若年労働者に起こること
若年労働者が労働災害に遭遇したとき、残りの人生にその影響がつきまとうことになる。業務についたその日にも、何か悲劇的な事が起こるかもしれないが、その多くは防ぐことができるのである。
若年労働者が業務に就いた時、年輩労働者に比べるとリスクが大きい。業務及び職場の新入者においては、作業や存在している安全衛生リスクに対する経験の不足がある。若年労働者は、必要な訓練及び管理監督の下で、安全で健康的な作業をする権利、並びに不安全と思われる事について質問しかつ、申し出る権利を持っている。若年労働者が18才未満の場合には、経験不足かつ成熟度が不十分であるために、特定の危険有害業務制限が法によって定められている。このファクトシートでは職場のハザードについて記述する。別のファクトシートでは若年労働者の権利及び責任に関する詳細なアドバイスを提供している。
欧州の労働災害統計によると18〜24才までの若年労働者の労働災害率は他の労働者年代グループと比べると50%以上も高い。
18才の見習機械工が炎に巻き込まれ4日後に死亡した;彼は石油及びディーゼルの混合油を廃油タンクに注入する作業を手伝っていた時に石油が爆発したのである…。
若年労働者に影響を及ぼすのは、事故のリスクだけではなく、健康もまた害する場合がある。
美容師見習が使用しなければならない化粧品で影響を受けた;彼女の手は傷つき、水ぶくれができ、ナイフとフォークを握ることさえできなかった。そして彼女は仕事を辞めざるをえなかった…。
このような災害及び疾病の原因としては、不安全な機器、ストレスの多い状況、作業速度が大き過ぎる作業、訓練および管理監督の欠如そして手順及び管理対策の欠如があげられる。18才未満の人では、法に定められた就業制限業務に従事している場合に多くの災害が発生しているようである。
- 適切な訓練が終わるまでいかなる業務をも実施してはならない。
- 情報の与えられるスピードが速すぎると感じる場合、その指示をゆっくりと繰り返すように監督者に依頼する。
- もし、若年労働者が移動するように告げられた場合以外は、自分の作業場所を離れないこと。他の作業場所には、ぶら下がっている電線、滑り易い床、あるいは毒性のある化学物質といった若年労働者が知らない特別なハザードが存在していることがある。
- 何か不安全であると思った場合、まず誰かに尋ねること。監督者あるいは同僚は起こりうる災害を防止するために若年労働者を助けることができる。
- より詳細な訓練が必要であるとき、遠慮なく要求すること。
- 安全靴、ヘルメットあるいは手袋といった業務に必要な個人用保護具を着用すること。保護具の着用時期、それが置かれている場所、その使用方法及びその手入れ方法について確実に知っておくこと。
- 火災非常警報なのか、送電ミスなのか、あるいはこの他の状況などの緊急事態時に実施すべきことについて知っておくこと。
- どんな事故でもすぐに監督者に報告すること。労働者安全代表がいる場合にはこの人にその事故を報告すること。
- 頭痛、うずき、痛み、めまい、皮膚のかゆみ、ひりひりする目・鼻・のどというような早期兆候を無視しないこと。産業医、看護師あるいは労働衛生スタッフがいる場合、彼らに告げること。若年労働者が体の具合が悪くて、家庭のかかりつけの医師の診察を受ける場合、自分が従事している業務について話すこと。
- 与えられたアドバイス、指示に従うこと―これには休憩、適切な椅子の調整、保護具の着用などが含まれる。
上司に確認する事項
- 自分の業務に関するハザード及びリスク(注2)には何があるか
- 安全衛生訓練はいつ受けるか。
- 自分を守るために取らなければならない対策は何か。着用しなければならない保護具が用意されているか。
- 緊急時には何をすべきか。その訓練を受けられるか。
- 安全上の質問がある場合、誰に尋ねるか。災害、健康問題あるいは何か具合が悪いことを連絡する場合どのように報告するのか。
