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重量貨物トラックが関わる交通事故の防止(1)
Preventing Road Accidents involving Heavy Goods Vehicles

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 18
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

交通安全はEUの輸送政策において最優先の課題である。交通安全については行政当局、企業、一般市民が共同で責任を負うべきものとはいえ、輸送にたづさわる企業とその従業員が主導的役割を担うべきである。このファクトシートでは、道路運輸業における基本的な安全管理原則を示す。

好業績を上げている企業は品質管理政策に交通安全を組み入れている

EU内では毎年、約800人の貨物トラック運転者が交通事故で死亡しており、この職種は危険職種とされている(2)。道路運輸業に従事する者に限らずあらゆる業種の従業員は、安全かつ健康な業務に従事する権利を有する。

事故は企業の負担すべき費用にも影響をもたらす。交通安全政策を採用している企業は一般に、その結果として営業コスト低減を実現している。さらに、重量貨物車両が関わる交通事故は、道路輸送業のイメージダウンをもたらし、ひいては一般市民によるこの業界への信任にひびが入らないとも限らない。

このような理由により、陸運企業は雇用する運転者のリスク低減に向け、断固たる決意と努力が必要とされている。

会社運営の安全側面

欧州の労働安全衛生に対するアプローチは、リスクの評価と防止策の実施を含むものであり、とりわけ発生源でのリスク排除を最優先に掲げている。これらの原則を、交通安全衛生のための交通災害防止計画の実施に適用すべきである。この事故防止計画の対象には、車両と関連設備、業務計画立案、人員が含まれる。また、どのような出来事をも記録する記録簿を設ける。リスクアセスメントの一環としてこれを分析することにより、採るべき最善の措置を決定する際の助けとすることができる。

事故防止計画に含むべき具体的な項目として、次のようなものが挙げられる。

道路輸送に係る具体的な指令および規定は、運転時間、記録装置、車両検査、運転免許を規定する措置を含んでいる。

取引関係の安全側面

企業は、事業運営においても安全策を講ずることができる。例えば:

地元当局との協力体制

輸送会社は、従業員に基準を設定したり、事業を展開している地元の交通安全強化を推進することにより、交通安全に関連して会得した専門知識を実際に示すことができる。

交通安全強化や安全計画の採択に関して地元当局と連携する。例えば、地域の交通安全憲章の制定もこれに含まれる。これらの活動のイニシアチブをとり、問題点や交通安全強化の可能性を指摘したりする。

運転者もまた、問題点に関する専門知識を活用することができ、道路システム、標識、信号、公共情報、青少年の交通教育を改善する公的活動に参加することができる。

事業者側が講ずべき適切な交通安全措置のチェックリスト

  • 従業員である運転者および使用している自営運転者を対象とする安全方針および安全指示を文書化する。
  • 運転者、並びに車両に同乗することが義務づけられている各乗務員に対し、シートベルトを装備する。
  • シートベルトやエアバッグ、運転席の背後の安全スクリーン、アンチロックブレーキ、積荷安全装置、死角装置など最善の安全装置が完備した車両を購入する。
  • 社有車両の適正なメンテナンスを確保するような作業手順を整備する。
  • 運転者が制限速度を守り、混雑時の運転を避けられるよう、十分な時間的余裕のあるスケジュールを組む。速度制限装置を据え付けている場合、その装置が勝手に改造されていないことを確認する。
  • 天候や悪条件を考慮に入れてスケジュールを決める。
  • 安全なルート、可能ならば高速道路を具体的に示す。
  • 運転時間を監視し、推奨された安全な許容時間および法的規制の範囲内に収める。
  • 荷役作業は疲労につながる可能性がある。可能ならば運転者以外の熟練作業員を荷役作業に当たらせる。荷物の積み下ろしと運転の両方を行わなければならない運転者に対しては、スケジュールの中に休息時間を組み入れる。
  • 適格な運転者を雇う。運転免許証の履歴を調べる。運転に向いていることを確認する。
  • 運転者が安全な運転方法、車両の安全性の点検、車両安全機能の適正な使用、安全な積み下ろしについて訓練を受けていることを確認する。再訓練および定期的なブリーフィング実施を計画する。
  • 飲酒およびその他の薬物使用の取り締まりについて明確な方針を打ち出す。
  • 自動車電話の適正な使用を徹底する。
  • 安全計画の一環として、交通安全に関する地域憲章や道路交通法を採択する。
  • 個人営業運転者と契約している場合でも、車両整備、安全機能、シートベルトの使用、訓練と経験などの基準を指定することができる。走行スケジュール、ルート、安全手順については、直接的または間接的に管理することになる場合が多い。

