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NIOSHアラート(警告)

フォークリフトの操作又はその近くで働く労働者の死傷の防止
(Preventing Injuries and Deaths of Workers Who Operate or Work Near Forklifts)

(資料出所:NIOSH発行「ALERT」 DHHS(NIOSH) 発行番号 No. 2001-109 June 2001
(抄録 国際安全衛生センター)

国際安全衛生センター注
このアラートは、災害を防止するために、労働者、事業者が行うべき事項を簡潔に述べた前文と、災害の背景、災害データ、安全衛生基準、事故事例、実施すべき事項などが記載された詳細文の2つがあります。



この警告の初版は、座席に座って運転する型のフォークリフトに適用されるものであったが、新しい版では後方から乗り降りし、立って運転する型のフォークリフトの事業者と労働者をも勧告の対象とした。また、若干の用語の改訂も行った。


フォークリフトの操作又はその近くで働く労働者の死傷の防止
警告!
フォークリフトを運転し、あるいは、フォークリフトの近くで作業する労働者は、機械自身や取り扱っている荷に打たれ、押しつぶされるおそれがある。

労働者のために:

フォークリフトを運転し、あるいはフォークリフトの近くで作業する場合にはあなた自身を守るために次ぎのことを守ろう

  • 訓練を受け、ライセンスを持っている場合以外はフォークリフトを運転しない。
  • シートベルトを着用しよう
  • 作業中、フォークリフトの故障やトラブルがあったら監督に報告しよう
  • 転倒したときは座席から飛び出さないで、しっかりとつかまり、転倒と反対側に身を寄せよう
  • 後方から出入りする立ったまま運転するタイプのフォークリフトでは、後方に飛び出そう
  • 段差や傾斜に十分注意しよう
  • 荷を後方に傾け、通路の表面にさわらない最低の範囲で持ち上げる
  • フォークリフトが動いている間、フォークを上げたり下げたりしない
  • フォークリフトの許容荷重より重い荷を扱わない
  • 安全に停止できるよう、許容されたスピードでフォークリフトを動かそう
  • 交差点や視界が妨げられている場所では速度を落とし、ホーンを鳴らそう
  • 進行方向を注視し、視野をクリアにしよう
  • 座席がない場合は他の者を乗車させない
  • フォークリフトから降りる時は駐車ブレーキを掛け、フォークやケージを下げ、コントローラをニュートラルにしておこう
  • ベンチや部材の前方に作業者を載せて運転しない
  • フォークに労働者を乗せて持ち上げない
  • 作業場所の真下に車両がおかれているときだけ、プラットフォームに作業者を載せてよい
  • トラックで労働者を昇降させているときは昇降台とフォークやケージとの安全を確認する
  • 作業台の上の労働者のために手すりや、チェーンや緩衝装置の付いた安全帯等の防護手段を使う
  • 作業台をあげたまま他の場所に走行しない

フォークリフトの操作又はその近くで働く労働者の死傷の防止
警告!
フォークリフトを運転し、あるいは、フォークリフトの近くで作業する労働者は、機械自身や取り扱っている荷に打たれ、押しつぶされるおそれがある

 フォークリフトを運転し、あるいは、フォークリフトの近くで作業する労働者は、機械自身や取り扱っている荷に打たれ、押しつぶされるおそれがある。

NIOSHは、フォークリフトを運転し、あるいは、フォークリフトの近くで作業する労働者の災害を防止するための援助を要求する。

 多くの工場でフォークリフトがローデイングドックから転落して労働者が下敷きになる災害が発生している。

NIOSHのフォークリフト関連の死亡災害の調査によると多くの労働者や事業者が
(1) フォークリフトの運転やその付近での作業の危険性に気付いていない
(2) OSHAのスタンダードやガイドラインなどの手順に従っていない
と思われる。

この警告は、フォークリフトを運転していたか、フォークリフトの付近で作業をしていて死亡した7件の災害についても記述する。

 これらの災害はいずれも、OSHAのスタンダードに規定されている手順を守ることによって防止することができた

NIOSHは各誌の編集者、安全衛生担当者、業界団体、組合、及び全産業の事業者がこの警告に示す勧告事項を、危険にさらされているすべての労働者に知らせるよう希望する。

警告の背景

フォークリフトは工業用トラックとして知られている。
このトラックは数多くの材料の配置や運搬に使われている。アメリカでは毎年、100名近くの労働者が死亡し、20,000名がフォークリフト関連の災害で重傷を負っている。[BLS 1997、 1998].

