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代替は可能だ!
Substitution is possible!

欧州安全衛生機構発行「Magazine」6号p.23
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/6/en/index_14.htm


代替は可能だ!

EUの最優先リスク低減戦略の背景にある根拠

 労働安全衛生に興味がある人間として、労働者が表示のついた化学物質を扱うのを見ていると、複雑な取扱方法を覚えたり個人用保護具を身につけたりするより、もっとよい解決策があるはずだと感じることが非常に多い。最善の解決法は単純だと思う。これらの物質を危険有害性のない化学物質で、或いは化学物質を全く必要としないプロセスで代替することだ。しかし、これはどれぐらい現実性があるだろうか?

成功物語

 「代替」は現実的なものである。しかし、リスク低減戦略として大きく出遅れているものでもある。ネットサーフィンをしてみれば、会社、当局、又はその他の組織による「代替」がうまくいった事例をたくさん見つけることができるだろう。主としてアスベストと溶剤に関するものであるが、いくつかの事例は欧州労働安全衛生機構(European Agency for Safety and Health at Work)のホームページ(http://osha.europa.eu/)でも見ることができる。

法令関係

現在の法令の状況

 リスク低減戦略としての「代替」は労働者保護に関する施策の階層のトップにある。それは、1998年4月7日理事会指令98/24/EC「職場の化学物質に関するリスクからの労働者の保護」に定められているように、暴露管理に関するヨーロッパの法令において優先度の高いものである。

 「代替」は労働衛生や環境の保護に関するこの他のEU法令でも強く推進されている。化学物質指令(98/24/EC)に加えて、1990年6月28日理事会指令90/394/EEC及び労働者を職場に於て発がん性物質へ暴露されるリスクから保護することに関するその改正、また環境や公衆衛生についての他の規則、これらすべてが、準備段階と加工工程でより安全な方法と物質を使用するよう変えることを支持している。


 EU法令と国内法令がリスク低減のための最優先戦略として「代替」を強く推進しているが、それほど先進的でない手段もより広く使われている。発散のコントロール、発生源の密閉化、換気、管理的な手段、そして −非常に人気のある方法だが− 個人用保護具などである。

実際上の問題

 職場の化学物質は依然として様々な産業において、多くの労働者の健康に対する重要かつ重大な脅威となっている。全体的に言って、すべての労働者の14%が、「有害物質の取扱又は接触」に従事している。公式の「ヨーロッパ現存工業用化学物質リスト(European inventory of existing commercial substances, Einecs)」には10万を超える化学物質が販売されていると記載されており、うち3万品目は1トンを超えて生産されている。今日、農業、建設業、一般工業、及びサービス業など、仕事の場ではすべての業種で多種多様な化学物質が使われている。

 化学物質の生産は過去の数十年の間一貫して増大してきた。日常的に使用されるよく知られた製品の例としては、プラスチック、塗料、光化学物質、着色剤、医薬品、化粧品、殺生物剤、電子産業用及び食品加工用又は建設のための化学物質などがある。どのような業種でも、加工用として、製品の構成成分として、または添加剤として、化学物質が必要である。

 しかしながら「代替」の問題は、よく知られた化学物質の使用に関するものだけではない。新しい物質、新しく開発された製品及び新しい仕事のプロセスから新しい問題が発生してくる。1つの例が、自動車から稀少重金属を回収するための触媒のリサイクルであるが、これは10年前にはなかった作業である。このリサイクル過程で、労働者は触媒からのセラミック繊維に暴露される。これらの繊維は発がん性であると分類されている。

「代替」の事例研究は役に立つか?

 過去100年の間、いろいろな業種で、それまで使われていた物質が、より有害性の少ないものに置き換えられてきた。例えばアスベストを他の繊維に、溶剤を使う塗料を水溶性に、切削油の塩素添加剤をより有害性の少ないものに、などの禁止・部分的禁止によって大きな変化がもたらされた。鉛、クロム、カドミウムといった重金属も、用途によって有害性の少ないものに置き換えられてきた。

(以下具体的事例は省略)