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第194号:業務上疾病一覧表に関する勧告(2002年)

(仮訳 国際安全衛生センター)

原文はこちらからご覧いただけます
http://www.ilo.org/ilolex/cgi-lex/convde.pl?R194



業務上疾病一覧表および労働災害と業務上疾病の記録と届出に関する勧告
勧告番号:第194号
総会開催地:ジュネーブ
会期:第90回総会
採択日付:2002年6月20日
主題区分:業務災害給付
言語:英語、フランス語、スペイン語
ステータス:1985年に採択された勧告の更新であり、最新の勧告である。


国際労働機関(ILO)総会は、国際労働事務局の理事会により召集され、2002年6月3日に第90回総会がジュネーブで開催された。

本総会では、1981年に採択された「労働安全衛生に関する条約と勧告」および1985年に採択された「労働衛生サービスに関する条約と勧告」について、さらに、1964年に採択された「業務上災害給付に関する条約」に添付され、1980年に改訂された「業務上疾病一覧表」についても言及された。これに関連して、原因の特定、予防措置の確立、記録と届出制度の統一化の促進、および労働災害や業務上疾病が発生した場合の補償プロセスの改善を目的として、労働災害と業務上疾病の特定、記録、届出についての手続きを強化する必要性を考慮し、また、「業務上疾病一覧表」の更新手続きの簡素化の必要性も考慮し、本総会は、総会議題の第5号である労働災害と業務上疾病の記録と届出、および「業務上疾病一覧表」の定期的見直しと更新に関する提案を採択する決定を下した。さらに、かかる提案が「勧告」の形で採択されることも決定された。

よって、本総会は2002年6月20日付けで「2002年業務上疾病一覧表に関する勧告(the List of Occupational Diseases Recommendation, 2002)」と称される下記の勧告を採択する。

1. 労働災害と業務上疾病の記録と届出制度の確立、見直し、適用に際して、権限当局は、労働災害と業務上疾病の記録と届出に関する1996年のコードオブプラクティス(Code of practice)およびILOが将来承認する本主題に関連したその他のコードオブプラクティスまたはガイドを考慮するものとする。

2. 各国の権限当局は、最も代表的な事業者団体および労働組合と協議の上、自国の業務上疾病一覧表を業務上疾病の予防、記録、届出および(該当する場合は)補償の目的で、自国の実情や慣習に適した方法で、必要に応じて段階的に作成するものとする。この一覧表には以下を含むものとする。

(a) 予防、記録、届出および補償の目的上、この一覧表は少なくとも、1964年に採択され、1980年に改正された「業務災害給付に関する条約(Employment Injury Benefits)」の付表1に列挙されている疾病を含むものとする。

(b) 可能な範囲で、本勧告に付属された「業務上疾病一覧表」に含まれるその他の疾病も含むものとする。

(c) 可能な範囲で、「業務上疾病と疑われる疾病」と表題がつけられた条項を含むものとする。

3. 本勧告に付属された一覧表は、ILO理事会が召集する三者構成専門家会議により定期的に見直され、更新されるものとする。更新された一覧表は理事会に提出されその承認を受けるものとする。理事会による承認後、新しい一覧表は従前の一覧表に取って代わり、ILO加盟国に通知される。

4. 各国の業務上疾病一覧表は、上記3項に従って設定される最新の一覧表を十分に考慮し、見直され、更新されるものとする。

5. 各加盟国は、自国の業務上疾病一覧表が設定または改正された場合は、速やかにその一覧表をILO事務局に提出し、本勧告に付属された業務上疾病一覧表の定期的な見直しや更新に資するものとする。

6. 各加盟国は、労働災害と業務上疾病および(統計資料を提出することが適切と思われる)危険な事故や通勤途上災害に関する包括的な統計資料を毎年ILO事務局に提出し、これらの統計資料の国際比較に資するものとする。

付属文書

業務上疾病一覧表

1. 因子に起因する疾病
1.1. 化学的因子に起因する疾病
1.1.1. ベリリウムまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.2. カドミウムまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.3. リンまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.4. クロムまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.5. マンガンまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.6. ヒ素またはその有害化合物に起因する疾病
1.1.7. 水銀またはその有害化合物に起因する疾病
1.1.8. 鉛またはその有害化合物に起因する疾病
1.1.9. フッ素またはその有害化合物に起因する疾病
1.1.10. 二硫化炭素に起因する疾病
1.1.11. 脂肪族または芳香族炭化水素の有害ハロゲン誘導体に起因する疾病
1.1.12. ベンゼンまたはその有害同族体に起因する疾病
1.1.13. ベンゼンまたはその同族体の有害ニトロおよびアミノ誘導体に起因する疾病
1.1.14. ニトログリセリンまたはその他の硝酸エステルに起因する疾病
1.1.15. アルコール、グリコールまたはケトンに起因する疾病
1.1.16. 窒息剤(一酸化炭素、シアン化水素またはその有害誘導体、硫化水素)に起因する疾病
1.1.17. アクリロニトリルに起因する疾病
1.1.18. 窒素酸化物に起因する疾病
1.1.19. バナジウムまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.20. アンチモンまたはその有害化合物に起因する疾病
1.1.21. ヘキサンに起因する疾病
1.1.22. 鉱酸に起因する歯の疾病
1.1.23. 薬剤に起因する疾病
1.1.24. タリウムまたはその化合物に起因する疾病
1.1.25. オスミウムまたはその化合物に起因する疾病
1.1.26. セレンまたはその化合物に起因する疾病
1.1.27. 銅またはその化合物に起因する疾病
1.1.28. スズまたはその化合物に起因する疾病
1.1.29. 亜鉛またはその化合物に起因する疾病
1.1.30. オゾン、ホスゲンに起因する疾病
1.1.31. 刺激剤(ベンゾキノンおよびその他の角膜刺激剤)に起因する疾病
1.1.32. 前記1.1.1項から1.1.31項に記載されていないその他の化学因子で、それらの化学的因子への労働者の暴露と発症した疾病との間に関連性が立証されている化学的因子に起因する疾病

