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保健医療現場における暴力 :新しいガイドラインの始まり

資料出所:ILO発行「World of Work The Magazine of The ILO」
December, 2002 No.45, p.27
(仮訳:国際安全衛生センター)

 

世界の4000万人の保健医療労働者の平均約半分が、職場内暴力に悩まされている。医療専門職を職場での恐怖、暴行、屈辱や、殺人との闘いから救済する目的で、労働、衛生、公共機関の合同プログラムが、始動しはじめた。

ジュネーブ - 2002年10月、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国際公務員労組連盟(PSI)、国際看護師協会(ICN)から成る合同対策委員会で、“保健部門の職場内暴力対策枠組みガイドライン”作りが、ILOで始まった。

まず始めに、先進国、開発途上国を含む世界中の病院やその他の保健医療現場で増大している問題に直面する。調査によると、仕事中に起きる全ての暴力事件の25%近くが保健部門で起きており、保健医療労働者の50%以上が、このような事件を経験している。

「現在のところ、これは、氷山の一角にすぎない」そして、「総体的に、個人、職場、地域のために職場内暴力対策にかかる膨大な費用は、明らかに増加してきている」と、対策委員会で職場内暴力を調査している、国際安全衛生専門家の Vittorio di Martino氏は述べている。

保健部門における暴力は、生産性や発展のみならず保健医療の質までも脅かし、個人への暴行や屈辱をはるかに超えたものであると、研究結果は示している。「保健部門において仕事中に起きる暴力の影響は、特に開発途上国においては、保健衛生システムの有効性に重大な影響をもたらす」とMartino氏は、発言している。

欧州委員会によると、ガイドラインは、職場内暴力を、“通勤を含む仕事に関連する環境内において労働者が虐待され、脅され、暴行される事件であり、労働者の安全、幸福、健康を明白にまたは間接的に脅かすもの”と定義している。職場内暴力はすべてのサービス部門において深刻な問題であるが、保健医療労働者は、その中でも特に危険にさらされていると、報告書は述べている。

アメリカにおいて、保健医療労働者は、他のサービス業労働者の16倍、暴力の危険にさらされており、アメリカの職場内で起きる攻撃に対する申し立ての半分以上は、保健部門からのものである。

  • イギリスでは、1998年、国立衛生サービス(NHS)職員の約40%が、いじめにあっていると報告した。
  • オーストラリアでは、2001年、保健医療労働者の67.2%が、身体的・精神的暴力を経験した。
  • 保健医療労働者に対する職場内暴力の広がりは、工業国に限ったことではない。2001年、ブルガリア(75.8%)、南アフリカ(61%)、タイ(54%)においては、保健医療労働者の半分以上が、そしてブラジルでは46.7%が、少なくとも1回は身体的・精神的暴力を経験している。
  • 調査によると、保健部門における言葉による暴力・いじめ・集団暴力を含む精神的暴力は、身体的暴力よりもたびたびあり、被害者の40∼70%が、重大なストレス症状を訴えている。
  • 職場内暴力は、保健部門において、全ての職業集団、性別、職場環境に影響を及ぼす。しかしながら、最も高い率で被害を受けているのは、救急隊員、看護師、医師達である。郊外の大病院、人口密度が高く犯罪率の高い地域、同様に、隔離された地域でのそういった場所は、特に危険である。
  • 多くの国で、報告手続きが十分でなく、加害者は告訴されない。保健部門における職場内暴力と戦うための方策は、まだ始まったばかりであり、まずは保健医療労働者やその他関係者の間で、問題への認識を高め理解を築くことから始めなければならない。

 ガイドラインは、政府、使用者、労働者、労働組合、職業集団、一般の人々のような、職場における安全に責任を持つ全ての人々を支援することを目的としている。特に、様々なタイプの干渉を考慮し、そして、論理的で差別のない、文化や性別に配慮した形で、関与している全ての団体を念頭に置きながら、保健医療労働者が保健部門における暴力問題にどのようにアプローチ出来るかということを、ガイドラインは示している。又、予防措置を通して、リスクを把握し、評価し、削減させる方法、暴力の影響力を最小限に抑える方法、再発防止法を、ガイドラインは示している。

 ガイドラインは、経営陣が職場内暴力に関する明確な方針を打ち出すこと、そして全ての人々が問題への意識を高めることを含めて、尊厳のある、差別のない、平等な機会と協力に基づいた人間中心の職場の発展を優先事項としている。 2003年10月に、ILOによるサービス産業における職場内暴力とストレスに関する実施基準“生産性とディーセント・ワークへの脅威(A Threat to Productivity and Decent Work)”を採択する予定である。