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職場のストレス−深刻化する問題
Workplace stress − a growing problem

欧州安全衛生機構発行「Magazine」5号
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/5/en/index_6.htm



(スペイン労働・社会省大臣)
職場のストレス−深刻化する問題

変化や革新が労働者のストレスの原因になることもある

 現在、企業は非常に大きな変化に直面している。欧州自由市場内外での競争は激しさを増している。生産性と品質を向上させる必要性、技術革新および労働組織の改革、環境問題への配慮、労働人口構成の変化(労働者の高齢化、多文化社会、女性労働者人口の増加)、こうした状況に対処していくには柔軟性と適応力が必要である。

 今求められているのは、変化や革新をいとわない、顧客志向の意欲的な労働者である。
しかし、こうした社会の要求に対し、労働者の多くは不安を隠しきれない。なぜなら、今まで身につけてきた知識はすぐに時代遅れになり、最新技能を修得する必要性は増す一方だからである。

 また、集約的な作業形態、勤務時間の長時間化、ハラスメントなど、別の要因が作用する場合もある。こうしたさまざまな要因が複雑に絡み合って人間の心身の健康を脅かし、円滑な組織運営を阻害し、多大なる影響を与えるストレスが発生することも、ごく一般的な現象になりつつある。こうして、ストレスは個人だけでなく社会の健全性と効率性を損なう。そして、職場のストレスは仕事の安全や健康という観点からも重大な問題になってきているのである。

仕事の安全と健康

 欧州連合(EU)加盟国は、職業性ストレスとその原因やもたらす影響について、ごく一般的な事象として受けとめている。欧州委員会発行の『Guía sobre el estrés relacionado con el trabajo (Guide to work-related stress 』(1999)のデータによると、欧州の労働者1億4,700万人の半数以上がかなりの重圧を感じながら働いていると告白している。

 当該労働者の3分の1以上には主体的に仕事をする自由がなく、4分の1以上は業務形態を決める際の発言権を与えられていない。その上、労働者の45%は単調な作業に、50%は短時間で反復的な動作をくりかえす作業に従事している。

職業性ストレスの原因が、現在罹患している病気の発症を招いたのではないかとも考えられている。労働者の13%が頭痛を、17%が筋肉痛を、30%が腰痛を、20%が疲労を、28%がストレスを訴えている。 

 スペイン国立労働安全衛生研究所が行なった労働環境に関する第4回全国調査によれば、昨年1年間に労働者自ら医師を受診した診断件数のうち20%が職業性傷害によるものであり、このうち4.6%にストレス関係の症状があらわれていたことが明らかになった。

 心身症的な症状を呈する患者についての分析結果も掲載されており、それによると被験者の5%にストレスの症状があらわれていたことが分かった。また、統計によると、職業ごとにストレス症状を発現する患者の割合は異なっている。行政および銀行部門では7.6%で、社会事業部門では7.1%の患者にストレス症状が見られた。

 職業性ストレスから生じる費用は、EU全体で年間約200億ユーロに達するとEUは見積もっている。そして、「ストレスも含めた職業上のメンタルヘルス問題にかかる費用は、EUのGDPの3%に相当する」とILOは述べている。

危険度の高い集団

 労働人口のなかで、特にストレスの影響を受けやすいグループがある。ストレスを受けやすい人は、職業に従事していようがいまいが、一般にストレスの多い環境に置かれている場合が多い。若年労働者や高齢労働者、女性、移民、障害者、臨時労働者はみなストレスの影響を受けやすいグループに属する。

予防対策

 ストレスは、現在、健康や労働者の安全を脅かす主因の一つであり、労働者と関連組織双方の要求を満たす総合的な健康増進戦略が必要である。

 これはEU全体で取り組むべき事業で、それには以下の目標を実行に移す必要がある。
  • 技術、労働組織、労働環境、社会的関係、および労働環境関連の要因がもたらす影響に対処する一貫した総合予防政策を展開すること。
  • 労働者を主体に考え、仕事そのもの(特に職場の設計や作業グループの選択、作業方法や生産方法の選択に関して)を労働者の側に適合させること。具体的には、単純作業や出来高仕事を少なくし、労働者の健康への影響を少なくすることを目標とすること。
  • 労働者の仕事に影響を与える変更や改革を計画する際には、関係者に参加の機会を与えること。そのような状況が発生した場合には、健康や安全を損ねるような問題に関し、労働者に告知し、訓練を実施し、教育を受けさせること。
 国レベルの計画では、以下の目標を実現するための政策が実行されるであろう。
  • 労働の心理社会学的な側面を扱うために法的枠組みを整備すること。
  • 職場でのストレスを労働災害や職業病、作業関連疾患の原因の一つに含めること。
  • 職場における健康状態を監視する際に、特定のストレス指標を導入して、職場内外で生じた一時的または永続的な能力喪失状態に関する統計情報を改善・拡大すること。これにより、ストレスやストレスの主な特徴が監視できるようになる。
  • 職業性疾患の場合にかかる経済的損失を正確に見積もることができる綿密な調査を定期的に行なうこと。