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職場における生物学的ハザード(Biological Hazards)の管理
Managing biological hazards in the workplace

欧州安全衛生機構発行「Magazine」6号p.31
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/6/en/index_17.htm


ANNETTE KOLK
ドイツ BIA(BG-Institute for Occupational Safety)

職場における生物学的ハザード(Biological Hazards)の管理

物学的因子:性質、影響、取扱い方法について

物学的因子−定義

 生物学的因子とは、主に細菌や真菌(酵母やカビ)、ウイルスなどの微生物のことを指し、環境中のいたるところに存在する。これらが微生物と呼ばれる理由は、単体では顕微鏡などの光学機器を用いなければ見ることができないためである。職場において生物学的因子への暴露に関するリスクから労働者を保護することについての指令 2000/54/ECの趣旨に照らすと、感染症やアレルギー、中毒を引き起こす可能性のある遺伝子組み替え微生物、培養細胞、ヒト内部寄生虫も生物学的因子に含まれる(77)

 細菌細胞のほとんどは、幅1マイクロメートル(μm)以下で、長さは1〜5 μmである。真菌細胞とは異なり、核膜と染色体からなる真の核は持っていない。それゆえ、これらは「原核生物」と呼ばれている。細菌細胞の形はそれほど多様ではない。基本的にこれらの生物は球状あるいは桿状であり、後者には直線状、曲線状、らせん状なども存在する。また鞭毛を有し、運動する細菌もある。

 細胞壁を特殊な方法で染色することにより、グラム陰性菌(一層のネット状のムレインとリポタンパク質、リポ多糖類、その他の脂質からなる)とグラム陽性菌(タンパク質やリポ多糖をほとんど含まず、テイコ酸を含んでいる場合が多い多層のムレインからなる)の区別が可能である。

 主な特徴の一つとして、細菌は生育環境(酸素含有量、温度、湿度、pH、利用可能な栄養素)が最適であれば、2つの細胞に分裂することで非常に早い速度で増殖することができる。細菌の中には、UV照射や熱、乾燥、化学殺菌剤などにより生命を脅かされる環境条件に置かれると、それに抵抗するために内生胞子を作るものもある。放線菌(長さ0.5〜1.5 mmの桿状のグラム陽性菌で土壌から単離されることが多いが、空気中または培養基質中では長い糸状を形成する)の微小な細胞も「胞子」と呼ばれている(78)(79)(80)

 真菌細胞は糸状(カビ)あるいは直径10mm以下の球状の細胞が連なった形状(酵母)をしている。糸状の真菌は菌糸と呼ばれ、多数の菌糸が形成する織物状のものを菌糸体と呼ぶ。真菌はこの菌糸体から胞子を支える分生子柄を作り、その先に大きさが2〜8 mmの無数の無性胞子(分生子)が着生し、空気によって拡散する。細菌とは異なり、真菌は真の核および染色体を有しており、「真核生物」に分類される。非常に単純な形状の真菌の胞子のみ、鞭毛によって運動することができる(78)(79)(80)

 ウイルスは細菌や真菌細胞よりもさらに小さく、わずか数ナノメートル(nm)である。これらは細胞内に寄生しなければ生存できないが、あらゆる生体に寄生することができる。ウイルス自身は細胞を形成せず、宿主細胞に寄生しなければ増殖することができないため、これらは「生物」ではなく「感染単位」と呼ばれている。ウイルスは核酸(デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA))とタンパク質の殻(カプシド)からなり、さらにそれらが脂質層で覆われたものも存在する。ウイルスは非常に小さいため、電子顕微鏡を用いなければ見ることができない(78)(79)(80)