フォークリフトの転倒は、工場でのフォークリフトの典型的な災害で、フォークリフトによる死亡災害の25%を占めている。

死亡災害のデータ

National Traumatic occupational Fatalities (NTOF) Surveillance Systemによると
アメリカで、1980年 から 1994年までに 1,021 人の労働者がフォークリフトによる災害で死亡した。
この報告によると災害の型は:
フォークリフトの転倒 . . . . . . . . 22%
通行中にフォークリフトに激突する. . 20%
フォークリフトで押しつぶされる . . . 16%
フォークリフトからの転落. . . . . . . 9%
である。

現行規則

OSHA

OSHAは工業用動力トラック(ロウアンドハイリフトトラック及びフォークリフトトラック等)のスタンダードを制定している[29 CFR1910.178]。また、建設業で使用されるフォークリフト [29 CFR 1926.600;1926.602]もある。

訓練

OSHAは工業用動力トラック運転者訓練の最終の規則を公布している[29 CFR1910.1788(1)]
この規則は1999 年 3月 1 日に発効している。
この規則は、運転者の訓練とライセンス及び運転者の定期的な技能評価を要求している。
規則は、操作、載荷、シートベルト、頭上の保護柵、警報、及び保守等の特別の訓練についても規定している。
また、運転者が安全な運転をしないと認められるとき、事故あるいはニヤミスをした、また、違うタイプの車両が割り当てられたときには、リフレシュトレーニングが要求される。

フォークリフトの保守

OSHAは工業用トラックを作業前に点検することを求めている。
点検で、安全に影響をおよぼすおそれがある状態が発見された場合には、使用してはならない。
少なくとも、このような点検は毎日行われなければならない。
工業用トラックが一日中使用されるときは、シフトごとに点検されなければならない。欠陥が見つかったときは直ちに報告され修復されなければならない [29 CFR 1910.178 (q)] (7)].

フォークリフトの運転

フォークリフトの運転についてのOSHAの要求事項は次の通りである。

  • すべての段差では、荷は後方に傾けなければならない。通路の表面にさわらない最低の範囲で持ち上げるために必要な場合をのぞいて、フォークリフトが走行しているときは、フオークを上げ下げしてはならない。[29 CFR 1910.178 (n) iii (7)]。
  • すべての走行中、安全に停止できる速度で走行しなければならない。[1910.178 の (n) の 29 CFR の (8)].
  • 運転者は側廊の交差点その他視界が妨げられる場所では速度を落とし、ホーンを鳴らさなければならない[29 CFR 1910.178 n (4)].
  • 運転者は前方を注視し、視界をクリアーに保持しなければならない。[29 CFR 1910.178(n)(6)].
  • 許可を受けた場合以外は、工業用動力トラックに乗ってはならない。許可を受けたトラックには安全な場所が準備されなければならない。[29 CFR 1910.178 (m)] (3)].
  • ベンチや部材の前方に作業者を乗せて、フォークリフトを運転してはならない[29 CFR 1910.178 m の (1)].

公正労働基準法 (FLSA)と年少者

(詳細省略)
工業的企業では18歳未満(農業では16歳未満)の者は、原則としてフォークリフトを運転してはならない。[29 CFR 570.58]及び[29 CFR 570.71 (1) (3) (ii)]].

ASME(アメリカ機械学会)及びANSI(アメリカ規格協会)(ANSI)

ASME/ANSI B56.1 1993 は以下を要求する。[ASME 1993].

保守と安全装置

  • ブレーキ、ハンドル操作装置、制御装置、警報装置、照明、ガバナー、過荷重防止装置、防護及び安全装置、上昇及び傾斜装置、停止関節及びフレームの構成材は、慎重にかつ、定期的に、検査し安全な状態にしておかなければならない。 (ASME/ANSI B56.1 1993m6.2.7) [ASME1993].
  • 作業が高所の作業場所から始められるときは、手すりやチェーン等で防護するか、落下緩衝装置付きの安全帯を作業者に着用させなければならない。 (ASME/ANSI B56.1、 ss4.17.1 [b]) [ASME 1993].

