このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
EUはどのように化学物質の暴露限界を設定するか
How the EU establishes exposure limits for chemicals

欧州安全衛生機構発行「Magazine」6号p.7
(仮訳:国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/6/en/index_5.htm


EUはどのように化学物質の暴露限界を設定するか

「職業暴露限界に関する科学委員会(Scientific Committee on Occupational Exposure Limits:SCOEL)」の仕事

 EUは、職場の化学物質によるリスクから安全衛生を守る水準を向上させることに一貫して努力してきた。この目的を達成するためいくつかの指令が採択されてきた。

 職場の化学物質に関するEUの最初の法的・包括的な枠組は、理事会指令80/1107/EECに含まれており、これは化学的、物理的、生物学的要因によるリスクの対策を規定するものである。これは1988年に、有害化学物質の暴露限界を設定する仕組みに焦点を当てた指令88/642/EECが採択されたことにより改正された。この指令は、2001年5月5日に指令98/24/ECの採択により廃止された。さらに、職場の発がん性物質に関する理事会指令90/394/EECは、理事会指令67/548/EECの枠組で設定された基準によって「発がん性物質」を定義し、また限界値に関する特別の条項を含んでいる。

 欧州委員会では、有害化学物質への暴露レベルと健康に対する影響の関係を求めるために、入手可能な最新データを科学的に評価する独自の方法が用いられている。

 1990年に、欧州委員会は理事会の要請で、限界値について助言するため科学者の非公式グループ(scientific expert groupとして知られている)を設置した。これに続く1995年7月12日の「決定(Commission Decision)」によって、職場のリスクの科学的評価作業と、統一された職業暴露限界(occupational exposure limits:OEL)の開発についての正式な基盤が設立された。「職業暴露限界に関する科学委員会(SCOEL)」として知られるこの委員会は、全加盟国からの21人のメンバーで構成され、その任務を果たすのに必要な科学的専門知識の全範囲をカバーしたものである。

 欧州委員会は、SCOELの任務をすべてカバーするための必要性を考慮して個々の加盟国に相談した後にこれらのメンバーを任命する。SCOELメンバーの任期は3年で、その氏名は「EU公式ジャーナル(Official Journal of the European Union)」で公表される。委員会(SCOEL)は通常年4回開催され、作業中のテーマについて特別の専門知識をもつ人がいれば、参加するよう招待することもある。

 SCOELは、化学、毒物学、疫学、産業医学、労働衛生のエキスパートで構成され、OELの設定に関しては全般的な権限を持っている。

 SCOELの主な任務は「決定」の第2条に次のように書かれている。「委員会は、OELの設定に関して科学的データに基づき助言を与え、必要であれば次のものを含む値を提案しなければならない。即ち8時間加重平均(TWA)、短時間暴露限界値(STEL)、 生物学的限界値である」。

 SCOELは、「健康ベース(health-based)」のOELについて欧州委員会に勧告を行う。このタイプのOELは、利用可能な科学データベースをすべて調査した結果、ある暴露量以下であれば問題の化学物質への暴露が健康に悪影響を与えないという明確な限界値を特定することが可能な場合に設定されるものである。

 SCOELはヨーロッパの法律の要求事項を満たすOELを設定する基準についていくつかのキーとなる原則を検討して合意に達しており、これは1999年に公表されている。

(以下省略)