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作業場における車両輸送事故の防止
Preventing Vehicle Transport Accidents at the Workplace

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 16
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

欧州連合内では、毎年およそ5500人が労働災害で死亡しており、このうち約3分の1は輸送に関連する事故死である(1)。事故原因は通例、走行中の(例えば後退している)車両との衝突や巻き込まれ、車両からの転落、車両からの落下物との衝突、あるいは車両の転覆等である。これらの事故は適切な管理・防止措置を講じることにより回避できる。

事故発生率は従業員50人未満の中小企業で高い。ただし、ここに掲げる助言はあらゆる種類と規模の企業における車両輸送に対するものである。

事業者の責任

関連するEU指令(2)の内容は以下のとおりである。

指令が定める最低要件は各国の国内法を通して実施されており、国内法では更に補足規定を設けることができる。

従業員は、受けた訓練に基づいて指示に従いながら事業者の予防措置に積極的に協力する義務を負う。

従業員との協議は必須の要件である。従業員の知識を利用することにより、危険個所の正確な特定および実効ある解決策の実施を確保することができる。

実践的事故防止

第一歩は適切かつ十分なリスクアセスメントを行うことである。

  1. 車両を使用しての作業−後退時や荷物の積み卸し時−に関連する危険を特定する。「問題点は何か。何故問題なのか」を考える。例えば、人にぶつかったり巻き込んだりする可能性はあるか。積み卸し作業中に転落する危険はあるか。
  2. それぞれの危険により誰が被害を受ける可能性があるかを明確にする。運転者とその他の作業者が被害を受けること、さらに来訪者や一般通行者の被害も考えられる。
  3. それぞれの危険についてリスク−被害発生の確率と重大さ−を評価する。現行の予防措置は十分か、あるいは更なる予防措置が必要か。
  4. 取るべき措置に優先順位をつけた上で実行する。
  5. リスクアセスメントを定期的に見直す。特に、新しい車両の導入や通行路の変更等、変更があった時は見直しを行う。

リスクを除去するための全体的措置−輸送に伴う事故を最小にするために作業場の設計やレイアウトを改善する等−をまず最初に考えなければならない。リスクを除去できない場所には補完的手段として標識などを設置する。リスクアセスメントと防護措置の選択に際して考慮すべき事柄を以下に示す。

安全な作業場と作業システム

作業場のレイアウトを改善し安全な作業システムの採用により、バックする必要性をなくす

車両への積み卸しに対して安全な作業システムを確保する。

車両運行および歩行作業者にとって通行路のレイアウトが適切であるかどうかチェックする。

可能ならば歩行者と車両の通行路を分離する。それができない場合は、適切な警告標識を適当な所に設置する。車道には歩行者用の横断地点を適切な所に確保する。衝突の危険を減らすために一方通行システムの導入を検討する。

車両通行路が、行き交う車両の種類と台数にとって適当であるかをチェックする。通行路は十分な幅を持ち、床面や路面が良好な状態にあることを確認する。障害物は可能な限り取り除く。取り除くことができない場合は障害物がはっきり見えるようにする。通行路に急な曲がり角をつくらない。見通しの利かないカーブには適切なミラーを設置する。

適切な安全装置があるかどうかチェックする。場合によっては方向、速度制限、優先標識が必要になる。スピードバンプ(車の速度を落とさせるための道路上の段差)などの物理的速度制限が必要かどうか確認する。積み卸しベイやピット等の縁にははっきりと標をつけ、可能ならば防護柵を設置する。

車両の保守を十分に行うこと。予防保全計画が義務付けられている。運転者は車両を使用する前に基本的安全チェック−例えば、シフト交替前のブレーキとライトのチェック−を行うべきである。

運転技術と遵守事項

選考と訓練の手続きを通じて安全に業務を遂行する能力のある運転者を確保しているかチェックする。運転者は担当車両の運転並びに日常の保守が遂行できなければならない。運転者は、医学的に問題がなく、身体の動きが円滑で、聴力・視力共に良好でなければならない。試験に合格し、訓練を受け、運転の資格を認められた者のみに、車両の運転を許可すべきである。

照明と視界が作業場(内外ともに)の安全な通行に寄与しているかチェックする。道路の交差点、歩行者、障害物などの潜在的危険ははっきり視認できなければならない。運転者と歩行者を十分に分離できない場合は、運転者および/又は歩行者は視認性の高い衣服を着用する必要があろう。

