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建設業における優良資格(エクセレンス)の獲得
Achieving excellence in construction procurement

欧州安全衛生機構発行「Magazine」7号 p.14
(仮訳 国際安全衛生センター)

この記事のオリジナルは下記のサイトでご覧いただけます。
http://osha.europa.eu/publications/magazine/7/en/index_6.htm


はじめに

 建設工事における優れた安全衛生基準の設定は、発注者の発注条件に左右される。この段階で、工事における全ての安全衛生問題がどのように扱われるかが決まる。大多数の契約は最低価格で調達されるが、結局、契約内容の変動により、品質基準を満たさなかったり、施工期限に間に合わなかったりといったことにより最終価格は大きく上昇してしまう。契約は最低価格での調達という観点からではなく、資金の使い方によって評価されるべきものである。資金の使い方に応じた評価とは、その資金が建設工事の最後で目的や使用者のニーズを満たすために使われているか、将来を見越した品質とコストのバランスをとるために必要であるかを検討することである。それに加えて、安全衛生が保たれていなかったために生じるコストは発注者自身にかえってくる。安全衛生のイメージが貧困な建設業者と提携したという噂は損害をもたらす。工事の実施は他のビジネスの投資と全く同じであることを発注者は理解しなくてはならない。建設業者、完成した建物の所有者、入居者の安全衛生を保障した上で初めて、発注者の事業は成功したといえるだろう。

 従って、契約相手などを選択する際に、相手が業務をしっかり実行する能力をもっていることの確認は、発注者にとって非常に重要である。

 イギリス政府は、英国商務局(OGC)を通してこの問題をしっかり認識しており、政府の機関が建設工事の調達を行う際のガイドラインのシリーズを発行している。

 産業界の安全衛生問題にしっかり取り組むことは非常に重要であると私は強く信じている。優れた設計施工計画には、事前に本質的に安全なプロセスが組み込まれており、優良企業がよく訓練された労働力を用いて作業をする。このようなプロジェクトは安全であり優れていて先を見通すことができる。我々が近代的で世界規模の産業を成功させたいと願うのであれば、産業を取り巻く文化環境は変化しなくてはならない。そこでは人間の価値が尊重され、統合のとれたチームで働くことが学ばれ、発注者の出す資金に見合った価値が提供されるべきである。
 
サー・ジョン・イーガン『加速する変化(Accelerating Change)』

 この政府主導の原理原則については、建設業における優良資格(Achieving Excellene in Construction --- http://www.ogc.gov.uk/index.asp?id=218)を参照のこと。

  以下はこの戦略の要約であり、OGCから入手できるガイドラインの細かい点についても書かれている。

 建設業の優良資格の導入により主導権を握ることを通して、発注者である中央政府は、新規工事、メンテナンス及び改修工事の調達の効率性、有効性、資金の価値を最大となるように継続的改善を重ねている。

 建設業において優良資格を獲得するという動きは、大蔵副大臣によって1999年3月から開始され、その目的は、建設業の発注者としての中央政府の各部局、各執行機関、関係公共機関の業務を改善することだった。この動きは、建設工事の調達業務や、建設工事(メンテナンス・改修工事を含む)の政府予算の価値を改善していく戦略を導入するものだった。

 その鍵を握っているのは、優良資格の維持発展、財政や意思決定における承認の期間の短縮、能力の改善と権限委譲、パフォーマンスの測定基準の導入並びにバリューとリスクのマネージメント及び耐用期間を含む全コストなどの評価ツールの使用などである。

 優良資格を追求する推進力となるのは、公共資金のもっとも効果的な運用である。これは価格を最低限に抑えるということではなく、品質と耐用期間を含む全コストがユーザーの求める要件とつりあっていることを指す。

優良資格獲得ガイダンス

 調達における優良資格の獲得ガイダンスシリーズは、優良資格を獲得する際の将来的な戦略をサポートしている。このシリーズでは、ここ数年の建設調達の発展や担当部署の優良資格獲得の実施経験の蓄積をもとにつくられている。新しいガイダンスは重要な構成要素となるOGCの調達手引きと一致しており、調達手引きのレビューと“完工検査に合格するためのツールキッド”から得られた経験が蓄積されている。このシリーズには3つの中心的な文書と、それを補助する9つの文書があり、二つの高レベル文書である優良資格獲得ガイダンスが含まれている。

調達ガイド10は特に安全衛生問題に取り組む

 ガイドでは、発注者としての中央政府がどのようにして安全衛生問題において優良資格を獲得できるかをアドバイスしている。

 安全衛生及び福祉の問題はプロジェクトを進めるにあたって無視できない。安全衛生の問題はプロジェクトの建設段階だけに限ったものではなく、全てのプロジェクトの段階、また設備が利用されている期間中継続的に生じうるものである。建設やオペレーションの段階で発生する一般的な安全衛生問題の多くは、プロジェクトの概要説明やデザインの段階で考慮されていれば回避できるものだ。

 建設業界では人々の安全衛生に係わるパフォーマンスを直ちに改善する必要があることは、広く認識されている。この業界において安全衛生問題を解決していくことは、高尚な要求というより、ビジネス上の必須条件である。

 政府は建設業界の優良資格獲得に全力を傾けている。つまり、担当部署は、安全衛生関連の法律で保障されている最低限の基準よりも多くのことをしていかなくてはならない。

 安全衛生関連の問題が発生する前に、率先してそれを抑えるような設計を進めている担当部署は、法令の保障よりも高いレベルでのパフォーマンスを実施しており、順調に優良資格獲得にむかっている。このような担当部署では、部署の働きに関する情報を集め、政府、産業レベルで比較していくことによって、自分たちの安全衛生問題への取り組みを評価していくことが望まれる。

 発注者のリーダーシップは、物流における安全衛生を確保する際の重要な要因である。主要な建設発注者や中央政府の担当部署(各執行機関や関係公共機関を含む)は自分たちが調達を行う際に、優良資格を示し、それを獲得していくよう努力していかなくてはならない。

 プロジェクトの設計や構築もビジネスの一部であること、また、建設・維持の関係者だけでなく、その建物で後に働くことになる人々の安全衛生問題にも自分たちが責任を負っていることを認識している発注者はほとんどいない。これらの人々の安全衛生は、設計と建設の質に左右される。しかし、設計者と建設業者が直面する問題の多くは、発注者が押し付けた価格と時間にかかわる不合理なプレッシャーが原因となっている。
  安全衛生問題を解決していくためには、力強く、また先を見越したコミットメントが不可欠である。経営陣はこの問題に積極的に興味を示し、取り組まなくてはならない。発注者がプロジェクトにおいて安全衛生基準を高く設定すれば、基準は満たされる。このような姿勢をとる発注者は(最低価格ではなく)優れた価値を獲得すると共に、自分たちのプロジェクトにおいて安全衛生が必要不可欠であることを理解できるだろう。
<建設業の安全衛生再活性化のために>
 

詳細

関連リンク http://www.ogc.gov.uk/sdtooit/reference/achieving/ae10.pdf

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