このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
「労働の質」への取組み
targeting 'quality of work'

欧州安全衛生機構発行「Magazine」5号
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/5/en/index_10.htm



MICHAEL ERTEL と PETER ULLSPERGER
(ドイツ連邦労働安全衛生研究所、ベルリン)
ANDREAS HORST
(ドイツ連邦労働・社会省注)、ベルリン)
注)2002年10月の省庁再編により、経済・労働省となった。
「労働の質」への取組み

 職業性ストレスと対決していくことは、「新たな労働の質」というドイツの新国家構想の重要な課題の一つである。

 デュッセルドルフで開催された第27回世界労働安全衛生会議から始まったこの計画は、EUの安全衛生に関する共同体新戦略をバックアップするべく立案されたものである。計画では、事故防止などの労働安全衛生上の「古典的な」問題だけでなく、高齢化する労働力やストレスへの取組みも含め、急速に変化する労働環境に付随して発生してきた問題も扱っている。

 1998年から1999年にかけて行なわれた全国調査によれば、ドイツの労働者のうち半数近く(46%)が、「仕事のストレスが増大している」と訴えている。しかし、問題が深刻化していることを示す証拠が続々と上がっているにもかかわらず、現実的な解決策はいまだ不十分で、それぞれが脈絡なくばらばらに適用されている状況なのである。

 この問題と取り組むために、ドイツ労働・社会省では、連邦労働安全衛生研究所(Federal Institute for Occupational Safety and Health:FIOSH)と共同で、さまざまな組織のベストプラクティス(優良事例)を参考にして、職業性ストレスを防止する共通の枠組みを作成しようとしている。

 同省の役割は「ネットワーク管理者」であり、一方、FIOSHは、精神的な作業負荷の評価方法や予防方法について包括的な概要を提供する役目である。この情報の一部は、FIOSHがフィードバックを得たり、この分野の別の当事者への相談が可能になるデータ採掘(データマイニング)技術やインタラクティブ機能を利用して、インターネットで収集される予定である。

 そして、最終目標は、企業、社会的パートナー、連邦加盟州、保険会社が利用できる、職業性ストレスを評価し、軽減する共通の最適なガイドラインを設置することである。

 また、ストレスへの対処法で不明な部分を補うために、FIOSHは追加調査を行なう予定である。FIOSHが先頃、ドイツマスコミ労働組合(Germany's Union of Media Workers)(*1)と共同で行なったフリーランサーに対するストレスの試験的研究がその一例である。フリーランサーは急速に増えつつあるが、労働安全衛生規定の適用対象となってはいない。

 調査の結果、フリーランサーは週平均47時間労働し、25%の人びとが60時間以上仕事をしていることが判明した。主なストレス原因として、仕事に波があって時間が不規則なこと、報酬が少ないこと、顧客や取引先から不当に扱われること、社会的に孤立していることなどが挙げられた。36%のフリーランサーが、「リラックスできない」と訴えており、このことが心臓疾患の発病を招く重大な危険因子である点は見逃せない。

(参考)


(*1) Ertel, M.; Pech, E.; Ullsperger, P. 「Telework in perspective ‐ new challenges to occupational health and safety(テレワークの展望―労働安全衛生への新たな挑戦)」. Isaksson他編『Health Effects of the New Labor Market(新労働市場の健康への影響)』, Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York 2000, pp 169-181