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NSC発行「Safety + Health」2006年2月号

ニュース


米国心臓協会、CPRガイドラインを改正

  ダラス − 米国心臓協会(American Heart Association)はこのたび、救急処置およびCPR(心肺機能回復法)に関するガイドラインを改正した。新ガイドラインは、心臓マッサージに力点を置いており、従来よりも人工呼吸の合間の心臓マッサージを増やすよう義務づけている。

 協会によると、自動体外式除細動器(AED)を用いるまで、または、心臓が自力で血液を送りだすまでの間、心臓マッサージが、心臓から体のすみずみまでの血液の循環をよくすることが調査で判明した。本ガイドラインは、2回の人口呼吸の合間に、これまでは心臓マッサージを15回となっていたのを、30回と規定した。この30回‐2回という比率は、素人の救助者1名が、新生児を除く成人、児童、幼児に対して行うCPRにおいて、一律の比率である。例外としては、救助者2名が、新生児を除く児童、幼児に対してCPRを行う場合、比率は人口呼吸2回の間にマッサージ15回となる。

 CPRをめぐるもう一つ大きな改正は、2005年度ガイドラインでは、素人の救助者に、心臓マッサージを始める前に脈の確認を義務づけていたのを省き、マッサージを毎分100回と勧告している点である。

 本ガイドラインはまた、出血その他の種類の傷害に対する救急処置の手順や、救急隊員による自動体外式除細動器(AED)の使い方について、内容を変更した。ガイドライン全文は、http://circ.ahajournals.org/content/vol112/24_suppl/ で閲覧されたい。

 救急処置、CPRや自動体外式除細動器(AED)の訓練は、従業員の勤労意欲ばかりでなく、事業の収益にも大きく影響しうる。「通りすがりの人々が、救急処置やCPRを熟知していたと仮定すると、緊急医療機関への搬送総件数のおよそ25%は、削減できていたであろう。この25%は、91億ドルに値するから、事業者が、救急処置やCPRの訓練を従業員に施すのは、経済的に道理にかなう」と、全米安全評議会(National Safety Council: NSC)のバーバラ・カラチ救急処置プログラム・訓練担当部長 (Barbara Caracci, director of emergency care program and training)は述べた。「第2に、CPRとAEDは、生死を分かつので、訓練の提供は、善良な人道主義に通ずる。最後に、突然の心拍停止を目のあたりにし、CPRを試みた人は、救命しようととにかく行動したという気持ちを持つ。一方で対応するのに無力感を感じ、為すすべを知らない人は、しばしば強い無気力を感じる。勤労意欲の点からみて、事業者は、訓練コースを提供すべきである」。カラチ氏は、改正救急処置ガイドラインをまとめた委員会に参加した。

 全米安全評議会(NSC)は、この新しいガイドラインを反映するよう、救急処置プログラムを改訂すると、カラチ氏は述べた。「標準救急処置、CPR、AED(Standard First Aid, CPR and AED)」教本改訂版は、6月中旬に刊行される。

 

事実チェック

捻挫、筋挫傷、裂傷率*(民間部門、1992〜2001年) 事実チェック
*常勤労働者1万人あたり

出 所:国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)




報告書:夜勤と早産は、関連

 ノースカロライナ州チャペルヒル − ノースカロライナ大学(University of North Carolina)の研究チームによる最新の調査によると、長時間の立位や重量物の持上げでは、早産のリスクは増加しないが、妊娠初期3ヶ月の夜勤は、早産のリスクを倍増する可能性がある。

   夜勤は、夜間の子宮内の正常な活動を阻害するため、このような影響が出るのではないかと、研究チームは述べた。調査報告書は、産科・婦人科(Obstetrics & Gynecology, Vol. 106, No. 12)に掲載された。



OSHA安全衛生情報誌、無水アンモニアを特集

  ワシントン −
労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)がウェブサイトに掲載している新しい安全衛生情報誌は、荷積み区域における無水アンモニアの未制御の発散の防止を取り上げている。

  www.osha.gov/dts/shib/shib120505.htmに掲載されたこの新しい情報誌は、荷積み区域や、特定の安全装置のない無水アンモニアシステム・工程での積み換え作業中に発生する未制御状態での無水アンモニアの発散の可能性について、概略を述べたものであると、当局は述べた。

    情報誌はまた、こうした事故の可能性を排除・削減するために、事業者や従業員が利用できる機器や労働慣行、訓練の実例を示していると、OSHAは述べた。



OSHA、HAZWOPERガイダンス資料を提供

 ワシントン − www.osha.gov/SLTC/hazardouswaste/application_worksiteresponse.htmlでは、新しい安全衛生資料が、利用できるようになった。これは、ある行為が、OSHAの「有害廃棄物作業および緊急対応(Hazardous Waste Operations and Emergency Response: HAZWOPER)」 基準の規定する「緊急対応」であるかどうか、またはそう捉えるべきかどうかを、労働者や事業者が判断するのを助ける。

 当局によると、ガイダンス資料は、対応あるいは清掃作業が、HAZWOPERの要件に該当する場合の諸条件を概括しており、また、「職場での対応・清掃作業へのHAZWOPERの適用 (Application of HAZWOPER to Worksite Response and Cleanup Activities)」および「職場での対応・清掃作業に関する従業員訓練(Employee Training for Worksite Response and Cleanup Activities)」と題した2つの章を提示している。

  各章は、情報やガイダンスにリンクしている。労働者がどちらの遵守経路をたどるべきかを示すフローチャートも含まれている。



OSHA、新しい早見カードやデータ表を刊行

 ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、解体・整地、硫化水素、許可を要する閉塞空間、可搬式発電機や呼吸器保護などといった安全衛生問題に的を絞った新しい早見カード(Quick Cards)やデータ表を刊行したと発表した。これらの情報は、www.osha.gov/OshDoc/hurricaneRecovery.htmlでダウンロードできる。また、OSHA出版局((202)693-1888)まで電話で注文することもできる。



EU、若年労働者保護キャンペーンを開始

 スペイン、ビルバオ(Bilbao) − 欧州連合(EU)は、欧州の統計によると、他の年齢階層に比べて50%も高い労災のリスクがある若年労働者の安全キャンペーンを開始した。

 昨年末、当局は、若年労働者の安全衛生問題についてのオンライン情報源を立ち上げた。

  キャンペーンの詳細その他の情報源を閲覧するには、http://osha.europa.eu/youngpeopleを開かれたい。



本誌読者の意識調査

労働者の高齢化は、労働安全の足手まといと思うか?
読者の意識調査

「読者の意識調査」の質問は、2週間毎に更新する。最新の質問は、www.nsc.org を開き、「会員限定」ウェブサイトで閲覧されたい。

 

訂 正

 Ather Williams Jr.氏は、Johnson & Johnson社の世界規模安全衛生担当副社長(vice president, world-wide health and safety)です。本誌2006年1月号28ページの記事「会議には、安全の発展ぶりが反映」では、同氏の役職が誤記されておりました。お詫び申し上げます。

 

「ニュース」欄は、オードリー・アームズ(Audrie Armes)編集次長が担当した。