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作業関連性頸及び上肢筋骨格系障害
Work-related neck and upper limb musculoskeletal disorders

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 5
原文はこちらからご覧いただけます(別窓)
(仮訳 国際安全衛生センター)

作業関連性頸及び上肢筋骨格系障害 (WRULD) は、あらゆる雇用部門にわたる何百万ものヨーロッパの労働者が患っている、最もありふれた職業性疾患の一つである。 このファクトシートは、問題の程度、原因、予防を検討した欧州安全衛生機構レポートの主要な調査結果に焦点をあてている。

作業関連性頸及び上肢筋骨格系障害 (WRULD) に関するレポートは欧州安全衛生機構が委託し、出版したものである。本レポートはWRULDの原因に関する現在の科学的知識と、それを抑制する戦略を検討している。この内容は科学専門家パネルに承認された。事業者及び被雇用者の代表、また多くのEU加盟国の公的機関からも情報提供があった。本調査は、欧州委員会の要請で始まり、イギリスのサリー大学が実施した。

主要な結論と勧告

問題の規模

EU内には、WRULDが疾病および関連する職場の経済的負担に関し重大な問題を引き起こしている十分な証拠がある。問題の規模は増大していくものと思われる。というのも労働者は、そうした疾患の職場におけるリスクファクターにますますさらされているからである。

北欧諸国とオランダの入手可能なデータによればWRULDのコストは国民総生産の0.5% から2% である。

調査結果は全加盟国の相当の割合の労働者がWRULDを患っていることを示しているが、 報告された発生率は加盟国によって大きく異なっているようである。異なる方法で収集され分析されたデータを直接比較するのは困難であり、その情報がどの程度、信頼性があるのかもほとんどわからない。にもかかわらず、同じような着想で行われた調査結果に大幅な相違がある。この理由についてはさらに調査が必要である。

リスクグループ

WRULDはあらゆる種類の仕事や労働部門で発生する可能性がある。しかしながら、ある種の雇用グループでは特にリスクが高いようである。

リスクの高い産業およびグループは次のとおりである。

性差やその他の個人的要因によるというよりも、従事する業務の種類が主たる原因で、男性に比べ女性のほうがWRULDを患うことが多いことを証拠は示している。性差の重要性と業務体制の構想に与える意味合いについては、概してこのレポートの範囲外であったが、さらなる調査は必要である。

疾患の生物学的原因

WRULDには生物学的な基盤があるという強い主張がある。生物力学、数学的モデルおよび生理学的変化の直接的測定に関する科学的研究は、筋肉、神経、腱その他の体組織を冒す疾患の、生物力学的に誘導された病理に関し、一貫した説得力のある主張を展開している。

WRULDの生物学的メカニズムに対する理解は個々の疾患によって大きく異なる。例えば手根管圧迫症候群に関しての知識はすばらしいものがあるが、その他のいくつかの疾患に関してはまだまだ研究が必要である。しかしながら、知識基盤がまだ少ない疾患に関してさえも、生物学的原因のもっともらしい仮説があり、研究は進行中である。

WRULDの職業との関連性

科学的なレポートは、ある種のWRULDと、仕事をすること, 特に労働者が高いリスクにさらされている仕事との強固で明確な関係を立証した。

以下の労働要因はWRULDのリスクを増大させる

リスクファクター間の相互作用(いくつかのリスクファクターの組み合わせが、全体的な傷害のリスクレベルに与える効果)の理解はさらに限られている。このことは職場における様々に変化するリスクファクターによる傷害のリスクレベルを正確に見積もることが困難であることを意味している。 それでもなお、極度のリスクにさらされているグループの労働者は特定可能であるし、特定すべきである。 このことはいかなる予防戦略においても優先事項とすべきである。

調査は職場のリスクファクターの身体に対する生物力学的な負担を減らせば、頸及び上肢筋骨格系障害の発症率が減ることを示している。これは仕事をすることと、この疾患の関連を示すさらなる証拠である。

予防の範囲

現在の科学的知識と既存の欧州安全衛生指令その他の一般的な勧告はすでに下記のようなWRULD予防に向けたいくつかの戦略を提示している。

エルゴノミクス的な措置とは、 問題と解決法を特定するために、職場全体、設備、作業方法、作業体制などの影響を観察することも含まれる。 ある特定の疾患のための適切なエルゴノミクス的措置は、その他の疾患の予防にも役立つ可能性が高い。これは共通の生物学的プロセスがいくつかの疾患に関わっているからである。

予防エルゴノミクスと労働衛生プログラムにすでに取り組んでいる機関は、他機関の行動の促進を手助けすべきである。また予防プログラムの効果を評価すべきである。

EU内のコンセンサスの必要性

現在の科学的知識はすでに、事業者に対し、最も高いリスクにさらされている労働者を保護するための情報を提供している。しかしながら本レポートはまた、多くの分野におけるEUレベルでのさらなる協議と標準化の必要性を提唱する。

レポートの入手方法

英語版レポートの全文は、欧州安全衛生機構のWebサイトから入手できます。 http://osha.europa.eu/publications/reports/

欧州安全衛生機構が発行する印刷版 "Work-related neck and upper limb musculoskeletal disorders" (作業関連性頸及び上肢筋骨格系障害), Buckle, P., Devereux J., 1999, ISBN 92-828-8174-1 は、ルクセンブルクのEC出版局、EUR-OP(http://eur-op.eu.int/)から直接入手できます。販売代理店を通して注文することも可能です。本体価格は7ユーロです(VATが別途、かかります)。

筋骨格系障害に関するEUの広報キャンペーン

「作業関連性筋骨格系障害を追放しよう(Turn Your Back on Work Related Musculoskeletal Disorders)」 は、2000年10月に欧州連合加盟15カ国が実施した欧州労働安全衛生週間のテーマである。 欧州安全衛生機構はこの安全衛生週間を支援するためにファクトシートその他の広報用製作物を作成した。 http://osha.europa.eu/ew2000/ は欧州労働安全衛生週間の情報に関する直接のリンクである。

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