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NIOSHアラート(警告)
保健医療現場における注射針による傷害防止
(Preventing Needlestick Injuries in Health Care Settings)

資料出所:NIOSH発行「ALERT」 DHHS(NIOSH)
発行番号 No. 2000-108新しいウィンドウへ表示します November 1999
(訳 国際安全衛生センター)

警告!

針を使用するかまたは針に曝される機会がある保健医療従事者は、注射針による傷害の高リスク群である。針による傷害は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの血液感染性病原体による重篤な、または致命的な感染症を引き起こすことがある。

保健医療従事者を雇用する事業者は針による傷害を減少させるために改善された工学的な管理をすべきである。

針による傷害は、労働者も参加する包括的プログラムに改善された工学的な管理の活用を取り入れることで、最も効率的に減少させることができる。事業者は下記のプログラム内容を実施しなければならない。

保健医療従事者は、自分自身と同僚を針による傷害から守るために下記の措置を実施しなければならない。

保健医療現場における注射針による傷害防止

国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、保健医療従事者間の針による傷害防止に協力するよう要請している。* このような傷害は皮下針、採血針、静脈内(IV)探査針、経静脈ラインの部品を連結するために用いる針を含む注射針が原因となって起こる。このような傷害は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの、血液感染性病原体による数々の重篤で致死的となる可能性のある感染症を引き起こすこともある。


*本書において「保健医療従事者」という場合、注射針や、血液または他の感染性のある物質を含みうる鋭利な器具を使用するかまたはそれらに曝される可能性のある、医療現場におけるすべての労働者をいう。保健医療従事者には医師、看護師、検査室および歯科職員、入院前の治療を施す者の他、清掃、洗濯、メンテナンス労働者も含まれる。

このような傷害は、注射針の不必要な使用を止めること、安全機能を持つ器具を使用すること、注射針の取り扱いおよび関連システムに関する教育や安全な業務を促進することによって避けることができる。これらの手段は血液感染性病原体による伝染を予防するための包括的プログラムの一環として行うべきである。

この「警報」は、針による傷害および血液感染性病原体のリスクに関する最新の科学的情報を保健医療従事者に提供するものである。本書は、すべての鋭器関連の傷害および関連する血液感染を予防するための広範な活動における重要な要素として、針による傷害に焦点を置いている。本書では、鋭器関連感染症の保健医療従事者5例について述べ、これらのリスクを軽減するための介入措置および戦略を示す。最近では多くの針を使わない器具や安全な注射針類が紹介されており、この分野は急速に発展しているため、この「警報」ではこれらの器具を評価するアプローチについて簡単に説明する。

NIOSHは、労働者、事業者、製造者、専門雑誌の編集者、安全衛生当局者、および労働組合がこの「警報」の勧告を実行し、事業場で注射針を使用するかまたはそれらに曝される可能性のあるすべての保健医療従事者の注意をこの勧告に向けさせるよう求めている。

背景

米国で800万人を超える保健医療従事者が病院や他の保健医療現場で働いている。保健医療従事者の間での針による傷害その他の経皮傷害の年間発生数について国からの正確なデータはない。しかし、推定によれば、年間60万から80万件のその種の傷害が発生している。[Henry and Campbell 1995; EPINet 1999] これらの傷害の約半数は報告されないままである。[Roy and Robillard 1995; EPINet 1999; CDC 1997a; Osborn et al. 1999] EPINetシステムからのデータにより、平均的な病院では、労働者は年間、100床ごとに約30件の針による傷害を受けていることが示唆される。[EPINet 1999]

針による傷害の報告が最も多いのは看護職員である。が、検査室職員、医師、掃除担当者、その他の保健医療従事者も傷害を負っている。これらの傷害によって、感染症の原因となりうる血液感染性病原体に労働者が暴露されることもある。これらの病原体のうち、最も重要なものはHBV、HCV、HIVである。これら各病原体による感染症は生命を脅かすこともあるが、予防可能なのである。

針による傷害から感情面で被る衝撃は、たとえ重篤な感染症が起こらない場合でも、重度で長く続くこともある。この衝撃は、傷害によってHIVに暴露した場合には特に激しい。HIVに暴露された20人の保健医療従事者による研究で、11人が短期で重度の苦痛、7人が持続性で中等度の苦痛を報告し、6人は暴露が原因で退職した。[Henry et al. 1990] カウンセリングを必要とする他のストレス反応も報告されている。[Armstrong et al. 1995] 感染源患者の感染症の状態を知らないと、保健医療従事者のストレスを悪化させることになる。暴露された保健医療従事者に加えて、その同僚や家族まで感情的に苦しむこともある。

HIV

1985年から1999年6月の間に、米国保健医療従事者に対する職業的HIV伝染について累積合計55例の「証明された†」症例と136例の「可能性がある‡」症例が米国疾病対策予防センター(CDC)に報告された[CDC 1998a]。最も多いのは看護師と検査技師であった。経皮傷害(例えば針刺し)によるものは、証明された伝染の49例(89%)であった。これらのうち、44例は穿刺針によるもので、そのほとんどが採血またはIV(静脈内)カテーテルの挿入に用いられた。