表1 職場に潜在する生物学的因子とそれらが引き起こす疾病の例

職業/職場
生物学的因子
発症の可能性のある疾病
紙、ガラス、合成物質、包装材のリサイクルプラント
  • カビ(特にAspergillus fumigatus )や放線菌
  • グラム陰性菌(特に腸内細菌)やエンテロウイルス
  • アレルギー、
    アスペルギルス症、
    アスペルギルス腫
  • EAA
  • ODTS
  • 胃腸炎などの感染症
コンポスト化プラント
  • カビ(特にAspergillus fumigatus )や放線菌
  • 胞子形成細菌
  • アレルギー、
    アスペルギルス症、
    アスペルギルス腫
  • EAA
汚水処理プラント
  • 細菌(特にグラム陰性菌)(Escherichia coli、Salmonella sp.
  • エンテロウイルスやその他のウイルス(HAVなど)
  • 内毒素
  • サルモネラ症、
    その他胃腸炎、
    肝炎などの感染症
  • ODTS
食品製造
  • カビ/酵母
  • 細菌
  • 内毒素
  • 酵素
  • アレルギー
  • ODTS
  • 皮膚炎
医療
  • 細菌(特に感染性の細菌)(Legionella sp.、Klebsiella sp.、Mycobacteria sp. など)
  • ウイルス
  • 細菌やウイルスにより
    引き起こされる様々な
    感染症(結核、百日咳、
    肝炎、AIDSなど)
空調設備があり、湿度の高い
作業場所(繊維工業、印刷業、製紙業など)
  • カビ
  • 細菌(Legionella sp.、Pseudomonas sp. など)
  • 内毒素
  • 気管支喘息、SBS
  • EAA(加湿器肺)
  • ポンティアック熱、
    レジオネラ症、ODTS
    (加湿器熱)
資料館、美術館、図書館
  • カビ
  • 内毒素
  • アレルギー
  • ODTS
農業
  • カビ
  • 皮膚糸状菌
  • 放線菌やその他の細菌
  • ウイルス
  • アレルギー
  • 真菌による皮膚感染症
  • EAA(農夫肺)
  • 感染した動物との
    接触による様々な感染症
林業
  • 細菌
  • ウイルス
  • ボレリア症
  • ウイルス性髄膜炎
  • 狂犬病
園芸
  • カビ
  • 皮膚糸状菌
  • 放線菌やその他の土壌細菌
  • アレルギー
  • 真菌による皮膚感染症
  • EAA
  • 破傷風
金属加工業(金属加工油を用いるもの)
  • カビ/酵母
  • 細菌(特にPseudomonas sp.
  • 気管支喘息
  • 接触性皮膚炎
  • 肺感染症
  • EAA(加湿器肺)
  • 創傷感染症
木材加工業
  • カビ
  • グラム陰性菌
  • 内毒素
  • アレルギー
  • EAA(木工人肺)
  • ODTS
建築・建設業(粘土、わら、葦などの自然材料の加工;建物の建替え)
  • カビ
  • 放線菌やその他の細菌
  • 内毒素
  • アレルギー
  • EAAや感染症
  • ODTS
EAA:外因性アレルギー性胞隔炎、ODTS:有機じん中毒症候群、SBS:シックハウス症候群


物学的因子の発生

微生物は次のような種々の有用な機能を持つ。
  • 無機物化の過程を担い、自然界で継続する栄養循環を維持している
  • 飲料や食品(ビール、ワイン、ヨーグルト、チーズ、パン、混合ピクルスなど)、医薬品(抗生物質)の製造に用いられる物質を生産する
  • 皮膚や腸内の細菌フローラの一部として存在し、皮膚表面や消化器系に侵入しようとする病原性微生物と戦うことで人間の健康を守る
 しかしながら、上記にあげた微生物の中には重篤な感染症やアレルギー、毒作用などの原因となるものもあり、これらの負の効果は作業に従事する労働者に影響を与える場合がある。表1は生物学的因子との接触が避けられない職場の例である。この表を見ると、作業中に土壌や粘土、植物性素材(干草、わら、綿など)、動物由来の物質(羊毛や毛など)、食物、有機じん(紙粉など)、廃棄物、汚水、血液やその他の体液、排泄物などと接触する場合には、労働者は生物学的因子に暴露されていることがわかる。また、微生物の分析研究所やバイオ企業においてこれらの生物を扱う労働者にもそのリスクがあるといえる。

病因子となる生物学的因子

 生物学的因子は3種類の疾病、すなわち感染症、アレルギー、中毒または中毒作用を引き起こす原因となる。病原性微生物は損傷した皮膚、針の刺傷、咬傷からの侵入や、また粘膜上に付着することで体内に入り込む。また吸入や吸飲によって上気道や消化システムへの感染症を引き起こす場合もある。

