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フォーカス:職業上の安全と衛生

資料出所:ILO発行「World of Work The Magazine of The ILO」
2001年第38号 p.21-22
(訳 国際安全衛生センター)

● 香港では、職業上の傷害に関する調査のなかで主婦は長い間無視されてきた。今回、新たな調査により、とくに家庭内で労働する女性は、腕と手の酷使または蓄積性ストレスによる傷害を負いやすいことが明らかになった。香港中文大学によると、North District Hospital(北地区病院)で蓄積性ストレス障害の患者を調査した結果、その70%が女性で、うち40%が主婦であることがわかった。これとは別に、6カ月から15年間、フルタイムで家事労働に従事した20人の主婦を調査したところ、テニス・ゴルフ肘や手根管症候群、手と前腕の腱が炎症を起こすド・ケルヴァン腱鞘炎の主な予兆要因として、休憩時間の不足があることが明らかになった。ある研究者は「主婦は、家庭労働によって肉体的負担と精神的ストレスを負っている。作業療法医院の患者に主婦が増えていると思われることから、傷害の背景要因を具体的につかむための研究が必要になっている」と述べている。(『Reuters Health』2001年1月24日)

● 米国で、ノーカーボン・コピー紙(CCP)を使用する事務労働者は、職業上のリスクに直面するおそれのあることが明らかになった。国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の最近の調査によると、銀行預金の申し込み用紙など、一般に複写式の用紙に使用される種類のCCPに暴露すると、皮膚、目、上部呼吸器系への刺激といった症状をひき起こす場合がある。『NIOSHハザード・レビュー:ノーカーボン・コピー紙』と題された155ページの文書によると、ある種のCCPには、ホルムアルデヒド、灯油、フタール酸塩、アクリル酸塩などの化学的成分が含まれている。(『Reuters Health』2001年1月)

● イギリスの労働組合会議(TUC)が、同国でもっとも汚染のひどい職場を一掃するためのキャンペーンを開始した。そして職場の危険な化学物質や粉じん、ヒュームに労働組合が対処するための指針を発表した。このキャンペーンは「健康への有害物質抑制規則」(1999年)を根拠に進められる。TUCの指針によると、700万人を超える、つまりイギリスの労働者の3人に1人が、毎日の業務で危険なヒュームや粉じんを吸いこんでいる可能性があり、それらの物質は皮膚炎、喘息、場合によっては中皮腫などの致命的なガンの原因になるおそれがある。政府統計によると、男性の方が女性よりリスクが大きい。建設、農業、金属加工などの業種の暴露水準が高いためである。ただし美容、繊維、配膳業、看護師、清掃業務では女性が暴露のリスクに直面している。(TUC 2001年1月31日)

● 南アフリカのEsschem化学工場で火災があり11人の労働者が死亡したことから、同国の労務体制に対する調査がはじまった。火災で工場が消失し、女性10人、男性1人が死亡したことを受け、労働省が調査を開始した。死亡した労働者は、職場での窃盗を懸念するあまり、電話も非常口もない職場に閉じ込められていたのではないかとの疑いがでてきた。『South African Health Review』(1999年)によると、民間部門の職場のうち、なんらかの形態の労働衛生サービスを提供しているのは、都市部に集中する大企業を中心に11%から18%しかない。政府関係者は、労働衛生法と労働者教育を見直し、安全規準違反容疑に対する報告体制を強化すべきだと訴えている。(『Asia Intelligence Wire, Woza Internet』2000年11月22日)

● バングラデシュの衣料品工場の火災で約50人の従業員が死亡し、そのほとんどが女性と子供であったことから、あらためて衣料品産業の労働条件への懸念が広がった。場所はダッカ南のシブパーにあるチョーダリー・ニットウェア・ガーメントの工場で、死亡した労働者の大半は、火から逃れようとして圧死した。また100人ちかくが地元の病院で治療した。バングラデシュ政府は調査を命じ、衣料製造輸送業者組合の幹部は安全対策の改善を約束した。バングラデシュでは、1990年以来、工場火災で約300人が死亡している。(『The Guardian』London2000年11月28日)

スウェーデンの研究者によると、労働者が疾病休業を取るトップの理由として、いじめと職場の再編成への不安が挙げられている。また、最近の傾向となっている懲罰的な疾病休業方針によって「皆勤主義」を奨励したり、病気でも無理に出勤するよう促すと、逆に生産性が低下することも明らかになった。研究者は、超過勤務を頻繁に行う人は疾病休業取得に消極的なこと、また病気でも無理に出勤する労働者は、結局はより多くの疾病休業をとるようになるとの結果を得た。調査では、スウェーデンの郵便業を担うスウェーデン・ポストの約3,500人のスタッフの疾病休業記録を分析した。明らかになった重要な事実のひとつは、いじめは明らかに女性の疾病休業日数を倍化させていたことである。一方、男性の疾病休業の最大要因は、職場の再編成に対する不安だった。(『Study for Sweden Post』2001年1月)

● イタリアでは、毎日、平均3人が業務中に死亡しているとする新たな報告があった。同国の労働組合メンバーによると、昨年の1月から8月までに約65万件の労働災害が報告され、849人が死亡した。これは前年同期比で18%の増加である。死亡者数がもっとも多いのは建設で、その次が運輸である。労組指導部は、災害発生件数増加の原因として、労働安全基準と監督の軽視、それに情報部門での作業を指摘し、労働者と事業者に対する同等の教育の強化を訴えている。(『Liberation』2000年10月23日)