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Jason Devereux

欧州機構「優良規範」トピック・センター(MSD)、主導機関、
サリー大学ローベンス・センター・フォー・ヘルスエルゴノミクス(イギリス)

作業関連のストレスと筋骨格系障害:関連性はあるか

資料出所:European Agency for safety and Health at Work
(欧州安全衛生機構)発行「Magazine」2001年3号

(訳 国際安全衛生センター)


作業関連のストレスと筋骨格系障害は、欧州連合の2大職業性疾病であり、深刻な医学的問題にもなっている。

労働条件に関する第2回目の欧州調査で、これら2つの疾病の発生状況が、ある程度、明らかになった。報告数がもっとも多いのは筋骨格系障害で、これに業務上のストレスによる健康問題が続いている。

これら2つの症状の原因となる要因を解明することが、予防と回復にとって重要である。欧州安全衛生機構の最近の出版物が、ストレスと筋骨格系障害の双方を詳細に調査している。トム・コックス教授他による作業関連のストレスに関する報告書、そしてピーター・バックル教授とジェイソン・デヴルー(Jason Devereux)博士による作業関連性の首および上肢の筋骨格系障害に関する報告書は、それぞれの問題のリスク要因を示している。

両報告書とも、職場の身体的な、そして心理社会的なリスク要因に触れている。とくに両報告書がとりあげている職場の心理社会的要因には類似点があり、たとえば明らかな作業負荷と作業管理は、ストレスと筋骨格系障害の両方のリスクを高めるようである。

ただし、筋骨格系障害の発生に果たす作業関連のストレス反応の役割は、現時点では不明確である。

原因か、それとも結果か?

ストレス反応と筋骨格系障害の関係を示す証拠はあるが、ストレス反応が筋骨格系障害の発生に重要な役割を果たしているのか、それとも筋骨格系障害の患者が、痛みと機能障害のためにストレス反応が発現するだけなのか、断定はむずかしい。

業務によるストレスと作業関連性筋骨格系障害との関係については、一見、これを支持すると思われるメカニズムが存在する。業務上の身体的、心理社会的リスク要因への暴露と、それらの潜在的な相互作用が原因となって、身体的圧迫を強めるおそれのある特定の生物学的反応が起きる場合がある。これらのストレス反応は、筋骨格系障害に対する身体の防御能力と修復システムを抑え、したがって作業からの回復期間を長期化させうる。

行動的、情緒的なストレス反応が、職場の筋骨格系障害リスク要因への暴露を増大させる場合もある。たとえば配送運転手は、時間的圧力へのストレス反応から、梱包物をきわめて迅速に扱う場合があり、その結果、ストレス反応によって動作をあまりにも速く行いすぎることと過度の緊張により、動作速度と身体への圧迫が過度に高まる。最後に、ストレス反応は、痛みに対する心理学的および身体的感受性を高める可能性がある。

ストレスに関する調査

サリー大学ヘルスエルゴノミクス・ローベンス・センター(イギリス)は、現在、7,000人の労働者を対象とする大規模な調査を実施中で、業務上のストレス反応が作業関連性筋骨格系障害の発生に果たす役割を検証している。2000年4月1日から3年間の調査が開始されたが、これにはイギリスの安全衛生庁が資金提供している。

調査では、筋骨格系障害のない労働者群を14ヵ月にわたって追跡する。14ヵ月間の調査開始時点で深刻な業務上ストレス反応をもつ労働者が、その期間の開始時点で深刻な兆候のない労働者に比べて筋骨格系障害の症状を発生するリスクが高いかどうかを判定する。

身体的な業務リスク要因と、心理社会的な業務リスク要因の相互作用の可能性についても測定する。そうした相互作用が筋骨格系障害のリスクを高めることが証明されているからである。

この調査で重要なのは、研究者がストレスの因果関係と考えているものと、「一般の人々」のストレスについての通念を区別することである。業務上のストレスの原因、発現、結果、軽減についての人々の通念は、職業選択や業務上のストレスの報告などの行動に影響する可能性がある。たとえば、ストレスの原因が自分の気の弱さにあると信じている人は、ストレスを克服するために、管理者や同僚などの適切な支援を求めようとしないかもしれない。このように、人々がストレスが高いとみなす状況にどう反応するか、またはどのようなものを業務上のストレスとみなすかは、筋骨格系障害の発生に重要な役割を果たす場合がある。

この調査プロジェクトは、筋骨格系障害との関連での業務上ストレスに対する考え方、また職場の身体的リスク要因と心理社会的リスク要因との相互作用を調査する、初めての試みである。その目的は、業務上ストレスと作業関連性筋骨格系障害の双方の管理にとって、きわめて重要な結果を得ることである。

詳しい情報は[http://www.eihms.surrey.ac.uk/robens/erg/stress.htm]を参照。