 感染が起きるかどうかにはいくつかの要素が関係している。
  • 存在する病原性微生物の数(感染量)
  • 生物学的因子の特徴(細胞表面への付着、宿主の取込み、毒性物質の生成や再成を行うかどうか)
  • 宿主の感受性(他の感染症や化学療法、ホルモン療法、免疫抑制、癌や糖尿病などの疾病に起因する全身的免疫不全、または創傷、化学的および機械的影響、湿気による発熱に起因する局所免疫不全)
 感染には局所的なもの(酵母や皮膚糸状菌による皮膚、粘膜、毛髪、爪などへの感染)と、肺や肝臓、中枢神経系に感染が及ぶ全身性のものとがある。

 生物学的因子は感染のリスクのレベルに従って4段階のリスクグループに分けられている(77)

  1. グループ1の生物学的因子は、人間の疾病の原因にはならないものである。
  2. グループ2の生物学的因子は、人間の疾病の原因となる可能性があり、労働者に対してハザードになる可能性のあるものである。地域社会にまで拡大することはなく、その多くは効果的な予防法や治療法が確立されている。
  3. グループ3の生物学的因子は、重い疾病を引き起こす可能性があり、労働者に対してハザードを与えるものである。地域社会への拡大のリスクがあるが、その多くは効果的な予防法や治療法が確立されている。空気中に飛散しないものもある。
  4. グループ4の生物学的因子は、重い疾病を引き起こし、労働者に対して重大なハザードとなるものである。地域社会へ拡大するリスクが高く、効果的な予防法や治療法はほとんどの場合確立されていない。

表2 微生物とウイルスの分類(一部抜粋)

生物
リスクグループ1
リスクグループ2
リスクグループ3
リスクグループ4
細菌
  • 土壌、水、空気中から一般的に単離される細菌
  • 皮膚、腸内の正常な細菌フローラに一般的に存在するもの
  • 実験室で扱われる細菌類(Escherichia Coli K12 など)
  • 工業目的に利用される細菌類(Lactobacillus種、Bacillus anthracis など)
  • Clostridium tetani (破傷風の原因因子
  • Vibrio Cholerae (コレラの原因因子)
  • Escherichia Coli (腸内に一般的に存在)
  • Salmonella enteritidis (サルモネラ症の原因因子)
  • Legionella pneumophila (ポンティアック熱およびレジオネラ症の原因因子)
  • Mycobacterium tuberculosis (結核の原因因子)
  • Bacillus anthracis (炭疸病の原因因子)
  • Chlamydia psittaci (トリ病 やオウム熱の原因因子)

真菌
  • 土壌、水、空気中から一般的に単離される真菌
  • 皮膚、腸内の細菌フローラとして一般的に存在するもの
  • 工業目的に利用される真菌類(Saccharomyces cerevisiae など)
  • Candida albicans (酵母;腸感染症、膣感染症などの原因因子)
  • Aspergillus fumigatus (カビ;土壌、腐葉土、その他の有機材料中に広く存在)
  • 皮膚糸状菌(Trichophyton mentagrophytes など)
  • 重篤な真菌性全身感染症の原因因子(Coccidioides immitis、Histoplasma capsulatum など)
 
ウイルス
  • 弱体化させたワクチン
  • B型肝炎ウイルス
  • 狂犬病ウイルス
  • ヘルペスBウイルス
  • HIVウイルス
  • 黄熱病ウイルス
  • ラッサウイルス
  • 天然痘の原因因子

 各リスクグループに該当する微生物の例を表2に示す(80)(81)

 真菌あるいは放線菌の胞子は、高濃度のこれらの生物学的因子に長期に渡り暴露されると、アレルギーの原因として有力である。免疫学では、アレルギーはいくつかのタイプに分類されている。

  • タイプIのアレルギー症状は、アレルギー誘発物質と接触してから数分後に現れる(即時型アレルギー)。鼻(鼻炎)、目(結膜炎)、皮膚(蕁麻疹)、肺(気管支喘息)などに症状が現れる。
  • 外因性アレルギー性肺胞炎(EAA)は高濃度のバイオエアロゾル(空気1m3あたりの胞子数が106個を超える濃度)に繰り返し暴露されることで発症する。症状は有機粉じん中毒症候群(ODTS)のものと似ている:発熱、震え・発作、頭痛、筋肉痛・関節痛、呼吸障害、慢性咳嗽)しかし、さらに肺組織の変化に伴い肺機能の永久的な損傷も見られる(農夫肺、加湿器肺など)。
  • タイプIVのアレルギーには遅延型の皮膚アレルギーなどがあり、その例としては微生物への暴露による接触性皮膚炎などがある。

