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欧州安全衛生機構発行「Magazine」2001年3号

序論

Marc Boisnel
フランス政府代表(欧州機構理事会にEU議長国として参加)


この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。

http://osha.europa.eu/publications/magazine/#3


筋骨格系障害は、欧州連合加盟国全体で職業性疾病の主原因のひとつになっている。これによる社会的、経済的コストの増加はきわめて大きい。したがって「欧州週間」が、スローガンに示された「TURN YOUR BACK ON MUSCULOSKELETAL DISORDERS(筋骨格系障害に背を向ける)」をテーマにしたことは賢明だった。このことは、欧州労働安全衛生機構によるこのキャンペーンが加盟国に与えた影響のなかに証明されている。

筋骨格系障害のリスク発生のメカニズムは、主要なリスク要因である反復作業、身体的負荷や姿勢などとともに、いまでは正しく把握されていると思われる。しかし予防活動にかかわる人々、社会的パートナー、当局にとって、筋骨格系障害に対する積極的で持続的な取り組みは、なお大きな課題となっている。

実際に筋骨格系障害の問題に取り組んでみると、作業の組織化が不適切であると判明する場合が多い。それでも人々はこの問題の検証に尻込みしている。問題の検証を企業活動への無用な介入と解釈することもできるし、好機と捉えることもできる。われわれが促進し、支持すべきは後者の考え方であり、これによって問題を解決し、リスクを予防して生産性を向上させるとともに、労働者の生活と労働条件を改善すべきである。

EUの各加盟国は、共同体としてもそうであるが、経済、雇用、社会的保護の面できわめてきびしい課題に直面している。リスボンの欧州理事会は、この問題への対処を後押しするとともに、雇用の量と質を結びつける機会をもたらした。現議長国のフランスは、この方針を積極的に追及している。

雇用の質は、人的資源を一般的な企業方針の欠くことのできない一部として積極的に管理するかどうかに左右される。労働者の安全衛生の保護をはじめとする労働条件は、その基本的要素である。企業を新たな市場条件に適合させるためには、技術を選定し、労働の組織化の方法を根本的に変更する必要がある。重要なのは、こうした変化を対話を通じて実現することであり、これが社会的関係の質的改善と、労働者の意欲向上につながる。

技術と、何よりも組織化の選択肢によって、競争力と活力のカギである経営の柔軟性が高まる。また筋骨格系障害関連をはじめとする職業上のリスクの予防につながる。結局のところ、労働組織はあらゆる段階において重要な社会的対話の場となる。

欧州では重要な法的基盤が確立されている。この面で、労働者の安全衛生改善に向けた枠組み指令(89/391)の採択は画期的な前進であった。

こうした原則の適用についての10年間の経験をふまえ、また現在の労働の世界の変化、経済の発展、科学的知識の高度化に直面するなかで、現行の規則を正しい方向に修正することは理に適っている。

「正しい方向に」としたのは、欧州共同体で現在実現されている保護水準を低下させたり、新たなリスクに対処できないような変化はいっさい認めるべきではないからである。後者について今日の世論は正しい懸念を示しており、その予防はきわめて重要な課題になっている。

いずれの問題でも、枠組み指令の精神である「労働を労働者に合わせるべき」は順守されるべきである。

欧州共同体の行動の調整という戦略には、あらゆる当事者が、公開の集会、社会的対話、法的対策など独自の方法で、しかし適切な方法で参加しなければならない。良好な実践の情報交換、中小企業向けの特別プログラムの開始、研究の効果的調整、そして欧州段階での監視体制の確立は有効であろう。

欧州共同体の歴代議長国が追求しているのは、こうした方向である。