重量貨物車両の運転者は交通安全のプロフェッショナルでもある

重量貨物車両が関わる事故は極めて重大な被害をもたらすことがある

重量貨物車両の運転者は職業運転者であり、自分自身の安全のみならず他の道路利用者の安全も、運転者の運転態度と行動にかかってくることが多い。重量貨物車両の運転者はまた、安全衛生面について事業者に協力する義務がある。長期的な目標は欧州域内の道路における重大事故および死亡事故のあらゆる発生源を除去することである。運転者は責任ある行動をとるという重要な役目を担っている。

交通道路網における安全責任分担とは:

  • 起こりうる危険な状況を予知し、そのとき適正に対処できるようにすることである。
  • 危険な状況で、あるいは事故が実際に発生した場合に、適正に対処できることである。
  • 慎重で注意深い運転を心掛け、たとえ他の道路利用者に落ち度があろうとも、礼儀、敬意、配慮をもって対応することである。

このように交通安全に積極的にかかわることは、運転者自身の安全確保に役立つばかりでなく、ストレスの軽減や職業意識の実証にもつながる。

慎重かつプロフェッショナルな運転

自分の運行計画を立てるときも安全を考慮する。出来るだけ、疲労が軽く、安全なルートを選ぶ。高速道路の利用が望ましい。

交通量の多い地域を通ることが避けられない場合、休憩や休息のタイミングを上手にとることにより、混雑ピーク時の運転を避けるよう努める。

前方車両との間隔を安全に保つ。道路の種類や混雑の度合い、視界、天候に応じてスピードを調整する。

高速道路では、車線変更前に必ず合図を出し、後方車両の運転者を驚かせないようにする。交通量が少ないときに長い追い抜きをかけようとする場合、後方から近づいている車両があるならばその車両が追い越すのを待つ。

狭い道路で自分の後方に長い車の列ができている場合、脇に寄って後方車両を先に行かせる。

交通事故で被害を受けやすい人達(自転車、歩行者、子供、高齢者)に注意する。特に市街地では十分配慮する。

運転者の安全運転のチェエクリスト

  • 安全指示に従う。
  • 必ずシートベルトを着用する。同乗させる場合は、シートベルトが装備されている人数のみとする。常に制限速度を守って運転する。天候条件に応じて速度を落とす。
  • 疲れたときは、運転を一時中断する。定期的に休息をとる。車両を降りて新鮮な空気を吸う。疲労感の解消を目的として興奮剤を服用してはならない。
  • 通行中の地域の交通条件を守り、運転時間に関する要件に従う。
  • 座席の背面を出来るだけ直立に調整し、頭部がヘッドレストに当たるようにする。こうすることにより、事故発生時にむち打ち症を防ぐのに役立つ。
  • 運転車両のメンテナンス手順に習熟し、常に良好な状態に保つ。ウィンドウやミラーは清掃されているか。タイヤ、ブレーキ、ハンドル、ライトは良好な状態にあるか。
  • アルコールや薬物の影響が残っている場合や、運転に悪影響を及ぼしそうな薬を服用した場合は、運転を控える。薬に関する安全指示に従うとともに、わからない場合には医師に相談する。
  • 運転中の喫煙は、車内の酸素減少と二酸化炭素の増加を招くほか、運転者の血液中の一酸化炭素増加にもつながり、結果的に眠気を誘う可能性があることを十分承知しておくこと。
  • 車内ではLPGや炭を燃料とする暖房器具や調理器を使わない。一酸化炭素が車内に充満し、死亡事故につながる恐れがある。
  • 運転によって視力が低下したり足の筋肉が疲労している可能性があるので、車両から降りる場合には、安全な方法で降りる。
  • 積荷が偏りなく積まれており、適切な方法でしっかり固定されているか、確認する。貨物の積み降ろし作業についても安全を確保する。積荷が崩れて下敷きになるような危険性を防ぐ。
  • 運転室にしっかり固定されてない積荷などがないことを確認する。ブレーキを踏んだ際に固定されてない荷が動いて人に怪我を負わせることがある。
  • 寝台で休息している交替運転者は、寝台から落ちないようにストラップで身体を固定する。
  • ウィンドウにつけた飾りやステッカーなどで視界が妨害されないようにする。
  • 他の運転者や歩行者の通行を妨げる場所に車両やトレーラーを駐車することを避けるよう心掛ける。車両が動くのを防ぐ措置を確実に講じる。
  • 規則正しい健康な食事をとる。

詳しい情報の入手先:

(1)注:このファクトシートでは、危険物運搬車両の運転に関する事項は取り扱っていない。
(2)交通事故に関するCAREヨーロッパデータベース

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