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ストレスを克服して充実したケアを提供する
Improving care under pressure

欧州安全衛生機構発行「Magazine」5号
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/5/en/index_12.htm



IRENE HOUTMAN
(オランダTNO Arbeid)
ストレスを克服して充実したケアを提供する

 オランダのなかで最も大きく、また働く人にとって最も精神的にきつい職場だとされる老人ホームがある。そこに勤務する介護職員に、より明確に定義された役割と、自らの仕事を管理する権限を付与したところ、仕事への満足度が増しただけでなく、介護の質も向上した。

 この解決策を見いだしたのはオランダ雇用労働研究所(TNO Arbeid)だった。1996年、同ホームの職場カウンセラーは、介護スタッフを増大するストレスとどう向き合っていかせるべきか、TNO Arbeidに助言を求めた。このように介護職員にとって厳しい労働環境となったのは、重点的な介護を必要とする重度の被介護者数の増加に、財政削減が追い打ちをかけたためである。

 介護職員がさらなる重圧に立ち向かっていく手助けとして、TNOは、介護職員の仕事を5段階に分けて分析した。そして、このプロジェクトを成功させるために、調査の各段階で介護職員に参画してもらった。その5段階とは:
  • 介護職員の仕事内容を一覧表にする。
  • 期待される介護の質や介護回数などの点で、介護者に望まれる正式な基準と非公式な基準を確認する。
  • 介護職員がこうした基準を達成する際に障害となるものを正確につきとめる。
  • このような問題に対する解決策を考える。
  • その解決策の成功度を判定する。
 これにより、主な介護方法がいくつか改められた。注目すべき変更点の一つは、直接介護にあたる現場の介護職員に10人ずつ被介護者を割り当て、担当者として責任を持たせたことである。変更前は部長が担当していた適切な介護計画の作成や、被介護者の家族とのコミュニケーションも現場の介護職員の仕事になった。さらに、中間管理職は介護現場から退き、専任で職員教育にあたるようになった。
 
 介護職員の作業負荷やそれに伴う重圧に変化はなかったにもかかわらず、「職員は現在、重圧を自分でうまくコントロールしている様だ」と、職場カウンセラーは語っている。こうした内容はまだ統計上の数値としては示されていないが、仕事の満足度が高くなったことや職員自らが率先して職場の問題を分析したり解決したりしているという報告に事例として反映されている。

 業務主導の体制から被介護者優先の組織に老人ホームを変えていこうという取組みは、仕事の重圧レベルと提供する介護の質の両方の遵守基準を導入し、それをシステマティックに監視することによって推進された。