毒作用/中毒

 学術文献によれば、有機粉じん中毒症候群(ODTS)は内毒素と呼ばれる物質(微生物の腐敗後に放出されるグラム陰性菌の細胞壁を構成する物質)を高濃度で吸入することで引き起こされるとされる(79)(80)。他の細菌は創傷からの感染や吸飲により体内に取込まれたのち、外毒素と呼ばれる物質を生成、放出して中毒を引き起こす(下痢を引き起こすエンテロトキシン、破傷風毒素、ボツリヌス毒素など)。

 真菌が生成するマイコトキシン(麦角アルカロイド、アフラトキシンB、オクラトキシンなど)は汚染された食物から体内に取込まれることが多く、重い疾病を引き起こす場合がある。科学学会では、これらの物質が経口摂取だけでなく吸入により発症するかどうかという点で依然意見が分かれている(79)


ーロッパにおける法的な枠組み

 作業中の生物学的因子への暴露による健康や安全へのリスクから労働者を守るため、欧州理事会は理事会指令90/679/EEC(1990年11月26日付け)を発行した。この指令はその後10年で様々な機会に多くの修正がなされ、明確性と合理性を確保する観点から、指令90/679/EECとすべての修正条項は指令2000/54/EC(2000年9月18日付け)において成文化された。この新しい指令は現在、指令90/679/EECに取って代わっている(77)

 化学的または物理的なハザードとは対照的に、生物学的因子についての法的な枠組みには許容基準が設定されていない。疾病を確実に引き起こす生物学的因子についての「感染量」や「適切な濃度」に関する情報はほとんどない。これは、労働者が発症するかどうかは個人の体質によるところが大きいためである。

 いずれにせよ、職場での生物学的因子に起因するリスクの判定、評価は成文化された指令2000/54/ECの規定範囲であり、従ってこの指令は業務上、実際にまたは潜在的に労働者が生物学的因子と接触するすべて作業に対して適用されなければならない。ある作業が生物学的因子への暴露のリスクを有する場合、労働者の安全衛生に対するリスクを評価し、取るべき対応策を決定するために、その暴露の種類、程度、暴露期間について調査を行う必要がある。

 労働者が複数のグループの生物学的因子に暴露される場合、リスクは存在するすべてのハザードな生物学的因子が引き起こす危険について、評価されなければならない(生物学的因子の分類については指令の付録IIIに記載されている)。リスクアセスメントは定期的に見直し、また労働条件の変更が労動者の生物学的因子への暴露に影響を与える場合にも見直しが必要である。リスクアセスメントは以下についての入手可能なすべての情報に基づいて行わなければならない。
  • 作業中に人体の健康に悪影響をもたらす、またはその可能性のある生物学的因子の種類
  • 作業により罹患する可能性のある疾病についての情報
  • 作業の結果、アレルギー誘発や毒素を生じる可能性のある作用についての情報など
 評価の結果、実在または潜在する暴露がグループ1の生物学的因子のみであった場合で、労働者に明らかな健康へのリスクがなければ、適切な労働安全衛生の原則を遵守することで十分といえる。また、ある作業において生物学的因子との接触が故意に行われているのか(微生物診断研究所、バイオ企業での業務等)、あるいは業務上労働者の生物学的因子への暴露が結果的に避けられないためであるのか(農業、食品製造、医療、廃棄物処理プラント、下水処理施設などでの業務)を見極めることも必要となる。

 指令2000/54/ECの基本原則は、有害な生物学的因子をより危険性の低い微生物に可能な限り切り換え、また技術的および組織的な手段の導入や、最終的に必要な場合には個人用保護具(PPE)の使用により個人を防護することでリスクを防止・低減するというものである。衛生に関する一般的な規則を適用し、労働環境におけるバイオエアロゾルの拡散の回避が必要となる。生物学的因子との接触から個人を守るため、白衣や手袋を使用し、場合によってはマスクで口を覆わなければならない。また消毒や殺菌などの処置も行わなければならない。特殊なケースでは、ウイルス感染を予防するため、ワクチンの接種も有効な手段である。

