欧州における筋骨格系障害の社会的、経済的コスト
機構の新しい概況報告書(*)は、筋骨格系障害によるEU加盟国の社会的、経済的コストに光をあてた。ここでは内容の一部を抜粋し、筋骨格系障害がもたらす負担の深刻さを明らかにする。
ドイツでは、筋骨格系障害は疾病による全労働損失日数のほぼ30%(28.7%、1億3,500万日)を占める。作業関連性筋骨格系障害による疾病休業は、240億マルクもの損失をもたらしていると推計されている。
オランダでは、筋骨格系障害は作業関連疾病休業全体の約46%を占め、作業関連性筋骨格系障害による疾病休業(1年未満)は、1995年で合計20億1,900万ギルダーの損失をもたらしていると推計されている。
イギリスでは、作業関連性筋骨格系障害により、毎年ほぼ1,000万日(9,862,000日)の労働損失日数が発生している。このうち、約500万日(482万日)は腰の障害、400万日強(4,162,000日)は首と腕、200万日強(2,204,000日)が足の障害によるものである。
イギリスにおける作業関連筋骨格系障害の医療コストは、8,400万ポンドから2億5,400万ポンドと推計されている。作業関連の腰部障害は4,300万ポンドから1億2,700万ポンド、腕と首の障害は3,200万ポンドから1億400万ポンド、作業関連の下肢の障害は1,700万ポンドから5,500万ポンドの医療コストを強いていると推計されている。
また作業関連の上肢障害は、傷害を負った労働者1人当たり5,251ポンドのコストを、直接的、間接的に企業に強いており、また作業関連疾病によって就労停止を余儀なくされた労働者は、退職年齢に達するまでに1人当たり平均51,000ポンドの損失をこうむっている。
フィンランドでは、作業関連性筋骨格系障害による1996年の医療コストは、歯科医療、移送、投資を除く公的医療費支出の約2%を占めると推計されている。
腰痛によって3ヵ月を超える休業を余儀なくされた労働者の「復職」に関するスウェーデン、ドイツ、デンマーク、オランダでの調査の結果、37%(デンマーク)から73%(オランダ)の労働者が、12ヵ月後に復職していることが明らかになった。12ヵ月後に復職した労働者の大半は、従来と同じ事業者に雇用されている。
2年間の休業後に復職した労働者の19%(ドイツ)から38%(デンマーク)が、従来の、または新しい雇用主から、作業場の転換を提案されている。
12ヵ月後に復職した労働者の過半数は、2年後も就労を続けている。2年間の休職後に復職した労働者の大半は、疾病休業を開始した時と同じか、またはそれより高い所得を得ている。
* 欧州連合加盟国の作業関連筋骨格系障害に関する社会経済的情報一覧に基づく(欧州安全衛生機構2000年10月)。
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