛生研究所(FIOH) Suvi Lehtinen

資料出所:ILO/フィンランド労働衛生研究所(FIOH)発行
「Asian-Pacific Newsletter on Occupational Health and Safety」
2002年第3号(第9巻「Occupational hygiene and practical solutions」)
(仮訳 国際安全衛生センター)

原文はこちらからご覧いただけます



 アスベストは、世界中で大きな問題となっている。多くの国で、有害且つひどい健康障害を起こすということで、その使用が禁止されている。
 ここ数年間、フィンランド労働衛生研究所(Finnish Institute of Occupational Health: FIOH)は、アスベスト危害について、3回の専門家会議を開催した。第1回は、1997年1月にヘルシンキで、アスベスト、石綿症、ガンについて開催された。第2回は、1997年12月にハンガリーで、中央・東ヨーロッパ地域シンポジウムとして開催された。第3回の専門家会議は、2000年2月、再びヘルシンキで行われた。この時の目的は、放射線医学及び肺ガンのスクリーニング法の最近の進歩についてであった。
 産業医科大学(産医大:UOEH)は、2002年9月26-27日、アジア9ヶ国のアスベストの状況を把握するためのシンポジウムを開いた。

1. アジアにおけるアスベスト・シンポジウム
 アジア各国のアスベスト暴露状況を調査するためのアスベスト・シンポジウムを開催しようという考えは、数年前に持ち出された。この件は、日本の北九州市にある産医大で、研究者の交換交流に合わせて、議論された。1998年、FIOHのMatti Huuskonen教授が、アスベストシンポジウムを開催してはどうかと、最初に議論を持ち掛けた。中央・東ヨーロッパ地域シンポジウムのモデルにならって、産医大学長の大久保利晃教授と高橋謙教授が、会議開催を引き受けてくれた。FIOHも、共催者として参加した。計画と運営は、産医大が行った。
 このシンポジウムは、準備段階から支持してくれたILO東京支局(注:のちに駐日事務所に改称)の寺本氏、WHOの小川氏らの協力の下に行われた。WHO西太平洋地域事務局長、尾身氏のメッセージが産医大の産業生態科学研究所所長、伊規須教授によって、参加者に伝えられた。

2. キーノートスピーチとカントリーレポート
 シンポジウムは、世界規模でのアスベスト問題を提起した5人のキーノートスピーチで始まった。FIOHのAntti Karjalainen博士は、アスベスト関連疾病の疫学及び臨床面について報告した。FIOHのJorma Rantanen教授は、社会におけるアスベスト問題の分布状況について発表した。スウェーデン国家安全衛生評議会(Swedish Work Environment Authority:SWEA)のAnders Englund博士は、建設業でのアスベスト危害解決法の事例を紹介した。大阪府立成人病センターの森永謙二教授は、アスベスト関連疾病の防止、スクリーニンク゛、調査について報告を行った。FIOHのAntti Tossavainen博士は、アスベスト危害防止の最近の国際的活動を紹介した。
 9ヶ国のレポートは、それぞれの国のアスベスト暴露の状況、医療効果、そして国レベルでどのような取り組みをすればよいかについての報告であった。この9ヶ国は、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、中国、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムだった。更に2件の特別報告がなされた。ひとつは、東ティモールの1999-2001年の災害時におけるアスベスト管理で、もうひとつは、日本におけるアスベストの法規についてであった。
 カントリーレポートの多くが結論づけていたことは、暴露及び医療効果についての全体像を把握するためには、もっと多くの情報を集めてまとめる必要があるということだった。大半の国では、数十年にわたって、アスベストの輸入及び使用が行われており、幾つかの国では、さらに増加してさえいるとのことである。従って、これらの国のアスベスト暴露状況を調べ、暴露量及び十分に裏付けのある悪影響について、関連当局に知らせることが、緊急課題である。将来にわたって、中皮腫及び肺ガンの発生を減少させるためには、当局がアスベスト暴露を抑制する対策をとることが大切である。

3. 活発な議論
 全ての発表に対して、多くの議論、質問、コメントがよせられた。シンポジウムの主な目的である、参加者が顔を合わせ情報交換を行うことは、十分に達成された。休憩中の非公式なディスカッションでは、各国代表者は、ほかの国の同じ様な仕事をしている専門家との交流を更に深めることができた。このことが、ネットワークを活発にするのである。

4. 会議録
 シンポジウムで発表されたデータ及び情報が、会議に参加できなかった人にも活用できるようにと、シンポジウムの会議録が発刊されることになった。購入を希望する人は、産医大の高橋謙教授に連絡を取ること(Eメール:ktaka@med.uoeh-u.ac.jp)。価格については後日発表される。

5. 運営
 産医大の環境疫学教室とそのスタッフが、会議の進行運営等を執り行ってくれた。参加者は、会議開催中、暖かいもてなしを受けた。万事が行き届いており、専門家たちが交流し、情報交換し、互いに学び合い、手本となる、ほかの国での実施モデルを持ち帰ることができた、すばらしいフォーラムであった。通常、(ほかの国の実施例を)そのまま自国に適用できることはまずなく、それぞれの国の状況に合わせて調整する必要がある。そしてこのことは、我々が取り組むべき難しい課題なのである。


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