建設業(NACE sector F)は、2002年にEU15ヶ国の経済に対し、総額4700億ユーロを貢献した。これは全NACE支局の総額の5.6%、またはEU15ヶ国のGDP(国内総生産)の5.2%にあたる。この貢献は190万ほどある建設会社によるものである。2002年の労働力調査報告によると、建設業で1270万人の労働者(EU15ヶ国の全労働力の7.9%にあたる)が働いており、その内の91%は男性である。1995年のEU拡大以来、建設業で働く人々の数は増え続けており(9%)、労働人口全体の増加(10%)と同じペースである。全労働人口における建設業で働く人々の割合は、5.5%(スウェーデン)から12.7%(ポルトガル)である(表1参照)。
表1. 2002年の全労働人口における建設業労働者(NACE F)の割合(%)
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国 名 |
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建設業労働者の比率 |
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EU15ヶ国 |
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7.9 |
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ベルギー |
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6.6 |
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デンマーク |
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6.6
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ドイツ |
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7.6 |
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ギリシャ |
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7.6 |
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スペイン
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11.9 |
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フランス
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6.6 |
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アイルランド
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10.6 |
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イタリヤ |
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7.9 |
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ルクセンブルグ |
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9.1 |
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オランダ |
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6.5 |
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オーストラリア |
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8.9 |
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ポルトガル |
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12.7 |
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フィンランド |
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6.3 |
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スウェーデン |
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5.5 |
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イギリス |
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7.4 |
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統計的な調査の結果、正規職員、大企業労働者、フルタイム労働者及び契約期間の決められていない労働者は、自営業者、小規模企業労働者、パートタイム労働者及び契約期間の決められている労働者よりも職場の安全衛生の状況が良い。建設労働者はいくぶん不利な状況にいる。労働人口全体と比べると、建設業では自営業や非正規労働者が多い(23% 対 15%)。彼らは労働者が50人以下事業所で働き(82% 対 63%)、正規職員でも契約期間の決められていない人は少ない(80% 対 86%)。他方、建設業の労働者はフルタイムである人が労働人口全体よりも多い(95% 対 82%)。これはおそらくパートタイムの労働者は女性が多く、男性の6倍になっているが、建設業の労働者のほとんどは男性があることが原因だろう。
2000年の欧州労働条件調査(ESWC)によると、建設業の労働者は年間平均7.3日仕事を病気のために欠席している。彼らの報告によると、欠席の原因は32%が職場での事故、28%が事故ではないが業務関連の健康問題、40%が業務と無関連の健康問題だった。これらを建設業労働者1270万人にあてはめて考えると、業務関連の事故が原因で毎年3000万日、業務関連の健康問題が原因で毎年2600万日が無駄になっていることになる。
2001年の欧州労働災害統計調査(ESAW)の予備データによると、EU15ヶ国内の建設業では、3日以上の休業災害が約822,000件起き、死亡災害は1,200件起きた。これは、その年にEU15ヶ国の当局が記録した全負傷災害の18%、全死亡災害の24%を占めている。各国のデータ収集システムは、公共部門を除く全業種、軍人を除く全労働者、自営業者あるいは家族労働者を除く全職業を対象にしているが、建設業の災害割合が総労働力の割合と比較するとはるかに高い。
建設業は労働力全体と比べて100,000人ごとの事故発生率が非常に高い。
2001年には、100,000人の建設労働者ごとに7,200件の傷害事故が起きていることが各国のデータ収集システムの調べでわかったが、これと比較できる統計値がある9つのNACE支局の全労働者をあわせても、100,000人あたりの傷害事故は3,800件しか起きていなかった。
建設業でおきる休業災害の発生率は全体の平均の2倍近くである。
死亡災害については、建設業ではもっと大きくなる。建設業では100,000人あたりの死亡災害の発生は10.4件だが、建設業以外では4.2件である。
休業災害においても死亡災害においても、建設業でもNACE9支局でも、労働作業時の災害は1994年以来数が確実に減ってきている(表2)。休業災害よりも死亡災害のほうが数の減り方は激しい。
建設業では、休業災害の発生率は(EU15ヶ国とノルウェーを合わせて)中小規模の事業所が最も高い。労働者100,000人あたりの災害は1〜9人の事業所では9,000件、10〜49人の事業所では9,500件、50〜249人の事業所では6,300件、250人以上の事業所では5,000件である。この違いは、小さい規模の事業所ほど災害が発生しやすい現場での仕事が多いことも原因として考えられるが、労働安全を確保するために使用できるリソースの違いが原因ともいえるだろう。
表2. 1994-2001年のEU15ヶ国の建設業及びNACE9支局における死傷災害発生率
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10万人率 |
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年 |
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障害 |
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死亡 |
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建設業 |
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9 NACE |
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建設業 |
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9 NACE |
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1994 |
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9,014 |
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4,539 |
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14.7 |
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6.1 |
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1995 |
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9,080 |
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4,266 |
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14.8 |
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5.9 |
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1996 |
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8,023 |
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4,229 |
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13.3 |
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5.3 |
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1997 |
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7,963 |
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4,106 |
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13.1 |
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5.2 |
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1998 |
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8,008 |
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4,089 |
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12.8 |
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5.0 |
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1999 |
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7,809 |
|
4,088 |
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11.7 |
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4.8 |
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2000 |
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7,548 |
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4,016 |
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11.4 |
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4.6 |
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2001(a) |
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7,213 |
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3,830 |
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10.4 |
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4.2 |
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増減率
(1994-2001) |
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-20% |
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-16% |
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-29% |
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-31% |
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(*) 9NACEは、農業,製造業,電気・ガス・水道業,建設業,卸売・小売業,修理業,
ホテル・レストラン業,運輸・通信業,金融業,不動産取引業である。
(a)2001年のデータは、ポルトガルについては2000年の数値である。 |
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効果的な災害防止のためには、労働安全リスクを認識することが必要不可欠である。
2000年のESWCによると、健康が傷害リスクにさらされていると感じている労働者の割合は、建設業は19%で全産業の7%よりも高い。同様の調査の結果、PPEを作業時間の半分以上使用している人の割合は、全業界の25%と比べると建設業界で割合が高く48%となっている。ただし、建設という仕事につきもののリスクを考えれば、その割合はもっと高くあるべきという考えもある。労働時のリスクのことを十分知らせてもらっていると考えている建設業の労働者の割合は、全体よりもやや低い(建設業37%、全体41%)。建設業よりも割合が低いのは、農業労働者のみである(30%)。
災害に起因しない疾病の責任はもっと複雑である。職業関連疾病の認定システムは間接的に社会保障制度と関係していて、各国の労働災害データ収集システムとはずいぶん違っている。また、業務関連の健康問題の調査は調和の取れた形で行うこともできるが、それには業務関連の健康問題の因果関係を考慮した評価を回答者自身にさせることになってしまう。
1999年の臨時労働力調査が労働によって発生または悪化した健康問題の自己報告を調査した。その結果、100,000人の労働者あたりで生じる健康問題は建設業 (5,000件)が全業種 (5,370件)よりもやや少ないという結果だったが、最低2週間職場を休業しなければならない深刻な健康問題については建設業 (1,950件)が全業種 (1,750件)よりもやや多いという結果であった。このような健康問題の中でも主流を占める3タイプの傷害については、筋骨格系障害が建設業では3,160件、全業種では2,650件で建設業の方が高く、ストレス、鬱、不安などの発生率は全業種では1,180件で、建設業では480件と大幅に低くなっている。肺疾患については、建設業界では290件、全業種では300件で、大きな違いは見られなかった。
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