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EU加盟国における労働安全衛生研究の今後のニーズと優先課題
Repetitive Strain Injuries in EU Member States

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 7
原文はこちらからご覧いただけます(別窓)
(仮訳 国際安全衛生センター)

欧州安全衛生機構は、 EU加盟国の今後の研究ニーズについての情報を取りまとめた。これは新しいレポート「EU加盟国における労働安全衛生研究の今後のニーズと優先課題」の基礎となっている。.

その目的は、欧州委員会の研究プログラムの活性化をはかるために、こうした研究のニーズと優先課題に関する最新情報を収集すること、EUの組織体と加盟国との共同研究を向上させること、そして今後10年間の労働安全衛生研究の指針とすることである。

加盟各国には、明らかになりつつあるリスクと今後の労働安全衛生研究のニーズおよび優先課題について報告を求めた。各加盟国にはそれぞれの活動に応じて、ソーシャル・パートナーならびに全関係研究機関の見解を報告に含めるよう依頼した。最終的に刊行されたレポートの要約はこのような加盟各国からの報告に基づいている。

レポートには今後の労働安全衛生研究のニーズと優先事項に関する総合的な結論が記載されており、その要旨は下記のとおりである。

EU加盟国における労働安全衛生研究の今後のニーズと優先課題

今後のヨーロッパの労働安全衛生研究のニーズと優先課題の明確化を目指して

このレポートは、EU加盟国内での今後のヨーロッパの労働安全衛生研究のニーズと優先課題についての議論を支援することを目指している。そこで欧州安全衛生機構はレポートの結論に関してフィードバックを得るため、2000年にフォローアップ・プロジェクトを実施する。そこで得られたコメントに基づき、EUにおける今後の研究プログラムの優先課題をまとめる際に利用する文書として、整理統合するのが目的である。

労働安全衛生研究の全般的ニーズと優先課題

10項目の全般的優先課題が明らかになった。加盟国の少なくとも3分の2が今後の労働安全衛生研究の優先課題として指摘した項目である。(表 1参照)





表.1 労働安全衛生研究の全般的優先課題


red

心理社会的リスクファクター
red エルゴノミクス的リスクファクター
red 化学的リスクファクター
yellow 安全性のリスク
green 中小企業におけるリスクマネジメント

blue

職業病その他の職業性疾病
blue 特定作業におけるリスク
blue リスクアセスメント
blue 危険物質の代替
blue 物理的リスクファクター

キー:
あるカテゴリーに関し一つまたは複数のリスクを特筆した加盟国の数
red = 13回言及されたリスク
yellow = 12回言及されたリスク
green = 11回言及されたリスク
blue = 10回言及されたリスク





心理社会的問題、エルゴノミクスおよび化学的リスクファクターが、全体的にみれば今後の研究の最優先課題であることが明らかになった。ほとんどすべての加盟国がこの3つを優先課題とし、いくつかのカテゴリーで優先すべきものとして特筆した。心理社会的問題に関しては就労中のストレスが重視された。エルゴノミクスでは、手作業と作業姿勢が特に優先課題とされた。化学的リスクに関しては、有毒・危険な化学物質と特に発癌物質が優先課題とされた。さらに、リスクを減らすための代替化学物質の研究も、上位10位の中に独立して挙げられ、化学物質はリスクアセスメントのカテゴリーでも優先課題とされた。

優先課題として言及された頻度が次に高かったのは安全性のリスクであり(特にヒューマン・ファクター)、その次が中小企業におけるリスクマネジメントであった。中小企業は、特定の集団および就労体制問題における優先課題に関するカテゴリーでも上位を占めた。

加盟国の3分の2が言及したのは、職業病その他の職業性疾病、特定作業におけるリスク、リスクアセスメント、化学物質の代替、物理的リスクファクターであった。

職業病その他の職業性疾病の分野でも、加盟各国は、心理社会的及びエルゴノミクス的要因によって引き起こされる問題、新しい技術の導入による複雑な複合要因により起こされる問題の研究を強化する必要性を指摘した。物理的リスクファクターとしては、騒音、電磁場を特に重要視しているようであった。

リスクマネジメントとリスクアセスメントに関連する研究の優先度が目立った。上述のとおり、危険な化学物質や発癌物質に関するリスクアセスメントについては、より害の少ない物質での代替による化学的リスクの管理と同様、特に関心が高い。中小企業におけるリスクマネジメントにも言及があった。リスクマネジメントに関しては他に、労働安全衛生マネジメントシステム(OHS-MS)、認証・適性問題が重視された。

労働安全衛生研究の主要分野における優先課題

社会および就労体制

中小企業は特別のニーズを持つものと認識され特筆された(表 2 参照)。高年労働者や労働能力が低下した労働者などにも、加盟諸国は特段の関心を示した。変化する労働パターンに関しては、テレワーキング(情報通信技術による在宅勤務)と下請けが今後の研究の重要分野であることが明らかになった。専門家セミナーでは、これに加えて自営業が注目を浴びた。