†職業的暴露後にHIVが証明されたか、または検査により職業的HIV感染の他の徴候があった保健医療従事者。

‡検査を受けて(1)特定可能な行動または輸血のリスクがなく、(2)血液や体液、またはHIVを含む検査液への経皮または経粘膜の職業的暴露を受けたことがあると報告されているが、(3)特定の職業的暴露によるHIV血清変換が証明されなかった保健医療従事者。

HIV感染症は複雑な病気で、多くの症状を伴うことがある。ウイルスは体の免疫系の一部を攻撃し、ついにはAIDSとして知られる状態の重度の感染症や他の合併症を引き起こす。現在のところ、HIV疾患の進行を遅らせる治療を行っているにも関わらず、HIVに感染したほとんどの保健医療従事者は最終的にはAIDSを発症し、死亡することが多い。

HBV

国の肝炎サーベイランスからの情報を用いて、保健医療従事者におけるHBV感染症の数が見積もられる。1995年には、推定800人の保健医療従事者がHBVに感染した。[CDC未発表データ] この数値は1983年の新規感染症例17,000という推定値からの95%の低下に相当した。この低下は主に、保健医療従事者のB型肝炎ワクチン接種が広く行き渡ったことと、労働安全衛生庁(OSHA)の血液感染性病原体基準[29 CFR§ 1910.1030]により求められる全般的予防措置や他の手段の使用によるものであった。


§連邦規則集(CFR)。引用文献のCFR参照。

急性HBV感染者の約3分の1から2分の1が、黄疸、発熱、悪心、および腹痛などの肝炎の症状を発症する。ほとんどの急性感染症は消散するが、患者の5%から10%はHBVによる慢性感染症を発症し、そうなると肝硬変による生涯死亡リスクは推定20%、肝癌による死亡リスクは6%である。[Shapiro 1995]

HCV

C型肝炎ウイルス感染症は米国で最も多い慢性の血液感染症で、約400万人が罹患している。[CDC 1998b] 保健医療従事者の間でのHCV感染症有病率は一般集団と同等(1%から2%)である[CDC 1998b]が、保健医療従事者ではHCV感染症に対する職業的リスクが明らかに高い。感染の危険因子を評価した試験で、過失による針刺し事故の既往は単独でHCV感染症と関連性を示した。[Polish et al. 1993] 職業的にHCVに感染した保健医療従事者の数は不明である。しかし、年間に発生する急性HCV感染症の合計数(1991年の10万から1996年の36,000)のうち、2%から4%は事業場で血液に暴露した保健医療従事者におけるものであった[Alter 1995, 1997; CDC未発表データ]。

HCV感染症は無症状または軽度の症状しか示さないことが多い。しかし、HBVとは異なり、患者の75%から85%が慢性感染症を発症し、70%が活動性の肝疾患を発症する。活動性の肝疾患患者のうち、10%から20%は肝硬変を発症し、1%から5%は肝癌を発症する。[CDC 1998b]。

針による傷害後の感染症のリスク

感染症患者に対する針刺しを行った後、保健医療従事者の感染症のリスクはその病原体、労働者の免疫状態、針による傷害の重症度や、暴露後の適当な予防によって異なる。

HIV

HIVの伝染率を見積もるために、経皮傷害によってHIV感染血に暴露された保健医療従事者に関する、世界中の20を超える先行研究のデータをまとめた。全部で、6,498件の暴露後、感染症は21例発症し、傷害1件につき平均伝染率は0.3%であった。[Gerberding 1994; Ippolito et al. 1999] 既往症例、すなわちHIVに経皮的に暴露された保健医療従事者に関する対照試験により、(1)明らかに血の付いた器具、(2)患者の静脈または動脈に注射針を挿入する処置、または(3)深い傷害によって示される、患者の血液に労働者が暴露された量が多いほど、HIV伝染のリスクは高くなることが明らかにされた。[Cardo et al. 1997]。予備的データより、このような高リスクの針による傷害では、傷害を受けるごとに疾病伝染のリスクが実質的に大きくなることが示唆される。[Bell 1997]

特定の環境で職業的にHIVに暴露された保健医療従事者に対し、HIVへの暴露後予防が推奨される。[CDC 1998c] 限られたデータから、このような予防によってHIVに感染する機会がかなり減少することが示唆される。[Cardo et al. 1997] しかし、HIV暴露後予防に使用される薬剤には多くの有害副作用がある。[CDC 1998c] 現在のところ、HIV感染を予防するワクチンは存在せず、治療する方法もない。[CDC 1998d]

