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危険有害物質に関する情報伝達
Communicating information about dangerous substances

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 35
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

はじめに

欧州安全衛生機構は、「2003年欧州労働安全衛生週間」のために、危険有害物質に関する労働安全衛生情報について一連のファクトシートを作成している。労働者の健康へのリスクと職場におけるその管理についてリスクを効果的に伝達することは、事業者、労働者、彼等の代表にとり共通課題である。このファクトシートには、情報をうまく伝達するために考慮すべき要点が述べられている。




分類とラベリング(1)に関するヨーロッパの法は、化学物質の製造者が負うべき責任の枠組みを設定している。それらは、ユーザーが利用できる安全ラベル、リスクシンボル、安全データシートといった、標準化された方法で提供されなければならない重要な情報(2)を規定する。

化学薬品(3)関連の指令は、事業者は供給者、またはすぐに入手可能な情報源からリスクアセスメントに必要とされる追加情報を得なければならないということを定めている。また、事業者は、労働者と彼等の代表が以下の事項に関する情報を知り、それに目を向けるようにさせなければいけない。
さらに、事業者は、労働者がこれらの状況における変化に気づくようにしなければならない。

発ガン物質や突然変異誘発物質(4)、特定の生物学的因子(5)に暴露するかもしれない労働者のために、事業者は、暴露や健康調査についての情報を含む記録を保管しなければならない。労働者は自分自身のデータを得る権利を与えられる。

これらの規則は、各国の法に移行される必要がある。指令は最低限の要求のみを定めているため、労働者を保護するための条項を補足したりさらに厳しいものにする権限が、加盟国には与えられている。

化学物質を登録、評価、認可するREACHと呼ばれる今後のEUシステムは、化学物質の特性、環境と健康への影響、使用目的、危険削減対策についての関連情報の利用が増す事を目的としている。

従って、職場における危険物質の使用に関して適用される国の法の明確化を求めることが、強く勧められている。


化学薬品のラベル表示

化学物質、または化学製品が危険なものとして分類される場合、製造業者や輸入業者は少なくとも以下の事項につき、包装上に情報を記載した危険ラベルを貼らなければならない。

リスクシンボル、危険(R)表示、安全(S)表示は、物質の危険とその物質に関する安全対策の表示である。RとSの表示は共に、EUの指令(11)に従い設定されている。それらは、包装のラベル表示や、危険な製品・製剤の使用を警告し指導する安全データシートに使用される。危険表示は、例えばR21「皮膚接触の危険」の様に、通常の取扱いと使用における安全衛生のために、製品の潜在的危険を示し標準化したものである。安全表示とそれらの組み合わせは、S15「熱源から離れる」のような防止対策を表す。

職場での使用に関し、健康への影響、製品内容、適切な防止対策、個人用保護具に関する広範囲に渡る標準化した追加情報を、安全データシートに加えなければならない。


安全データシート(SDS)

化学物質製造業者と供給者は、必要に応じて物質の特性、健康や環境への危険性、物理化学の特性に基づく危険、保管、取扱い、運搬と廃棄、労働者保護のためのガイダンス、消火、偶発的な放出と応急処置のための対策に関する情報が載っているSDS(12)をユーザーに提出しなければならない。SDSの主な目的は、事業者が、どのような危険化学物質が職場に存在するかを判断し、労働者の安全衛生や化学物質の使用により生じる環境に危険が存在するかどうかを評価することである。労働者や彼等の代表は、SDSを使用しなければならない。

SDSに含まれる情報は、労働者が暴露され、管理対策が必要とされるような危険性を認識する際の出発点となる。にもかかわらず、製造者は危険の可能性がある使用状況を全て予測することはできないため、SDSで推奨される防止策は、特定の作業場の状況に適合するものでなければならない。

その他の情報源

医薬品(抗悪性腫瘍薬)、または化粧品(整髪剤)のようなある種の製品に関しては、供給者はSDSを用意する必要はない。

SDSが入手可能であるとしても、あるケースにおいてはより多くの情報を必要とする可能性がある。危険評価と防止対策に関して必要情報を収集するためには、以下のことが必要である。
生物学的因子は、健康に与える危険性に応じて分類される。危険レベル、リスクアセスメントの基準、危険有害生物学的因子を使用する際にとるべき防止策に関して、危険有害生物学的因子(微生物・寄生虫)の分類表を所有しているべき職場でのそれらの取扱いについては、国の法を参考にすることが望ましい。

役に立つ情報システムの例

イギリス安全衛生庁の最新のウェブサイト「COSHH essentials」(13)は、職場で使用する危険物質の評価と管理のために、小規模の会社に簡単で段階的なガイダンスを提供できるように企画されている。

