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心理社会的問題に取り組み、職業性ストレスを軽減する方法
How to Tackle Psychosocial Issues and Reduce Work-related Stress

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 32
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

はじめに

欧州連合にて職業性ストレス(WRS)の影響を受けている労働者の数は、4人に1人を超える。2002年欧州労働安全衛生週間でも、WRSと心理社会的問題を中心的テーマとしている。この取り組みを支援するために、心理社会的問題への対応とWRSの防止をめざす加盟諸国におけるプログラムや慣行、経験の事例を数多く取り上げた報告書が作成された。このファクトシートは同報告書の要約であり、国内、地域、地方レベルにてWRSに取り組む戦略を策定することに関心をもつ人々を対象にしている。ファクトシートの最後には、報告書およびその他のWRS関連資料の入手方法に関する情報が記載されている。

本報告書の目的

法令および国内規制

職場の労働安全衛生の改善に関する、EU枠組み指令 (89/391/EEC)は、EU加盟国のための参照法令である。この指令は、明示的および黙示的に心理社会的問題にも言及している。一方、一部の加盟国では、心理社会的リスクに対して事業者がとるべき行動を明記することにより、枠組み指令よりもさらに進んだ法律上の規定を設けている。報告書では、心理社会的な仕事の要求、暴力、いじめにも言及した、フィンランドの新しい安全衛生法をはじめとする、最近の取り組み事例を掲載している。一方で、部門間の各種協定に関するオランダのプロジェクトである、労働安全衛生に関する規約のように、法律施行以外の代替策の検討も行なっている。労働監督局をふくむ、社会パートナーおよび公的機関からの反応が要約されているほか、監督における心理社会的問題への対処について、いくつかの事例が掲載されている。

心理社会的労働環境の改善

ケーススタディ

  • ワーク・ポジティブ(Work Positive)- 中小企業のためのストレス管理アプローチ(アイルランドとスコットランド)
  • 職業性ストレスと取り組む(Tackling Work-related Stress):リスク管理アプローチ(英国)
  • ヘルス・サークル(Health Circles):衛生関連の労働条件を改善するための参加型アプローチ(ドイツ)
  • ナウサ紡績株式会社 :職場の衛生保護プログラム(ギリシャ)
  • 欠勤と健康に関する介入プロジェクト(IPAW)(デンマーク)

報告書は、心理社会的労働環境を改善することをめざす各種手段の事例を紹介している。職場のストレス管理のための5段階プロセスである、ワーク・ポジティブは、こうした手段の一つであり、中小企業が職業性ストレスのリスクを見極め、適切な処置をとる手助けをしている。多くの機関において試行が成功してきたもう一つの手段に、リスクアセスメント‐リスクの軽減の枠組みがある。これは、リスクを評価し、労働者間のストレスを軽減するための処置を講じることを目標としている。ヘルス・サークル は、職場における主要な健康関連の問題を見極め、その解決策を見つけることを目的に職場で結成される、従業員協議グループである。こうしたグループは、労働環境の改善を促進する手段として、1980年代から利用、評価されてきた。

ナウサ紡績株式会社は、職場の衛生保護プログラムの活用例を示している。同社は、1986年以来この分野ではギリシャの草分け的存在となってきた。欠勤と健康に関する介入プロジェクトは、5年間にわたる心理社会的労働環境の介入調査である。これらの心理社会的要因が改善された結果、欠勤率は著しく減少した。

ストレスの軽減

ケーススタディ

  • HSE(安全衛生庁)によるガイダンス: パート1- 職業性ストレス(英国)
  • ストレス・モデレーター(StRess.Moderator):ストレス管理手法(オーストリア)
  • ストレス防止および管理臨床プログラム(ポルトガル)
  • ベルギー連邦警察におけるストレス管理方針
  • 道路の利用およびバス運転手の労働環境(スウェーデン)
  • テイクケア: 腫瘍治療従事者のためのチームを基盤にしたバーンアウト介入プログラム(オランダ)

ストレスの削減をより具体的にめざした手段とガイドラインとしては、職業性ストレスに関するガイダンスおよびストレス・モデレーター手法が報告書の中で紹介されている。いずれも、事業者および従業員が、社内の心理社会的リスクを特定、分析、対処する手助けとなっている。一方、ストレス防止および管理臨床プログラムは、個々人に合わせたプログラムであり、参加者の健康な状態を取り戻し、対応能力をつけさせることを主目的としている。