1.2. 物理的因子に起因する疾病
1.2.1. 騒音に起因する聴覚障害
1.2.2. 振動に起因する疾病(筋肉、腱、骨、関節、末梢血管または末梢神経の障害)
1.2.3. 高圧室内作業に起因する疾病
1.2.4. 電離放射線に起因する疾病
1.2.5. 熱放射に起因する疾病
1.2.6. 紫外線照射に起因する疾病
1.2.7. 極端な温度に起因する疾病(日射病,凍傷等)
1.2.8. 前記1.2.1項から1.2.7.項に記載されていないその他の物理的因子で、それらの物理的因子への労働者の暴露と発症した疾病との間に直接の関連性が立証されている物理的因子に起因する疾病

1.3. 生物学的因子に起因する疾病
1.3.1. 特定の汚染のリスクがある作業において発症した伝染病または寄生虫病

2. 標的器官系の疾患
2.1. 職業性呼吸器疾患
2.1.1. 不溶性鉱物性粉じんに起因するじん肺症(珪肺症、炭粉珪肺症、アスベスト症)および珪肺症結核、但し、珪肺症が結果的な不能状態または死亡の主要因であるものとする
2.1.2. 硬金属紛じんに起因する気管支肺疾患
2.1.3. 綿、亜麻、アサまたはサイザルアサの紛じんに起因する気管支肺疾患(綿肺症)
2.1.4. 作業工程に内在する認定感作物質または刺激剤に起因する職業性喘息
2.1.5. 各国の法令に規定された有機質紛じんの吸入に起因する外因性アレルギー性肺胞炎
2.1.6. 鉄肺症(シデローシス)
2.1.7. 慢性鬱血性肺疾患
2.1.8. アルミニウムに起因する肺疾患
2.1.9. 作業工程に内在する認定感作物質または刺激剤に起因する上部気道疾患
2.1.10. 前記2.1.1.項から2.1.9.項に記載されていないその他の呼吸器疾患で、その因子への労働者の暴露と発症した疾患との間に直接の関連性が立証されている因子に起因する呼吸器疾患

2.2. 職業性皮膚疾患
2.2.1. 他の項目に含まれていない物理的因子、化学的因子、または生物学的因子に起因する皮膚疾患
2.2.2. 職業性白斑

2.3. 職業性筋骨格系障害
2.3.1. 特定の作業活動または特定のリスク要因が存在する作業環境に起因する筋骨格系障害

このような活動または環境の例には以下のものを含む。

(a) 急なまたは反復性の動き
(b) 力をこめる
(c) 過度な機械的な力の集中
(d) ぎこちないまたは無理な姿勢
(e) 振動

寒い場所や環境の場合はリスクが高くなる。
   
3. 職業癌
3.1. 下記の因子に起因する癌
3.1.1. アスベスト
3.1.2. ベンジジンおよびその塩
3.1.3. ビス(クロロメチル)エーテル(BCME)
3.1.4. クロミウムおよびクロミウム化合物
3.1.5. コールタール、コールタールピッチまたはすす
3.1.6. ベーターナフチルアミン
3.1.7. 塩化ビニル
3.1.8. ベンゼンまたはその有害同族体
3.1.9. ベンゼンまたはその同族体の有害ニトロおよびアミノ誘導体
3.1.10. 電離放射線
3.1.11. タール、ピッチ、ビチューメン、鉱油、アントラセン、またはこれらの物質の化合物、製品または残留物
3.1.12. コークス炉放出物
3.1.13. ニッケル化合物
3.1.14. 木材紛じん
3.1.15. 前記3.1.1.項から3.1.14.項に記載されていないその他の因子で、その因子への労働者の暴露と発症した癌との間に直接の関連性が立証されている因子に起因する癌

4. その他の疾病
4.1. 鉱夫の眼球振とう症

相互参照
条約:第121号、業務災害給付条約、1964年
条約:第155号、労働安全衛生条約、1981年
条約:第161号、労働衛生サービス条約、1985年
勧告:第164号、労働安全衛生勧告、1981年
勧告:第171号、労働衛生サービス勧告、1985年