法定傷害保険と防止に関するドイツ機関(German institutions)のGestis物資データベース(Gestis-substance database(14))は、約7,000物質についての情報を提供している。システムは、暴露データベース(DOK-MEGA(15))と、200の製造業者による410,000以上の安全データシートにリンクできるデータベース(ISI)(16)につながっている。さらに、産業のほとんどの分野をカバーする、4,000以上の粉じんサンプルの燃焼・爆発特性データベース(Gestis-Dust-Ex(17))によって、さらに補足されている。

欧州委員会の指令と連携しながら、国連環境プログラム(UNEP)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)の3つの国際協力機関が展開している国際化学物質安全性カード(ICSCs(18))は、1,200以上の物質の情報を提供している。ICSCカードは、労働者、事業者の作業場レベルでの使用に関し、化学物質に関する最も重要な安全衛生情報を要約してある。カードはその他の言語にも訳されている。


詳しい情報

情報伝達が成功した例と、危険物質に関するその他のファクトシートは、http://osha.europa.eu/ew2003/サイトで入手出来る。このサイトは、常に最新の情報を提供している。

化学物質の危険性がある職場の安全衛生問題について、国際労働機関(ILO)は、労働者と事業者間の情報伝達の方法に関する安全衛生委員会向けの指導基準を編纂した。この基準は、以下のサイトにて無料で入手出来る。
http://www.itcilo.it/english/actrav/telearn/osh/com/comain.htm


労働者のための情報チェックリスト

以下のことを知っていますか?
あなたの事業者のリスクアセスメントの結果
どのような危険に暴露されているか
どのような影響をうけているか
あなた自身や他の人々の安全を守るためにしなければならないこと(たとえば、危険はどのように管理されているか)
物事が間違っている時どのようにチェックし見抜くか、そして誰にその問題を報告すべきか
暴露の監視、あるいは健康調査の結果について
保全作業の際とられる防止について
応急処置と緊急事態時の手順について


事業者と労働者間の効果的なコミュニケーションを図るためのチェックリスト

すべての職場に、そこで使用され製造される危険有害物質のリストがあるか
分類された危険有害化学物質の安全データシートはすぐに入手できるか
日常作業における物質の取扱いに関して、実践的な情報を提供している職場の指導書に、安全データシートの情報が盛り込まれているか
危険有害物質の各々の容器(大桶・ビン・貯蔵タンク等)に、物理的危険(爆発の危険)と健康被害の両方に関して、製品の性質と適切な危険警告が記載されているか
危険評価が実行され、その結果が伝達されているか
労働者は、潜在的な安全衛生問題に関し定期的に質問を受けているか
自分自身や他の労働者を保護するために取るべき予防措置を含め、職場に存在する危険有害物質に関し全ての関連情報・指導・トレーニングが労働者に提供されているか
全ての労働者は以下の事項を知っているか
用意されているすべての管理対策の、徹底した適切な使用
労働者が、管理対策の問題と欠点を報告すべき人
危険有害物質関連の事故や緊急時に、労働者がすべきこと



(参照)
  1. e.g. Council Directive 67/548/EEC of 27 June 1967 and its subsequent amendments presenting requirements for testing, classification, packaging and labelling of dangerous substances, Directive 1999/45/EC relating to the classification, packaging and labelling of dangerous preparations.
  2. Commission Directive 91/155/EEC of 5 March 1991 and its amendments defining and laying down the detailed arrangements for the system of specific information relating to dangerous preparations (safety data sheets).
  3. Council Directive 98/24/EC of 7 April 1998 on the protection of the health and safety of workers from the risks related to chemical agents at work.
  4. Council Directive 90/394/EEC of 28 June 1990 on the protection of workers from the risks related to exposure to carcinogens at work and its amendments.
  5. Directive 2000/54/EC of the European Parliament and of the Council of 18 September 2000 on the protection of workers from risks related to exposure to biological agents at work.
  6. European Inventory of Existing Commercial Substances(Einecs), an inventory containing 100 195 substances, see http://ecb.jrc.it/new-chemicals/
  7. European List of New Chemical Substances, see http://ecb.jrc.it/new-chemicals/
  8. http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cis/products/icsc/dtasht/
    symbols/index.htm
  9. http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cis/products/icsc/dtasht/
    riskphrs/index.htm
  10. http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cis/products/icsc/dtasht/
    sftyphrs/index.htm
  11. Commission Directive 2001/59/EC of 6 August 2001 adapting to technical progress for the 28th time; Council Directive 67/548/EEC.
    http://europa.eu.int/smartapi/cgi/sga_doc?smartapi!celexapi!prod!CELEXnumdoc&lg
    =en&numdoc=32001L0059&model=guichett
  12. http://europa.eu.int/comm/enterprise/chemicals/sds/sdsdir.htm
  13. www.coshh-essentials.org.uk
  14. http://www.hvbg.de/bia/gestis-database
  15. http://www.hvbg.de/d/bia/fac/mega/megae.htm
  16. http://www.hvbg.de/d/bia/fac/ISI/isi.htm
  17. http://www.hvbg.de/d/bia/fac/expl/exple.htm
  18. http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cis/products/icsc/

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