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山形目地仕上げ研磨作業中に遊離けい酸を含む吸入性粉じんへの暴露

資料出所:National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH) 発行
HAZARD ID HID 9」
(訳 国際安全衛生センター)

原文は こちら(NIOSHのホームページへのリンク)



危険性についての説明

珪肺は命にかかわる肺疾患である。建設労働者は遊離けい酸を含む吸入性粉じん―微細な砂状の粉じん―を多量に吸い込むと珪肺をわずらう場合がある。

労働者が毎日、低濃度の遊離けい酸粉じんを吸引した場合には、珪肺の発症までに10年以上かかる場合がある。ただし、遊離けい酸への暴露の度合いが非常に高いと、わずか数週間から4〜5年後に症状が出ることもある。

国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の研究者は、珪肺を予防するために、建設労働者が建設作業、特に山形目地仕上げ作業を行なう際に自分自身を粉じんへの暴露から保護するよう求めている。

山形目地仕上げ作業では、レンガの継ぎ目から突き出たモルタルを削るが、これは比較的古いレンガ造りの建物の外側を整えるための最初のステップとなる。モルタルの粉じんには遊離けい酸が含まれている。山形目地仕上げ作業では、電動研磨機を手に持ち、モルタルを1インチ以下の深さまで削り取る。多くの場合、研磨機には直径4〜6インチの車輪がついており、毎分12,000回転の速さで回転する。この研磨工程でモルタルが粉砕され、空中に粉じんが漂う。車輪の回転により風が起こり、この風が空中の粉じんを作業場全体に飛散させる。労働者がモルタルの継ぎ目や作業服、道具、装置に付いた粉じんを圧縮空気で吹き払うと、激しい噴射によりさらに多量の粉じんを空気中に送り出すことになる。

NIOSHの研究者は建設現場での山形目地仕上げ作業に関する最近の調査で、遊離けい酸を含む吸入性粉じんが非常に高い濃度となっている測定結果を得た。この現場では、労働者の暴露濃度がREL(recommended expusure limit)の最高50倍に達していた。別の建設現場では、労働安全衛生庁(OSHA)の研究者がRELの最高100倍に当る高い暴露濃度を確認している。


予防に向けた推奨事項

これらの建設現場調査で遊離けい酸を含む吸入性粉じんの濃度が非常に高いことが示されたことから、NIOSHは市販されている研磨機についてさらに試験を行なっている。NIOSHの研究者は、研磨機に組み込まれた排気装置が山形目地仕上げの作業中にどれくらい粉じんへ暴露濃度を低くすることができるかを調査したいと考えている。また、研究者はどのようなエンジニアリング上の抑制措置がこの作業中に最も効果を発揮するかを明らかにしたいとも考えている。一方で、建設労働者は暴露濃度を低くするために、下記の推奨事項を遵守すべきであろう。

請負業者と労働者は優良作業規範を実践し、呼吸用保護具を使用すべきである。


優良作業規範

  • 可能であれば局所排気装置の付いた研磨機を使用すること。

  • 他の労働者の近くで研磨機を使用しないこと。他の労働者への暴露を軽減するために、作業区域を制限すること。

  • 空気中に浮遊する粉じんが自分自身や他の労働者に振りかからないような場所に立つこと。

  • 中庭や建物内の隅などの通気が悪い区域では、ファンを使用して空気中の粉じんを排出すること。

  • 圧縮空気を使用して身体、作業服、装置の粉じんを払わないこと。粉じんの抑制や作業服の清掃のために使用される真空掃除機が直径0.3マイクロメーターの微粒子を99%以上捕捉することを確認すること。


呼吸用保護具(空気呼吸器)

事業者は山形目地仕上げの作業中に適宜、遊離けい酸を含む吸入性粉じんへの暴露の度合いを調査し、防護装置の機能がどの程度の効果を上げているか、労働者が呼吸用保護具を必要としているかを確認する必要がある。排気装置付き研磨機が発じんを充分に抑制できない場合があることから、NIOSHは次の呼吸用保護具を推奨している。

  • REL基準の1,000倍未満の暴露(1立法メートル当り50ミリグラム)に対しては、半面形面体の給気式空気呼吸器を使用すること。空気呼吸器をプレッシャーデマンドか他の陽圧設定形のひとつに設定すること。例えば、CE型研磨送風呼吸器は陽圧設定で使用すること。

  • REL基準の50倍未満の暴露(1立方メートル当り2.5ミリグラム)に対しては、(a)高効率微粒子濾過装置付きかP100濾過装置付きで、全面形面体の空気清浄型呼吸器、または(b)ぴったりと密着するマスクと高効率微粒子濾過装置付きまたはP100濾過装置付きの動力式空気清浄型呼吸器を使用すること。

  • REL基準の10倍未満(1立方メートル当り0.5ミリグラム)に対しては、半面形面体のP100濾過装置付き空気清浄型呼吸器を使用すること。


装置メーカーは次の措置を取ることが奨励される。

  • 視界が良好で粉じんを充分に抑制できる排気装置付き研磨機用カバーを開発すること。

  • 排気装置付きカバーに必要な最低排気量を定めること。この排気量は実験データおよび現場データに基づいたものでなければならない。

遊離けい酸を含む吸入性粉じんを吸引した場合の健康に対する危険性、労働者用呼吸用保護具、4種類のNIOSH認定CE型研磨送風呼吸器についてさらに詳細な情報が必要であれば、NIOSHの警告書「Preventing Silicosis and Death in Construction Workers」(DHHS(NIOSH)出版物第96-112号)をご注文ください。NIOSHに電話いただければ無料で入手することもできます。


さらに詳細な情報は

今回の情報について危険性または他の労働安全衛生問題に関してさらに無料の情報が必要な場合には、下記にご連絡ください。

NIOSH

電話:1-800-35-NIOSH(1-800-356-4674)
ホームページ:www.cdc.gov/niosh



アメリカ厚生省 公衆衛生局
伝染病予防本部
国立労働安全衛生研究所


この記事のオリジナル本は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。