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職業性ストレスとその原因に取り組む労働者のための実践的アドバイス
Practical Advice for Workers on Tackling Work-related Stress and its Causes

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 31
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

はじめに

欧州連合にて職業性ストレスの影響を受けている労働者の数は、4人に1人を超える。職業性ストレスは、健康問題を引き起こしたり、欠勤率を上昇させたり、事業の生産性と競争力を低下させうることから、事業者、労働者、我々の社会をふくめ、すべての人々にとって大きな問題である。以上の理由から、2002年の欧州労働安全衛生週間のテーマは「ストレスに取り組む」となっている。

本ファクトシートの対象者は?

誰でも職業上のストレスを患う可能性がある。本ファクトシートは、職業性ストレスとその原因への対処法について、労働者のための情報を提供し提案を行う。例えば、読者は管理職または監督者であることもあれば、専門職または技術者、あるいは生産労働者であるかもしれない。また、職業性ストレスは家庭生活にも著しい影響を及ぼしうるため、本ファクトシートは、親類や友人が支援を行なう際にも役立つものである。ストレスへの対処法に関する情報の入手方法の詳細については、本ファクトシートの最後に記載されている。

職業性ストレスとは何だろうか?

職業性ストレスとは、労働環境からの要求が労働者の対応能力(または管理能力)を超えた場合に経験されるものである。

ストレスは病気ではないが、一定期間にわたり強度のストレスが続くと、心身の不健康(うつ病、神経衰弱、心臓病など)に発展することがある。ある程度のプレッシャーの下で働くことによって、業績が改善されたり、困難な目標が達成された時に満足感を得られることがあるが、要求やプレッシャーが大きくなりすぎると、ストレスに発展する。ストレスは、職場の問題が原因で生じることもあれば、職場とは無関係の場合もある。またその両者が原因で生じることもある。このファクトシートでは、仕事によって生じる、または仕事によって悪化するストレス、即ち、職業性ストレスを取り扱う。

職場におけるストレスの原因

職場における仕事の段取りの仕方や自分が従事する仕事が原因でストレスが生じることがある。注意すべきリスク要因は、次のとおりである。

職業性ストレス軽減のために事業主がなすべきこと

事業主には、職場において労働者の健康と安全を守る法的義務がある。労働監督官は、事業主がこの義務を確実に遂行するよう支援する。事業主は、職業性ストレスの原因を明らかにし、リスクアセスメントを行なうほか、労働者が病気にかかる前に予防処置を講じる必要がある。また、職場におけるストレスに発展する可能性のある変更をふくめ、健康および安全に影響を与える職場の変更を行う場合には、従業員やその代表に意見を聞くべきである。

方針を遵守し、問題や解決策の特定を助けることによって、労働者も協力すべきである。

職業性ストレスは、個人的な弱さではなく、組織的問題の表れであることを忘れずに!

自分の職場に職業性ストレスの問題は存在するのだろうか?

以下の質問に答えてみることが、問題の有無を知る手がかりとなるだろう。

雰囲気

自分の仕事を維持する、または昇進するためには長時間働かなければならないと感じるか。
ストレスに苦しむことは弱さとみなされているか、それとも真剣に受け止められているか。
自分の仕事や提案は尊重されているか。
より多くの仕事を、より迅速にこなさなければならないというプレッシャーを常に感じているか。

要求

時間が少ない割に処理しなければならない仕事量は多すぎるか。
自分の仕事に困難を感じているか。
仕事から満足感が得られているか。
仕事に退屈しているか。
職場の騒音は大きすぎないか、室温は快適か、換気と照明はどうか。
化学物質の使用など、自分の職場内の危険について不安はあるか。
顧客、取引先または一般市民から暴力を受ける危険にさらされていると感じているか。

裁量

自分の仕事のやり方に影響を与えることはできるか。
意思決定に関わっているか。

人間関係

上司との人間関係はうまくいっているか。
管理職である場合には、同僚または部下との関係はどうだろうか。
職場の人からいじめを受けていないか。例えば、侮辱されたり、攻撃的な態度を受けていないか。上司は権力を濫用していないか。
肌の色、性別、人種、障害などが理由で嫌がらせを受けていないか。

変更

職場の変更に関する情報を与えられているか。
自ら自分の仕事の変更に関わっているか。
変更が生じている期間に支援を受けているか。
変更が多すぎる、または不十分であるような気がするか。

