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NSC発行「Safety + Health」2000年9月号
時の人
障害者は、業務上の自己の危険を判断できるとの判決
カリフォルニア州シェブロン社の元従業員が起こした訴訟で、障害者は、自身の安全を危険にさらすかもしれないとの理由で、雇用を否定されてはならないと、連邦控訴院は、判決を下した。
この判決に関し、国内最大手の使用者の一部から、自身の健康を危険にさらすかもしれない職につく労働者を保護するのは困難であるとして、抗議が出た。従来、裁判所は、アメリカ障害者法(ADA)について、使用者は、自分自身や他人の安全を危険にさらす恐れのある求職者の採用を拒否できる、と解釈してきた。
米国第9巡回控訴院は、障害者が、他人の安全を危険にさらす恐れがある場合のみ、使用者は、その雇用を拒否しうると語った。
「障害者は、どのようなリスクを冒すか、自分自身について決定する機会を与えられなければならないとの結論を、議会は出した」と、ステファン ラインハート判事は、満場一致の陪審団に代わり記した。また、障害者法は、幾分、「温情主義の形をとる障害者への差別を禁止」しようとして、設計されたと書いている。
この判決により、雇用機会均等委員会は、自分自身に危険を招く恐れのある求職者の採用を、使用者は拒否しうるとした、現行のガイドラインを変更せねばならなくなるだろう。
「この問題については、我々は、更なる検討を加えると言うにとどめる」と、同委員会のペギー マストリオアニ副法務委員は言った。「この分野での大きな問題は、いつも、人は、月並みな仮説をたてるということである。障害があるから仕事ができないと決めつけてはいけない」。
使用者代表団は、今回の判決に困惑していると語った。
「仕事を安全に遂行するということは、仕事の重要な目的であると主張した」と、大会社300社余りを代表する訴訟を提出した雇用平等諮問委員会のアン リーズマン一般弁護士は語った。「使用者は、安全性に基いた資格基準を持ちうる。障害者法は、明確にそう規定していると、我々は信ずる」。仮に、裁判所の判決が有効であるとすると、使用者は、同法違反のリスク、または、労働者の負傷、死亡のリスクの間で、バランスを取らなければならなくなると、同氏は述べた。
1992年、シェブロン社の元従業員は、コークス部門の仕事に応募、同社は、身体検査に合格した当人を採用した。その後、従業員が、無症状の慢性C型肝炎と診断されてから、コークス部門の特定の化学物質を扱うと、肝臓を損ねる恐れがあるとして、採用を取り消した。従業員のかかりつけの医者は、いずれも、当人の健康状態を理由に精製所で働くのを止めるよう勧告してはいなかった。
かつて米国労働省の弁護士を務めたこともある、デンバーの労働雇用担当弁護士ジム アブラムズ氏は、これは1裁判所の判決にすぎないが、第9巡回地域の使用者は留意せねばならない、と語った。
判決により、使用者は、難しい立場に立たされうる、と同氏は述べた。なぜなら、労働安全衛生法では、使用者は、労働者を労働者自身から保護するよう求めていながら、判決では、労働者は、自分自身について決定することができると、障害者法を解釈したからである。
同氏は、使用者は、求職者に対し、仕事の潜在的な危険を知らせるよう注意せねばならない、と付け加えた。
幸い、大半の労働者は、正しい判断を下す、と同氏。
「実際、大抵の人は、危険な方へ身を置かない」とアブラムズ氏、「保護の第一線は、労働者自身にある」。
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