HBV

HBV感染患者への1回の針刺し暴露後の、感受性保健医療従事者へのHBV伝染率は、6%から30%の範囲である[CDC 1997b]。しかし、このような暴露がリスクとなるのは、HBVへの免疫がない保健医療従事者だけである。暴露前のワクチン接種または過去の感染のいずれかによりHBV抗体を有する保健医療従事者は、高リスク群には入らない。加えて、感受性労働者がHBVに暴露された場合でも、B型肝炎免疫グロブリンによる暴露後予防を行い、B型肝炎ワクチンを開始すれば、HBV感染の予防において90%を超える有効性がある。

HCV

針刺しまたは他の経皮傷害によりHCVに暴露された保健医療従事者に関する先行研究より、抗HCV血清変換(感染の指標)の発生率は1件の傷害につき平均1.8%(0%から7%の範囲)であることが明らかとなった。[Alter 1997; CDC 1998b] 現在、HCV感染を予防するためのワクチンは存在せず、暴露後予防として免疫グロブリンも抗ウイルス治療もどちらも推奨されない。[CDC 1998b]。 しかし、感染早期の治療を推奨する動きが急速に出てきている。暴露されたことがわかっている保健医療従事者は、血清変換について監視し、血清変換が認められれば内科的継続管理に回すべきである。

まとめ

HBVへの暴露によって感染の高リスクが生じるが、労働者に暴露前ワクチン接種または暴露後予防措置を施すことにより、このリスクを劇的に低減させることができる。これはHCVやHIVには見られないことである。針による傷害の防止は、保健医療従事者におけるこれらの疾病を予防する最良のアプローチであり、事業場でのあらゆる血液感染性病原体予防プログラムの重要な一部なのである。

針による傷害はどのようにして起こるか?

針による傷害に関連する器具

図1. NaSH病院で経皮傷害の原因となった穿刺針および他の器具の比率を、1995年6月から1999年7月までの経皮傷害合計件数(n=4,951)の%で示す。(出典:1999年CDC)
図1. NaSH病院で経皮傷害の原因となった穿刺針および他の器具の比率を、1995年6月から1999年7月までの経皮傷害合計件数(n=4,951)の%で示す。(出典:1999年CDC)

保健医療従事者は、患者の治療のために多くのタイプの針や他の鋭器を使用する。しかし、CDCの全国病院保健医療従事者監視システム(NaSH)に参加している病院や、EPINet調査データベースに含まれている病院からのデータは、大多数の傷害に関係しているのはほんのわずかな針や他の鋭器であることを示している。[International Health Care Worker Safety Center 1997; EPINet 1999; CDC未発表データ1999] NaSHに参加している病院により1995年6月から1999年7月の間に報告された5,000件近い経皮傷害のうち、62%は穿刺針に関係しており、その中でも主に使い捨てシリンジに取りつけた皮下針(29%)および翼状(蝶型)針(13%)が関係していた。図1は、NaSH病院において、経皮傷害の原因においてこれらおよび他の鋭器が寄与する程度を示している。EPINetに参加している病院からのデータによれば、器具の種類別傷害は類似の分布を示す。[EPINet 1999]

針による傷害に関連する行為

図2. NaSH病院での穿刺針による経皮傷害の原因を、1995年6月から1999年7月までの経皮傷害合計件数(n=3,057)の%で示す。(出典:CDC[1999])
図2. NaSH病院での穿刺針による経皮傷害の原因を、1995年6月から1999年7月までの経皮傷害合計件数(n=3,057)の%で示す。(出典:CDC[1999])

針や他の鋭器にさらされればいつでも、傷害が起こりうる。NaSHからのデータによれば、経皮傷害の約38%が使用中に起こり、42%が使用後の廃棄前に起こることが明らかである。穿刺針による経皮傷害の原因を図2に示す。

針による傷害を引き起こす状況は、用いる器具の種類とデザインに部分的に依存している。例えば、使用後に分解または処理しなければならない針類(例えば、あらかじめ薬剤の充填されているカートリッジ・シリンジや採血針/真空採血管セット)は、明白な危険有害要因であり、傷害発生率上昇の原因となってきた。[Jagger et al. 1988] 加えて、そこそこの長さのフレキシブル・チューブに接続されている針(例えば、翼状針や輸液ラインに接続されている針)は、鋭器容器に入れるのが難しいこともあるため、別の傷害を起こす危険有害要因となる。輸液ラインに接続されている針による傷害は、保健医療従事者が針をIVポートに挿入するときや引き抜くとき、または針を点滴チャンバー、IVポートやバッグ、さらにはベッドに挿入して針刺しの危険有害要因を一時的に取り除こうとするときに発生することもある。

器具の特徴に関連するリスクに加えて、針による傷害は次のような特定の業務にも関連している

過去の針による傷害に関する研究により、10%から25%は使用済み針に再びキャップをかぶせる時(リキャッピング)に発生していることが示されている。[Ruben et al. 1983; Krasinski et al. 1987; McCormick and Maki 1981; McCormick et al. 1991; Yassi and McGill 1991] 人の手によるリキャッピングはかなり以前から反対の声があり、代わりの方法がない場合を除き、OSHA血液感染性病原体基準[29 CFR 1910.1030]で禁止されているが、NaSH病院の針による傷害の5%はまだこの業務に関連している(図2)。保健医療従事者が血液や他の体液をシリンジから検体容器(真空チューブなど)に移そうとして移し損ねた時に、傷害が発生することもある。また、使用済み針や他の鋭器が作業範囲に放置されていたり、針刺し防止仕様ではない鋭器容器に廃棄された場合にも、針による傷害が生じうる。