警察官、運転手、保健医療従事者のいずれも、ストレスを生じる可能性のある心理社会的要因にさらされる危険の高いグループである。ベルギー連邦警察では、警察官を援助するために、ストレス管理方針を導入し、その実施を受けもつ「ストレス・チーム」を設置した。この多岐にわたる分野の専門家からなるチームでは、心的外傷後ストレス管理、ストレス防止、情報、訓練を活動範囲としている。道路の利用およびバス運転手の労働環境は、ストックホルムの中心部を走るバス路線にて実施された介入プログラムについて述べている。組織レベルを対象に実施され、その評価調査では運転手のストレスの徴候に減少が見られた。 最後に、テイクケアプロジェクトは、従業員援助グループの設置をはじめ、チームを基盤にしたストレス管理アプローチを通じて、腫瘍治療従事者のバーンアウト(慢性の職業性ストレスの一形態)を防ぐことをめざしている。

暴力の防止

ケーススタディ

  • HSEによるガイダンス:パート2 - 職場における暴力(英国)
  • ラ・ポステ(La Poste):攻撃的な状況に関連したストレスの管理(フランス)
  • 小売部門の職場における身体的暴力の防止−KAURIS手法(フィンランド)

職場における暴力に関するガイドラインは、職場の暴力に対処するための戦略的アプローチの一環をなしている。従業員に対するリスクを軽減するために、一部の企業が活用してきたさまざまな費用効果の高い方法のケーススタディが掲載されている。職場における身体的暴力の防止‐KAURISは、企業による職場の暴力の評価および管理活動を支援するための手法であり、暴力発生リスクの高い小売業を対象にしている。ラ・ポステ は、郵便局における攻撃的な状況に関連したストレスの管理をめざした国家プロジェクトであり、各従業員がストレスを管理するための具体的な行動および心理社会的な面における技能を実践できるように訓練することを目的としている。

いじめの防止

ケーススタディ

  • 職場における尊厳(Dignity at Work) - 職場におけるいじめへの挑戦(アイルランド)
  • トリノ公共輸送システム:セクハラ、いじめ、差別を防ぐための協定(イタリア)

アイルランドでは、いじめの問題を調査するとともに、その対処方法に関する提言を策定するために、職場のいじめ防止に関するタスクフォースが設置された。その報告書、職場における尊厳‐職場におけるいじめへの挑戦は、国家機関が協調して対応することにより、どのようにして課題を克服することができるかについて、一連の対処法を示している。二つ目のケーススタディ、イタリアのトリノ公共輸送システムは、女性労働者およびイタリア人以外の労働者の増加に直面してきた。その結果として、嫌がらせや差別が増加する可能性があるため、労働組合の間でセクハラ、いじめ、差別を防止するための協定が締結された。さらに、あらゆる問題を処理するために、特別委員会が設置された。

ストレス防止における良き慣行の成功要因

報告書では、職場で成功するストレス防止介入の重要なポイントとして、7つの要因を紹介している。

1. 適切なリスク分析

リスクアセスメントを通じて基準を設定するべきである。このプロセスの一環として調査を行うこともできるが、得られた結果に対して時宜を得た行動をとる明確な意図がない限り、調査は実施するべきでない。

2. 綿密な計画および段階的アプローチ

任務や責任を明らかにし、資源の割り当てを行なうとともに、明確な目標を設定し、対象グループを特定するべきである。

3. 業務指向型と労働者指向型措置の組み合わせ

発生源でリスクに取り組むため、集団的および組織的な介入を優先する必要がある。労働者指向型措置は、その他の行動を補完することができる。

4. 情況に応じた解決策

問題と解決策を明らかにするうえで、従業員の「実務を通じた」経験は欠かせない資源である。時には、外部の専門知識が必要なこともある。

5. 経験に富んだ実務家および証拠に基づく介入

適切な外部専門知識のみを利用するべきである。

6. 社会的対話、協力関係、労働者の参加

介入のいずれの段階においても、従業員、中級・上級管理職の献身的な関りがきわめて重要である。

7. 持続的な防止および経営首脳陣による支援

経営者に変化を起こす気構えがない限り、持続可能な改善は実現不可能である。事業を行なううえで、リスク管理が最も重要な事柄とされるべきである。

報告書の入手方法

英語版報告書の全文は、http://osha.europa.eu/publications/reports/index_en.htmから無料でダウンロードすることができる。また、書籍版 "How to tackle psychosocial issues and reduce work-related stress(心理社会的問題に取り組み、職業性ストレスを軽減する方法)"、欧州安全衛生機構、2002、ISBN 92-9191-009-0は、ルクセンブルクのEC出版局EUR-OP(http://eur-op.eu.int/)、またはその販売代理店を通して注文可能である。ルクセンブルクの本体価格は23.50ユーロである(別途VATがかかる)。

職業性ストレスに関するより詳しい情報は、下記サイトにて入手できる。http://osha.europa.eu/ew2002/

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