役割

自分の仕事と責任を明確に理解しているか。
自分の仕事でないと考える業務をしなければならないか。
役割葛藤(role conflict)を感じることはあるか。

支援

上司と同僚は支持してくれているか。
優れた仕事をした時には誉められるか。
建設的な意見をもらえるか、あるいは批判されるばかりのように感じるか。

訓練

自分の仕事の遂行に適当な技能を有しているか。
自分の技能を高めることを奨励されているか。

職業性ストレスの徴候として注意すべきこと:

  • 機嫌または態度の変化。例えば、同僚との間の問題、いらいらしたり決断できない、仕事の実績に問題があるなど。
  • 物事に対処できない、または冷静さを失っている感じ。
  • 酒量や喫煙量の増加、さらには不正薬物に走る。
  • 頻発する頭痛、不眠、心臓の問題、胃の不調などの健康問題。

職業性ストレスへの取り組みにどのように協力すべきだろうか?

事業主には、職場のストレスを防止する責任がある。しかしながら、最大の効果をあげるには、労働者が事業主、管理職、労働組合、あるいは他の従業員代表と協力して取り組むことが大切である。以下はそのためのアイデアである。

職場のストレスの解決策発見に共に取り組むためのアイデア:

雰囲気

どうすれば物事を改善することができるかについて、建設的なアイデアを出すように努める。

要求

自分の仕事に優先順位をつけるとともに、その量が多すぎる場合には、他人に負担をかけすぎることなく、どの業務を中止、保留、または他へ回すことができるかを提案する。
自分の手に余ると感じ始めている場合には、その旨を上司または労働組合、あるいはその他の従業員代表に伝え、どうすれば状況を改善できるかを提案する。
業務に変化が欲しい場合には、自分がすることのできる新しい職務を明らかにする。
職場における危険と予防措置について不安のある場合は、それらに関する情報を求める。
関連する方針がある場合には、必ずそれらに従う。

裁量

自分自身の仕事の計画に際し、より大きな責任を要求する。
自分の業務範囲の決定に加わらせてもらう。

人間関係

いじめを受けていると思う場合には、上司、従業員代表、または協力的な同僚に話をして、早めに行動を起こそう。自分の上司も問題の一端を担っている場合には、その上の役職者に話をすることができるだろう。話し合いの際には、自分の言い分を裏づける証拠を用意しよう。これには、いじめにあっていると感じる際の詳細な記録を取ることが含まれる。
自分が他人に示す態度が常によい手本となるようにする。

変更

変更に関する情報を要求する - 自分にどのような影響を及ぼすか、どのようなスケジュールなのか、その結果生じうる利益と不利益。

役割

自分の職責が明確でない場合は、上司に相談する。場合によっては、新しい職務内容説明書を求める。

支援

自分の仕事のやり方に対するフィードバックを求める。批判を受ける場合は、その代わりに提案を求める。

訓練

自分の技能を伸ばす必要性を感じる場合には、どうすればそれを実現できるかを提案する。

このほか、ライフスタイルの改善に取り組むことも役立つであろう。そうすることにより、問題が解決されることはないが、危険の回避または緩和に役立つはずである。これらの改善には、より健康的な食生活、運動量を増やす、アルコール消費量をガイドラインの範囲内に保つ、喫煙を減らすまたは止める、家族や友人との接触を保つ、などがある。

ストレス関連の病気にかかった場合にはどうすればよいか?

前述のとおり、事業主と労働組合、あるいは他の従業員代表に、病気になった理由、およびさらなる問題の発生を防止する方法について相談をするべきである。仕事を休んでいる場合には、職場に復帰する前に、あるいは仕事に復帰後できるだけ早い時期に話し合いをもつよう努めるべきである。

どうしたら職業性ストレスに悩んでいる同僚、家族、友人を助けることができるだろうか?

支援は非常に役立つ。同僚、親戚または友人に、第一ステップとして、上司や労働組合、あるいはその他の従業員代表と問題について話し合いをもつよう勧めよう。上司も問題の一端を担っている場合には、同僚の代理人となるか、あるいは状況の処理に助力してくれる別の管理職を推薦することができるかもしれない。さらに、見込みのある問題の解決策を見極めることもきまって有用であるので、この面で支援することも可能である。

職業性ストレスとその原因に関するその他の情報の入手先

詳しい情報は、http://osha.europa.eu/ew2002/ にて入手できる。ここでは、ストレス、いじめ、暴力に関する本シリーズの他のファクトシートが閲覧できる。

欧州安全衛生機構のウェブサイトは、 http://osha.europa.euである。

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