欧州では毎日、多くの労働者が職場において騒音及びこれに伴うあらゆるリスクにばく露されている。
2005年の欧州安全衛生週間に当たって欧州安全衛生機構では、騒音ばく露により個人的にも、社会的にも、経済的にも高くついている疾病及び災害コストを低減するために、欧州指令及びそれを補完する規格が、騒音による労働者へのリスク対応に、どのように役立っているかについて調査した報告書を作成した。
欧州における職場騒音に関する方針
枠組み指令(注1)及びその他の職場関連指令、例えば騒音(注2)、個人用保護具(注3)及び妊娠中の労働者(注4)注は、全ての労働者の、騒音による全てのリスク(騒音による聴力損失リスクだけでなく)に対処する体系を構成している。枠組み指令は、一般的な防止原則を設定したものであり、個別の指令のうちで2003年の騒音指令は、騒音に関する最も重要なものである。内容をここに述べる。
防止の一般的原則
事業者には、騒音のリスクを発生源で抑制、除去、最小限に低減、技術的進歩及び防止対策の有効性の検討が求められている。リスクを除いたり、抑制したりするためのよい対策(例えば騒音源で対応することで)がある場合には、耳栓などによる個人防護対策を用いてはならない。
2003年の騒音指令では、騒音リスクを抑制するにおいて検討すべき要素を、次のように特定している:
改善事例:空気式衝撃プレス
空気式衝撃プレスの作動部排気装置からの圧縮空気の放出及び金属ツールラムを打撃した際の衝撃により、高ピークの騒音が発生していた。圧縮空気の放出による騒音は、サイレンサーを使用し、空気を多孔性のポリエチレンキャップを通過させることで低減された。衝撃による騒音は、ウレタンエラストマーの8mm厚のクッションを、金属表面間に使用することにより低減された。この結果、プレス全体的の作業能率に大きな影響をおよぼさずに騒音レベルの全体として9dbの低減が行われた。(注5)
職場における対策を求める指令だけが、労働者の健康保護に対する方策ではない。機械指令(注6)・屋外用機械指令(注7)においては、製造者は、機械に関する騒音情報を提供することが求められており、騒音発生を制限して、労働者へのリスクを低くしなければならないとされている場合もある。又これらの指令においては、設計段階での防止策が職場騒音対応策として大変重要であることを明からにしている。機械類は、空気中伝達による騒音のリスクは、技術的進歩及び特に騒音源における騒音低減対策の有効性を考慮して設計、製造されなければならない。(注8)
これらの規格は、職場騒音ばく露防止において重要な役割を果たしている。2003年の騒音指令は、労働者のばく露評価に関するISO1999:1990によるものである。CENの技術委員会によって用意された多くの規格は、機械指令の騒音に関する基本的な安全衛生要件をサポートする条項を有している。
興業業界での騒音
音楽業界及び興業業界における2003年の騒音指令の実施手段を検討するため、加盟各国は、2年間の準備期間が与えられている。直面する問題点は、音を作り出すことが請け負った仕事の目的となっている場合である。騒音保護に対する古典的なコンセプトは、適用できなくなっているが、多くの労働者が、日常の作業において、聴力ダメージの原因となり得る音圧レベルに、ばく露されていることに疑いの余地は無い。
一時的な高いばく露を避ける一方で、究極の芸術表現を得るような明白な解決策は無い。数々の対策の組み合わせによることのみにより、実質的な解決策を見出せるのである。当機構の報告書においては、この業界における労働者の聴力保護に関する数々の対策を示す多くの事例が紹介されている。
騒音リスク低減に関する資料
当機構のウェッブサイトから英文報告書の全文を入手できるし、且つ無料でダウンロードもできる。
(http://osha.europa.eu/publications/reports/)各国の国内法令では、より厳しい基準を要求することがあるので、関連する当局に確認すること。このファクトシートでは触れていない関連した指令も他にある。
関連指令
(注5)HSE改善事例‘騒音対策’
(http.//www.hse.gov.uk/noise/soundsolutions/index.htm).
(注8) 機械指令本質安全衛生要件付録1.5.8
詳細情報の所在
このFACTSHEETは欧州職場安全衛生週間2005キャンペーンの一部分である。
▼騒音に関する情報:
http://ew2005.osha.europa.eu
▼EU安全衛生法令:
http://europa.eu.int/eur-lex/