- 傷害を受けた場合にどうするか。救急救助者は誰なのか。
- すべり、つまずき−災害の最も一般的な原因として過密、きたない職場、床への液体のこぼれ、ケーブルの引きずりあるいは床の損傷があげられる。
- 機器−多くの災害は、メンテナンスの不備、安全カバーの欠陥、訓練の欠如、火傷、火災あるいは死亡を生ずる電気的欠陥、電源を止めずかつ接続を遮断しないで機械整備をしようとすることから発生している。危険な機械は工場だけでなくレストランの厨房でも見受けられる。
- 物を持ち上げること−重いか不安定である物;不自然な姿勢で物を持ち上げること;あるいはトロリー式リフトのような補助具が用意されていないこと。
- 特に不自然な姿勢でかつ不十分な休憩の反復作業・急ぎの作業−筋肉及び関節へのうずき、痛みかつ傷害(筋骨格系障害)。例えば工場の組立作業、スーパーマーケットのレジ作業あるいはコンピューターキーボードあるいはマウスを使用する作業。
- 騒音−非常に高い騒音レベルは聴力に障害を与えうる。若年労働者はおそらくそれに気づかないけれども、聴力障害は徐々に進展する。受けた障害は絶対元に戻りえない。この他の物理的ハザードとしては振動及び放射線がある。
- 化学物質−一般的な洗浄剤、塗料、美容に必要な製品及びじん埃がこれに該当する。職場に存在する化学物質はアレルギー性皮膚炎、恒常的ぜん息、がんあるいは先天的欠損を生ずる原因となりうる。これらは肝臓、神経系統及び血液に影響を与えることがある。
- ストレス−業務組織に由来しているおそれがある−不可能な作業量、不明瞭な責任体制、多くのプレッシャー。ストレスは上司あるいは同僚からのいじめからも起こりうる。
- 暴力−一般公衆と出会う機会がある場合。これには言葉による暴力及び身体的な暴力が含まれる。業務の一部でないことは明らかである。
- 作業環境−暑さあるいは寒さによる不快感及び極端な高低温による重大な問題;暗い照明等。
- 業務の種類
- ハザードの例
- クリーニング業務
- クリーニング製品に含まれる有害化学物質
- 鋭利なくず類
- すべり及び転落のハザード
- ケータリング、レストラン、ファーストフード業務
- 滑り易い床
- 高温の調理器具
- 鋭利な物品
- 店/販売業務
- 客による暴力及びののしり
- 重量物運搬
- 長時間の立ち作業
- 事務所/事務
- 不十分なコンピューターワークステーション設計
- 悪い座り方
- ストレス
- ハラスメント
- 介護業務
- 汚染された血液及び体液
- 物の持ち上げ及び不自然な姿勢
- 物理的な暴力及び言葉による暴力
- すべり及び転落のハザード
- 美容師業
- 不自然な姿勢
- 長時間の立ち作業
- 整髪製品中のアレルギー性化学物質
- 工場での作業
- 危険な機械
- 速すぎる作業
- すべり及び転落のハザード
- 例えばフォークリフトによる運搬のハザード
権利を確保し、責任を遂行する
業務においては、次のような権利がある:
- 知る権利
- 参加する権利
- 不安全作業を拒否する権利
業務はゲームではない。職業に対する次のような責任がある:
- 安全衛生に関する事項で事業者に協力すること;
- 自分自身及び同僚を保護するための安全手順に従うこと;
- 保護具を使用、着用すること。
情報源:若年労働者及び労働安全の情報
http://ew2006.osha.europa.eu/;さまざまな職場における個々のハザード及びリスクに関する情報
http://osha.europa.eu;情報源には加盟各国の国内安全衛生監督機関,労働組合及び経営者団体がある。
英国での指針の詳細情報:
http://www.hse.gov.uk
アイルランドでの法令の詳細情報:
http://www.hsa.ie
マルタでの法令の詳細情報:
http://mt.osha.europa.eu/legislation