このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

NIOSHアラート(警告)

保健医療現場における抗腫瘍薬
およびその他の危険な医薬品への職業性ばく露の防止(要約)
Preventing Occupational Exposures to Antineoplastic and Other Hazardous Drugs in Health Care Settings

(資料出所:NIOSH発行「ALERT」 DHHS(NIOSH) 発行番号 No.2004-165 September 2004

(仮訳 国際安全衛生センター)



警告!
保健医療現場において危険な医薬品を使用したり、そのそばで作業をしたりすると、皮膚発疹、不妊症、流産、先天性異常、および場合によっては白血病その他のがんを発症するおそれがある。

 危険な医薬品を使用したり、そのそばで作業する保健医療従事者は、空気中や作業台、衣服、医療機器、または患者の尿や便に含まれるこうした危険な医薬品にばく露するおそれがある。危険な医薬品として、がんの化学療法で使われる医薬品、抗ウイルス薬、ホルモン、一部のバイオ医薬品、およびその他のさまざまな医薬品がある(危険な医薬品のリストについては、「NIOSHアラート:保健医療現場における抗腫瘍薬およびその他の危険な医薬品への職業性ばく露の防止(NIOSH Alert: Preventing Occupational Exposures to Antineoplastic and Other Hazardous Drugs in Health Care Settings)」の付録A(Appendix A)を参照のこと)。健康に対するリスクの度合いは、これらの医薬品に対する労働者のばく露の期間と、これらの医薬品の毒性の程度によって異なる。

