このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ海外安全衛生情報:安全衛生情報誌雑誌 Fact Sheet > 職場の騒音による影響

職場の騒音による影響
The impact of noise at work

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 57
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.10.10

労働者は職場における騒音ばく露により、健康を害する恐れがある。職場の騒音による最もよく知られた影響としては、聴力障害が挙げられる。これは、すでに1731年において、銅器製造職人の間で見受けられた問題であるが、そればかりでなく、ストレスの状態を悪化させ、災害のリスクを増加させうる。このfactsheetは、職場騒音の影響について記述するものである。

聴力障害

 聴力障害は、内耳への音の伝達における物理的な遮断(伝導性聴力障害)、又は内耳の一部分である蝸牛の中の聴覚細胞の損傷(感覚神経性聴力障害)により発生する。

又、まれに聴力障害は、聴覚中枢の処理異常(脳の聴覚中枢が影響を受けた場合)によっても発症する場合がある。

騒音による聴力損失(NIHL:Noise-induced hearing loss)

騒音による聴力損失は全ての職業性関連疾病の約1/3を占め、皮膚障害及び呼吸器障害よりも多い、欧州で最も広範に存在する病である。(註1)

騒音による聴力損失は、通常において長期間大きい騒音にばく露されることが原因となる。通常、最初の徴候として、高周波数の音を聞くことが出来なくなる。騒音問題に対処しなければ、更に悪化の道をたどり、低周波数の音も聞きにくいことになる。これは、通常、両耳で発生することになり、このダメージは、永久的なものである。聴力損失は長期間のばく露がなくても発生することがある。短時間の衝撃音へのばく露も、聴力損失及び継続的な耳鳴りを初めとする永久的な影響をもたらす可能性がある。

衝撃音により、鼓膜組織が裂けることもある。このダメージは痛いけれども、回復が可能である。

耳鳴り

耳鳴りとは、耳の中で音が鳴ったり、シューという音が聞こえたり、あるいはブーンという音が鳴るという感覚状態になることである。過度の騒音ばく露により、耳鳴りのリスクが増加する。騒音が衝撃的(例えば爆発のような)である場合、実質的リスクが高くなる可能性がある。耳鳴りは、聴力が騒音によりダメージを受る最初の徴候である。

騒音と化学物質

ある種の有害化学物質は内耳神経毒性(文字通り耳への毒性)がある。この種の化学物質及び大きな騒音へばく露された労働者は、騒音あるいは化学物質に別々にばく露された労働者よりも聴力に対するダメージに、より大きなリスクがあることと思われる。この相乗効果は特に、騒音とある種の有機溶剤(トルエン、スチレン及び二硫化炭素といった)との間において注目されている。

これらの化学物質は、プラスチック製造業、印刷業及び塗料業界、ラッカー製造業といった産業部門において、騒音の大きい環境下で使用されている。

騒音と妊娠中の労働者

妊娠している労働者が職場で高い騒音にばく露されると、お腹の中の子供に影響を与える可能性がある。長期間大きな騒音にばく露されると、血圧及び疲労度が増大することになる。実験に基づいた証明によると、妊娠中に長期間お腹の子供が、大きな騒音にばく露されると、後で聴力に影響が出る恐れがあり、且つ、低い周波数でも、かなり有害となる可能性があることが示唆されている。(註2)

事業者には、妊娠中の労働者がばく露される騒音の種類、程度及び期間についてアセスメントを実施することが要求されている。労働者及び妊娠への影響について安全衛生リスクがある場合、事業者は、ばく露を避けるように、妊娠中の労働者の労働条件を調整しなければならない。母親が個人用保護具を使用することは、物理的なハザードからお腹の中の子供を守ることにはならないということをも認識しなければならない。

災害増加のリスク

騒音と災害との関連性は、騒音指令で認められており、騒音のリスクアセスメントで特に考慮しなければならない要件となっている。(註4)

騒音は以下の点で災害につながる可能性がある。

言語による情報伝達の妨害

効果的な情報伝達が、工場や建物、あるいはコールセンターや学校をとわず、色々な職場において重要である。良好な言語による情報伝達のためには、聞き手の耳の言語レベルが、周囲の騒音レベルより、少なくとも10デシベルは高いことが求められる。(註5)

周囲の騒音、特に以下のような場合は、しばしば言語による情報伝達に対する明らかな妨害と感じられる。:

労働安全衛生への影響は、下記の例のように作業環境に左右される。

ストレス

職業性ストレスは、労働環境による要求がそれに対処する、あるいはそれを管理する労働者の能力を超えるような場合に発生する。(註6)

職業性ストレスには、多くの誘因(ストレッサー)があり、単一の要因だけで職業性ストレスとなることはまれである。物理的な作業環境が労働者のストレス源となる可能性がある。職場の騒音は、聴力損失防止対策が必要でないレベルであっても、その影響通常、他の要因と重なり合って、ストレッサー(例えば電話が頻繁に鳴るとか、エアコン装置の騒音とかがある。)となる可能性がある。

労働者のストレスレベルにどのように影響を与えるかは、以下のような多くの要因が複雑に絡み合っている。

法規制

機械および機器のメーカーもまた、騒音レベルを抑制する責任がある。理事会指令98/37/ECによると、機械は「空中への騒音の放出によるリスクが最も小さいレベルに引き下げられるよう、設計し組み立てる。」ことが必要である。

物理的要因(騒音)によるリスクを生ずる労働者のばく露に関する、欧州議会と理事会の安全衛生最小要件指令2003/10/ECが2003年に、採択された。この指令は、指令86/188/EECと置き換えられるもので、2006年2月15日までに全加盟国における法律に取り込まれる。

この指令の第5(1)条においては、技術の進歩と発散源におけるリスク抑制手段の利用を考慮に入れ、「騒音へのばく露によるリスクは、その発散源で除去するか、最小限度まで抑制する。」ことを求めている。また、この指令における一日平均の新しいばく露限界は、87dB(A)である。

詳細情報の所在

このFACTSHEETは欧州職場安全衛生週間2005キャンペーンの一部分である。
騒音に関する情報:http://ew2005.osha.europa.eu(別窓)

EU安全衛生法令:http://europa.eu.int/eur-lex/(別窓)

(註1)EU-15統計。EU安全衛生機構の報告、OSHと雇用適性との関連データ2002,ISBN92-95007-66-2
(註2)(註3)指令92/85/EEC(1992年10月19日 妊娠中及び出産後又は授乳中の労働者の労働安全衛生の向上を促進するための施策の導入について理事会指令)
(註4)指令2003/10/EC(2003年2月6日 欧州議会及びECによるもので、物理的要因(騒音)により発生するリスクに労働者がばく露される場合の最低限の安全衛生要件に関する指令。
(註5)聞き手は音節の90%、文の97%を聞きとる
(註6)当機構の調査研究、2000職業関連ストレス
(註7)86/188/EECの改正

このページの先頭へページの先頭へ