運転

  • 運転者は段差や傾斜ではできるかぎり旋回をさけ、特別の注意を払わなければならない。
    通常、運転者はまっすぐ上り下りすべきである。 (ASME/ANSI B56.1、 ss5.3.8 [d]) [ASME 1993]。
  • 座って運転するタイプのフォークリフトでは、横または縦にフォークリフトが転倒したときは、運転者はトラックにとどまるべきである。
    運転者はしっかりとつかまっているべきである。 (ASME/ANSI B56.1、 ss5.3.18 [d]) [ASME 1993]。

上述の規制に加えて、事業者と労働者は、製造者が提供する運転者マニュアルの安全運転と保守の記述に従うべきである。

災害事例

(NIOSHが死亡災害調査プログラム((FACE)に従って調査した死亡災害事例のうち、もっとも典型的とされる事例 (1)フォークリフトの転落、転倒 (2)労働者のフォークリフトによる激突 (3)フォークリフトからの転落 七つが示されているが省略する。)

むすび

国が示す死亡災害のデータは、三つの典型例、すなわち、フォークリフトの転落、転倒、労働者のフォークリフトによる激突、フォークリフトからの転落を示している。
事例研究は、フォークリフト本体、作業環境そして運転者の行動のすべてが災害発生に関係していることをしめしている。
それに加えて、これらの死亡災害は、多くの労働者や事業者がフォークリフト安全に使用していない。たぶん、災害を減らすための安全な使用法を承知していないのではないかと思わせる。

勧告

フォークリフト災害のリスクを減少させるためには、安全な作業環境、安全なフォークリフト、包括的な労働者の訓練、安全な作業法及び系統的な交通制御が要求される。

NIOSHは、事業者と労働者がOSHAの規則やスタンダード並びに関係する文書に従い、フォークリフトの運転あるいは、フォークリフトの付近での作業について、次の災害防止対策を行うことを勧告する。

事業者

労働者の訓練

  • 訓練され、ライセンスを有する労働者以外の者がフォークリフトを運転していないことを確認する。
  • 労働者の訓練、運転者のライセンスそれにプログラムの更新の事項を含んだ包括的で、かつ、書面による安全計画を作成し維持する。
    包括的な訓練プログラムは災害防止上重要である。
    運転者の訓練では、フォークリフトの安定すなわち、重量及び荷の対称性、フォークリフトが走行しているときのスピード、床面での操作、タイヤの空気圧、そして運転中の行動を含んだものとする。
  • 座席タイプのフォークリフトの運転者には、転倒の際に座席からでると、オーバーヘッドガードや他の部分で押しつぶされることがあることを教える。
    座席タイプのフォークリフトでは運転者は、横または縦方向の転倒では座席にとどまるべきである。また、運転者は、しっかりとつかまり衝撃から逃れるべきである。
  • 後方から乗り降りする立ったままのタイプのフォークリフトの 運転者は、横方向の転倒が起きたときは、後方に飛び降りるべきである。
  • 座席タイプのフォークリフトでは運転者の残置装置を使用すること。1992年以来、製造業者に、座席タイプのフォークリフトには運転者の残置装置を備えるよう要求されている。多くの製造業者の古いタイプのフォークリフトでも残置装置を取り付けるよう改良することが得きる。死亡災害が多い座席タイプのフォークリフトの転倒による災害は、この装置で防ぐことができる。フォークリフトのオーバーヘッドガードは、運転者が、運転室から飛び降りまたは飛び出させられたときに、運転者の頭部や胴体などをおしつぶすものとなっていた。オーバーヘッドガード等で押しつぶされる危険は、座席タイプのフォークリフトでは、運転者が座席に残っていれば大いに減少する。多くのフォークリフトが残置装置を備えていず、残置装置に関する労働者の申告も100%でないので、座席タイプのフォークリフトの運転者は、運転室から飛び出さないで、転倒の反対側の運転室内にとどまるよう指示されなければならない。
  • 非対称の荷を扱う車両運転者もこの活動に含まれる。