 さらに指令2000/54/ECでは、労働者は仕事について適切な情報と訓練を受けていなければならないと規定しており、また業務上実在または潜在する暴露がリスクグループ2から4に属する微生物に関連するとの評価結果が示された場合には、管理手順を遵守するよう勧めている。

 健康のサーベイランスについての勧告も出されているが、リスクアセスメントにより生物学的因子への暴露によるリスクがあると判断された労働者に関して適切な措置を講じるのは、最終的にはEUの各加盟国であり、各国の法律と慣習に基づいて行われる。診断研究所ではない衛生管理施設や家畜管理施設に対しては別段の注意が向けられており、生産工程や研究室、動物飼育室には特別な措置が規定されている。


後の展望

 生命科学の分野では、遺伝子治療を用いて様々な疾病に対する効果的なツールを開発する上で、微生物(通常インフルエンザを引き起こすウイルスなど)の持つ感染力を利用する試みがなされている。バイオ産業では、生物学的因子が持つ膨大な代謝経路を利用して、われわれの生活必需品の多くを生産している。食品製造に用いるクエン酸や洗剤、酵素、顔料、抗生物質などがその例である。

 土壌中の細菌が呼吸や有機物の無機物化によって二酸化炭素を空気中に放出しなければ、空気中に存在する二酸化炭素は植物が行う光合成によって急速に消耗してしまうだろう。

 これらの例からも、生物学的因子が研究や産業の分野でますます注目されており、地球の自然環境に必要不可欠であることがわかる。微生物の生命活動による有望な利益とは対照的に、ここ2、3年、生物学的因子の負の影響に関する恐ろしい報告がメディアに登場している。消費者の信頼と畜産業に大きなダメージを与えた牛海綿状脳症(BSE)や口蹄疫などの動物の疾病、市民を重篤な疾病に感染させるために微生物(研究用の特殊なBacillus anthracis 種など)を特定的に用いた生物テロなどである。

 一般市民や特に無意識のうちに生物学的因子に暴露されている労働者は、微生物そのものに関して、またその最適な生育環境や有益・有害な特徴について、ほとんど知識を持たない。これは、微生物が肉眼では観察できず、光学機器を用いなければ見ることができないという事実が大きく関係していると考えられる。知識の欠如による不安から人々を開放するために、また生物学的危険についての人々の認識を高めるために、市民により多くの情報を与えていかなければならない。

 そのためには、次のことを人々に伝えていくべきである。
  • 微生物の生態上の要求について。これを知ることにより作業中に微生物に暴露する可能性があるか否かをより理解することができる(特に無意識のうちに生物学的因子を使用し、接触している場合)。
  • 生物学的因子が引き起こす疾病と同時にそれらがもつ有益な作用について(「目に見えないもの」をよく知るため)。
  • バイオエアロゾルの形成と飛散を最小限に抑えるための簡単な防護対策について。衛生の一般原則や、簡単な技術的・組織的な処置(掃くよりも吸引する、ドライクリーニングよりも湿式クリーニングを行うなど)。


(77) 職場において生物学的因子への暴露に関する危険から労働者を保護することについての欧州議会および理事会による指令2000/54/EC (p.18) 2000年9月(指令89/391/EECの16条(1)に規定される7番目の個別指令)OJ L 262, pp.21-45
(78) Schlegel, H. G. (1985), Allgemeine Mikrobiologie 6 , überarbeitete Auflage/unter Mitarbeit von Karin Schmidt, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York.
(79) Deininger, C. (1993), 'Gefährdungen durch biologische Agenzien am Arbeitsplatz', BIA-Handbuch , 21. Lieferung X/93.
(80) Deininger, C. (1993), 'Pathogene Bakterien, Pilze und Viren am Arbeitsplatz. Staub-, Reinhaltung der Luft 53, pp. 293-299.
(81) Kolk, A. und C. Deininger (2000): Umgang mit biologischen Arbeitsstoffen. In: Eichendorf, W., Huf, C. A., Karsten, H., Rentel, A., Tiller, R.-E., Voß, K.-D., Weber- Falkensammer, H. und B. Zwingmann (Hrsg.): Arbeit und Gesundheit - Innovation und Prävention, Universum Verlagsanstalt, Wiesbaden, 163 - 168.