管理と技術

リスクアセスメントは依然として「管理と技術」分野で最優先の重要課題であると考えられている。労働安全衛生マネジメントシステム(OHS-MS)を他の管理システム(品質管理、環境問題など)に統合することも、重要な課題であることが明らかになった。外的な援助、例えば他からの学習(最善の慣行、ベンチマーク・テスト)や知識・適性の開発などが重視された。

技術開発に関しては、リスクを除去あるいは低減するための新しい製品、新しい生産方法、工程、設備の開発と使用に関わる研究の必要性を加盟各国は強調した。化学物質の代替にも関心を示した。

労働環境におけるリスク

「労働環境」分野のリスクが最も注目を集め、リスクのコントロールの仕方についての知識に依然として隔たりがあることを示した。

保健効果

この分野が相対的に高い関心を集めたのは、職業上のリスクの予防には健康と安全の両面を重視することが大切であるとの認識の高まりを表すものである。

労働環境と健康に関する特定のトピック他

特定作業におけるリスクに言及したのは数カ国だけであった。農業、製造業、建設、運輸、保健・社会福祉事業が特に関心を集めた。特別の職業グループに対する関心を示した国もある。





表 2. 主要な労働安全衛生研究分野の優先課題

社会および就労体制

yellow 中小企業
green 労働安全衛生の費用便益調査
green 労働安全衛生の費用分析、事故と疾病のコスト
green 下請労働
green 高年労働者
green 労働能力が低下した労働者
blue テレワーキング
blue 自営業
blue 企業文化
blue 臨時雇用労働者
blue 若年労働者


管理と技術

yellow リスクアセスメント
yellow 中小企業におけるリスクマネジメント
yellow 危険物質の代替
green 新しい安全な製品、生産方法、工程、設備(エルゴノミクス的、安全性、生物学的、物理的、あるいは心理社会的リスクファクターを予防するための)
green 労働安全衛生マネジメントシステム(OHS-MS)、労働安全衛生管理の認証、他の管理システムへの統合
green 最善の慣行、ベンチマーク・テスト
green 知識・適性の開発、訓練方法
blue 事故防止
blue 職場での健康増進、労働保健医療の方法
blue リスクの伝達と認識
blue 管理と労働者参加
blue 機械、プラントの安全、機械操作(例えば、機械やプラントの操作、修理、保守に伴うリスクの評価)


労働環境におけるリスク

red 心理社会的 リスクファクター
red エルゴノミクス的リスクファクター
red 化学的リスクファクター
red 安全性のリスク
yellow 物理的リスクファクター
green 生物学的リスクファクター


保健効果

red 職業病その他の職業性疾病


特定のトピック

yellow 特定作業におけるリスク
blue 各種方法の開発


キー:

あるカテゴリーに関し一つまたは複数のリスクを特筆した加盟国の数
red = 12回から13回言及されたリスク
yellow = 10回から11回言及されたリスク
green = 8回から9回言及されたリスク
blue = 6回から7回言及されたリスク




欧州レベルでの協力の必要性

加盟各国は、欧州レベルでの協力の必要性が高いのは共同研究プロジェクトやプログラムの計画・実施であると結論を下した。

報告書作成の協力者

欧州安全衛生機構の「研究に関するテーマ別ネットワーク・グループ (労働と健康担当)」が調査の実施と監視を支援した。同グループはEU加盟国の労働安全衛生専門家、ソーシャル・パートナー、欧州委員会から構成されている。加盟各国の国内報告書の分析と、このレポートの要約の作成には、イギリスの労働安全衛生研究所(HSL)が助力した。作業は「研究主題センター − 労働と健康」(1) の枠組みの中で進められた。

欧州安全衛生機構はこのプロジェクトの予備的結果について討議するために1999年6月、ビルバオで専門家セミナーを開催した。セミナー参加者は、加盟各国の労働安全衛生研究に関する意思決定者及び専門家、欧州委員会、欧州と米国の研究機関とソーシャル・パートナーである。

レポートの入手方法

レポートの要約は、欧州安全衛生機構のWebサイトから入手できます。 http://osha.europa.eu/publications/reports/resprior/

欧州安全衛生機構が発行する印刷版 Future Occupational Safety and Health Research Needs and Priorities in the Member States of the European Union(EU加盟国における労働安全衛生研究の今後のニーズと優先課題), 2000, ISBN 92-828-9254-9 は、ルクセンブルクのEC出版局、EUR-OP (http://eur-op.eu.int/)から直接入手できます。販売代理店を通して注文することも可能です。本体価格は7ユーロです(VATが別途、かかります)。

本ファクトシートはすべてのEU言語で下記サイトから入手可能です。http://osha.europa.eu/publications/factsheets/

1 研究主題センター − 労働と健康 (Topic Centre on Research - Work and Health) はEU内10カ所の主要労働安全衛生研究所のコンソーシアムである。

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