OSHA、FDAと国家による規制**

OSHA

保健医療従事者の注射針による傷害に関する近年の連邦基準は、1992年に施行された血液感染性病原体に関するOSHA基準[29 CFR 1910.1030; 56 Fed. Reg.†† 64004 (1991)]に拠っている。この基準は血液その他の感染のおそれのある物質に対する職業上の暴露全般に適用される。この基準の主要部分は以下の事項を義務づけている。


**注射針による傷害防止の分野では最近変化の動きがあり、また懸案の法制化の問題があることから、現行の連邦および各州の規制を再検討する必要が高まっている。

††合衆国官報を参照のこと。

OSHAは保健医療従事者が注射針その他の鋭利な医療器具から受ける傷害の件数を減らす活動にも努める方針である[OSHA 1999a]。まず、OSHAは、現在利用可能なより新しく安全な技術を反映し、効果的でいっそう安全な技術を評価し活用する事業者の責任をいっそう重いものとする[OSHA 1999b]、1992年の血液感染性病原体基準[29 CFR 1910.1030]とともに準拠指令の改訂を行った。次に、汚染された針や鋭器類に起因するすべての傷害を、傷害および疾病を記録する事業者が使用するOSHAの記録に留める、という改訂済の記録保存規則における要求事項を提出した。最後に、OSHAは、注射針および鋭器類の傷害をOSHAの規定事項に定めることで、血液感染性病原体基準を修正する措置を今後とる予定である。

FDA

米国食品医薬品局(FDA)の申請許可手続き[FDA 1995]規制のもと、(患者の治療に用いられる注射針も含む)医療器具製造業者は、適切な登録、リスト作成、ラベル表示、および設計と生産のGMP(医薬品の製造および品質管理に関する基準)についての要求事項を満たさなくてはならない。医療器具販売の許可あるいは承認を受ける手続きでは、器具メーカーは(1)新規の器具は実質的に合法的に販売されている器具と同等のものであることを証明すること、または(2)発売前により徹底した承認手続きを経て患者の治療に用いる新器具の安全性と効果を文書で明らかにすることを義務づけられている。また、FDAは鋭器類と保健医療現場における血液感染性病原体伝染に関して[FDA 1992; FDA et al. 1999]、2通の勧告書を出している。

州規制

現在3つの州で保健医療従事者に対する血液感染性病原体暴露の問題に取り組む新たな措置を求める法案を採択し、また20を超える州が同様の法案を検討中である。近年のカリフォルニア基準[State of California 1998]が定めた要求事項のなかには現行のOSHAが求めるものより厳格な項目が見られる。そうした要求事項は、一定の手順について針を用いないシステム利用を求める、あるいは(針なしのシステムが利用できない場合)一定の手順について鋭器類による傷害からの技術上の保護策を有する針の利用を、より強い調子で求めた内容となっている。

事例報告

以下に示す事例報告では、血液感染性病原体に職業上暴露した後に深刻な感染症を発症した5人の保健医療従事者の体験を簡潔にまとめた。 これらの事例では、注射針の傷害につながり得る、予防可能であるいくつかの危険な状況および慣行が示されている。

事例1

AIDSに罹患して入院したある患者は、気分が動転し腕に刺した点滴のためのカテーテルを抜こうとした。何人かの病院職員が患者を抑えつける騒ぎとなったが、その間にIV注入管が引っ張られ、IVカテーテルの接続部に挿入されていたコネクター針が露出してしまった。その場にいた看護師がIV管の末端部にあるコネクター針を元の位置に戻し、再度挿入しようとしたところ、患者の足がその腕を蹴ったため、傍らにいた別の看護師の腕に針が刺さってしまった。注射針の傷害を負った看護師は当日の検査ではHIV陰性であったが、数カ月後の検査では陽性に転じていた。[American Health Consultants 1992a]

事例2

HIV診療所の検査室である医師(女性)が患者から血液を採取していた。検査室には使用済鋭器廃棄容器がなかったため、片手操作で針を付け替えていた。医師が検査用の資材と廃棄物をより分けていたところ、採血針のキャップがはずれ、彼女の右人差し指に刺さってしまった。同医師が基本HIV検査を受けたところ陰性であった。医師はジドブジンを服用して暴露後の予防措置に努めたが、副作用が出たため、10日後には服用をやめた。注射針の刺傷から約2週間後、医師はHIV感染の症状に一致する感冒のような症状が出た。注射針刺傷から3カ月後に再検査したところHIV血清陽性という結果が出た。[American Health Consultants 1992b]