フォークリフトの検査と保守

  • 検査と保守のプログラムを作成すべきである。
  • できれば、古い座席タイプのフォークリフトにも残置装置を取り付けるべきである。

昇降

  • 運転者が許可されたケージを使用し、フォークリフトで人員を昇降させる場合の一般的な安全手順書に従っているかを確認する。また昇降に使用する作業台やフォークも同様である。
  • 昇降している者のため、トラックに垂直、または、垂直と水平に動く機材が装備されているときは、作業台の上の者が動力を遮断できるようにしておかなければならない。

歩行中の労働者

  • 可能な場合には、フォークリフトの通行と他の労働者とを分離する。
  • 一定の通路では、歩行者専用またはフォークリフト専用とする。
  • タイムレコーダー、休憩室、カフェテリア、及び主要な出入り口、特に交替時や休憩時のように歩行者がピークになる際には、フォークリフトを使用しない。
  • フォークリフトが運行する通路と作業場所との分離のため、柵などを設置することが実際的である。
  • 交差点や他の見通しの悪い場所については、通行者やフォークリフトの運転者の視界を改善するための凸面鏡の設置を検討する。
  • ホーンの使用、音を使った補助装置、閃光器具の設置等、付近の労働者やフォークリフトの運転者に対し、フォークリフトが接近したことを知らせる方法を行うこと。
    閃光器具は、騒音が激しい場所では特に重要である。

作業環境

  • 労働者に危害を及ぼす物や状態が確認できる者による、日常的な作業場の安全点検を行うこと。危険な状態には、通路の障害物、見通しが悪い角や交差点や歩行者とフォークリフトが接近しすぎる場所が含まれる。
  • 可能ならば、ワークステーション、制御パネルや機器は、通路から離して配置する。
    角や交差点や運転者やワークステーションの労働者の視界を妨げる場所に、ビンやラックや他の材料を置かない。
  • スピード制限、停止標識の場所で停止する、交差点での徐行と警報などの、遵守事項を実行させる。
  • ローデイングドックや通路やその他の運転場所の亀裂、崩れ等の欠陥を補修する。

労働者

  • 訓練を受けず、ライセンスを持たない労働者は、フォークリフトを運転しない。
  • シートベルトが使える場合には使用する。
  • 仕事の間に起こった、フォークリフトについての損傷やトラブルは、管理者に報告する。
  • 座席タイプのフォークリフトが転倒したときは、飛び出さない。
  • 縦または横方向に転倒したときは、転倒と反対側にしっかりと掴まり、フォークリフトにとどまる。
    後方から乗車して、立って運転するタイプのフォークリフトが横に転倒したときは、後方に出ること。
  • 段差や傾斜には、十分注意する。通常はまっすぐに昇降する。
  • すべての段差では、可能ならば、荷を後方に傾け、通路の表面にさわらない最低の範囲で持ち上げる。
  • フォークリフトが走行しているときは、フォークを上げ下げしない。
  • フォークリフトの許容積載荷重をこえた荷を取り扱わない。
  • 安全に停止できるとして許容されているスピードでフォークリフトを運転する。
  • 交差点や見通しの悪い場所では、徐行し、ホーンを鳴らす。
  • 前方を注視し、視界をクリアに保つ。
  • 座席がある場合をのぞいて、他の者を乗車させない。
  • フォークリフトから離れるときは、常に、駐車ブレーキをかけ、フォークを下ろし、コントロラーをニュートラルにする。
  • ベンチやその他の固定部分に乗るっている者がいる場合には運転しない。
  • フォークリフトを労働者を持ち上げることに使わない。
  • 車両が作業場所の直下にある場合以外は、プラットホーム上の労働者を昇降させない。
  • トラックが人員の昇降に使われている場合には、フォークリフトのフォークや上昇ケージまで、昇降台を確保すること。
  • 手すりやチェーン、安全帯や緩衝装置等の防護装置を作業床上の労働者に使用させる。
  • 作業床をあげたまま他の場所に移動しない。
(備考と参考文献を省略)