保健医療従事者は、危険な医薬品から身を守るために、次のことを行わなければならない。
  • 自分が扱う危険な医薬品に関して事業者が提供するすべての情報および化学物質等安全データシート(MSDS)を読む。
  • 自分が扱う危険な医薬品と、ばく露防止のために使用する必要がある機器および手順に関して、事業者が実施するすべての教育訓練に参加する。
  • 危険な医薬品へのばく露の原因をよく認知し、これらの原因を認識する。ばく露の原因には、次のようなものがある。
    • 危険な医薬品が関わるあらゆる手順(調合、投与、および清掃を含む)
    • 危険な医薬品に触れるあらゆる物(作業台、機器、個人用保護具、点滴用(IV)バッグおよびチューブ、患者由来の廃棄物、汚れた布類を含む)
  • 危険な医薬品の調合は、許可された者以外立ち入りできない専用の区域で行う。
  • 危険な医薬品の調合は、ばく露から労働者およびその他の者を保護し、無菌状態での取り扱いが必要なあらゆる医薬品を保護するために設計された、換気キャビネットの内部で行う。
  • 危険な医薬品にばく露するおそれがある場合は、常にパウダーフリーの化学療法用使い捨て手袋を2対着用し、外側の手袋で白衣の袖口を覆う。
  • ポリエチレンでコーティングされたポリプロプレン素材(糸くずが出ず、非吸収性)の使い捨て白衣を着用して皮膚との接触を避ける。白衣の前身ごろに開口部がなく、袖が長く、袖口がゴムまたはニットで閉まるようになっていることを確認する。
  • 目、鼻、または口に飛沫が入るおそれがあり、適切な工学的管理手段(換気キャビネットのサッシまたは窓など)を利用できないときは、保護面を着用する。
  • 個人用防護服(使い捨ての手袋や白衣など)着用のすぐ「前」と脱衣「後」に石鹸と水で手を洗う。
  • 危険な医薬品の調合および処方には、Luer-Lok(TM)式フィッティングの付いた注射器と点滴セットを使用する。
  • 医薬品に汚染された注射器と注射針は化学療法用鋭器廃棄容器に捨てる。
  • いっそうの保護が必要な場合には、換気キャビネットの内部で、密閉式の医薬品移し替え機器、グローブバッグ、および針を使わない器具を使用する。
  • 有害廃棄物と汚染物をその他のゴミと分けて扱う。
  • 危険な医薬品が関わる作業を行う前後、および交替勤務終了時には、作業区域の消毒と汚染除去を行う。
  • 危険な医薬品が少量こぼれた場合には、安全に関する適切な注意事項を守り、個人用保護具を着用したうえで、こぼれたものをただちに片付ける。
  • 危険な医薬品が大量にこぼれた場合には、環境業務専門家に助力を仰いで片付ける。
保健医療従事者を雇用する事業者は、危険な医薬品へのばく露から労働者を保護するために、次のことを行わなければならない。
  • 保健医療従事者の医学的監視に加え、危険な医薬品の受け入れと保管・調合・処方・整理整とん・汚染除去と消毒、および未使用の医薬品・汚染流出物・患者由来の廃棄物の廃棄も含めた、危険な医薬品の取り扱いのすべて面にわたって、書面による方針を確実に用意する。
  • これらの方針、およびばく露を防止するためのその他のプログラムを開発する際、危険な医薬品を扱う労働者から意見を求める。
  • 職場に存在するすべての危険な医薬品の目録を書面で用意し、目録の定期的な見直しと更新のための手順を確立する。
  • 危険な医薬品の認識と評価、および危険な医薬品へのばく露の管理について、労働者を教育する。
  • 危険な医薬品を扱ったり、そのそばで作業する労働者に対し、適切な情報と化学物質等安全データシート(MSDS)を提供する。
  • 危険な医薬品の調合を行うための、許可された者以外立ち入りできない専用の区域を用意する。
  • 医薬品から労働者の側へと空気が流れるような層流型の作業場で危険な医薬品の調合を行うことを労働者に禁止する。
  • ばく露から労働者およびその他の者を保護し、無菌状態での取り扱いが必要なあらゆる医薬品を保護するために設計された換気キャビネットを提供し、保守する。換気キャビネットの例として、生物学的安全キャビネット(biological safety cabinet: BSC)、作業環境への危険な医薬品の漏出を防ぐための封じ込め隔離装置(containment isolator)がある。
  • 換気キャビネットからの排気をHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターでろ過する。換気キャビネットの排気は、可能な場合には必ず---窓、ドア、およびその他の空気取り入れ口から十分に遠ざけて---戸外に排出する。
  • 労働者を保護するための補助器具、たとえばグローブバッグ、針を使わない器具、密閉式の医薬品移し替え機器の提供を検討する。
  • 危険な医薬品、患者由来の廃棄物、および汚染物の取り扱いに関する適切な作業慣行を確立し、監督する。
  • 労働安全衛生局(OSHA)の個人用保護具基準[29 CFR(*) 1910.132]の要件に従い、リスク評価に基づいて適切な個人用保護具を労働者に提供し、個人用保護具の使用法について労働者を教育する。個人用保護具とは、たとえば化学療法用手袋、糸くずが出ない非吸収性の白衣およびスリーブカバー、目と顔の保護具などである。
  • 労働者による個人用保護具の適切な使用を確実にする。
  • NIOSHが承認したマスクを使用する[42 CFR 84]。注意:外科手術用マスクでは適切な呼吸保護はできない。
  • 危険な医薬品の調合および処方のために、Luer-Lok(TM)式フィッティングの付いた注射器と点滴セットを提供する。また、これらを廃棄するための容器も提供する。
  • 医薬品調合中の看護スタッフを保護するために、密閉式の医薬品移し替え機器および針を使わない器具の使用を検討する。
  • ばく露をできる限り減らすために、職場の危険な医薬品、機器、教育訓練の効果、各種方針、および手順を定期的に評価する。
  • 有害廃棄物の取り扱い、貯蔵、および運搬に関する米国環境保護庁(EPA)資源回収保護法(Resource Conservation and Recovery Act)(EPA/RCRA)の諸規則を遵守する。

詳細については、NIOSHアラート「保健医療現場における抗腫瘍薬およびその他の危険な医薬品への職業性ばく露の防止(Preventing Occupational Exposures to Antineoplastic and other Hazardous Drugs in Health Care Settings)」[DHHS (NIOSH) Publication No. 2004-165]を参照のこと。冊子としてのアラートは次のところから無料で入手できる。

NIOSH -- Publications Dissemination
4676 Columbia Pkwy
Cincinnati, OH 45226-1998

Telephone: 1-800-35-NIOSH (1-800-356-4674) 
Fax: 1-513-533-8573 E-mail: pubstaft@cdc.gov

NIOSH Webサイト:
www.cdc.gov/NIOSH

DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
Centers for Disease Control and Prevention
National Institute for Occupational Safety and Health

DHHS (NIOSH) Publication No. 2004-165a

* 連邦規則集(Code of Federal Regulations)。