事例3

AIDSに罹患する患者の採血処置を行ったある保健医療従事者(女性)は、使用した採血用の針が深く刺さってしまう傷害を負ってしまった。採血用チューブから血液が漏れ、保健医療従事者の手袋の袖口と手首の隙間に流れ込んで、保健医療従事者のひび割れしていた手に付着してしまった。彼女は手袋を外してすぐに手を洗った。基本HIV検査は陰性で、ジドブジンによる予防治療はあえてしなかった。担当した患者がHCV感染しているということは知らされておらず、肝臓疾患の臨床的な証拠もなかったため、彼女はHCVへの暴露については基本検査を受けていなかった。この災害から8カ月後、保健医療従事者は激症肝炎のため入院し、さらに災害から9カ月後に血清陽性という結果が出た。災害から16カ月後には抗HCV抗体検査で陽性となり、慢性のHCV感染症と診断された。彼女の容態はその後も悪化し、注射針の傷害から28カ月後に死亡した。[Ridzon et al. 1997]

事例4

HBV感染者の呼吸困難の原因を特定するため気管支鏡法を実行していたある保健医療従事者は、生体組織検査用器具から組織を抽出しようとした際に25ゲージ針で皮膚を傷害した。保健医療従事者は暴露後、B型肝炎免疫グロブリンあるいはB型肝炎ワクチンを使った予防治療を受けなかった。針による傷害から約15週間後、当人は疲労感と、身体の不快感を覚え、また黄疸の症状が出た。後にB型激症肝炎の症状と見られる肝臓の酵素異常がみつかり、B型肝炎表面抗原検査で陽性の結果が出た。気管支鏡法を受けていたこの患者はカリニ肺炎と診断され、8カ月後散在性カポジ肉腫とおよび全身性の日和見感染症と診断された後に死亡した。傷害を負った職員は合併症を伴わない経過をたどり、肝酵素および容態も最終的には正常に復した。後の検査では、B型肝炎表面抗原検査は陰性で、B型肝炎表面抗体検査は陽性と出たが、これはHBV感染から回復していることを示すものであった。針による傷害から15カ月間の治療期間を通じてHIV検査は陰性だった。亡くなった患者の血清は抗体検査に供されることはなかった。[Gerberding et al 1985]

事例5

1972年、ある看護師が患者の腕から皮下注射の針を抜こうとした際に、指に針による傷害を負った。傷害の時点では、その患者はA型B型いずれの激症肝炎も患っているとは見られていなかった。しかし看護師は針による傷害から6週間後に肝炎を発症した。彼女の肝酵素は1年近くも高いレベルで推移し、看護師と患者両方の血清試料を検査した結果両者ともHCVに感染していたことが判明した。1972年当初看護師から採取された血清試料は抗HCV抗体検査で陰性を示していたが、針による傷害から6週間後に採取された試料では血清陽性が出た。報告の時点では彼女の容態は安定していたが、依然としてHCV血清陽性のままであった。[Seeff 1991]

工学的な管理向上は感染防止戦略に有効

注射針による傷害を防止するための包括的プログラム

安全衛生問題は、作業環境のあらゆる側面を考慮し、労働者の参加と事業者の責任ある取り組みのある、包括的な防止プログラムというお膳立てがあってはじめて最前の対応が可能となってくる。工学的な管理向上を生かして実践していくことはこうした包括的プログラムの一環として欠かせない。注射針の感染防止を特長とする多くの機器が新しいもので、本編では主にその望ましい特徴、事例、その効果のより所となるデータなどを含め、その活用について考察する。しかしながら、他の予防戦略で取り組まなくてはならない要素としては、危険な労働慣行の変更、環境中の針がもたらす危険有害要因に対する管理上の変更(例として、鋭器類の処理箱が満杯になったら直ちに取り替えることなど)、安全教育と認識の普及、安全性向上に伴うフィードバック、継続的な問題に対して講じられる措置などがある。包括的な手法については何人かの識者が、その重要性を指摘している。[Krasinski et al. 1987; Hanrahan and Reutter 1997; DeJoy et al. 1995; Ramos-Gomez et al. 1997; Gershon et al. 1995] 適切な研修がいかに重大な役割を果たすかということは、特に家庭医療の場で、針を用いないIVシステムの不適切な扱いが絡んでいる患者の血流感染が増えているという報告によって強調されている。[Cookson et al. 1998; Danzig et al. 1995; Do et al. 1999; Kellerman et al. 1996] これらの資料から、新規の医療機器の使用に踏み切る際には、職業上の傷害監視だけでなく、患者の安全監視と徹底した研修の必要があることを重視すべきである。