車両の安全性

必ず安全で適切な車両を使用する。適切な安全機能の備わった、所定の基準に適合した車両を購入する。車両の乗降に関しては安全な手段が確保されていなければならない。運転者は、転覆や落下物に対して防護を必要とする場合もあろう。トラックに後退警告音装置をつけたり、可視性を増すために車両に点滅標識灯を付けることを考える。

フォークリフトの安全な使用

フォークリフトは、多くの労働災害を発生させており、特に後退時の事故が多い。事故を起こりやすくしている要因は次のとおりである:不十分な訓練、不適切な警告標識、不十分な車両保守、不十分な照明、スペースの狭さ。

車両と歩行者の通行路を分離できない時は:

  • 通行路が人と車両の両用であることを示すための、適当な警告標識を設置し、はっきり標示する。
  • 通路の片側を歩行者用とし歩道の標示を付けることを考える。
  • 歩行者とフォークリフト運転者に見えるように、横断地点には明確な標識を設ける。
  • 衝突のリスク低減につながるならば、一方通行システムを導入する。
  • 積み卸し場所など、フォークリフトが他の車両と出会う可能性がある場所に注意を払う。

低い視認性

  • フォークリフトは、点滅標識灯、反射鏡、後進灯などにより、近くにいる人からはっきり見えなければならない。また、近くにいる人は視認性の高い衣服を着用するなどして運転者からよく見えるようにする。
  • フォークリフトでの作業中は、警告灯の点滅を続ける。
  • 通行と騒音の激しい作業場では特に、警報の使用を考える。出入り口や見通しの悪い曲がり角付近、後退前に警報を鳴らす。
  • 一方通行システムを採用するなどして、後退の必要性を最小限にする。運転者にとって四方が見えるように、適所にミラーを設置する。ミラーでの確認を徹底させる。
  • フォークリフトの周辺で作業をする時は、自分の存在が運転者に気づかれていることを必ず確認する。フォークリフトの後ろを歩いてはならない。

安全運転

  • 通行の激しい所、特に歩行者と車両が分離されていない所では、制限速度を下げる必要がある。
  • 通行路からごみや移動可能な障害物を取り除く。
  • 急カーブをつくらない。見通しの悪い曲がり角が不可避の場合は、固定式ミラーで視界を良くすることができる。
  • 作業中や運転中は周囲に気を配る。
  • 出入り口、通路、歩道などでは歩行者や他の車両が突然現れることがあるので、気を付ける。

運転者のチェックリスト

  • 体調不良や視力低下など、能力が落ちている時は運転してはならない。
  • 車両の運転操作および安全運転のために守るべき制限を必ず理解していること。
  • 日常点検を実施し、問題点は全部報告する。
  • 現場のルールと手順−緊急時に関するものも含めて−を知り、遵守する。
  • 信号システムを理解する。
  • 安全速度制限を守る。カーブに近づいたら気を付ける。
  • 後退の前に、フォークリフトの後ろに歩行者、他車両、障害物が無いかチェックする。
  • 運転席からの視界が限られているならば、視界補助器具(ミラーなど)を使用したり、人に誘導してもらうなどする。誘導者を見失ったり、視界補助器具に欠陥が生じた場合には、即、停止する。
  • 障害物を移動するときはエンジンを止めて行うこと。

詳細情報の入手/参考資料

適切な安全管理慣行に関する詳細情報は欧州安全衛生機構のウェブサイト http://osha.europa.euで入手できる。本機構の出版物はすべて無料でダウンロード可能。「労働災害防止」は、2001年10月に加盟国が実施する「欧州労働安全衛生週間」のテーマである。詳細はhttp://osha.europa.eu/ew2001/へ。本機構のサイトは加盟国のサイトにリンクしているので、各サイトで作業場での輸送に関する国内法や指導を閲覧できる。 アイルランド:http://ie.osha.europa.eu/ 英国:http://uk.osha.europa.eu/


(1) EUにおける労働災害−1996年、 Statistics in Focus, Theme 3-4/2000, Eurostat.
(2) http://osha.europa.eu/legislation/ はEU legislation、中小企業のためのEU委員会指導の詳細、リスクアセスメントに関する詳細にリンクしている。また、加盟国のサイトにもリンクしているので、指令およびガイドラインを実施するための各国の国内法を閲覧できる。

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