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作業中のスリップ、つまずき、転落の防止
Preventing Work-Related Slips Trips and Falls

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 14
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

滑り、つまずき、転落(1)は、重工業からオフィスワークに至るまであらゆる産業で労働災害の最大の原因である。EU加盟国では、これらが4日以上の休業を要する労働災害の主な原因であることが確認されている(2)。

事故のリスクは特に従業員50人未満の中小企業で高い。簡単な防止措置を講じることにより、滑りやつまずきによる傷害のリスクを減らすことが可能である。ここに掲げる助言は、あらゆる種類と規模の企業に当てはまる。

事業者の責任

滑りとつまずきの防止に関してEU指令(3)が定める要件(作業場、安全標識、保護具、安全の枠組みに関する指令)は、下記のとおりである。

指令が定める最低要件は、各国の国内法を通して実施されてきた。国内法では更に規則を補足することができる。

従業員との協議は必須の要件である。従業員の知識を利用することにより、危険個所の正確な特定および実効ある解決策の実施が確保できる。

衛生的で安全な作業環境の維持は経営者だけの責任ではない。従業員もまた、受けた訓練に基づいて指示に従いながら、協力しつつ自己および同僚の安全に注意を払う義務がある。安全衛生の改善に各自が貢献するよう、奨励する必要がある。

事故防止−リスク管理

適切な安全衛生管理システムとは、下記の方法によって事故を防止するシステムである。

一般的に事故防止プロセスは下記のいくつかの段階から成る。

問題の特定と計画立案

滑り、つまずき、転落の危険がありそうな場所−例えば、平坦でない床、照明が不十分な階段−を特定し、改善の対象を決める。こうした危険を防止ないし抑制できる設備と作業慣行を採用する。

組織

各作業場所の安全衛生を確保する責任の所在を明確にする。

監督

作業慣行と作業プロセスの適切な実行を確保するためにチェックは不可欠である。清掃や保守作業などの活動について記録をとる必要がある。

監視と見直し

定期的な見直しが必要である。事故件数は減少しているか。安全点検の際に指摘される危険個所は減っているか。

事業者は、仕事上影響のありそうな従業員および他の人々(来訪者、請負業者、一般市民を含む)に対する危険やリスクを評価しなければならない。スリップやつまずきを調査項目に含める必要がある。リスクアセスメントは定期的に見直し更新する。また新しい設備や作業手順の導入など、重要な変更を行った時も、必ず見直しと更新を行う。

良好な作業慣行

可能な限り、リスクを発生源で除去することを第一の目標とする(例えば、凹凸のある床面を平らにする)。2番目に代替措置(例えば、床の清掃方法を変える)、3番目に分離措置(例えば、従業員が濡れた床に足を踏み入れないように柵を設ける)である。最後の防止措置は保護である(例えば、滑り防止底の安全靴を履く)。保護具は最後の手段とすべきであり、組織的・技術的対策をすべて講じた後に使用する。滑りやつまずきのリスクを低減ないし除去するために採ることができる対策には、単純だが効果的なものが多い。

整頓−整理整頓が不徹底で雑然としていると、滑りやつまずきの大きな原因となる。対策としては、作業環境を清潔にし整頓する、床や通路に物を置かない、ごみは、たまらないように定期的に除去する、といったことがある。

清掃と保守−定期的清掃と保守により、リスクを最小限に抑えることができる。ごみは定期的に除去し、作業場には物を置かない。清掃の方法と用具は、床面に適したものを採用する。清掃・保守作業中は滑りやつまずきの新たな危険を生み出さないように注意する。

照明−床全面に均等に照明が当たり、障害物やこぼれなどの潜在的危険が全部はっきり見えるように、照明の強度、機能、位置を適正に保つ。照明の強度は構内を安全に通行できるレベルでなければならない。屋外作業場は適正な明るさが保たれなければならないため、外灯が必要になるかもしれない。

−床は損傷が無いか定期的にチェックし、必要に応じて保守を行う。穴、割れ目、固定されていないカーペットやマットは、滑りやつまずきの原因となる危険性がある。いかなる場所においても、床面は、そこで行われる作業に適したものにする(例えば、生産工程で使用されるオイルや化学薬品に対して耐性がある床材を使用する)。既存の床にコーティングや化学処理を施すことで、滑りにくくすることができる。床を清潔にしておくことも必要である。

階段−多くの事故が階段で発生している。手すり、滑り止めカバー、ステップの角につける目立つ滑り防止マーク、十分な照明、こうしたことはすべて階段での滑りやつまずきを防ぐうえで役に立つ。階段以外の段差−傾斜路など−は見えにくいことが多いので、適当な安全標識を設置するなど、しかるべき標を付ける必要がある。

こぼれ−こぼれは適切な方法で直ちに清掃する(化学処理が必要な場合もある)。床が濡れているところには警告標識を設置し、迂回通路を設ける。何故こぼれたのか。こぼれを最小限にくい止めるために、作業方法を変更したり作業場を改造することは可能か。

障害物−つまずきを防止するために、可能な限り障害物を取り除く。もし取り除くことが不可能であれば、適当な柵を設けるか警告表示を掲げる。

床を這うケーブル類−ケーブルが歩行通路を横切らないように設備を配置する。ケーブルカバーでケーブルを床面に確実に固定する。

履き物−労働者は作業環境に適した履き物を履かなければならない。仕事の種類、床の表面、床の通常の状態、靴底の滑り防止特性に注意を払う。

屋外作業場−屋外作業場では、例えば、凍りやすいところには滑り防止対策を講じたり適切な履き物を履くなどして、滑りやつまずきのリスクを最小化しなければならない。

解決策を探る−実践的防止

ここに掲げる事例は、簡単な防止措置を講じることが効果的であることを示している。このケースでは事故発生が契機となって対策が講じられた。しかし企業はこのケースのような経験から学び、構内での同様な事故を未然に防ぐことができる。滑りやつまずきによる事故は、多くの場合、費用をほとんどまたは全くかけずに減少させることが可能である。

ケーススタディ

ある作業員が通路に横たわっていた圧縮空気ホースにつまずいた。送気管は使用後、片付けられていなかった。通路の照明は薄暗く、この事故は夜間に起こった。調査後、会社は薄暗い個所に投光器を設置し、送気管とホースを移設した。現在では、安全意識と整頓に関する訓練を全作業員に実施している。

詳細情報の入手/参考資料

適切な安全管理慣行に関する詳細情報は欧州安全衛生機構のウェブサイト http://osha.europa.euで入手できる。本機構の出版物はすべて無料でダウンロード可能。「労働災害防止」は、2001年10月に加盟国が実施する「欧州労働安全衛生週間」のテーマである。詳細はhttp://osha.europa.eu/ew2001/へ。本機構のサイトは加盟国のサイトにリンクしているので、各国のサイトで滑りやつまずき事故に関する国内法や指導を見ることができる。 アイルランド:http://ie.osha.europa.eu/ 英国:http://uk.osha.europa.eu/

(1) ここでいう転落とは、2メートル未満の「低い所からの転落」を指す。
(2) 欧州連合における労働安全衛生状況−パイロット・スタディ2000、欧州安全衛生機構、ISBN 92-828-9272-7。
(3) http://osha.europa.eu/legislation/ はEU legislation、中小企業向けのEU委員会指導の詳細、リスクアセスメントに関する詳細にリンクしている。また、加盟国のサイトにもリンクしているので、指令およびガイドラインを実施するための国内法を見ることができる。

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