包括的防止プログラムの成功例研究

包括的手法の真価はデール他による近年の報告書[1998]に記された成功例がよく物語っている。1993年から1996年にかけて、ある大規模な医療施設で処置された採血(瀉血)では、200人の常勤担当職員における注射針傷害の発生率は、実施された静脈穿刺処置10,000件あたり1.5件から0.2件に減少した。比較のために挙げておくと、1990年から1992年にかけての全国調査では、静脈穿刺処置10,000件あたりの針による災害発生率は中央値で約0.94件となっていた。[Howanitz and Schifman 1994] 採血(瀉血)が無事実施されるのに貢献した動きを振り返って見ると、労働者の教育および労働慣行の変化、安全面機能を持つ器具の導入、傷害災害の報告奨励などが挙げられる。CDC発行のガイドラインおよびOSHAによる血液感染性病原菌に関する基準の導入に加えて、上記のような事実があったことは、発生率の着実な減少が見られたことと関連づけられた。この成功に寄与した重要な因子として識者が指摘したのは、職員間の徹底した傷害に関する理解であった。

安全機能を持つ器具の望ましい特徴

工学的な管理向上は職業上の危険有害要因を減ずるもっとも有効な手法であることが多く、したがって注射針の傷害防止プログラムの重要な要素である。このような抑制策は針の不必要な使用を廃し、安全機能を持つ器具の導入を進める。数々の情報源から、安全器具の望ましい特徴が明らかになってきた。[OSHA 1999c; FDA 1992; Jagger et al. 1988; Chiarello 1995; Quebbeman and Short 1995; Pugliese 1998; Fisher 1999; ECRI 1999] その特徴としては以下の点が挙げられる。

器具は安全で、患者の治療に有効である。 上記のような特徴はそれぞれ望ましいものであるが、中には一定の保健医療現場の状況によっては実現しないか、利用や応用が不可能な機能もある。たとえば、皮膚に浸透させるのに代わる手段がなければ、針は常に必要なものである。また、利用者による始動が必要な安全機能も場合によっては自動的な器具よりも好都合なケースがある。それぞれの器具はそれ自体のメリットを、最終的には事業場での傷害を減少させる能力を考慮していかねばならない。したがって、ここで挙げた望ましい特徴はあくまで器具の設計と選定のガイドラインとしてのみ留意すべきである。

安全器具設計の例


図3 安全機能を備えた3例のシリンジ。(これらの図面は教育目的で提供されており、NIOSHの特定の製品に対する推奨を意味するものではない)。

図3は安全機能を備えたシリンジの例である。安全器具の設計例として以下のようなものがある。

効果の裏付け

安全機能付きの器具は針の傷害を減らすことを裏付ける事実が数多くある。

その他の調査研究でも、傷害を防止する包括的プログラムに用いられた針を使わないシステムまたはより新しい安全針を適切に使用することで、かなりの針による傷害を減らすことができたと記されている。[NCCC and DVA 1997; Zafar et al. 1997]

本編が中心的なトピックとして扱っているのは安全機能を持つ針用の器具であるが、使用済医療用危険物廃棄ケースもまた包括的な針傷害防止プログラムにおいて考慮すべき重要な工学的な管理である。NIOSHは[1998年]近年、使用済鋭器廃棄容器の適切な配置、使用、利点について見直しを行った。

図−3に示した例のような、安全機能を持つ数多くの器具が針の傷害の頻度を引き下げるが、しかしまたさまざまな理由からリスクを完全に排除するところまではいかない。一部の例では、安全性の機能が患者から針を抜いた後でないと始動しないという。また針が、処理中に不注意にも抜けてしまい、保護されていない鋭利な先端が露出してしまうケースもあるという。保健医療従事者の中には安全機能を始動させるのを忘れる者もあり、あるいは安全機能が働かない場合もあるという。器具によっては安全機能を省略して使い得るものもある。たとえば、針を使わない経静脈ラインを用いても、システムを構成する部分を接続するのに針を使うことがある。したがって、器具の安全性に影響する要因を理解し、防止の効果を最大化する慣行を推進することは傷害防止計画を進める上で重要な要素である。

結論

針による傷害は保健医療従事者間の重篤あるいは致死的な疾病に直結する重大かつ継続的な原因である。注射針による傷害とその結果もたらされる悲劇的な結果を避けるためにもすべての関係者によるいっそうの協力が必要である。こうした努力は保健医療従事者に発生する注射針の傷害に関わっている制度的、慣行上、また器具関連の要因に取り組む包括的プログラムを通じてもっともよい形で目標を達成することができる。この努力でもっとも肝要なのは、安全かつ効果的な代替手段があるのであれば、また安全機能を備えた注射針類を開発、評価、使用できるのであれば、針を持つ器具は排除していくという点である。

推奨事項

安全機能を持つ注射針類を選定し、評価する 安全機能を持つ器具の数と種類は現在増加しつつあるが、その多くは事業場では限定的な使い方しかされていない。そこで、保健医療組織や保健医療従事者は適切な器具を選定するのに困難を覚えている。そうした器具類は保健医療従事者の安全を強化するため設計されているのであるが、以下の事項を確実に実現することを念頭に評価すべきである。

事業者が安全機能を持つ注射針類の使用を開始する際には、そうした製品を選定・評価するガイドラインをいくつか参照することができる。そのガイドラインはこの新たな分野における計画、評価様式、関連情報を提供する刊行物その他の情報源を部分的により所としている。[Chiarello 1995; Fisher 1999; SEIU 1998; EPINet 1999; Pugliese and Salahuddin 1999] 保健医療の現場が安全機能を持つ注射針類の使用を開始する一方で、特定の現場(例:歯科医院)に適した器具や手順に関する情報を得るのに適切な専門家機関、業界グループ、製造業者の助力を仰ぐことになるだろう。「警報」の後の方でその他の情報源の一覧が記されている(「参照」、「追加情報」、「推奨出版物」を参照のこと)。さらにOSHAは経皮傷害から血液感染性病原菌に暴露する職業上のリスクを防止するための情報を求めたが、一般から400通ほどの回答を受け取った。[63 Fed. Reg. 48250 (1998); OSHA 1999c] 寄せられた情報には針による傷害防止プログラムの成功例についての多数の報告が含まれており、医療機関が傷害追跡調査システム、防止法、より安全な器具の使用を確立するにあたって有用なものと思われる。

安全機能を持つ注射針類を選定・評価する手順の主眼点を以下に簡潔にまとめた。

  1. (1)医療機関において針による傷害を減らす計画を策定し、実施し、評価するための、また(2)安全機能を持つ注射針類を評価するための、労働者も交えた多数の分野にわたるチームを形成する。
  2. 針による傷害が発生する形態、医療機関での器具使用のパターン、傷害と疾病の伝染状況に関する地方および国内のデータなどの評価に基づき優先順位を明確化する。職業上の感染を防止するのにもっとも効果的な安全機能を持つ注射針類(動脈・静脈に使われる中空針など)にもっとも高い優先順位を与える。
  3. より安全な器具を選定するに当たっては、保健医療施設での使用で想定された範囲と、その安全性、効率、利用者の受け入れに影響する特定の技術および設計上の因子を明らかにする。器具の安全性および全般的なパフォーマンスに関する情報源を刊行物、インターネットその他に探してみる。
  4. 製品評価を実施し、評価参加者が最終的な製品利用者の集団を確実に代表するようはかる。以下の手順は製品評価の成功に向けて有効なものとなろう。
    • 保健医療従事者が新しい器具を正しく使用できるように研修を行う。
    • 明快な基準と手法を確立し、保健医療従事者の安全と患者の治療の両方について器具を評価する。(安全特長評価書式は、前述の参考資料から入手できる。)
    • 非公式のフィードバック、問題の明確化、追加的なガイダンス提供を目的として現場での事後活動を行う
  5. 新規器具を導入した後、追加の研修が必要かどうか決定するため、また器具を使用した保健医療従事者がその体験を非公式にフィードバックするように要請し(例:提案箱の利用)、患者の治療に器具が副作用をもたらす可能性があるかどうか見極めるため、器具の使用をモニターする。

現行の器具および選択肢について継続的に見直しをはかっていくことが必要となる。進化しつつあるテクノロジーにはよく見られることだが、その過程はダイナミックなものであり、経験を重ねるにしたがって、安全機能を持つ器具の改良版が出現してくる。

事業者に対する推奨事項

針による傷害から保健医療従事者を保護するためには、事業者はより安全な注射針類と効果的な安全プログラムを採用した安全な作業環境を提供しなくてはならない。針による傷害には多数のタイプの注射針類が関係しており、そうした傷害はさまざまな態様で発生する。したがってさまざまな防止戦略を組み合わせていかねばならない。事業者は針による傷害を減らすためのプログラムを実施し、また労働者をその活動に参加させるために以下の措置を講ずるべきである。

  1. 保健医療従事者を雇用する事業者は、針による傷害を減らすために改善された工学的な管理を活用すべきである。
    • 安全で効果的な代替手段がある場合、注射針類の使用を排除していく。もっとも顕著な不必要な針の使用はIV送達システムを使うため、あるいはその構成部分間を接続するために針先の露出したものを使用することである。すでに10年近く前から針を使わないIV送達システムおよび保護針がこうした危険有害要因を排除するか分離するべく、利用できるようになっている。その他にも不必要な針の使用がないかどうか各自の医療機関について情報を検証されたい。
    • もっとも効果的で受け入れやすい器具はどれか決定するため、安全機能を持つ注射針類の使用を開始し、その使用について評価する。使用後に露出した針を分離することができる安全機能を備えた数多くの器具が出回っている。本文書では評価のための手法と参照事項が掲載されている。
  2. 針による傷害を減らす最善の方法は、労働者を参加させる包括的なプログラムに改善された工学的な管理を組み込む場合に完遂できよう。
    • 自分の事業場での針その他の鋭器類による傷害を分析し、危険有害要因を明確化し傷害発生の状況を把握する。傷害報告のデータは、(1)どこで、どのように、どの器具を使用して、いつ傷害が発生しているのか、また(2)どのような集団の保健医療従事者が傷害を負っているのかについて明らかにするため編集し、評価すべきである。
    • 針による傷害のリスク要因、および成功した介入措置に関する各地および全国の情報を検討し優先順位と防止戦略を設定する。疾病伝染の要因となった手順と器具(静脈・動脈に接するのに用いた器具など)は、問題解決のため介入すべき最優先事項とすべきである。傷害を減らすのに成功した器具の種類と労働慣行に関する各地および全国的な情報源に目を向ける。
    • 保健医療従事者が注射針の安全な使用と処分について十分に研修を受けているかどうか確認する。保健医療従事者および研修生は注射針類を適正に扱い、これらの器具の取扱い全般にわたって最大限の個人的な保護を実現するべく研修を受けるべきである。より安全な器具が導入された際には、その正しい使用法を確実に習得するため、労働者の研修は不可欠である。[Ihrig et al. 1997]
    • 針による傷害の危険有害要因が介在する労働慣行を正しく、より安全なものとすべきである。労働慣行を是正して排除できる危険有害要因としては、注射針類を適正に処分せずに再びキャップをかぶせたケース、そのような器具を他人に渡したり送ったりしたケース、血液や体液を器具から組織標本ケースに取り込むケースなどが挙げられる。また、標本収集では患者に対する針の使用回数を少なくするように調整し、労働者のリスクと患者の不快感をいずれも低減することができる。安全機能を持つ器具の使用は場合によってはそうしたリスクを少なくし、あるいはまったくなくすことができる。また保健医療従事者の活動参加はあらゆる場合に安全の問題を突き止め、解決するのに有効である。したがって、事業者は針その他の鋭器に関連する危険有害要因を報告し、それに取り組むための現行の手続きを見直すことが大事である。
    • 作業環境における安全の自覚を促進する活動を行う。針による傷害の多くは、突然の患者の動きや同僚、注射針類とぶつかることなどにより、予期していなかった事情が生じて起こっている。保健医療従事者は、露出した針その他の鋭利な器具が使用されている時には、絶えず傷害の可能性に対し警戒を怠らないように研修を受けるべきだ。職業関連の多数の要因が、保健医療従事者が安全行動をとる上で影響を及ぼしている。[Dejoy et al. 1995; Murphy et al. 1996; Gershon et al. 1995] こうした労働者は患者の要求を自分自身の個人的な安全より優先してしまう。そうした人々は安全のための手段を患者の治療のじゃまになるものと考え、あるいはよけいな段取りを増やさなくてはならないと考えるので、そうした手段を講ずる可能性が低い。そこで、事業者は、針による傷害を引き起こす危険有害要因と安全のための労働慣行に影響する組織としての障壁や姿勢の両方に取り組まなくてはならない。[Hanrahan and Reutter 1997]
    • あらゆる針その他の鋭器に関連する傷害を報告し、適切な時期に追調査するための手続きを確立し、その実行を奨励する。針による傷害の報告は(1)すべての保健医療従事者が暴露後の適切な医療管理を受けられるようにし、(2)作業環境における注射針類の危険有害要因を評価するための記録を提供するにあたって、不可欠のものである。
    • 傷害防止活動の効果を評価し、そこから実践にむけてフィードバックする。事業者は保健医療従事者が推奨される傷害防止戦略を採用し、労働者が実行した変更により望ましい効果が確実に生まれるようにする必要がある。事業者は労働者がどのように受け止めているかを評価し、遵守状況を評価し、問題点を突き止めるために、公開討論の場を設けるべきである。

労働者に対する推奨事項

自分自身と同僚を守るために、保健医療従事者は針による傷害が介在させる危険有害要因を認識すべきであり、安全器具を使用し、以下に掲げるような労働慣行の改善を実践すべきである。

  1. 安全で効果的な代替手段を用いることができる場合は、針の使用を避ける。
  2. 安全機能を持つ器具を選定し評価する上で事業者を支援する。
  3. 事業者の提供する安全機能を持つ器具を使用する。
  4. 針に再びキャップをかぶせること(リキャッピング)は避ける。
  5. 注射針を使用する処置を始める前に、安全な取り扱いと廃棄処分の計画を立てる。
  6. 使用済みの注射針類は、ただちに適切な鋭器廃棄容器に廃棄する。
  7. 針その他の鋭器関連の傷害が発生した場合には必ずただちに報告し、確実に適切な継続管理を受ける。
  8. 作業環境で気づいた注射針による危険有害要因について事業者に連絡する。
  9. 血液感染性病原体に関する研修に参加し、B型肝炎ワクチン接種などの推奨される感染予防処置に従う。

追加情報

針による傷害に関する情報をさらに要望されるのであれば、1-800-35-NIOSH (1-800-356-4674)まで電話連絡していただくか、NIOSHのホームページ(www.cdc.gov/niosh)を閲覧されたし。 以下のウェブサイトは針による傷害、およびより安全な注射針類に関する追加情報を提供している。


著者および問い合わせ先

この記事の出典[英語]は国際安全衛生センターの図書室でご覧いただけます。

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